藤倉コンポジット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

藤倉コンポジット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する藤倉コンポジットは、産業用資材や引布加工品、ゴルフシャフト等のスポーツ用品の製造販売を主力事業としています。直近の業績は、自動車関連や引布部門が好調に推移し、前年比で減収ながらも増益を達成しました。独自の複合化技術を強みに、グローバルに事業を展開しています。


※本記事は、株式会社藤倉コンポジットの有価証券報告書(第147期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 藤倉コンポジットってどんな会社?


産業用資材やスポーツ用品などの製造販売を行い、複合化技術を強みとするメーカーです。

(1) 会社概要


1901年に松本留吉が藤倉電線護謨合名会社を創立し、電線やゴム引布防水布の製造を開始しました。1948年に藤倉ゴム工業へ商号変更し、1949年に東京証券取引所へ上場しました。1974年にオリジナルブランドのゴルフ用カーボンシャフトを発売し、2019年に現在の藤倉コンポジットへ商号を変更しています。

従業員数は連結で2,252名、単体で743名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は野村證券を常任代理人とする外国法人、第3位は事業会社であるフジクラとなっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.49%
NOMURA PB NOMINESS LIMITED OBNIBUS-MARGIN (CASHPB)(常任代理人 野村證券) 7.78%
フジクラ 5.07%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長執行役員は森田健司氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
森田健司 代表取締役社長執行役員 1981年に同社へ入社。管理本部長や営業本部長などを経て、2016年に代表取締役社長へ就任。2024年より現職。
渡邊貴史 取締役執行役員兼事業部統括兼引布加工品事業部長 1993年に同社へ入社。米国子会社のCEOや会長を歴任し、2023年に取締役へ就任。2025年より現職。
樋口昭康 取締役執行役員兼管理本部統括兼同情報セキュリティ推進室長 1994年に同社へ入社。ベトナム子会社社長や経営企画室長などを経て、2024年に取締役執行役員へ就任。2025年より現職。


社外取締役は、長浜洋一(元フジクラ社長)、細井和昭(細井会計事務所代表)、田中響子(阿部・田中法律事務所共同経営弁護士)、鶴見真利子(鶴見真利子公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「産業用資材」「引布加工品」「スポーツ用品」および「その他」事業を展開しています。

産業用資材


工業用精密ゴム部品や空圧制御機器、電気絶縁材料などの製造を行い、自動車関連や住宅設備、半導体製造装置、医療機器など幅広い産業向けに製品を提供しています。
収益は各メーカーへの製品販売から得ており、主に藤倉コンポジットと中国や米国の連結子会社が製造および販売を担っています。

引布加工品


特殊機械設備を駆使した加工技術と材料技術を組み合わせ、各種加工品や高機能なゴム引布を製造し、医療、自動車、建築材料分野などの顧客へ提供しています。
救命いかだなどの加工品の製品販売を通じて収益を得ており、運営は主に藤倉コンポジットおよびベトナムの連結子会社が行っています。

スポーツ用品


ゴルフ用カーボンシャフトの製造販売をはじめ、シューズやウェアなどアウトドア用品の仕入販売を一般消費者や小売店向けに行っています。
製品販売による収益を柱としており、ゴルフシャフトは同社および米国などの子会社が、アウトドア用品は連結子会社のキャラバンが運営を行っています。

その他


物流部門として、産業用資材などの製品等の輸送および保管サービスを提供しています。
顧客からの輸送や保管にかかる料金を収益源としており、運営は主に連結子会社の藤栄運輸が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績をみると、売上高は364億円から407億円の間で推移しており、経常利益は39億円から51億円の範囲で堅調に利益を確保しています。利益率も概ね10%以上を維持しており、安定した収益基盤を構築していることが伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 364億円 407億円 377億円 406億円 402億円
経常利益 46億円 51億円 39億円 49億円 51億円
利益率(%) 12.7% 12.6% 10.3% 12.0% 12.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 21億円 37億円 27億円 26億円 42億円

(2) 損益計算書


売上高は前年比で微減となりましたが、売上総利益は前年と同水準を維持しています。販売費及び一般管理費が減少した結果、営業利益は増益となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 406億円 402億円
売上総利益 125億円 125億円
売上総利益率(%) 30.8% 31.1%
営業利益 46億円 48億円
営業利益率(%) 11.3% 11.9%

(3) セグメント収益


産業用資材や引布加工品は自動車関連や舶用品などの需要が堅調に推移し売上に寄与しました。一方、スポーツ用品は国内外の消費減退などの影響を受けて減収となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
産業用資材 234億円 232億円
引布加工品 34億円 39億円
スポーツ用品 135億円 128億円
その他 3億円 3億円
連結(合計) 406億円 402億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業といえる健全型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 69億円 57億円
投資CF -32億円 -19億円
財務CF -34億円 -29億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.3%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も76.2%となり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「人々の安心を支え、社会の豊かさに貢献できる企業であり続ける」ことを理念として掲げています。「くらし」「ものづくり」「エネルギー」「いのち」「レジャー」といった多様な分野で社会を支え、中長期にわたって安定的に企業価値を向上させ持続可能な社会の実現を目指しています。

(2) 企業文化


多様なステークホルダーとの適切かつ継続的な協力関係を重視し、豊かな社会の実現に向けて貢献する行動様式を大切にしています。また、従業員とその家族が安心して働ける企業を目指し、人材育成施策の刷新や健康経営を推進するなど、健全な事業経営と人権尊重を重んじる価値観を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、企業価値の安定的かつ着実な成長を示す指標として、以下の中長期的な数値目標を設定しています。また、資本コストや株価を意識した経営を推進し、PBR(株価純資産倍率)1倍超の達成とその維持継続を目標に掲げています。

* 売上高営業利益率(連結)10%以上
* 自己資本比率(連結)60%以上
* ROE(連結)10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


収益構造を強化するため、事業ポートフォリオの最適化による収益基盤の確立と、生産方式の見直し等によるグローバルな収益力向上を進めています。また、先進技術戦略室を中心にスタートアップ企業との資本業務提携やM&Aを検討し、イノベーション創出による社会課題の解決に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


社員一人ひとりと経営理念を共有し、多様な価値観を掛け合わせる組織づくりを推進しています。自律的な成長と次世代の経営人材育成を目的とした研修制度の充実や、従業員のキャリア開発支援を実施するとともに、多様な人材が活躍できる職場環境の整備と健康経営の両立を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.1歳 15.6年 5,679,960円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.0%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 65.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 66.8%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 71.7%


また、同社は「指標と目標」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(11.1%)、障がい者雇用率(2.7%)、教育研修実施率(25.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) サイバー攻撃等によるシステム異常


メールの利用不能や業務システムが利用できなくなることによる業務停止、または情報漏洩をもたらすリスクがあります。同社は重要情報の保管状況の確認や、情報漏洩時のマニュアル策定などの対応策を講じています。

(2) DX化や生成AI等利用の遅れ


技術革新や業務効率の改善が行われず、市場のニーズに即した製品を供給できないことにより、顧客満足度や市場競争力が低下する可能性があります。同社指定の生成AI利用促進やガイドライン策定を進めています。

(3) イノベーション欠如による新製品開発の遅れ


適時に新製品の市場投入が遅れることによる機会損失や既存製品の受注減少が生じ、特定顧客への依存度が高まることで売上が左右されるリスクがあります。オープンイノベーションの活用や専門人材の育成により対応しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。