※本記事は、株式会社JCUの有価証券報告書(第66期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. JCUってどんな会社?
表面処理薬品と装置の一体的な提供により、エレクトロニクスや自動車産業を支えるグローバル企業です。
■(1) 会社概要
1968年に荏原ユージライトとして設立され、表面処理薬品の製造・販売を開始しました。2005年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、2007年には市場第一部へ指定されました。2010年に荏原電産よりプリント回路薬品事業等を譲受し、2012年に現在のJCUへと社名を変更しています。
同社グループは、連結従業員数567名、単体では250名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行であり、第2位も日本カストディ銀行、第3位には資本提携等のある事業会社の日本パーカライジングが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.53% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.47% |
| 日本パーカライジング | 3.68% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO)は木村昌志氏が務めています。また、取締役9名のうち社外取締役が3名おり、社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 木村昌志 | 取締役会長(代表取締役)最高経営責任者(CEO) | 1980年荏原電産入社。同社プリント回路薬品事業部長を経て2010年同社入社。2018年代表取締役社長などを歴任し、2024年より現職。 |
| 大森晃久 | 取締役社長(代表取締役)最高執行責任者(COO) | 1990年同社入社。大阪支店長、経営戦略室長等を経て2014年取締役常務執行役員に就任。総合研究所長等を歴任し、2024年より現職。 |
| 新隆徳 | 常務取締役常務執行役員熊本事業所長 | 2006年同社入社。管理本部経理部長、取締役常務執行役員管理本部長、営業本部長等を経て、2026年より現職。 |
| 池側浩文 | 常務取締役常務執行役員管理本部長 | 1984年富士機工電子入社。同社代表取締役社長等を経て2013年同社入社。大阪支店長、台湾JCU総経理等を歴任し、2020年より現職。 |
| 井上洋二 | 取締役常務執行役員経営戦略室長 | 1997年同社入社。海外業務部長、海外市場開発部長等を経て、2019年執行役員経営戦略室長に就任。2021年より現職。 |
| 荒明文彦 | 取締役常務執行役員生産本部長 | 1989年同社入社。JCU(上海)貿易総経理、名古屋支店長等を経て、2019年執行役員生産本部長に就任。2026年より現職。 |
社外取締役は、山本眞弓(アルク法律事務所代表)、板垣昌幸(東京理科大学創域理工学部教授)、二瓶晴郷(元みずほ総合研究所取締役副社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「薬品事業」および「装置事業」を展開しています。
■薬品事業
同事業では、スマートフォンやサーバーなどの高機能電子デバイス向けプリント配線板・半導体パッケージ基板用のめっき薬品や、自動車部品・住宅建材向けの装飾・防錆めっき薬品の開発・製造・販売を行っています。また、関連資材の仕入販売も手がけています。
収益は、顧客となる電子機器メーカーや自動車部品メーカー等への表面処理薬品および関連資材の販売によって得ています。運営は、同社を中心に、JCU(上海)貿易や台湾JCUなど各地域の子会社が主体となってグローバルに展開しています。
■装置事業
同事業では、プリント配線板や自動車部品のめっき工程で使用される自動表面処理装置のほか、プラズマ技術を利用したエッチング・洗浄装置などの設計・製造・販売を行っています。また、太陽光発電による売電事業なども展開しています。
収益は、顧客企業に対する機械装置の製作・据付工事の請負や保守メンテナンス部品の販売などから得ています。運営は、同社をはじめ、海外の販売・製造拠点である子会社が連携して、薬品の性能を最大限に引き出す装置を提供しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の連結業績を見ると、売上高は240億円台から290億円台へと拡大傾向にあります。電子分野における半導体パッケージ基板向け需要の増加などが寄与し、経常利益も120億円を超える水準に到達しました。利益率は安定して30%台後半から40%台を維持しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 243億円 | 271億円 | 249億円 | 284億円 | 297億円 |
| 経常利益 | 92億円 | 94億円 | 82億円 | 109億円 | 124億円 |
| 利益率(%) | 38.1% | 34.5% | 33.1% | 38.5% | 41.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 64億円 | 60億円 | 55億円 | 75億円 | 91億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益が186億円から206億円へと拡大しました。売上総利益率は約70%と高い水準を維持しており、販売費及び一般管理費を吸収して、営業利益も105億円から122億円へと増加し、高い収益性を確保しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 284億円 | 297億円 |
| 売上総利益 | 186億円 | 206億円 |
| 売上総利益率(%) | 65.6% | 69.5% |
| 営業利益 | 105億円 | 122億円 |
| 営業利益率(%) | 37.1% | 41.0% |
販売費及び一般管理費(85億円)のうち、給料及び手当が26億円(構成比31%)、研究開発費が12億円(同15%)を占めています。
■(3) セグメント収益
薬品事業は、中国や台湾における高機能電子デバイス向け需要の好調により売上・利益ともに増加しました。一方、装置事業は受注案件の進行はあったものの、売上高が減少し減益となっています。全体の収益は薬品事業が大きく牽引しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 薬品事業 | 242億円 | 269億円 | 107億円 | 127億円 | 47.2% |
| 装置事業 | 42億円 | 27億円 | 7億円 | 4億円 | 15.0% |
| 連結(合計) | 284億円 | 297億円 | 105億円 | 122億円 | 41.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFおよび財務CFはマイナスとなっており、営業活動で生み出した資金を設備投資や株主還元、借入金の返済に充当している健全な財務状態を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 84億円 | 90億円 |
| 投資CF | -52億円 | -84億円 |
| 財務CF | -37億円 | -36億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も87.1%といずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「表面処理技術から未来を創造する」を企業理念に掲げています。創業以来培ってきた装飾・防錆めっき技術を発展させ、自動車やエレクトロニクス産業の成長を支えるとともに、新たな技術の追究を通じて世界中の人々の豊かな生活に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
2035年に目指す姿として「独自の強みを最大限に活かし、環境や社会に貢献することで、社会とともに成長し続けるグローバル企業」を掲げています。不透明な外部環境に対応しつつ、技術とサービス体制を強化し、社会価値と経済価値の追求による企業価値向上を重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「JCU VISION 2035 -1st stage-」(2025年3月期~2027年3月期)を策定しています。また、気候変動対策として、2031年3月期に国内拠点におけるCO2実質排出量を2014年3月期比で46%削減し、主要工場である生産本部では実質ゼロにするという目標を掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「成長分野への積極的な投資」「経営基盤の強化」「DX推進によるデータの利活用」「既存市場における収益性強化」「サステナビリティ経営の推進」「人的資本、知財・無形資産の活用」の6つを基本方針としています。特に半導体パッケージ関連の重点・次世代領域に対し積極的な投資を進めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「環境、戦略に合わせた人材獲得・育成」「労働環境、働き方の最適化」を戦略の軸とし、高い開発力・サポート力・グローバル対応力・経営視点を持つ人材を求めています。階層別研修やオンライン語学研修、海外赴任体験制度などを通じて、多様性を尊重した人材育成を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.7歳 | 16.6年 | 8,212,859円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.5% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 85.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 89.1% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 246.1% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 需要先業界の動向による影響
同社の売上の多くは自動車業界とエレクトロニクス業界(特にプリント基板業界)に依存しています。自動車のデザイン変更や電気自動車化、スマートフォンの生産量推移、両業界の設備投資の動向などが、同社の薬品および装置の販売に大きな影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 材料価格の変動
薬品事業の主要製品には多岐にわたる薬品類や貴金属などの原材料が使用されています。市況の大きな変動によりこれらの原材料価格が急騰し、製造コストの削減や製品価格への転嫁が十分にできなかった場合、同社グループの業績に悪影響を与えるリスクがあります。
■(3) 海外事業および為替レートの変動
同社はアジアや北米などで幅広く事業を展開しており、現地の法律・規制変更、政治経済の悪化などのリスクが潜在しています。また、外貨建て決済や海外子会社の財務諸表の円換算において、予想を超える為替レートの変動があった場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。



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