コタ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

コタ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する、美容室向け頭髪用化粧品メーカー。美容室専売品に特化し、「コタ アイ ケア」等の高品質なシャンプーやトリートメントを製造・販売しています。2025年3月期は、整髪料の新製品が好調で27期連続の増収を達成しましたが、人件費等の増加により経常利益は減益となりました。


※本記事は、コタ株式会社 の有価証券報告書(第46期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. コタってどんな会社?

美容室向けの頭髪用化粧品等を製造・販売し、独自の店販戦略とコンサルティングで美容室経営を支援する企業です。

(1) 会社概要

同社は1979年に京都府で設立され、業務用頭髪化粧品の製造・販売を開始しました。2002年に大阪証券取引所市場第二部に上場し、2014年には東京証券取引所市場第一部へ指定替えを行いました。独自の「旬報店システム」を展開し、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しています。

2025年3月31日現在の従業員数は単体で390名です。筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は同社関連会社の英和商事、第3位は代表取締役社長の小田博英氏です。英和商事は同社の役員が代表を務める法人です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.09%
英和商事 6.33%
小田 博英 3.32%

(2) 経営陣

同社の役員は男性10名、女性4名の計14名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役社長は小田博英氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
小田 博英 代表取締役社長 1984年サクラクレパス退社後、同社入社。総務部長、営業本部長、管理部長等を歴任し、2004年より現職。
廣瀬 俊二 常務取締役 1987年同社入社。営業第二部長、経理部長等を歴任し、2019年より現職。
平田 律雄 常務取締役総務部長 1984年同社入社。CS部長を経て、2012年取締役総務部長に就任。2018年より現職。
河村 省吾 取締役ロジスティクス部長 1994年同社入社。生産部長を経て、2023年より現職。
吉田 茂治 取締役営業第二部長 1994年同社入社。2018年営業第二部長に就任し、2022年より現職。
西村 充弘 取締役広報・IR部長 1995年同社入社。2018年広報・IR部長に就任し、2022年より現職。
沖村 英明 取締役教育研修部長 1997年同社入社。2018年教育研修部長に就任し、2022年より現職。


社外取締役は、原正和(弁護士法人あすなろ代表社員弁護士)、山中智香(ウィズ・グロー代表)、本城蓮華(BAR KAMALA代表)、大沢祐子(Aurora Elementum代表)です。

2. 事業内容

同社グループは、「美容室向け頭髪用化粧品等の製造・販売」および「その他」事業を展開しています。

(1) 美容室向け頭髪用化粧品(トイレタリー・整髪料等)

美容室向けに特化した頭髪用化粧品及び医薬部外品を製造・販売しています。主力製品は、シャンプー・トリートメント等の「トイレタリー」、整髪料、カラー剤、育毛剤、パーマ剤です。これらは「美容室専売品」として、美容師のカウンセリングを通じて対面販売されることを前提としています。

収益は、代理店を経由する「代理店ルート」および美容室へ直接販売する「直販ルート」を通じて、製品の対価として得ています。運営は主にコタが担当しており、製造から販売までを一貫して行っています。

(2) 独自のビジネスモデル(店販戦略・旬報店システム)

同社は製品販売だけでなく、美容室の経営改善も支援しています。「トイレタリーの販売を中心とした店販戦略」では、美容師によるカウンセリング販売を推進し、客単価向上を支援します。また、「旬報店システム」を通じて美容室の営業データを分析し、経営アドバイスを行うコンサルティング・セールスを展開しています。

これらのコンサルティング・サービスは、同社製品を全て使用することを前提に無償で提供されており、製品売上の拡大につなげる収益モデルです。運営はコタが行っており、他社にはない独自の営業スタイルとして差別化を図っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、2025年3月期には過去最高を更新して27期連続の増収となりました。一方で、利益面では2023年3月期をピークに減少傾向にあります。特に原材料価格の高騰や人件費の増加などが影響し、利益率は低下していますが、依然として高い水準を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 73.2億円 86.9億円 88.0億円 91.4億円 93.8億円
経常利益 16.6億円 21.8億円 21.2億円 19.5億円 18.3億円
利益率(%) 22.6% 25.1% 24.0% 21.4% 19.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 11.7億円 13.9億円 15.6億円 13.5億円 13.0億円

(2) 損益計算書

売上高は増加しましたが、売上原価および販売費・一般管理費の増加により営業利益は減少しました。売上総利益率は微増しましたが、営業利益率は低下しています。これは将来の成長に向けた人的資本への投資や、原材料価格の高止まりなどが要因となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 91.4億円 93.8億円
売上総利益 63.8億円 65.2億円
売上総利益率(%) 69.8% 69.6%
営業利益 19.2億円 18.3億円
営業利益率(%) 21.0% 19.5%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が13.1億円(構成比28%)、賞与引当金繰入額が4.8億円(同10%)を占めています。売上原価については、材料費が19.3億円(構成比63%)、労務費が5.1億円(同17%)となっています。

(3) セグメント収益

同社は単一セグメントですが、主要品目別の売上高を開示しています。主力であるトイレタリーは減少しましたが、新製品の投入があった整髪料が大きく伸長しました。カラー剤も増加しましたが、育毛剤やその他は微減または横ばいとなりました。全体としては整髪料の成長が寄与し増収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
トイレタリー 71.2億円 68.5億円
整髪料 16.6億円 22.0億円
カラー剤 2.6億円 2.9億円
育毛剤 4.5億円 4.5億円
パーマ剤 1.0億円 1.0億円
その他 0.9億円 0.8億円
連結(合計) 91.4億円 93.8億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

コタは、美容室向け頭髪化粧品・医薬部外品の製造販売事業を展開しています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金支払いや在庫増加により減少しましたが、利益創出により資金を得ています。投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の預け入れと払い戻しが相殺されたことで、前期より使用額が減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得や配当金の支払いにより、前期よりも使用額が増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 21.7億円 10.0億円
投資CF -12.1億円 -3.9億円
財務CF -4.9億円 -11.4億円

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社は「美容業界の近代化」を創業精神として掲げています。これは美容室経営の近代化を通じて、美容室に関わるすべての人々の幸せを追求し、会社の永続を目指すものです。また、「世の中の美容室を一軒でも多く近代経営に導く」「世の中の女性を一人でも多く髪から美しくする」という2つのミッションを掲げ、事業を展開しています。

(2) 企業文化

同社は「共有すること」を大切にしており、ステークホルダーと「コタビジョン」を共有することで強い会社になれると考えています。「いい会社」を目指し続けることを基本理念とし、目先の損得ではなく善悪による判断基準で行動することを重視しています。創業理念である「美を愛する心 文化を愛する心 平和を愛する心」も深く刻まれています。

(3) 経営計画・目標

同社は会社の着実な成長と永続の観点から、以下の2つの経営指標に目標値を定めており、これらを継続的かつ安定的に上回ることを目指しています。
* 売上高経常利益率:15%以上
* ROE:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策

独自のビジネスモデルである「トイレタリーの販売を中心とした店販戦略」と「旬報店システムを軸としたコンサルティング・セールス」を推進し、美容室の業績向上を支援することで成長を目指します。また、人的資本の充実、IR活動の推進、非正規販売対策の徹底に取り組むほか、ブランド価値を高める製品開発や研究開発体制の強化にも注力します。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「コタビジョン」を共有できる人材の育成と確保を重視しています。教育専門部署を設置し、階層別研修や社内IR説明会を通じてビジョンの浸透を図っています。また、多様な人材が活躍できる環境整備として、性別や年齢にとらわれない登用や、健康管理、安全衛生への取り組みを推進しています。これらにより生産性向上と企業の永続的な成長を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 34.7歳 10.4年 5,566,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 57.1%
男女賃金差異(全労働者) 69.2%
男女賃金差異(正規雇用) 69.5%
男女賃金差異(非正規) 96.8%


※同社は公表義務の対象ではないため、有報には女性管理職比率の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、男性平均勤続年数(12.3年)、女性平均勤続年数(7.5年)、離職率(6.5%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) ビジネスモデルの徹底

同社は独自のビジネスモデルである「店販戦略」と「コンサルティング・セールス」を展開していますが、何らかの要因でこれらを徹底・展開できない場合、美容室や代理店の業績低下を招き、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 安心・安全、高品質な製品づくり

製品の開発技術力の低下、法規制の変更、原材料の調達難、品質の低下などが生じた場合、メーカーとしての供給体制に支障をきたし、業績に影響を与える可能性があります。特に高品質な製品づくりは競争力の源泉であるため、重要なリスクと認識されています。

(3) 人的資本の充実

採用環境の変化により必要な人材を確保できない場合や、「コタビジョン」の共有が図れず人材育成が進まない場合、将来の経営を担う人材不足に陥り、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。コンプライアンス意識の低下もリスク要因として挙げられています。

(4) 投資家との対話

投資家とのコミュニケーション不足により誤解が生じたり、「コタビジョン」の共有が図れなかったりした場合、同社に対する信用の低下を招き、業績や企業価値に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。