※本記事は、株式会社ユシロ の有価証券報告書(第92期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ユシロってどんな会社?
金属加工油剤の国内トップシェアを誇る化学メーカーで、自動車産業を中心にグローバル展開する企業です。
■(1) 会社概要
1944年にユシロ化学工業として設立され、1962年に本社を大阪から東京へ移転しました。1985年に東京証券取引所市場第二部に上場し、2005年には同市場第一部へ昇格しました。その後、2022年の市場区分見直しによりスタンダード市場へ移行しています。2025年4月には、社名をユシロへ変更しました。
同社の従業員数は連結969名、単体367名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は生命保険会社、第3位は取引先持株会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.06% |
| 日本生命保険 | 7.82% |
| ユシロ化学工業取引先持株会 | 7.34% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は有坂 昌規氏です。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 有坂 昌規 | 代表取締役社長 | 1988年入社。アセアン・インド統括責任者、IL事業統括本部長、営業本部長などを経て2022年1月より現職。 |
| 髙橋 誠司 | 常務取締役 | 1992年入社。研究本部長、テクニカルセンター長、コーポレート統括本部長、技術本部長などを経て2025年4月より現職。 |
| 小林 一重 | 取締役 | 1986年入社。ユシロインディア社長、米国子会社社長CEOなどを経て2025年4月より現職。 |
| 髙倉 一利 | 取締役 | 1991年入社。名古屋支店長、営業本部長などを経て2025年4月より現職。 |
| 石川 拓哉 | 取締役 | 1987年入社。米国子会社社長CEO、コーポレート統括本部長を経て2025年4月より現職。 |
| 濵元 伸二 | 取締役(監査等委員) | 1983年入社。研究本部長、日本シー・ビー・ケミカル社長などを経て2024年6月より現職。 |
社外取締役は、中野 雅文(元マツダ常務執行役員)、飯塚 佳都子(シティユーワ法律事務所パートナー)、杉山 敦子(公認会計士・税理士杉山昌明事務所副所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「南北アメリカ」「中国」「東南アジア/インド」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 日本
切削油剤、鋳造用油剤、熱処理油剤などの金属加工油剤および、ワックスなどのビルメンテナンス製品を製造・販売しています。主な顧客は自動車メーカーや自動車部品メーカー等です。
製品販売により顧客から対価を受け取る収益モデルです。運営は主にユシロが行っています。
■(2) 南北アメリカ
金属加工油剤の製造・販売を行っており、米国、ブラジル、メキシコ等の市場で展開しています。現地の自動車関連企業や航空機関連企業等が主な顧客です。
製品販売により顧客から対価を受け取る収益モデルです。運営はユシロマニュファクチャリングアメリカInc.やクオリケムInc.等の現地法人が行っています。
■(3) 中国
金属加工油剤の製造・販売を行っており、中国市場において日系自動車メーカーや現地企業向けに製品を提供しています。
製品販売により顧客から対価を受け取る収益モデルです。運営は上海尤希路化学工業有限公司等の現地法人が行っています。
■(4) 東南アジア/インド
金属加工油剤の製造・販売を行っており、タイ、マレーシア、インド、インドネシア等で事業を展開しています。日系企業の進出に伴う需要を取り込んでいます。
製品販売により顧客から対価を受け取る収益モデルです。運営はユシロ(タイランド)Co.,Ltd.等の現地法人が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は5期連続で増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。利益面では第90期に原材料高騰等の影響で一時的な落ち込みが見られましたが、直近2期は価格転嫁や海外事業の伸長により大きく回復し、当期は経常利益率11.0%と高い収益性を実現しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 317億円 | 377億円 | 468億円 | 530億円 | 555億円 |
| 経常利益 | 15億円 | 15億円 | 14億円 | 46億円 | 61億円 |
| 利益率(%) | 4.8% | 4.1% | 3.1% | 8.7% | 11.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5億円 | -3億円 | 15億円 | 33億円 | 26億円 |
■(2) 損益計算書
増収に加え、原価率の改善が進んだことで売上総利益が増加しました。販売費及び一般管理費も増加しましたが、増収効果がこれらを上回り、営業利益は大幅な増益となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 530億円 | 555億円 |
| 売上総利益 | 150億円 | 174億円 |
| 売上総利益率(%) | 28.3% | 31.3% |
| 営業利益 | 36億円 | 51億円 |
| 営業利益率(%) | 6.8% | 9.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が38億円(構成比31%)、支払運賃が11億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
日本セグメントは微減収となったものの、価格改定や原価低減により増益を確保しました。海外については、南北アメリカが売上・利益ともに全体を牽引し、中国および東南アジア/インドも増収増益となるなど、グローバル全域で利益成長が見られます。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 196億円 | 194億円 | 6億円 | 8億円 | 4.2% |
| 南北アメリカ | 207億円 | 226億円 | 26億円 | 35億円 | 15.4% |
| 中国 | 61億円 | 62億円 | 2億円 | 5億円 | 8.6% |
| 東南アジア/インド | 66億円 | 73億円 | 7億円 | 8億円 | 10.6% |
| 連結(合計) | 530億円 | 555億円 | 36億円 | 51億円 | 9.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
ユシロは、自動車業界の動向を踏まえつつ、東南アジア・インド地域での販売拡大やコスト削減により増収増益を達成しました。
営業活動では、税金等調整前当期純利益や減価償却費が主な収入要因となり、収入超過となりました。投資活動では、定期預金の預入や有形固定資産の取得が支出要因となり、支出超過となりました。財務活動では、配当金の支払い、長期借入金の返済、自己株式の取得が支出要因となり、支出超過となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 43億円 | 48億円 |
| 投資CF | 4億円 | -11億円 |
| 財務CF | -16億円 | -24億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
創業以来、「共々の道」という理念を掲げています。これは、企業は社会と共に、お客様と共に、さらには社員と共に歩んでこそ株主に繋がる皆様のためになり、企業価値向上に繋がるという考え方です。
■(2) 企業文化
「共々の道」の理念に基づき、「お客様に最良の商品とサービスを提供する」「事業の発展を通じ、企業価値の永続的な向上を図る」「社員が思う存分にその能力を発揮できる活力ある職場を作る」という三つの経営理念を定めています。これらを基盤として、顧客ファーストの姿勢や社員の活力向上を重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
第20次中期経営計画「EXPLORER PLUS」を進行中で、2027年3月期に向けた以下の数値目標を掲げています。
* 売上高:600億円
* 営業利益:50億円
* 経常利益:61億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:43億円
* ROE:10.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
自動車業界のEV化や顧客のESG志向に対応するため、新製品の投入や販売拡大を推進します。また、ヒカリアクションや自己修復性素材などの新規事業化を進めるとともに、航空機、医療、半導体など非自動車分野への展開も強化します。原材料価格変動への対応やグローバルな調達効率化も重要課題としています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「社員が思う存分にその能力を発揮できる活力ある職場を作る」という経営理念のもと、人的資本への投資を持続的な成長を支える重要課題と位置付けています。経営戦略に連動した人材戦略を策定し、可視化に向けた基盤や体制を構築していく方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 47.0歳 | 17.9年 | 6,892,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.0% |
| 男性育児休業取得率 | 77.8% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 72.4% |
| 男女賃金差異(正規) | 73.4% |
| 男女賃金差異(非正規) | 58.6% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自動車関連業界への依存
同社グループは売上の過半を自動車関連業界に依存しています。そのため、各国の自動車生産動向や景気後退の影響を受けやすくなっています。また、エンジンを搭載しないEV(電気自動車)の普及に伴い、エンジン関連部品向けの金属加工油剤の使用量が減少する可能性があり、将来的な業績への影響が懸念されます。
■(2) 原料の調達と確保
製品の主原料である石油化学品や天然油脂化学品の価格は、原油価格や為替変動の影響を大きく受けます。これら原料価格の変動は製品原価に影響を及ぼす可能性があります。また、供給不安や災害等により原料調達が不安定になった場合、生産活動に支障をきたすリスクがあります。
■(3) 海外展開に伴うカントリーリスク
連結売上高の6割以上を海外が占めており、北米、中国、アジア等で事業を展開しています。各国の政治・経済情勢の変化、法規制の変更、予期せぬ訴訟、税務当局との見解の相違などが生じた場合、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、為替相場の変動も海外子会社の円換算額に影響を与えます。



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