アテクト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アテクト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する、半導体資材、衛生検査器材、PIM(粉末射出成形)製品を製造販売する複合素材メーカーです。当連結会計年度の業績は、売上高32億円(前期比0.8%増)、経常利益0.6億円(前期比18.0%減)、最終損益は黒字転換し増収増益(最終益ベース)となりました。


※本記事は、株式会社アテクトの有価証券報告書(第56期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アテクトってどんな会社?


半導体保護資材と衛生検査器材を主軸に、PIM技術による金属・セラミックス加工も展開する複合素材メーカーです。

(1) 会社概要


1969年に大日化成工業として設立され、2001年の合併によりフルステリへ商号変更し、現在の主力である半導体保護資材および衛生検査器材の製造販売を開始しました。2003年に現社名のアテクトへ商号変更し、2006年にジャスダック証券取引所へ上場しました。2022年の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しています。

連結従業員数は122名(単体59名)です。筆頭株主は、プラスチック物流機器の製造販売を行う三甲で33.23%を保有しており、その他の関係会社に該当します。第2位と第3位は個人株主となっています。

氏名 持株比率
三甲 33.23%
佐藤 弘之 3.47%
東ヶ崎 尚美 2.08%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長執行役員は大西誠氏です。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
大 西   誠 代表取締役社長執行役員 東プラ入社、同社取締役事業部長、竜舞プラスチック代表取締役社長を経て、2022年より現職。
杉 山 隆 樹 取締役上席執行役員 三甲入社、同社理事大阪支店次長兼滋賀営業所所長などを経て、2025年より現職。
岩 田 貴 雄 取締役上席執行役員 三甲入社、同社商品設計部課長、同社上席執行役員を経て、2024年より現職。
若 林 正 憲 取締役執行役員 太陽神戸銀行(現三井住友銀行)入行、陽栄ホールディング経理部長などを経て、2023年より現職。


社外取締役は、福井健太(公認会計士・税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「半導体資材事業」「衛生検査器材事業」「PIM事業」および「その他の事業」を展開しています。

(1) 半導体資材事業


フラットパネルディスプレイやICカード用LSIの実装に用いられるTABテープやCOFテープの保護資材である「スペーサーテープ」の製造および販売を行っています。主な顧客は電子部品メーカーです。

収益は、電子部品メーカーへの製品販売による対価を得ています。運営は主にアテクトが行い、連結子会社のアテクトコリアおよびアテクトエンジニアリングも事業に関与しています。

(2) 衛生検査器材事業


食品、医薬品、化粧品等の製造時に微生物汚染を確認するための試薬や培地類、およびディスポシャーレ等の容器類を製造・販売しています。食品メーカー、製薬会社、臨床検査会社、病院等が主な顧客です。

収益は、顧客への製品および商品の販売による対価を得ています。運営は主にアテクトが行い、製造の一部をアテクトエンジニアリングに委託しています。

(3) PIM事業


PIM(粉末射出成形)技術を用い、加工が難しい超硬金属やセラミックスを複雑な形状に量産加工した製品を製造しています。自動車用ターボ部品や産業機器向け高機能部品などを提供しています。

収益は、自動車部品メーカーや産業機器メーカー等への製品販売による対価を得ています。運営は主にアテクトが行い、製造の一部をアテクトエンジニアリングが担っています。

(4) その他の事業


同社が保有する工場敷地内の空きスペースを活用した不動産賃貸業を行っています。なお、本事業における賃貸契約は2024年7月末をもって終了し、その後は社内で有効活用されています。

収益は、賃貸先からの賃貸料収入を得ていました。運営はアテクトが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は30億円前後で推移しており、直近では微増傾向にあります。利益面では、前期に赤字を計上しましたが、当期は黒字回復を果たしました。利益率は低い水準で推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 29億円 31億円 30億円 32億円 32億円
経常利益 1.9億円 3.5億円 1.9億円 0.8億円 0.6億円
利益率(%) 6.6% 11.3% 6.5% 2.5% 2.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.8億円 1.7億円 1.3億円 -2.4億円 0.4億円

(2) 損益計算書


売上高は微増しましたが、売上原価率の上昇により売上総利益は減少しました。一方で、販売費及び一般管理費の抑制により営業利益は増加し、営業利益率は改善しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 32億円 32億円
売上総利益 14億円 13億円
売上総利益率(%) 43.4% 40.2%
営業利益 0.6億円 0.8億円
営業利益率(%) 2.0% 2.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3.4億円(構成比28%)、荷造及び発送費が2.0億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


衛生検査器材事業が売上の過半を占め、利益の柱となっています。PIM事業は大幅な増収となりましたが、損失が拡大しています。半導体資材事業は減収ながらも黒字を維持しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
半導体資材事業 12億円 11億円 0.8億円 0.8億円 7.4%
衛生検査器材事業 18億円 18億円 0.8億円 1.3億円 7.3%
PIM事業 1.4億円 2.1億円 -1.0億円 -1.5億円 -68.0%
その他の事業 0.3億円 0.1億円 0.1億円 0.1億円 57.4%
調整額 - - - - -
連結(合計) 32億円 32億円 0.6億円 0.8億円 2.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ現金を借入金の返済や投資に充てている「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 4.6億円 1.3億円
投資CF -1.6億円 -1.2億円
財務CF -4.4億円 -2.3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「社会にとっての価値を生みだし、働く者の幸福を追求することが我々の使命である」という経営理念を掲げています。社会の変化に対応して自らも変化し、発展向上することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「ヒト・モノ・時間という限りある資源を無駄なく使わなければならない」という考え方を重視しています。また、「社会の要求は常に変化するので我々も変化し、発展向上しなければならない」という姿勢を持ち、環境変化への適応と効率的な資源活用を企業文化としています。

(3) 経営計画・目標


同社は、新中期経営計画『VISION25/30』を策定し、10年後の「ありたい姿」の実現を目指しています。2025年度の経営目標として以下の数値を掲げています。

* 連結売上高:40億円以上(目標50億円)
* 連結営業利益:5億円
* 連結営業利益率:10%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、現有戦力の活用による収益拡大と財務健全化を進めつつ、全事業・新分野へ4大新製品を投入する成長戦略を推進しています。また、成長事業への選択と集中による事業ポートフォリオの再編や、執行役員制導入による経営体制の刷新を行っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材の幸福・成長・変化を重要課題と認識し、各職位に期待する役割やスキルを定義して育成を行っています。また、多様な人材が活躍できる環境整備として、6S活動の徹底や独自システムによる業務効率化、ワークライフ・バランス支援制度の整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.3歳 5.2年 4,950,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.3%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 57.5%
男女賃金差異(正規雇用) 78.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 45.2%


※男性育児休業取得率については、同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 半導体資材事業の市場環境


同事業の製品需要は、液晶テレビやスマートフォン等の生産水準・消費動向の影響を強く受けます。日本および世界経済の景気動向により、同社の財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定の販売先への依存


半導体資材事業において、顧客数が少なく、売上高が国内外ともに特定の販売先に偏る傾向があります。顧客基盤の拡大余地が限定的であるため、主要顧客からの受注状況が悪化した場合、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 代替技術の台頭


半導体資材事業の主力製品であるスペーサーテープは、TABテープやCOFテープの製造工程で使用されていますが、技術革新によりこれらのテープを使用しない製造方法が確立された場合、同社製品の需要が減少し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 衛生検査器材事業の販売先動向


販売先の社内検査方法の見直し等により製品需要が減少する可能性があります。新規取引先の開拓や既存顧客への販売拡大が進まない場合、同社の財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。