サンエー化研 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サンエー化研 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サンエー化研は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、軽包装材料、産業資材、機能性材料などの製造・販売を展開しています。包装関連業界で多様な市場ニーズに対応し、ラミネート技術等のコアテクノロジーを強みとします。直近の業績は、機能性材料部門の稼働率上昇などにより増収増益を達成し、堅調に推移しています。


※本記事は、サンエー化研の有価証券報告書(第117期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. サンエー化研ってどんな会社?


包装関連業界において、軽包装材料、産業資材、機能性材料などの製造・販売を展開するメーカーです。

(1) 会社概要


1942年に静岡加工紙共販として設立され、1964年にサンエー化学工業へ社名変更しました。1996年に化研工業と合併して現在のサンエー化研となりました。2000年に株式を店頭登録後、2004年にジャスダックへ上場しました。近年はシノムラ化学工業や東邦樹脂工業を子会社化し、事業基盤を強化しています。

従業員数は連結で611名、単体で432名体制です。筆頭株主は事業会社である新生紙パルプ商事で、同社グループの主要な取引先でもあります。第2位株主の昭和パックスも事業会社であり、相互に株式を保有し合う関係を構築しています。第3位には従業員の資産形成を支援する社員持株会が名を連ねています。

氏名 持株比率
新生紙パルプ商事 18.81%
昭和パックス 13.96%
サンエー化研社員持株会 3.59%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は櫻田武志氏が務めており、取締役における社外取締役の比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
櫻田武志 代表取締役社長 1987年同社入社。長鼎電子材料(蘇州)董事長、常務取締役などを経て、2023年4月より現職。
山本元 取締役生産部長兼資材部管掌 1990年同社入社。執行役員袋井工場長、R&Dセンター所長などを経て、2026年6月より現職。
有馬啓介 取締役関西支店長 1990年同社入社。東京営業第1部長、執行役員関西営業第1部長などを経て、2026年4月より現職。
伊澤正猛 取締役袋井工場長兼製造部長兼R&Dセンター管掌 1996年同社入社。R&Dセンター所長、執行役員掛川工場長兼製造部長などを経て、2026年6月より現職。


社外取締役は、野口隆一氏(高井総合法律事務所パートナー)、宮本貞彦氏(元新生紙パルプ商事取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、軽包装材料、産業資材、機能性材料およびその他の事業を展開しています。

軽包装材料事業


食品用、医薬・医療用、日用品等の包材となる軟包装材料を製造・販売しています。高齢化による医薬品・医療包材や介護食ニーズに対応するほか、プラスチック包材のモノマテリアル化や紙化などの環境配慮型製品の開発も進め、主に国内のユーザーに提供しています。

顧客への製品出荷時に販売代金として収益を認識するモデルです。本事業の運営は、サンエー化研のほか、東邦樹脂工業、ネスコ、燦櫻(上海)商貿などが担っており、グループ各社の強みを活かした製品供給体制を構築しています。

産業資材事業


主に粘着テープ用基材となる紙・布へのラミネート製品や、ラベル用となる剥離紙の製造・販売を行っています。近年は資源循環の取り組みとしてリサイクルしやすい製品構成の検討を進めるなど、環境対応や品質向上への要求に応える製品開発に注力しています。

こちらも製品出荷時に販売代金を受け取ることで収益を認識しています。事業の運営は、サンエー化研を中心に、東邦樹脂工業、シノムラ化学工業、ネスコ、燦櫻(上海)商貿が担っており、国内の生産体制の効率化と安定供給を図っています。

機能性材料事業


フラットパネルディスプレイなど光学用途の表面保護フィルムをはじめとする、オレフィン系粘着加工品やその他の粘着加工品を製造・販売しています。スマートフォン等の携帯情報端末向けに、より高性能・高機能化が求められる中、高付加価値製品の開発に注力しています。

顧客への製品引渡時に販売代金を得る収益モデルです。本事業は、サンエー化研、ネスコ、燦櫻(上海)商貿が主体となって運営しており、他社から譲り受けた保護フィルム事業の統合などを通じて、さらなる収益基盤の強化を推進しています。

その他事業


報告セグメントに分類されない事業として、各事業に振り分けるのが困難な商品の仕入販売などを行っています。既存のコア事業を補完する役割を担い、グループ全体の多様な顧客ニーズに柔軟に対応できる体制をサポートしています。

外部から仕入れた商品を顧客へ販売することで収益を得るモデルです。サンエー化研が主体となり、取引先とのネットワークを活かした商品供給を通じて、各事業との相乗効果を図りながらビジネスを展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の売上高は一時的な落ち込みを経て回復傾向にあり、直近では304億円に達しています。経常利益は一時赤字を計上しましたが、設備統廃合による合理化や製品価格の適正化、さらに保護フィルム事業の稼働が寄与し、直近では10億円を超える大幅な増益を達成しました。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 287億円 279億円 275億円 294億円 304億円
経常利益 10億円 -2億円 0.4億円 0.9億円 10億円
利益率(%) 3.4% -0.8% 0.1% 0.3% 3.4%
当期利益 15億円 -2億円 3億円 2億円 7億円

(2) 損益計算書


売上高が堅調に推移する中、製品価格の適正化や保護フィルム事業の貢献により売上総利益が改善しています。販管費を抑制したことで営業利益も大幅な黒字転換を果たし、収益性の回復が鮮明になっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 294億円 304億円
売上総利益 34億円 42億円
売上総利益率(%) 11.4% 13.8%
営業利益 -0.3億円 8億円
営業利益率(%) -0.1% 2.8%


販売費及び一般管理費(34億円)のうち、運賃及び荷造費が10億円(構成比30%)、従業員給料賞与が7億円(同21%)を占めています。売上原価(262億円)の大部分は製品製造に関する原価で構成されています。

(3) セグメント収益


軽包装材料は売上微減ながら利益が伸長し、産業資材は設備統廃合等の合理化により大幅な黒字転換を果たしました。機能性材料は譲受事業の寄与等により売上・利益ともに大きく成長しており、全セグメントが利益に貢献する構造へと改善しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
軽包装材料 126億円 123億円 1.6億円 2.9億円 2.4%
産業資材 102億円 102億円 -1.5億円 2.7億円 2.6%
機能性材料 61億円 73億円 -0.9億円 2.2億円 3.0%
その他 6億円 5億円 0.5億円 0.6億円 13.0%
連結(合計) 294億円 304億円 -0.3億円 8億円 2.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローがプラス、投資活動と財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなっており、本業で稼いだ資金で設備投資や借入金の返済を賄っている健全な状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -3億円 17億円
投資CF -11億円 -7億円
財務CF 5億円 -14億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.4%であり、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「わたしたちは、未来にむけて新しい価値を創造し、社業を通じて社会に貢献しよう」という企業理念を掲げています。創業以来、包装関連業界において多岐にわたる市場ニーズを的確にとらえ、技術を磨きながら産業の発展や生活の利便性を向上させる製品づくりを行ってきました。社会に必要とされる製品を供給し続け、健全な成長を遂げることが社会的役割であるとしています。

(2) 企業文化


ラミネート技術、コーティング技術、フィルム多層押出し技術の3つをコア・テクノロジーとして位置づけ、これらの技術を絶えず進化させることを重視しています。市場の動向や社会の変化を常に注視し、顧客の要望に真摯に対応する姿勢が根付いています。また、法令や社会規範を遵守する「倫理行動規範」を制定し、コンプライアンスを経営の基本方針として事業活動に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


経営上の目標の達成状況を判断するための指標として、売上高や営業利益率を主要な収益性指標と位置づけています。近年は資本コストや資本効率を意識した経営が求められていることを踏まえ、ROEやROIC等の指標を参考にしながら、収益性の改善と財務健全性の維持の両立を図ることを目標として掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


既存技術の陳腐化に備えたコア・テクノロジーの進化と新技術開発を推進するとともに、魅力ある製品の拡充や高付加価値製品の開発により収益基盤の安定化を図ります。同時に徹底したコスト削減を実施し、価格競争力を強化します。環境対応製品の開発や、譲り受けた保護フィルム事業のシナジー創出なども進め、安定的に利益を創出できる経営基盤の構築に努めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人的資本経営を重要な課題と位置づけ、従業員が安心して働き、能力を十分に発揮できる職場環境の整備に取り組んでいます。労働災害の防止やハラスメント防止に向けた教育を実施し、若手従業員への面談機会の充実などを通じて働きやすい職場づくりを推進しています。また、コミュニケーションの活性化や技能の継承により、働きがいを感じて成長できる組織を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.6歳 18.8年 6,290,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 67.7%
男女賃金差異(正規雇用) 79.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 81.2%


※女性管理職比率については、公表義務の対象ではないため有報には記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場変動及び技術変化のリスク


機能性材料部門の主力製品である表面保護フィルムは主にフラットパネルディスプレイ向けに使用されていますが、技術革新の進展により各種部材の構成が短期間で変更される可能性があります。対象部材の仕様変更や代替部材への切り替えが生じた場合、製品の需要が減少し、同社グループの業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 原材料の価格変動・調達に関するリスク


製品の主な原材料は石油化学製品であり、仕入価格はナフサ価格の変動影響を受けます。原材料費の上昇を製品価格への転嫁等で吸収しきれない場合、収益が低下する恐れがあります。また、地政学的リスクや国際物流の混乱などにより主要原材料の供給不足や価格の急変が発生した際、生産活動に支障が生じる可能性があります。

(3) 製品の品質に関するリスク


製品の多くは顧客の最終製品における副資材として使用されており、品質の良し悪しがユーザーの商品の品質に直接影響します。特に要求水準が高度化するディスプレイ関連部材などにおいて品質上の問題が発生した場合、返品や補償費用の発生、信用低下につながり、大規模な補償が生じた際には業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 生産拠点及び設備集約に関するリスク


主要な生産拠点の多くが大規模地震の発生が懸念される静岡県内に集中しており、被災時には生産活動に支障が生じる恐れがあります。また、生産効率向上のために設備の統廃合を進めていることから、特定の設備や拠点への依存度が高まり、自然災害や設備故障が発生した場合に代替生産や復旧に時間を要するリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。