※本記事は、シナネンホールディングス株式会社の有価証券報告書(第92期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. シナネンホールディングスってどんな会社?
同社グループは、エネルギーの卸売や小売を中心としつつ、住宅設備や非エネルギー事業も展開する企業です。
■(1) 会社概要
1927年に合資会社電興無煙炭商会として創立されました。1936年に品川燃料へ商号変更後、1963年に東証二部上場、1983年に東証一部銘柄に指定されています。2015年に持株会社体制へ移行し、シナネンホールディングスへ商号変更しました。2023年に総合建物メンテナンス事業を統合しシナネンアクシアへ商号変更しています。
従業員数は連結で1661名、単体で85名です。筆頭株主をはじめとする上位株主は、投資事業有限責任組合などのファンドが占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| UHPartners2投資事業有限責任組合 | 9.83% |
| エヌオーアイ投資事業有限責任組合 | 8.87% |
| UHPartners3 投資事業有限責任組合 | 7.53% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長執行役員は中込太郎氏が務めています。社外取締役比率は62.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中込太郎 | 代表取締役社長執行役員 | 1997年同社入社。インデス代表取締役社長、タカラビルメン代表取締役社長等を経て、2023年シナネンアクシア代表取締役社長。2024年同社代表取締役社長CEOに就任。2026年より現職。 |
| 中村哲也 | 取締役専務執行役員 | 1982年三菱銀行入行。三菱UFJモルガン・スタンレー証券常務取締役等を経て、2019年同社入社。監査部長、取締役CCOを歴任し、2026年より現職。 |
| 三橋美和 | 取締役 | 1996年同社入社。2019年シナネンモビリティPLUS代表取締役社長。2023年同社取締役CCOを経て2024年同社取締役に就任。2026年よりシナネンサイクル代表取締役社長等を現任。 |
社外取締役は、大橋弘幸(光通信アセットパートナーズ代表取締役)、宗像雄一郎(参天製薬社外監査役)、篠連(光和総合法律事務所パートナー弁護士)、三谷宏幸(オフィス三谷代表)、村岡元司(NTTデータ総合研究所執行役員シニアマネージングディレクター)です。
2. 事業内容
同社グループは、エネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業)、エネルギーソリューション事業(BtoB事業)、非エネルギー事業を展開しています。
■エネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業)
家庭向けおよび小売業者向けのLPガス等各種燃料の販売や、リフォーム・ガス器具販売等のエネルギー周辺事業を展開しています。また、都市ガスの供給事業やLPガスの保安及び配送事業、家庭向け電力販売事業も行っています。
一般消費者や小売業者からLPガス等の燃料代や器具販売代金を受け取ります。事業の運営は主にミライフ西日本、ミライフ、ミライフ東日本、日高都市ガス、シナネンひまわりサービスセンターなどの連結子会社が行っています。
■エネルギーソリューション事業(BtoB事業)
法人を対象とした石油製品・LPガスの販売、ガソリンスタンドの運営、石油製品等の配送を行っています。加えて、法人向け電力と家庭向け環境配慮型電力の販売、メガソーラー等による太陽光発電事業やシステム販売・メンテナンス、住宅設備機器販売も展開しています。
法人顧客から燃料代金や電力販売代金、太陽光システム等の販売・メンテナンス代金を受け取ります。主にシナネン、シナネン石油、シナジートランスポート、日本ソーラー電力、太陽光サポートセンターなどの連結子会社が事業を担っています。
■非エネルギー事業
ビル・商業施設並びに集合住宅の管理・清掃や斎場・病院の運営請負等の総合建物メンテナンス事業を展開しています。また、自転車等の輸入・卸・小売やシェアサイクル事業、コンピュータシステムのサービス事業、抗菌事業も手掛けています。
顧客から建物メンテナンス料や自転車販売代金、システム利用料等を受け取ります。運営はシナネンアクシア、シナネンサイクル、シナネンモビリティPLUS、ミノス、シナネンゼオミックなどの連結子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は2024年3月期まで増加傾向にありましたが、その後は事業ポートフォリオの変革等により減少しています。一方で経常利益率は直近で改善し、収益性の向上が見られます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2893億円 | 3423億円 | 3483億円 | 3171億円 | 2988億円 |
| 経常利益 | 33億円 | 12億円 | 1億円 | 45億円 | 54億円 |
| 利益率(%) | 1.1% | 0.4% | 0.0% | 1.4% | 1.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 10億円 | 25億円 | 10億円 | -12億円 | 20億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は減少したものの、不採算事業からの撤退やコスト削減効果により、売上総利益率は改善しました。営業利益率も上昇し、収益体質の強化が進んでいます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3171億円 | 2988億円 |
| 売上総利益 | 392億円 | 391億円 |
| 売上総利益率(%) | 12.4% | 13.1% |
| 営業利益 | 40億円 | 44億円 |
| 営業利益率(%) | 1.3% | 1.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が79億円(構成比23%)、運送費が47億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
エネルギー卸・小売周辺事業は不採算事業の撤退により増益となりました。エネルギーソリューション事業は電力販売の利幅縮小等により減収減益です。非エネルギー事業はメンテナンスやシェアサイクルが好調で増収増益となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| エネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業) | 753億円 | 712億円 | 10億円 | 13億円 | 1.9% |
| エネルギーソリューション事業(BtoB事業) | 2204億円 | 2045億円 | 21億円 | 16億円 | 0.8% |
| 非エネルギー事業 | 211億円 | 228億円 | 7億円 | 11億円 | 4.6% |
| その他・調整額 | 2億円 | 2億円 | 2億円 | 4億円 | - |
| 連結(合計) | 3171億円 | 2988億円 | 40億円 | 44億円 | 1.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益と資産売却等によって得た資金で借入の返済を進めている改善局面です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 105億円 | 66億円 |
| 投資CF | -28億円 | 2億円 |
| 財務CF | -76億円 | -18億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「世界に誇れる地元をツクる」というグループミッションを掲げ、ビジョンとして「Be the first Company to contact」を目指しています。エネルギーにとどまらず、暮らしや企業活動を支えるサービスを通じて地域の価値を高め、その未来を支えていくことを存在意義としています。
■(2) 企業文化
ミッション実現に向けた行動指針として「期待を超える」「誇りを磨く」「共創を楽しむ」の3つをバリューとして定めています。全社員一人ひとりが日々の経営や事業活動の拠り所として、どう考えどう動くかを意識し、自律的に行動する文化の定着を図っています。
■(3) 経営計画・目標
第三次中期経営計画において、資本効率の改善と稼ぐ力の強化を進めており、定量的な財務目標としてROE8%以上を掲げています。収益性と資本効率の両面から企業価値の向上に取り組み、持続的な成長と株主還元を目指しています。
・ROE:8%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
従来のエネルギー供給中心からストック型ビジネスへの転換を進めます。主力事業領域であるエネルギー・メンテナンス・モビリティの連携によるリテールサービス戦略を強化し、地域を面で捉えたサービス展開により継続的な顧客接点の拡大と安定的な収益基盤の構築を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「個を尊重し、強みを活かす」「人間力を育み、成長を支える」「地域課題に挑み、価値を創る」の3つを人財基本方針に掲げています。社員の自律的な成長と能力発揮を促し、相互に成長へ貢献し合うエンゲージメントの向上を通じて、人的資本の最大化を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.3歳 | 9.9年 | 7,571,218円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 15.6% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 57.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 58.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 24.4% |
また、同社は人的資本等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメント指数(3.3)、社員一人当たりの年間教育訓練時間(29.3時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 気温の変動によるリスク
主力事業であるエネルギー事業は気温の変動による影響を受けやすく、暖冬で灯油の消費量が減少した場合は業績に影響する可能性があります。対策として、夏場に需要が増す電力販売の拡大や軽油の出荷能力増強など、非季節性の需要開拓を進めています。
■(2) 石油・LPガス設備の保安等と環境汚染に関するリスク
設備の漏洩事故等による環境汚染や損害発生のリスクがあります。同社グループでは法定点検に加え、戸建て住宅向けの自主保安点検や日々漏洩点検を実施し、総合リスクマネジメントを通じて事故防止と影響の最小化に取り組んでいます。
■(3) 取引先の信用リスク
卸売販売における掛売り債権について、取引先の資金状況悪化による貸倒れ等のリスクがあります。コンピュータシステムによる与信管理の徹底、信用調査会社のデータベースを用いた与信枠の設定などにより、債権回収の早期化と信用リスクの低減を図っています。



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