JCU 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

JCU 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する表面処理薬品および装置の大手メーカーです。自動車やエレクトロニクス産業向けに事業を展開しており、直近の決算では売上高、利益ともに増加し、増収増益を達成しました。半導体関連市場の回復や需要拡大を背景に、成長分野への投資を加速しています。


※本記事は、株式会社JCU の有価証券報告書(第65期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. JCUってどんな会社?


表面処理技術を核として、自動車や電子機器向けのめっき薬品および装置の製造販売をグローバルに展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1968年に荏原ユージライトとして設立され、2003年のMBOを経て独立しました。2005年に東証二部へ上場し、2012年に現社名へ変更しています。2016年にはメキシコに関連会社を設立するなど海外展開を進め、2022年の市場区分見直しによりプライム市場へ移行しました。

同グループの従業員数は連結550名、単体242名です。大株主構成は、筆頭株主が資産管理を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第2位が外国法人のSTATE STREET BANK AND TRUST COMPANY、第3位が株式会社日本カストディ銀行(信託口)となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 13.61%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001(常任代理人 株式会社みずほ銀行決済営業部) 4.09%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 3.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役会長兼CEOは木村昌志氏、代表取締役社長兼COOは大森晃久氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
木村 昌志 取締役会長(代表取締役)最高経営責任者(CEO) 荏原電産入社後、同社事業部長を経てJCUに入社。経営戦略室長、管理本部長などを歴任し、2021年より社長兼CEO。2024年6月より現職。
大森 晃久 取締役社長(代表取締役)最高執行責任者(COO) 1990年入社。経営戦略室長、海外子会社社長、総合研究所長などを経て、2024年6月より現職。
新 隆徳 常務取締役常務執行役員JCU(深圳)貿易有限公司董事長兼総経理 2006年入社。管理本部経理部長、管理本部長、薬品事業本部副本部長、営業本部長などを歴任。2022年4月より現職。
池側 浩文 常務取締役常務執行役員管理本部長 富士機工電子代表取締役社長などを経て2013年入社。台湾子会社総経理などを務め、2020年6月より現職。
井上 洋二 取締役常務執行役員経営戦略室長 1997年入社。海外業務部長、海外市場開発部長などを経て、2021年6月より現職。タイ、ベトナム等の子会社代表も兼任。
荒明 文彦 取締役常務執行役員営業本部長 1989年入社。上海子会社総経理、名古屋支店長、生産本部長などを経て、2022年4月より現職。韓国子会社代表理事も兼任。


社外取締役は、山本眞弓(弁護士)、板垣昌幸(東京理科大学教授・ニューロング精密工業社長)、二瓶晴郷(元みずほ銀行常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「薬品事業」および「装置事業」を展開しています。

(1) 薬品事業


プリント配線板、電子部品、半導体、自動車部品、住宅建材用などの表面処理薬品(めっき薬品)を製造・販売しています。主な顧客は、エレクトロニクスメーカーや自動車部品メーカー等です。

収益は、顧客への薬品販売代金によって構成されています。運営は、同社および、JCU(THAILAND) CO., LTD.、台湾JCU股份有限公司、JCU KOREA CORPORATIONなどの海外子会社が行っています。

(2) 装置事業


プリント配線板用や自動車部品用の全自動表面処理装置、プラズマ技術を利用した洗浄装置等の設計・製造・販売を行っています。また、太陽光発電による売電や液管理装置の取り扱いも含まれます。

収益は、装置の販売および据付工事に対する代金によって構成されています。運営は、同社およびJCU(上海)貿易有限公司、JCU(THAILAND) CO., LTD.などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は概ね右肩上がりで推移しており、特に当期は過去最高の売上高を記録しています。利益面でも、経常利益率が30%を超える高い水準を維持しており、高い収益性を確保しています。当期は増収増益となり、親会社株主に帰属する当期純利益も増加しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 212億円 243億円 271億円 249億円 284億円
経常利益 69億円 92億円 94億円 82億円 109億円
利益率(%) 32.7% 38.1% 34.5% 33.1% 38.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 48億円 64億円 59億円 55億円 75億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も増加しています。売上総利益率は60%を超えており、製品競争力の高さが伺えます。営業利益率は30%台後半と非常に高く、効率的な経営が行われています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 249億円 284億円
売上総利益 152億円 186億円
売上総利益率(%) 61.1% 65.6%
営業利益 80億円 105億円
営業利益率(%) 32.3% 37.1%


販売費及び一般管理費のうち、その他が42億円(構成比51%)、給料及び手当が25億円(同30%)を占めています。

(3) セグメント収益


両セグメントともに増収増益となりました。薬品事業は電子分野での在庫調整一巡や半導体市場の回復により売上が増加しました。装置事業も受注案件の進捗により大幅な増収増益となりましたが、利益の大部分は薬品事業が稼ぎ出しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
薬品事業 217億円 242億円 84億円 107億円 44.2%
装置事業 32億円 42億円 5億円 7億円 17.6%
調整額 - - -9億円 -9億円 -
連結(合計) 249億円 284億円 80億円 105億円 37.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は株主価値向上のため、安定的な増配を維持し、機動的な自己株式の取得を検討することで、総還元性向50%を目安としています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権及び契約資産の増減額が減少したこと等により、前年同期と比べ収入が増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出が増加したこと等により、前年同期と比べ支出が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出が増加したこと等により、前年同期と比べ支出が増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 60億円 84億円
投資CF -8億円 -52億円
財務CF -31億円 -37億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「表面処理技術から未来を創造する」を企業理念として掲げています。装飾・防錆めっき技術から発展した様々な表面処理技術の提供により産業の成長を支え、長年培った知見と研究・開発力で新たな技術を追究し、世界中の人々の豊かな生活に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


「世界中のお客様に必要とされる企業」を目指し、急成長する市場や不透明な経営環境に対応するため、独自の強みを活かして社会価値と経済価値を追求しています。コンプライアンスを中心としたガバナンス強化や、会社と従業員が共に成長できる経営の実現を重視しています。

(3) 経営計画・目標


「2035年に目指す姿」を「独自の強みを最大限に活かし、環境や社会に貢献することで、社会とともに成長し続けるグローバル企業」と定め、中期経営計画「JCU VISION 2035 -1st stage-」(2025年3月期~2027年3月期)を推進しています。

(4) 成長戦略と重点施策


研究開発型企業として、成長著しい「半導体パッケージ基板」や「半導体アドバンスドパッケージ」領域へ積極的に投資を行い、熊本事業所の新設等で研究開発を加速させます。また、DX推進による効率化や、既存市場における収益性強化、サステナビリティ経営の推進にも取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


中期経営計画において「人的資本、知財・無形資産の活用」を基本方針の一つに掲げています。外部環境や経営戦略に沿った人材獲得・育成を推進し、会社と従業員が共に持続的に成長できる経営を目指しています。また、労働環境や働き方の最適化を図ることで、企業としての質を高める方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.8歳 16.3年 8,152,238円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.3%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 78.0%
男女賃金差異(正規雇用) 82.9%
男女賃金差異(非正規雇用) -


※パート・有期労働者の男女の賃金の差異については、集計対象となる男性のパート・有期労働者がいないため、「-」としております。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、グループ全体の管理職に占める女性の割合(20.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 需要先業界の動向


売上の大部分は自動車業界とエレクトロニクス業界向けであり、これらの市場動向や生産量の推移に業績が大きく左右されます。特にスマートフォンの生産量や自動車のEV化に伴う変化などが重要な影響を及ぼします。

(2) 材料価格の変動


薬品事業の主要製品には多岐にわたる原材料や貴金属が使用されており、これらの市況価格が大きく変動し、コスト削減や製品価格への転嫁ができない場合、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 為替レートの変動


海外での事業展開が進んでおり、外貨建て決済や海外子会社の財務諸表換算において、予想を超える大幅な為替変動があった場合、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 海外での事業


東・東南アジアや北米地域での生産・販売活動において、予期しない法規制の変更、政治・経済情勢の悪化、テロ・戦争、自然災害などが事業活動に支障をきたし、業績に影響を与えるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。