三ツ星ベルト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三ツ星ベルト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三ツ星ベルトは東証プライム上場で、自動車用・一般産業用の伝動ベルトや搬送ベルト、建設資材等を製造販売するメーカーです。2025年3月期は、自動車生産の回復や海外市場での販売伸長、為替の円安効果等により、売上高905億円、親会社株主に帰属する当期純利益91億円と増収増益を達成しました。


※本記事は、三ツ星ベルト株式会社 の有価証券報告書(第110期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 三ツ星ベルトってどんな会社?


創業100年を超える歴史を持ち、ゴム・プラスチック技術を核に自動車用ベルトや産業用ベルトで高いシェアを持つグローバル企業です。

(1) 会社概要


同社は1919年に三ツ星商会として創業し、綿ベルトの製造を開始しました。1932年に株式会社を設立し、1940年にはV型ベルトの製造に着手しています。1962年に東京証券取引所市場第1部に上場しました。その後、1973年に米国子会社を設立するなど海外展開を進め、近年では2024年に韓国子会社を設立、2025年にはドバイ子会社が事業を開始するなど、グローバル拠点の拡充を続けています。

2025年3月31日現在、連結従業員数は4,495名、単体では758名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は金融機関、第3位は同社の持株会となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.59%
三菱UFJ銀行 4.15%
星友持株会 4.10%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長兼社長執行役員は池田浩氏が務めています。社外取締役比率は27.3%です。

氏名 役職 主な経歴
池田浩 代表取締役社長兼社長執行役員 1981年同社入社。経営企画室長、常務執行役員などを経て、2021年6月より現職。
熊﨑敏美 取締役兼専務執行役員 1981年同社入社。生産本部長、四国地区担当などを務め、2024年6月より現職。
又場敬司 取締役兼専務執行役員 1987年同社入社。産業資材営業本部長、法務部担当などを務め、2024年6月より現職。
倉本信二 取締役兼常務執行役員 1981年同社入社。人事総務本部長、購買部担当などを務め、2022年6月より現職。
竹田和浩 取締役兼常務執行役員 1983年同社入社。技術本部長、システム製品開発部長などを務め、2024年6月より現職。


社外取締役は、奥田真弥(元住友金属工業取締役専務執行役員)、三宅由佳(三宅由佳税理士事務所所長)、辻泰弘(東京医療保健大学客員教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内ベルト事業」「海外ベルト事業」「建設資材事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 国内ベルト事業


日本国内において、自動車用ベルト、一般産業用ベルト、搬送ベルトなどを製造・販売しています。主力製品である伝動ベルトは、自動車のエンジンや産業機械の動力伝達に不可欠な機能部品であり、搬送ベルトは工場や物流現場で利用されています。

製品の製造・加工は三ツ星ベルト工機や三ツ星ベルトコンベヤなどが担い、原材料のケーブルコードは三ツ星コードが製造しています。販売は主に三ツ星ベルト販賣が行っています。収益はこれらの製品販売による対価として顧客から得ており、運営は主に同社および国内連結子会社が行っています。

(2) 海外ベルト事業


海外市場において、自動車用ベルト、一般産業用ベルト、OA機器用ベルトなどを製造・販売しています。アジア、北米、欧州などに拠点を持ち、グローバルな供給体制を構築しています。特に自動車産業や農業機械産業向けの需要に対応しています。

製造・販売は、ミツボシ ベルティング インディア、エム・ビー・エル(ユー・エス・エー)、スターズ テクノロジーズ インダストリアル等の海外子会社が行っています。販売専門の子会社も各地に展開しており、収益は各国の顧客への製品販売によって得ています。

(3) 建設資材事業


建築用防水シート、土木用遮水シートおよび関連製品の製造・販売、ならびに土木防水工事を行っています。ビルの屋上防水や廃棄物処分場の遮水シートなど、建設・土木分野でのインフラ保全に貢献する製品群を提供しています。

建築用防水シート・土木用遮水シートの製造・販売は同社が行い、販売・施工は子会社のネオ・ルーフィングが担当しています。収益は製品の販売代金および防水工事の請負代金として得ています。

(4) その他


報告セグメントに含まれない事業として、設備機械、他社仕入商品、エンジニアリング ストラクチュラル フォーム(構造用発泡体)、電子材料、サービス事業などを展開しています。

エンジニアリング ストラクチュラル フォームの製造は子会社の三ツ星ベルト樹脂が行い、販売は同社等が行っています。また、構内の保安業務等を子会社のエムエムコートが担っています。収益は各製品・サービスの提供対価として得ています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一貫して増加傾向にあり、直近5期間で約1.4倍に拡大しています。利益面では、原材料価格高騰等の影響を受けつつも、高付加価値製品の販売拡大や価格転嫁により、高い利益率を維持しています。当期は売上高905億円、経常利益92億円となり、増収を達成しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 649億円 749億円 829億円 840億円 905億円
経常利益 58億円 86億円 105億円 96億円 92億円
利益率(%) 8.9% 11.4% 12.6% 11.4% 10.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 44億円 56億円 89億円 79億円 83億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比7.7%増の905億円となりました。売上原価率は上昇しましたが、増収効果により売上総利益は増加しています。販管費も増加しましたが、営業利益は前期比15.1%増の89億円となり、営業利益率は9.9%に改善しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 840億円 905億円
売上総利益 256億円 281億円
売上総利益率(%) 30.4% 31.0%
営業利益 78億円 89億円
営業利益率(%) 9.2% 9.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料が60億円(構成比31%)、荷造運送費が33億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントで増収となりました。海外ベルト事業は自動車部品や農機向けの好調により大幅な増益を達成しました。国内ベルト事業は売上増ながら利益は横ばいでした。建設資材事業は大型工事の寄与で過去最高売上を記録し、増益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
国内ベルト 274億円 281億円 81億円 80億円 28.6%
海外ベルト 439億円 486億円 21億円 33億円 6.8%
建設資材 73億円 81億円 6億円 7億円 8.7%
その他 54億円 57億円 2億円 3億円 5.0%
連結(合計) 840億円 905億円 78億円 89億円 9.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 119億円 78億円
投資CF -27億円 -36億円
財務CF -95億円 -82億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.3%で市場平均とほぼ同水準(わずかに下回る)である一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「人を想い、地球を想う」を基本理念として掲げています。また、「高機能、高精密、高品質な製品の提供を通して社会に貢献する」を経営基本方針とし、社会の発展とともに共存共栄していくことを指針としています。100年の歴史で培った技術力を深化させ、人々の快適な暮らしを支える企業を目指しています。

(2) 企業文化


社員一人ひとりが「今日に誇りを持ち、明日に希望を託し行動する」を社訓としています。チャレンジする精神を重んじることでイノベーションを生み出すことを目指しており、多様性を尊重し、変革を恐れない企業風土の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


2030年度の「ありたい姿」に向け、2024年度から2026年度までの中期経営計画を推進しています。この期間を成長加速期間と位置づけ、収益性や資本効率性の向上に取り組んでいます。

* 2030年度目標:売上高1,000億円、営業利益130億円、ROE10%
* 2026年度KPI目標:売上高915億円、営業利益105億円、ROE9%

(4) 成長戦略と重点施策


「事業環境の変化にぶれない強い企業体質」の確立を目指し、グローバル市場でのトップメーカーを目指しています。環境調和型製品の開発や、生産システム・研究開発機能の充実、世界最適生産体制の確立などを重点施策としています。

* SDGsへの取り組みと環境保全活動の推進
* 研究開発体制の強化と製品開発のスピード化
* 高機能・高品質製品を生み出す生産システムの確立
* 世界最適生産体制とコスト競争力の強化

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最も重要な成長の源泉と位置づけ、「人財戦略の強化」をマテリアリティの一つとしています。多様で柔軟な働き方が実現できるよう働き方改革に取り組み、新卒および専門知識を持つ人材の通年採用を積極的に進めています。また、チャレンジを是とする企業風土への変革を目指し、人事制度の改定やジョブマッチング制度の導入などを行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.0歳 17.1年 7,153,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.5%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 77.0%
男女賃金差異(正規) 77.4%
男女賃金差異(非正規) 30.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(67.1%)、女性従業員比率(11.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自動車産業から受ける影響


同社グループの売上の約47%は自動車産業向けであり、特定の系列には属さないものの、自動車業界の景気変動や顧客の生産動向、部品調達方針の変更などの影響を受けやすくなっています。特に電動化(EV化)の進展に伴う内燃機関用ベルトの需要減少は中長期的なリスク要因と捉えられています。

(2) 原材料の調達と価格変動


製品の主要原料であるゴム、帆布、繊維、樹脂などの市況価格変動リスクがあります。原油価格の高騰や供給不足により調達コストが上昇した場合、製造原価が増加し業績を圧迫する可能性があります。また、海外からの調達において輸出入規制等の変更が安定調達の阻害要因となるリスクもあります。

(3) 自然災害等のリスク


国内外に生産拠点を持つため、地震や水害などの自然災害、感染症の蔓延などにより工場が被災した場合、操業停止や供給遅延が発生する可能性があります。また、サプライチェーンの寸断により顧客への製品供給が困難になった場合、売上減少や修復費用の発生により業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。