扶桑化学工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

扶桑化学工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東証プライム市場に上場しており、果実酸類を中心とした「ライフサイエンス事業」と、半導体製造工程で使われる超高純度コロイダルシリカ等の「電子材料および機能性化学品事業」を展開しています。2025年3月期の連結業績は、売上高695億円(前期比17.9%増)、営業利益162億円(同46.4%増)と増収増益でした。


※本記事は、扶桑化学工業株式会社 の有価証券報告書(第68期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 扶桑化学工業ってどんな会社?


リンゴ酸などの果実酸類で世界的なシェアを持つライフサイエンス事業と、半導体研磨剤向け超高純度シリカを手掛ける電子材料事業を両輪とする化学メーカーです。

(1) 会社概要


1957年に帝國製薬大阪工場から独立して設立され、1962年にリンゴ酸の製造を開始しました。その後、1987年に電子材料「コロイダルシリカ」の試験生産を開始し、事業の多角化を進めました。2015年には東証一部へ市場変更を果たし、2022年の市場区分見直しに伴い東証プライム市場へ移行しています。

連結従業員数は915名、単体では588名です。筆頭株主は代表取締役会長の親族が代表を務める資産管理会社の壽世堂で、第2位は設立の母体である医薬品メーカーの帝國製薬、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
壽世堂 15.87%
帝國製薬 9.44%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.96%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役会長は藤岡実佐子氏、代表取締役社長は杉田真一氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
藤岡 実佐子 代表取締役会長 1988年扶桑化学工業社外取締役。1999年帝國製薬代表取締役、2011年同社社長(現任)。2017年より現職。
杉田 真一 代表取締役社長 1980年藤沢薬品工業(現アステラス製薬)入社。2005年扶桑化学工業入社。電子材料本部長、管理本部長等を経て2020年より現職。
政氏  晴生 専務取締役ライフサイエンス事業部長 1990年入社。電子材料事業部長、常務取締役、イノベーション推進室管掌などを経て2020年専務取締役。2024年より現職。
谷村  隆史 専務取締役 1989年入社。ライフサイエンス事業部長、常務取締役、企画開発室長などを経て2020年より現職。
藤岡  篤 常務取締役経営企画部長 兼事業開発部長 2019年入社。帝國製薬取締役、扶桑化学工業執行役員企画開発室長などを経て2024年より現職。
椙本  源樹 取締役電子材料事業部長 1992年入社。電子材料事業部営業開発部長、ライフサイエンス事業部長などを経て2024年より現職。


社外取締役は、百嶋計(元財務省大臣官房審議官)、平田文明(元三井化学理事)、江黒早耶香(シティユーワ法律事務所弁護士)、武内敬(元大阪ガス常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ライフサイエンス事業」および「電子材料および機能性化学品事業」を展開しています。

(1) ライフサイエンス事業


リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸等の果実酸類および無水マレイン酸等の有機酸を中心に製造・販売しています。これらは飲料や加工食品の酸味料、pH調整剤、日持ち向上剤などの食品用途から、洗剤、洗浄剤、工業用など幅広い分野で使用されています。また、これらを原料とした応用開発商品も手掛けています。

主な収益は、国内外の食品メーカーや工業製品メーカーへの製品販売による対価です。運営は主に同社が行い、販売面では子会社の扶桑コーポレーション(2024年6月に同社へ事業移管)、製造・販売面では中国やタイ、米国の海外子会社などが担っています。

(2) 電子材料および機能性化学品事業


半導体製造工程の研磨剤(CMPスラリー)の主原料となる超高純度コロイダルシリカを中心に製造・販売しています。半導体の微細化・高集積化に対応した製品を展開しています。また、プラスチックや塗料の添加剤、化粧品原料などの機能性化学品も取り扱っています。

主な収益は、半導体材料メーカーや化学品メーカー等への製品販売による対価です。運営は主に同社が行い、中国の子会社なども製造・販売に関与しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は長期的に拡大傾向にあり、特に直近の2025年3月期は大幅な増収となりました。経常利益などの利益面でも高い水準を維持しており、利益率も20%を超える高い収益性を誇っています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 422億円 558億円 685億円 590億円 695億円
経常利益 97億円 155億円 197億円 119億円 166億円
利益率(%) 23.1% 27.8% 28.8% 20.2% 23.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 68億円 109億円 141億円 83億円 116億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も拡大しています。売上総利益率は30%台後半を維持しており、高付加価値製品の販売が寄与していることが伺えます。営業利益率は20%を超えており、高い収益構造を維持しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 590億円 695億円
売上総利益 206億円 260億円
売上総利益率(%) 34.9% 37.4%
営業利益 111億円 162億円
営業利益率(%) 18.8% 23.4%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が22億円(構成比23%)、運搬費が18億円(同19%)を占めています。

(3) セグメント収益


ライフサイエンス事業は海外市場での販売増や円安効果により増収となりましたが、コスト増や定期修繕の影響で減益となりました。一方、電子材料および機能性化学品事業は、半導体市場の回復とAI用途の需要増により大幅な増収増益を達成しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
ライフサイエンス事業 341億円 363億円 56億円 53億円 14.6%
電子材料および機能性化学品事業 248億円 332億円 75億円 132億円 39.7%
連結(合計) 590億円 695億円 111億円 162億円 23.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 71億円 227億円
投資CF -186億円 -205億円
財務CF 177億円 -24億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は73.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「限りなき進歩と創造」を社是として掲げています。また、「信用を重んじ確実を旨とする」「技術を通じて国家社会に貢献し」「社業の繁栄によって従業員の豊かさを築く」という3つの経営信条に基づき、収益力・人財力・技術力のレベルを高め、継続的発展を遂げる企業を目指しています。

(2) 企業文化


ニッチな市場のニーズをとらえ、スピード、コスト、クオリティのバランスが高次元で調和している「金メダル製品」の開発を目指す文化があります。特定の分野で輝く製品と、多様な価値観・アイデアを持つ社員が活き活きと働き、社会に貢献し続けられる企業像を追求しています。

(3) 経営計画・目標


2025年度を最終年度とする中期経営計画「FUSO VISION 2025」を推進しています。最終年度の経営目標として、以下の数値を掲げています。

* 売上高:850億円
* 営業利益:190億円
* 償却前営業利益:300億円

(4) 成長戦略と重点施策


ライフサイエンス事業では、海外事業の強化のため国際部を新設し、グローバルでの販売管理を一元化します。また、高純度有機酸などの新規開発品の拡販を進めます。電子材料事業では、半導体市場の成長に対応するため、鹿島・京都事業所の新設備をフル稼働させ、生産能力を増強します。さらに、サプライチェーンリスクへの対応として原材料調達の分散化も進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「社業の繁栄によって従業員の豊かさを築く」という経営信条のもと、OJTや階層別研修、選択制研修などを通じて人材育成を行っています。また、多様な経験を持つ人材の中途採用や、女性活躍推進、男性育児休業取得の促進など、ダイバーシティ&インクルージョンを推進し、従業員が安心して長く働ける環境整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.9歳 12.3年 7,253,694円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.3%
男性育児休業取得率 70.0%
男女賃金差異(全労働者) 77.6%
男女賃金差異(正規雇用) 77.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 71.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用者の定着率(92.9%)、平均有給休暇取得率(73.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場動向の影響


ライフサイエンス事業は気候変動による需要変動や競合品との価格競争の影響を受ける可能性があります。また、電子材料事業は半導体業界の景気変動(シリコンサイクル)の影響を受けやすく、特定の会計期間の業績に変動をもたらす可能性があります。

(2) 技術革新の影響


電子材料事業の主要顧客である半導体業界は技術革新が激しく、新規技術の開発や応用により市場環境が大きく変化する可能性があります。同社は常に最先端の技術動向を収集し、対応する製品開発を行っていますが、市場変化への対応遅れはリスクとなります。

(3) 為替変動の影響


海外売上高比率が高く、原材料の輸入も行っているため、為替相場の変動が業績に影響を与える可能性があります。これに対し、外貨建取引のバランス調整や為替予約の活用などによりリスク軽減を図っていますが、完全に回避することは困難です。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。