藤倉コンポジット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

藤倉コンポジット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の藤倉コンポジットは、産業用資材や引布加工品、スポーツ用品の製造販売を行う企業です。特に「フジクラシャフト」ブランドのゴルフ用カーボンシャフトで知られます。直近の業績は売上高413億円、営業利益48億円と増収増益を達成しており、ゴルフ用品の好調が寄与しています。


#記事タイトル:藤倉コンポジット転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、藤倉コンポジット株式会社 の有価証券報告書(第146期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 藤倉コンポジットってどんな会社?


産業用資材や「フジクラシャフト」等のスポーツ用品を手掛けるメーカーです。

(1) 会社概要


同社は1901年に藤倉電線護謨合名会社として創業し、ゴム引布防水布等の製造を開始しました。1920年に藤倉工業株式会社を設立、1949年に東証へ上場しています。1974年には初のオリジナルブランドとなるゴルフ用カーボンシャフトを発売しました。2019年に現在の藤倉コンポジット株式会社へ商号を変更しています。

2025年3月31日現在、連結従業員数は2,315名、単体では759名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第3位には元親会社であり現在も取引関係のある株式会社フジクラが名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.61%
日本カストディ銀行(信託口) 7.06%
フジクラ 5.14%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.0%です。代表取締役社長執行役員は森田健司氏です。社外取締役比率は41.7%です。

氏名 役職 主な経歴
森田健司 代表取締役社長執行役員 1981年同社入社。管理本部長、営業本部長等を経て、2016年代表取締役社長に就任。2024年4月より現職。
髙橋秀剛 取締役執行役員特命担当 2000年同社入社。技術製造本部副本部長、サステナビリティ統括室長等を経て、2025年4月より現職。
金井浩一 取締役執行役員特命担当 1997年同社入社。IER Fujikura,Inc.CEO、営業本部長、海外統括等を経て、2025年4月より現職。
弓削千賀志 取締役執行役員特命担当 1984年同社入社。営業本部副本部長、技術製造統括等を経て、2025年4月より現職。
渡邊貴史 取締役執行役員事業部統括兼引布加工品事業部長 1993年同社入社。先端複合材事業部長、Fujikura Composite America,Inc.会長等を経て、2025年4月より現職。
樋口昭康 取締役執行役員管理本部統括兼情報セキュリティ推進室長兼知的財産室長 1994年同社入社。FUJIKURA COMPOSITES HAIPHONG,INC.社長、経営企画室長等を経て、2025年6月より現職。
植松克夫 取締役常勤監査等委員 1984年同社入社。経営企画室長、常務取締役営業本部長、管理本部長等を歴任。2021年常勤監査役を経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、長浜洋一(元フジクラ代表取締役会長)、佐々木聡(プライムコンサルティング代表取締役)、細井和昭(公認会計士)、田中響子(弁護士)、鶴見真利子(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「産業用資材」「引布加工品」「スポーツ用品」および「その他」事業を展開しています。

(1) 産業用資材


工業用精密ゴム部品、空圧制御機器、電気絶縁材料および電気接続材料などを製造販売しています。主な製品には、自動車関連部品や住宅設備関連部品、半導体製造装置向けの制御機器などがあります。

製品販売による収益を得ています。運営は主に同社が行い、製造および販売の一部を杭州藤倉橡膠有限公司、安吉藤倉橡膠有限公司、IER Fujikura,Inc.、FUJIKURA COMPOSITES HAIPHONG,INC.などの連結子会社が担っています。

(2) 引布加工品


各種ゴム引布および、それを素材とした各種加工品を製造販売しています。主要製品には、電気・電子分野向けの部材、救命いかだ等の防災・救命設備、産業資材関連製品などが含まれます。

製品販売による収益を得ています。運営は主に同社が行い、製造工程の一部を連結子会社であるFUJIKURA COMPOSITES HAIPHONG,INC.などが担っています。

(3) スポーツ用品


「フジクラシャフト」ブランドのゴルフ用カーボンシャフトの製造販売、およびアウトドア用品の仕入販売を行っています。ゴルフシャフトは『VENTUS』や『SPEEDER NX』シリーズが主力です。アウトドア用品はシューズやウェアなどを取り扱っています。

製品販売による収益を得ています。ゴルフ用カーボンシャフトは同社およびFujikura Composite America,Inc.等が販売し、一部製造をFUJIKURA COMPOSITES HAIPHONG,INC.が行っています。アウトドア用品は連結子会社の株式会社キャラバンが仕入販売を行っています。

(4) その他


上記セグメントに含まれない事業として、主に物流部門における製品等の輸送および保管業務を行っています。

グループ内外からの物流サービス料が収益源です。運営は主に連結子会社の藤栄運輸株式会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの業績は、売上高が293億円から413億円へと拡大傾向にあります。経常利益も16億円から51億円へと増加しており、利益率も5.3%から12.2%へと向上しています。全体として増収増益基調で推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 293億円 372億円 407億円 378億円 413億円
経常利益 16億円 48億円 51億円 39億円 51億円
利益率(%) 5.3% 12.8% 12.6% 10.3% 12.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 12億円 21億円 37億円 27億円 26億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は378億円から413億円へ増加し、売上総利益率も28.6%から31.1%へ改善しています。これに伴い営業利益率は9.6%から11.6%へと上昇しており、収益性が高まっていることが分かります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 378億円 413億円
売上総利益 108億円 129億円
売上総利益率(%) 28.6% 31.1%
営業利益 36億円 48億円
営業利益率(%) 9.6% 11.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が28億円(構成比35.2%)、その他が17億円(同21.5%)を占めています。売上原価については、内訳データがありません。

(3) セグメント収益


産業用資材セグメントは増収ながらも減益となりましたが、スポーツ用品セグメントが大幅な増収増益を達成し、全体の業績を牽引しました。引布加工品セグメントは減収となり営業損失を計上しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
産業用資材 218億円 237億円 3億円 2億円 0.9%
引布加工品 49億円 34億円 -0.4億円 -1億円 -3.8%
スポーツ用品 107億円 138億円 40億円 55億円 39.5%
その他 3億円 3億円 0.4億円 0.4億円 10.5%
調整額 - - -6億円 -8億円 -
連結(合計) 378億円 413億円 36億円 48億円 11.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、主に自己資金で事業費用や投資資金を賄い、必要に応じて銀行借入等で対応しています。
営業活動では、利益創出により資金を得ています。
投資活動では、有形固定資産の取得等により資金を使用しました。
財務活動では、自己株式の取得等により資金を使用しました。
当期のフリー・キャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 53億円 69億円
投資CF -11億円 -32億円
財務CF -14億円 -34億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人々の安心を支え、社会の豊かさに貢献できる企業であり続ける」ことを理念に掲げています。この理念のもと、「くらし」「ものづくり」「エネルギー」「いのち」「レジャー」をはじめとする様々な分野で社会を支え、持続可能な社会の実現および持続的な企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、多様なステークホルダーとの適切かつ継続的な協力関係の下で、豊かな社会の実現に向けて貢献していくことを経営理念・事業理念の中に謳っています。健全な事業経営、品質向上、人権尊重および健康経営を推進し、従業員とその家族が安心して働ける企業を目指す姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、経済的および社会的な企業価値を中長期にわたって安定的に向上させることを目指しています。企業価値の安定的かつ着実な成長を示す指標として、以下の数値を目標として掲げています。

* 売上高営業利益率(連結):10%以上
* 自己資本比率(連結):60%以上
* ROE(連結):10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社はPBR1倍超の達成を目指し、稼ぐ力の強化や新成長戦略を実行します。具体的には、事業ポートフォリオの最適化による収益構造の強化や、品質・技術向上による世界市場での競争力強化に取り組みます。また、先進技術戦略室を設置し、M&Aや提携を含めた新規分野への投資を加速させ、イノベーション創出による社会課題解決を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、従業員一人ひとりが積極的かつ創造的に行動し、成果をあげられる人材を育成するため、職位・職能に応じた研修制度を実施しています。複線型人事制度の導入や海外経験の機会拡充により、キャリア開発を支援しています。また、多様な人材が活躍できるよう、育児・介護への配慮や障がい者雇用、健康経営の推進、テレワーク対応など、社内環境の整備にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.6歳 14.9年 5,887,868円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.0%
男性育児休業取得率 17.6%
男女賃金差異(全労働者) 66.5%
男女賃金差異(正規) 68.7%
男女賃金差異(非正規) 72.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(37.5%)、新卒者の女性採用比率(33.3%)、障がい者雇用率(2.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定の産業への依存について


同社グループは、自動車部品メーカーに対する売上が多く、自動車産業への依存度が高い状況にあります。そのため、自動車産業の生産動向の変化が、同社グループの売上高に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 為替変動リスクについて


外貨建債権債務を有しているため、為替レートの変動により為替差損益が発生し、経常利益に影響を与える可能性があります。また、製品・商品の輸出入においても、為替変動により販売価格や仕入価格が変わり、各事業セグメントの収益に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 資源価格変動リスクについて


同社グループの原材料仕入のうち、ゴム、樹脂、繊維など原油価格変動の影響を受ける資材が約60%を占めています。原油価格の変動により材料費が変動した場合、営業利益に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(4) 海外事業リスクについて


中国、米国、ベトナム等に生産拠点を有しており、海外への事業拡大を積極的に行っています。進出国の政治・経済情勢の変化、法律の変更、自然災害、伝染病、テロ、ストライキ等の発生により、製品の生産・販売等に支障をきたし、事業計画に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。