※本記事は、株式会社サンエー化研 の有価証券報告書(第116期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. サンエー化研ってどんな会社?
ラミネート、コーティング、フィルム多層押出しの3つのコア技術を持つ複合包材メーカーです。
■(1) 会社概要
1942年に茶業界向けアスファルト紙の供給を目的に設立され、戦後に現社名の前身となる企業へ商号変更しました。1962年に剥離紙、1968年に表面保護フィルムの製造を開始し事業を拡大。2000年に株式を店頭登録し、2004年にジャスダックへ上場しました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東証スタンダード市場に上場しています。
連結従業員数は638名(単体453名)です。筆頭株主は同社の主要取引先でもある商社の新生紙パルプ商事で、第2位は同業の昭和パックスです。第3位には従業員持株会が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 新生紙パルプ商事 | 18.80% |
| 昭和パックス | 12.91% |
| サンエー化研社員持株会 | 4.28% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は櫻田武志氏です。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山本 明広 | 取締役会長 | 1980年入社。研究所長、生産部長等を歴任し、2018年より代表取締役社長を務めた後、2023年に代表取締役会長に就任。2025年6月より現職。 |
| 櫻田 武志 | 代表取締役社長 | 1987年入社。東京営業第3部長、東京営業統括等を歴任。長鼎電子材料(蘇州)有限公司董事長なども務め、2023年4月より現職。 |
| 山本 元 | 取締役 | 1990年入社。袋井工場長、生産技術部長、R&Dセンター所長等を歴任。2023年4月より生産部長兼資材部長兼R&Dセンター管掌として現職。 |
| 有馬 啓介 | 取締役 | 1990年入社。東京営業第1部長等を歴任。2025年6月より関西支店長兼関西営業第1部長として現職。 |
社外取締役は、野口隆一(高井総合法律事務所パートナー)、宮本貞彦(元新生紙パルプ商事常勤監査役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「軽包装材料」「産業資材」「機能性材料」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 軽包装材料事業
食品、医薬品・医療品、日用品(洗剤・トイレタリー・精密機器等)向けの軟包装材料を製造・販売しています。高齢化に伴う医薬品・介護食向け包材や、環境配慮型のモノマテリアル包材などのニーズに対応しています。
収益は、顧客である食品メーカーや医薬品メーカー等からの製品販売代金です。運営は主にサンエー化研が行い、連結子会社の東邦樹脂工業や関連会社も製造・販売に関わっています。海外では燦櫻(上海)商貿有限公司が事業を展開しています。
■(2) 産業資材事業
粘着テープ用基材としての紙・布へのラミネート製品や、ラベル用等の剥離紙を主要製品として製造・販売しています。国内市場は飽和状態に近く、海外製品との競争やリサイクル対応が課題となっています。
収益は、テープメーカーやラベルメーカー等の顧客からの製品販売代金です。運営はサンエー化研に加え、東邦樹脂工業、シノムラ化学工業などが担っています。また、新生紙パルプ商事等の主要株主とも取引を行っています。
■(3) 機能性材料事業
FPD(フラットパネルディスプレイ)等の光学用途向け表面保護フィルム(オレフィン系粘着加工品等)を製造・販売しています。スマートフォンやタブレット等の新モデル投入に合わせた高性能・高機能化が求められる分野です。
収益は、部材メーカーや電子機器メーカー等からの製品販売代金です。運営は主にサンエー化研が行い、一部関連会社も関与しています。技術開発競争が激しく、高付加価値製品の開発による差別化が進められています。
■(4) その他
上記報告セグメントに含まれない事業として、商品の仕入販売等を行っています。
収益は、顧客からの商品販売代金等です。運営はサンエー化研およびグループ会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は200億円台後半で推移しており、第116期は増収となりました。利益面では、第114期に原材料価格高騰等の影響で損失を計上しましたが、その後回復傾向にあります。ただし、利益率は低水準での推移が続いており、収益性の改善が課題となっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 300億円 | 287億円 | 279億円 | 275億円 | 294億円 |
| 経常利益 | 9億円 | 10億円 | -2億円 | 0.4億円 | 0.9億円 |
| 利益率(%) | 3.0% | 3.4% | -0.8% | 0.1% | 0.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 11億円 | 15億円 | -2億円 | 3億円 | 2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加しましたが、売上原価も増加しており、売上総利益率は微増にとどまっています。販売費及び一般管理費の増加により、営業段階では2期連続で損失を計上しています。経常利益は営業外収益の寄与により黒字を確保しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 275億円 | 294億円 |
| 売上総利益 | 29億円 | 34億円 |
| 売上総利益率(%) | 10.4% | 11.4% |
| 営業利益 | -2億円 | -0.3億円 |
| 営業利益率(%) | -0.7% | -0.1% |
販売費及び一般管理費のうち、運賃及び荷造費が10億円(構成比29%)、従業員給料賞与が7億円(同20%)を占めています。売上原価においては、原材料費等の製造費用が大半を占めています。
■(3) セグメント収益
当期は、全セグメントで売上高が増加しました。特に機能性材料は2桁増収となりましたが、利益面では軽包装材料のみが黒字を確保し、産業資材と機能性材料は営業損失となりました。産業資材はコスト増への対応遅れ、機能性材料は事業譲受に伴う先行費用などが利益を圧迫しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 軽包装材料 | 119億円 | 126億円 | 2億円 | 2億円 | 1.3% |
| 産業資材 | 97億円 | 102億円 | -2億円 | -2億円 | -1.5% |
| 機能性材料 | 56億円 | 61億円 | -2億円 | -1億円 | -1.6% |
| その他 | 3億円 | 6億円 | 0.2億円 | 0.5億円 | 9.7% |
| 調整額 | - | - | - | - | - |
| 連結(合計) | 275億円 | 294億円 | -2億円 | -0.3億円 | -0.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 13億円 | -3億円 |
| 投資CF | 6億円 | -11億円 |
| 財務CF | -8億円 | 5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.2%で市場平均(製造業)をやや下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「未来に向けて新しい価値を創造し、社業を通じて社会に貢献する」を企業理念として掲げています。創業以来、包装関連業界の多様なニーズに応え、技術を磨きながら産業の発展や生活の利便性向上に寄与する製品づくりを目指しています。また、社会に必要とされる製品を供給し続け、健全な成長・発展を遂げることが社会的役割であると考えています。
■(2) 企業文化
同社は「ラミネート技術」「コーティング技術」「フィルム多層押出し技術」の3つのコア・テクノロジーを重視する文化を持っています。これらを絶えず進化させ、既存技術の陳腐化に備えるとともに、新技術の開発を推進しています。また、顧客の要望に真摯に対応する顧客密着型の姿勢を大切にし、市場や社会の変化を注視しながらニーズを的確に捉えることに努めています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループでは、経営上の目標達成状況を判断するための具体的な数値目標については特に定めていませんが、収益性の指標として「売上高営業利益率」を使用しています。収益基盤の安定化と価格競争力の強化を図りながら、この指標の向上を目指して経営を行っています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、コア・テクノロジーをベースとした高付加価値製品の開発・拡販と、徹底したコスト削減による収益力強化を基本戦略としています。特に、環境配慮型製品(モノマテリアル化、バイオマス化など)の開発や、成長分野である医療・医薬包材、高機能保護フィルムへの注力を進めています。
* 軽包装:電子レンジ対応包材やパウチ製品の拡充、環境対応製品の開発
* 産業資材:工場の統廃合と生産体制の効率化、低コスト構造への転換
* 機能性材料:事業譲受した保護フィルム事業のシナジー創出、クリーン塗工商材の展開
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、労働力人口の減少に対応し、年齢・性別・国籍等に関係なく多様な人材を確保することで組織の活性化と企業価値向上を目指しています。特に女性社員の活躍推進を掲げ、継続就労環境の整備や管理職登用を進めています。また、管理職社員に対しては階層別研修やSDGs、ハラスメント等の研修を継続的に実施し、見識を深める教育に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.6歳 | 18.2年 | 6,110,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 40.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 67.3% |
| 男女賃金差異(正規) | 78.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 67.7% |
※女性管理職比率については、有価証券報告書に記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員の平均勤続年数(15年2ヶ月)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 携帯情報端末向け製品におけるリスク
機能性材料部門の主力である表面保護フィルムは、主にFPD(フラットパネルディスプレイ)向けであり、特にスマホ等の携帯情報端末向けに高付加価値品が使用されています。技術革新による部材変更や、特定機種へのシェア集中により受注の振れ幅が拡大しており、著しい変動が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料の価格変動・調達に関するリスク
製品の主な原材料は石油化学製品(主にポリエチレン)であり、ナフサ価格の変動影響を受けます。原材料価格の上昇を製品価格に転嫁できない場合、収益が低下します。また、世界的な需給逼迫や災害等により主要原材料の供給不足や遅延が発生した場合、生産活動に支障が生じる可能性があります。
■(3) 製品の品質に関するリスク
同社製品は顧客の最終製品の副資材として使用されることが多く、その品質は最終製品に直接影響します。特に液晶ディスプレイや電子部品向けは要求品質が高度化しており、品質問題が発生した場合の顧客の損失は大きくなる傾向があります。製造物賠償責任保険には加入していますが、補償限度を超える損害が発生した場合、業績に影響する可能性があります。
■(4) 生産拠点集中のリスク
国内生産拠点のうち5拠点が静岡県内に集中しています。この地域は東海地震の想定震源域に含まれており、大規模地震が発生した場合、生産活動に甚大な被害が及ぶ可能性があります。耐震強化や他県工場への移管等の対策を進めていますが、リスクを完全に排除することは困難です。



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