※本記事は、株式会社アテクトの有価証券報告書(第57期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アテクトってどんな会社?
半導体資材や衛生検査器材、超硬金属などの粉末射出成形製品を製造・販売するモノづくり企業です。
■(1) 会社概要
1969年に大日化成工業として設立し、合成樹脂製品の製造販売を開始しました。2001年にフルステリを吸収合併し、半導体保護資材や衛生検査器材の製造販売に参入しました。2003年に現在のアテクトへ商号変更し、2006年にジャスダック証券取引所へ上場、現在はスタンダード市場に所属しています。
従業員数は連結で125名、単体で62名体制です。筆頭株主は産業用プラスチック製品の製造販売を行う三甲で、第2位は個人の佐藤弘之氏、第3位は個人の村岡克彦氏となっています。三甲はアテクトのその他の関係会社として、資本関係を有しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三甲 | 33.24% |
| 佐藤 弘之 | 3.08% |
| 村岡 克彦 | 2.53% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長執行役員は大西誠氏が務めています。社外取締役比率は12.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大西 誠 | 代表取締役社長執行役員 | 1985年東プラ入社。2014年同社取締役、2019年竜舞プラスチック代表取締役社長を経て、2022年より現職。 |
| 杉山 隆樹 | 取締役上席執行役員事業本部営業担当 | 1988年三甲入社。同社理事・各支店次長や営業所長を歴任。2022年アテクト取締役を経て、2025年より現職。 |
| 岩田 貴雄 | 取締役上席執行役員事業本部製造担当 | 1996年三甲入社。2016年同社商品設計部課長。2023年アテクト上席執行役員を経て、2025年より現職。 |
| 若林 正憲 | 取締役執行役員 | 1981年太陽神戸銀行入行。陽栄ホールディング経理部長や天昇電気工業常勤監査役を経て、2023年より現職。 |
社外取締役は、福井健太(公認会計士事務所開設)です。
2. 事業内容
同社グループは、「半導体資材事業」「衛生検査器材事業」および「PIM事業」の3つの報告セグメントを展開しています。
■半導体資材事業
液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ、ICカード用LSIといった情報電子機器部品の実装に用いられるスペーサーテープ等の製造・販売を行っています。製品は原則として電子部品メーカーへ直接販売しています。
顧客である電子部品メーカーへのテープ部材保護資材の販売を通じて収益を得ています。運営は同社のほか、韓国市場ではアテクトコリアが製造販売の営業活動を担い、台湾市場では安泰科科技股份有限会社が展開しています。
■衛生検査器材事業
食品や医薬品、化粧品等の製造過程において、微生物汚染を確認するための試薬や培地類、ディスポシャーレなどの容器類を製造・販売しています。食品メーカーや製薬会社、病院等が主な顧客です。
顧客企業に対する衛生検査用品や器材の直接販売によって収益を獲得しています。運営は主に同社が主体となって行っており、産業構造の変化に対応したきめ細やかな営業と柔軟な生産体制を構築しています。
■PIM事業
金属やセラミックスの粉末と結着剤を混練し、射出成形・脱脂・焼結を経て成形体を作るPIM(粉末射出成形)技術を用いた製品の製造・販売を行っています。自動車用ターボ部品や高性能な放熱部品などが主力です。
加工が難しい超硬金属や超硬セラミックスの複雑形状部品の量産加工を強みとし、自動車メーカーや産業機器メーカーへの高機能部品の販売から収益を得ています。運営は主に同社が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、売上高は一時的な減少があったものの概ね30億円から34億円台で安定して推移しています。経常利益は資材価格の高騰などにより一時落ち込みましたが、当期は主力事業の受注増によって大幅な増益を達成しました。最終利益も黒字に転換しており、着実な回復傾向が見られます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 31億円 | 30億円 | 32億円 | 32億円 | 34億円 |
| 経常利益 | 3.5億円 | 1.9億円 | 0.8億円 | 0.6億円 | 2.1億円 |
| 利益率(%) | 11.3% | 6.5% | 2.5% | 2.0% | 6.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.7億円 | 1.3億円 | -2.3億円 | -0.1億円 | 1.3億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益が増加しています。また、販売費及び一般管理費が減少したことで、営業利益が大幅な増益となりました。原価高騰の圧力を受けつつも、販売単価の見直しやコスト管理が奏功しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 32億円 | 34億円 |
| 売上総利益 | 13億円 | 13億円 |
| 売上総利益率(%) | 40.2% | 39.7% |
| 営業利益 | 0.8億円 | 2.0億円 |
| 営業利益率(%) | 2.5% | 6.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3.3億円(構成比30%)、荷造及び発送費が1.9億円(同16%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上高を見ると、全事業で前期を上回る増収となっています。特に衛生検査器材事業はインバウンド需要の回復や新規開拓により過去最高を更新しました。PIM事業も自動車向け高機能部品の受注が堅調に推移し、大幅な増収を記録しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 半導体資材事業 | 11億円 | 12億円 |
| 衛生検査器材事業 | 18億円 | 19億円 |
| PIM事業 | 2.1億円 | 2.6億円 |
| その他の事業 | 0.1億円 | - |
| 連結(合計) | 32億円 | 34億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1.3億円 | 2.7億円 |
| 投資CF | -1.2億円 | -1.4億円 |
| 財務CF | -2.3億円 | -1.2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は38.9%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「社会にとっての価値を生みだし、働く者の幸福を追求することが我々の使命である」という経営理念を掲げています。また、「ヒト・モノ・時間という限りある資源を無駄なく使わなければならない」「社会の要求は常に変化するので我々も変化し、発展向上しなければならない」という使命のもと、社会に貢献する企業を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、人材の幸福、成長、変化を重要課題と認識し、多様な個人が活躍できる環境を重視する企業文化を持っています。中長期的な企業価値向上のためにはイノベーションを生み出すことが不可欠であり、その原動力として「自立的でチャレンジ精神のある人材」の育成を核とした、活力ある組織の構築を推進しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2026年5月より新たな経営戦略の下、5年後の「ありたい姿」を実現するための中期経営計画「VISION30S」を推進しています。持続可能な成長と経営体質の強化を図り、2030年度に向けて以下の数値目標を掲げています。
・連結売上高:50億円以上
・連結営業利益:5億円
・連結営業利益率:10%
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、経営環境の不確実性に対応するため、原材料価格の戦略的な調達活動を通じた利益圧迫の最小化を図ります。半導体資材事業では市場動向を注視し、衛生検査器材事業では外食・中食需要に対応した柔軟な生産体制を構築します。PIM事業においては、生産効率の向上と品質安定化に向けた量産技術を確立し、安定供給体制を強化します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、全社員が自分事として経営目標に向かって活動できる組織文化の醸成を目指し、3つの基本方針を定めています。多様性を備えた人材ポートフォリオの構築、職能開発と階層別教育による人材育成の体系化、そして実質残業ゼロの実現を含めた働き方改革とワーク・ライフ・バランスの推進により、人材の定着と活性化を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.3歳 | 6.0年 | 4,922,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 15.3% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 65.6% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 37.7% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正社員(管理職者を含む)の残業時間(13.4時間)、離職率(3.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 半導体資材事業における景気・販売先動向
日本国内やアジア向けの販売が多いため、液晶テレビやスマートフォンなどの生産・消費動向が需要に直結します。特定の販売先への依存度が高く、顧客の事業戦略見直しによる競合への生産委託や自社生産への切り替えにより受注が減少するリスクがあります。
■(2) 衛生検査器材事業における法的規制・品質管理
食品や医薬品向けの衛生検査用品を扱うため、食品衛生法関連法規に則った厳格な品質管理が求められます。万が一、重大な品質問題が発生した場合、製品の需要減少や売上高の低下、コストの増加を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) PIM事業における需要変動と生産・物流拠点の集中
販売先の事業戦略転換や業績不振による生産縮小の影響を受ける可能性があります。また、衛生検査器材およびPIM事業の生産・物流拠点が滋賀県東近江市の本社に集中しており、天災等の不測の事態により生産や物流機能が停止した場合のリスクが懸念されます。



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