※本記事は、WOWOWの有価証券報告書(第42期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. WOWOWってどんな会社?
メディア・コンテンツ事業とテレマーケティング事業を中心に展開する民間衛星放送のパイオニアです。
■(1) 会社概要
1984年に日本初の民間衛星放送会社として設立され、1991年にBSアナログの営業放送を開始しました。2000年にBSデジタル放送を開始し、2001年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場、2011年に市場第一部へ指定変更しました。2021年には動画配信サービスを開始し、事業領域を拡大しています。
従業員数は連結で801名、単体で331名です。筆頭株主はフジ・メディア・ホールディングスで、第2位がTBSホールディングス、第3位が日本テレビ放送網といずれも大手放送事業会社となっており、映像・放送関連で資本・業務面での密接な関係を築いています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| フジ・メディア・ホールディングス | 20.90% |
| TBSホールディングス | 16.02% |
| 日本テレビ放送網 | 9.23% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長執行役員は山本均氏が務めています。社外取締役は7名で、比率は70.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山本均 | 代表取締役社長執行役員 | 1990年同社入社。プロモーション部長、編成局長、人事総務局長等を歴任。2023年取締役副社長執行役員に就任。2024年より現職。 |
| 尾上純一 | 取締役専務執行役員 | 1992年同社入社。IR経理局長等を経て、2020年取締役執行役員。2024年取締役専務執行役員に就任し、2026年より現職。 |
| 大熊和彦 | 取締役(監査等委員) | 1991年同社入社。編成部長、IR経理局長、経営戦略局長等を歴任。WOWOWプラス代表取締役社長を経て、2024年より現職。 |
社外取締役は、大友淳(TBSテレビ常務取締役)、清水賢治(フジ・メディア・ホールディングス代表取締役社長)、永井聖士(電通代表取締役副社長執行役員)、松本達夫(日本テレビ放送網取締役常務執行役員)、村井満(日本バドミントン協会代表理事会長)、岡山誠(東ソー常勤監査役)、藤﨑忍(ドムドムフードサービス代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「メディア・コンテンツ」および「テレマーケティング」事業を展開しています。
■メディア・コンテンツ
BSデジタル有料放送サービスやケーブルテレビ、CS放送を通じた番組提供のほか、動画配信サービス「WOWOWオンデマンド」やスポーツコンテンツパッケージ「WOWSPO」を提供しています。また、外部からの委託による番組中継収録や海外作品のプロダクション業務等も行っています。
収益源は主に一般視聴者からの月額視聴料や法人向けのサービス提供料です。運営は同社のほか、子会社のWOWOWプラスやWOWOWエンタテインメント、WOWOW BRIDGE等が担っています。
■テレマーケティング
外部企業や同社グループからの委託を受け、コンタクトセンターの運営や顧客管理、デジタルマーケティング支援、自社メディアの企画運営、Webサイトにおける広告の企画・制作等を行っています。
収益源は、委託元企業からの業務処理件数に応じた業務委託料や広告制作料などです。運営は主に子会社のWOWOWコミュニケーションズのほか、フロストインターナショナルコーポレーションやcinraが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、売上高は740億円から790億円のレンジで安定推移していますが、経常利益および当期利益は減少傾向にあります。他社の動画配信サービスとの競争激化による加入件数の伸び悩みや、海外コンテンツの調達コスト上昇等が利益を圧迫しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 797億円 | 771億円 | 749億円 | 768億円 | 771億円 |
| 経常利益 | 53億円 | 35億円 | 21億円 | 30億円 | 23億円 |
| 利益率(%) | 6.7% | 4.6% | 2.7% | 3.9% | 3.0% |
| 当期利益 | 35億円 | 20億円 | 11億円 | 6億円 | 8億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期の損益構成を見ると、売上高は微増したものの、売上原価の増加等により売上総利益は減少し、営業利益も減益となっています。コンテンツの多層化投資やシステム費用の増加が影響しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 768億円 | 771億円 |
| 売上総利益 | 247億円 | 227億円 |
| 売上総利益率(%) | 32.2% | 29.4% |
| 営業利益 | 20億円 | 15億円 |
| 営業利益率(%) | 2.6% | 1.9% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が53億円(構成比25%)、PF月額手数料が40億円(同19%)、システム費が21億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のメディア・コンテンツ事業は新規加入の減少等により微減収となりましたが、テレマーケティング事業は子会社の新規連結効果等により増収を確保し、全体の売上を支えました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| メディア・コンテンツ | 705億円 | 701億円 |
| テレマーケティング | 63億円 | 70億円 |
| 連結(合計) | 768億円 | 771億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 43億円 | 53億円 |
| 投資CF | -36億円 | -37億円 |
| 財務CF | -9億円 | -9億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は73.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「エンターテインメントを通じ人々の幸福と豊かな文化の創造に貢献する」を企業理念に掲げています。放送事業者としての公共的使命を尊重し、社会から信用を得て、尊敬される会社として発展していくことを目指しています。
■(2) 企業文化
「人生をWOWで満たし、夢中で生きる大人を増やす」というパーパスを定義し、独自のエンターテインメント発想で会員の日常に「心動く瞬間」を提供することを重視しています。多様な個性を活かし、率直な意見交換ができる風土づくりを推進しています。
■(3) 経営計画・目標
中長期的には、コンテンツ投資に対する回収効率を最大化しながら、デジタル領域での会員基盤の確立と多層化収益の拡大を図るハイブリッド型収益モデルを推進し、新たな収益の柱を創出することを最大目標としています。
* 累計正味加入件数の拡大
* 売上高経常利益率の向上
* 営業活動によるキャッシュ・フローの創出
■(4) 成長戦略と重点施策
既存の放送サブスクリプションモデルからの脱却を図り、次世代のハイブリッド型事業構造への転換を推進するため、以下の施策に注力しています。
* NTTドコモとの合弁による新たな配信サービスの立ち上げ
* ライツ販売や広告、イベント等によるコンテンツ多層化収益の拡大
* コスト構造改革およびAI・DX活用による生産性向上
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業構造の変化に柔軟に対応できる人材基盤の構築を重視し、デジタルエンジニアリングや新規ビジネス開発領域のスペシャリストを積極的にキャリア採用しています。また、社員が自律的にスキルを習得できる研修制度や、発揮能力に基づく評価・登用を推進し、多様な人材がいきいきと活躍できる環境を整備しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.2歳 | 13.6年 | 10,769,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 24.7% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 87.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 85.2% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 120.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、キャリア採用者の割合(44.9%)、障がい者雇用率(2.34%)、離職率(4.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 放送設備の被災リスク
同社グループの放送設備は東京都江東区辰巳に一極集中しているため、大規模な地震や風水害等の自然災害によって同地区が甚大な被害を受けた場合、設備の損壊により放送サービスが長期間停止するなど、事業継続に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(2) コンプライアンス違反リスク
放送事業は多くの法的規制や許可条件のもとで運営されており、役職員や取引先による重大な法令違反や不正行為が発生した場合、同社グループの社会的信用が低下し、事業運営や業績に悪影響を与えるおそれがあります。
■(3) 情報資産・個人情報の不適切な取扱
多数の顧客情報や機密情報を保有しており、サイバー攻撃やシステムの不適切な管理によって個人情報等の漏洩や滅失が発生した場合、損害賠償責任の発生やブランド価値の低下を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 外部環境の変動と競争激化
動画配信サービスの台頭や生活者のコンテンツ接触スタイルの多様化により、顧客獲得競争が激化しています。また、海外コンテンツの調達コストの高止まりが進んだ場合、同社の収益基盤に悪影響を及ぼす可能性があります。



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