ユシロ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ユシロ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ユシロは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、金属加工油剤関連事業およびクレンリネス関連事業を展開する企業です。直近の業績では、中国合弁会社の持分法適用関連会社化などの影響により売上高と営業利益が前期比で減収減益となった一方で、投資有価証券売却益等により最終的な純利益は増益を確保しています。


※本記事は、ユシロの有価証券報告書(第93期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ユシロってどんな会社?


金属加工油剤の国内トップシェアを誇り、世界各地域で自動車業界向け等に製品を展開する化学メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1944年にユシロ化学工業として設立され、金属加工油剤の生産・販売を開始しました。1985年に東京証券取引所市場第二部に上場し、翌1986年の米国をはじめアジアなどグローバルに拠点を拡大してきました。2023年に連結子会社を吸収合併し、2025年には現在のユシロへと商号を変更しています。

現在の体制は、グループ連結で862名、単体で362名の従業員を擁しています。大株主の構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)であり、第2位には日本生命保険が名を連ねています。また第3位にはユシロ取引先持株会が入っており、安定した株主基盤を構築しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.15%
日本生命保険(常任代理人 日本マスタートラスト信託銀行) 8.11%
ユシロ取引先持株会 7.56%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長社長執行役員は有坂昌規氏が務めており、社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
有坂昌規 代表取締役社長社長執行役員 1988年同社入社。中日本統括部部長、タイ現地法人社長、IL事業統括本部長などを歴任。常務取締役、専務取締役を経て、2022年1月より現職。
髙橋誠司 取締役常務執行役員(技術部門・生産部門担当) 1992年同社入社。米国現地法人への出向や技術部門担当役員研究本部長兼テクニカルセンター長などを経て、2025年6月より現職。
髙倉一利 取締役常務執行役員(営業部門担当) 1991年同社入社。米国現地法人への出向や営業統括部長、名古屋支店長などを歴任。営業本部長を経て、2025年6月より現職。
小林一重 取締役執行役員(南北アメリカ事業担当) 1986年同社入社。マレーシア、タイへの出向やインド現地法人社長、IL事業統括室長を経て、2026年4月より現職。
石川拓哉 取締役執行役員(コーポレート部門担当) 1987年同社入社。南北アメリカ統括責任者や米国現地法人の社長CEOを歴任。コーポレート統括本部長を経て、2025年6月より現職。
濵元伸二 取締役(監査等委員) 1983年同社入社。研究本部長や日本シー・ビー・ケミカル代表取締役社長などを歴任。エグゼクティブコーポレートアドバイザーを経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、中野雅文(元マツダ常務執行役員)、飯塚佳都子(シティユーワ法律事務所パートナー)、杉山敦子(公認会計士・税理士杉山昌明事務所副所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「南北アメリカ」「中国」「東南アジア/インド」の報告セグメントで事業を展開しています。

日本


主に日系自動車メーカーや自動車部品メーカーに対し、金属加工油剤およびクレンリネス関連(ビルメンテナンス)製品を製造・販売しています。個々の顧客ニーズに合致した仕様に調整した製品を提供するカスタマーインティマシー戦略を推進し、環境対応や作業環境改善に寄与する高付加価値製品を展開しています。

製品の販売やソリューションの提供により、顧客企業から製品代金を受け取る収益モデルです。当該地域の事業は、親会社であるユシロが主体となって生産から販売までの事業活動を運営しており、国内の各工場およびテクニカルセンターを通じて顧客へのサポートや製品の安定供給を行っています。

南北アメリカ


米国、ブラジル、メキシコにおいて、主に現地の自動車関連産業や航空機・医療機器分野向けに金属加工油剤を製造・販売しています。非自動車分野向けの需要も開拓しており、各拠点が生産と製品開発の両機能を有する強みを活かして、地域特性や顧客ニーズに即した独自の製品展開を進めています。

製品の販売を通じて顧客から代金を受け取る収益モデルです。運営は米国インディアナ州やバージニア州の子会社、およびブラジル、メキシコの子会社などが行っており、主力子会社であるユシロマニュファクチャリングアメリカInc.やクオリケムInc.が中核となって事業を展開しています。

中国


中国市場において、現地の自動車メーカー等に向けて金属加工油剤の製造および販売を行っています。顧客のEV(電気自動車)シフトやESG志向の高まりなど、急速に変化する現地市場の動向に合わせた製品の投入や販売活動に取り組んでおり、グローバルネットワークの一翼を担っています。

製品の販売による代金を収益源としています。従来は複数の現地合弁会社を連結子会社として運営していましたが、上海の合弁会社における株主割当増資等に伴う持分比率の低下により、現在は上海尤希路化学工業有限公司などを中心とした持分法適用関連会社として、現地での事業活動を展開しています。

東南アジア/インド


マレーシア、タイ、インド、インドネシアの各市場において、金属加工油剤を製造・販売しています。現地の自動車メーカーや部品メーカーに加え、二輪車向けの需要も堅調に推移しており、新規顧客の開拓や既存顧客向けの拡販、原価低減施策の推進による収益性の向上に注力しています。

各国の製造業を中心とした顧客への製品販売により収益を得ています。本セグメントの事業運営は、ユシロマレーシアSdn.Bhd.、ユシロ(タイランド)Co.,Ltd.、ユシロインディアカンパニーPvt.Ltd.、PT.ユシロインドネシアといった現地の独立した連結子会社がそれぞれ担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


同社の業績は過去5期間において、回復から成長基調を経て直近で踊り場を迎えています。売上高は順調に拡大を続け、利益水準も大幅な伸長を見せましたが、直近の期においては中国の合弁会社を持分法適用関連会社へ移行した影響などにより、売上高および経常利益が減少に転じています。しかしながら、利益率は継続して11%台を維持しており、底堅い収益力を保っています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 377億円 468億円 530億円 555億円 512億円
経常利益 15億円 14億円 46億円 61億円 57億円
利益率(%) 4.1% 3.1% 8.7% 11.0% 11.1%
当期利益(親会社所有者帰属) -3億円 15億円 33億円 43億円 39億円

(2) 損益計算書


売上高は減少したものの、売上総利益の落ち込みは小幅にとどまっており、売上総利益率は改善しています。一方で、経費増や人件費の増加などの影響により営業利益は減益となり、営業利益率もわずかに低下しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 555億円 512億円
売上総利益 174億円 171億円
売上総利益率(%) 31.3% 33.4%
営業利益 51億円 45億円
営業利益率(%) 9.1% 8.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が38億円(構成比30%)、支払運賃が9億円(同7%)を占めています。

(3) セグメント収益


国内および東南アジア・インド市場では新規開拓や拡販が進み増収となりました。一方で、中国市場は合弁会社を持分法適用関連会社とした影響により売上高が大幅に減少しています。南北アメリカ市場は需要が比較的堅調なものの、生産・在庫調整の影響で微減となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
日本 194億円 196億円
南北アメリカ 226億円 225億円
中国 62億円 15億円
東南アジア/インド 73億円 75億円
連結(合計) 555億円 512億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動で得た資金で投資や借入金の返済、株主還元を行う「健全型」のパターンを示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 48億円 48億円
投資CF -11億円 -10億円
財務CF -24億円 -26億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は73.5%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は創業以来、「共々の道」という企業理念を掲げて事業に取り組んでいます。これは、企業は社会と共にお客様と共に、さらには社員と共に歩んでこそ株主に繋がる皆様のためになり、企業価値向上に繋がるという考え方です。この不易の理念を踏まえ、「お客様に最良の商品とサービスを提供する」「事業の発展を通じ、企業価値の永続的な向上を図る」「社員が思う存分にその能力を発揮できる活力ある職場を作る」という三つの経営理念を定めています。

(2) 企業文化


同社の企業文化は、長年にわたり築き上げてきた技術力や顧客へのソリューション提供力、そしてグローバルネットワーク体制の強みに根ざしています。社員一人ひとりの成長と能力発揮を促進し、その成果を組織全体の持続的な成長につなげる風土を重視しています。「共々の道」という理念のもと、ステークホルダーと共生し深い信頼関係を築くことを行動の基盤としており、コンプライアンスの徹底や社会的信頼に応える経営を実践しています。

(3) 経営計画・目標


同社は中期経営計画の最終年度に向けて、利益ある持続的な成長を実現するため、製造原価低減や業務効率化の推進、持続的な成長のための価格適正化を図っています。次期に向けた経営上の目標として以下の数値を設定しています。

* 売上高:522億円
* 営業利益:40億円
* 経常利益:51億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:39億円
* ROE:8.0~10.0%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、世界的な経済環境の変化や主要顧客である自動車業界の動向を見据え、既存事業の強化と新規領域の開拓を両輪とした成長戦略を強力に推し進めています。具体的には以下の施策に取り組んでいます。

* コスト上昇への対処およびサステナブルな原材料調達の推進
* 自動車業界のEV化対応製品や航空機・医療分野等への販売拡大
* ビタミンB2光触媒技術や自己修復性素材を活用した新規事業の量産体制確立
* サステナビリティ推進委員会を通じた全社的なESG戦略の推進

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、人材を企業価値創造の基盤と位置付けており、経営戦略と連動した人材育成方針を掲げています。社員一人ひとりの成長と能力発揮を促進し、役割や貢献に基づく評価と連動させた育成施策を推進しています。また、評価制度の透明性向上と運用の適正化を図ることで、社員が納得できる評価と処遇を実現し、柔軟な働き方の促進や有給取得率の向上を通じた安心して働き続けられる環境づくりを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 47.5歳 17.9年 7,164,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.6%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 77.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 76.9%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 69.2%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定の業界への販売依存


同社グループは、自動車関連業界への販売が売上高全体の半数以上を占めており、日系自動車メーカーなどの動向に業績が大きく左右されるリスクがあります。また、EV(電気自動車)などの普及に伴い、エンジン搭載車と比較して金属加工油剤の使用量が減少する懸念があり、将来的な自動車市場の構造変化が同社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競合メーカーとの競争激化


金属加工油剤の市場には、グローバルに事業展開を行う海外メーカーや国際石油資本を親会社に持つ企業、さらに多数の国内メーカーが存在し、競争環境が激化しています。これら競合企業による新製品の開発、販売促進活動、戦略的な価格施策などが行われた場合、同社グループの市場シェアの低下や収益性の悪化を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 原料の調達と価格変動


同社製品の主要な製造原料である石油化学品や天然油脂化学品は、原油価格の変動や為替相場、地政学的リスクなどに大きく影響を受けます。国際紛争の長期化や新興国の需要増加、自然災害等による供給不安が発生した場合、原料調達の不安定化や製造コストの上昇を招き、製品価格への転嫁が遅れることで同社グループの業績に悪影響を与えるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。