ロンシール工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ロンシール工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場しており、合成樹脂加工品事業と不動産賃貸事業を展開しています。主力の合成樹脂加工品事業では、建築用床材や防水資材、車両用床材などを扱っています。直近の業績は、売上高が増加した一方で、コスト増等の影響により経常利益および当期純利益は減益となりました。


記事タイトル:ロンシール工業転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、ロンシール工業株式会社 の有価証券報告書(第82期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ロンシール工業ってどんな会社?

創業以来、ゴム製品から塩化ビニル製品へと事業を転換し、現在は床材や防水資材などの合成樹脂加工品を主力とする化学メーカーです。

(1) 会社概要

1928年に川口ゴム製作所として創業し、1943年に川口ゴム工業を設立しました。1947年には国内で初めて塩化ビニル製品の製造に成功し、1950年に塩化ビニル加工工場へ全面転換しました。1962年に東京証券取引所市場第二部に上場し、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しました。2025年4月には本社を東京都港区へ移転しています。

2025年3月31日時点の従業員数は連結で423名、単体で371名です。筆頭株主は総合化学メーカーの東ソーで、発行済株式の38.14%を保有するその他の関係会社です。第2位は証券代行業務等を行うインタラクティブ・ブローカーズ証券(9.81%)、第3位はみずほ銀行(4.58%)となっています。

氏名 持株比率
東ソー 38.14%
INTERACTIVE BROKERS LLC(常任代理人インタラクティブ・ブローカーズ証券) 9.81%
みずほ銀行 4.58%

(2) 経営陣

同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長社長執行役員は西岡秀明氏です。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
西岡 秀明 代表取締役社長社長執行役員 1986年東洋曹達工業(現東ソー)入社。同社執行役員ポリマー事業部長などを経て、2023年6月より現職。
蓮沼 修 取締役常務執行役員土浦事業所長 1983年東洋曹達工業(現東ソー)入社。同社執行役員などを経て、2024年6月より現職。
井関 直彦 取締役常務執行役員人事・総務部、経理部、監査室、CSR推進室担当 1986年日本興業銀行入行。みずほ証券シニアエグゼクティブなどを経て、2023年6月より現職。
石澤 英夫 取締役常務執行役員品質保証部、経営管理部、情報システム部、購買部担当 1989年東ソー入社。同社執行役員などを経て、2025年6月より現職。
前田 篤 取締役(監査等委員) 1990年同社入社。執行役員土浦事業所副事業所長兼土浦事業所第一製造部長などを経て、2020年6月より現職。


社外取締役は、神長俊樹(元アサノコンクリート社長)、渡部秀樹(元デンカ常務執行役員)、米澤啓(現東ソー常勤監査役)です。

2. 事業内容

同社グループは、「合成樹脂加工品事業」および「不動産賃貸事業」を展開しています。

合成樹脂加工品事業

建築用床材、防水資材、住宅資材、壁装材、車両用床材、フィルム基材などの製造および各種防水工事を行っています。主な顧客は建設業界や車両製造業界などです。

製品の販売や工事請負によって収益を得ています。運営は主に同社が行い、連結子会社のロンテクノ、ロンシールインコーポレイテッド、龍喜陸(上海)貿易有限公司が販売や施工の一部を担っています。

不動産賃貸事業

東京都葛飾区において、ショッピングセンター施設(土地を含む)を賃貸しています。

テナント企業からの賃料収入が主な収益源です。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、特に2021年3月期から連続して増収を達成しています。利益面では、経常利益は変動がありつつも黒字を維持していますが、2025年3月期は特別損失の計上等により当期純利益が大きく減少しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 172億円 181億円 196億円 210億円 214億円
経常利益 13億円 14億円 7億円 12億円 10億円
利益率(%) 7.5% 7.6% 3.4% 5.6% 4.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 7億円 9億円 4億円 8億円 0.1億円

(2) 損益計算書

売上高は前期比で増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費も増加しました。その結果、営業利益は前期よりも減少しています。売上総利益率は微減傾向にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 210億円 214億円
売上総利益 74億円 75億円
売上総利益率(%) 35.1% 35.0%
営業利益 11億円 9億円
営業利益率(%) 5.1% 4.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が19億円(構成比29%)、運賃及び荷造費が10億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益

合成樹脂加工品事業は、販売価格の改定効果などにより増収となりましたが、人件費等のコスト増により減益となりました。不動産賃貸事業は売上高は横ばいでしたが、減益となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
合成樹脂加工品事業 207億円 211億円 8億円 6億円 3.0%
不動産賃貸事業 4億円 4億円 3億円 2億円 63.9%
連結(合計) 210億円 214億円 11億円 9億円 4.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、営業活動で得た資金を借入金の返済や投資に充てている健全型企業です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 15億円 11億円
投資CF -5億円 -5億円
財務CF -3億円 -3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は73.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「人と地球にやさしいものづくり」を企業理念としています。また、どんな環境下にあっても「ステークホルダーの信頼に応え続けること」を経営の基本とし、顧客のニーズに合致するものを良質適価で提供することや、安定した配当の継続、社会状況に適応した運営、従業員が生活設計を描ける会社であることを目指しています。

(2) 企業文化

同社グループは「ロンシールグループ 行動指針」を掲げ、一人一人が能力を発揮できる快適な職場の構築、顧客や取引先の信頼と株主の期待への対応、持続可能な社会の発展への貢献を重視しています。また、自主性、主体性、独自性をグループ全体最適の枠内で尊重する文化を持っています。

(3) 経営計画・目標

同社は安定配当実現のため期間損益の確実な確保を前提とし、売上高経常利益率を主な経営指標としています。中期目標として、以下の数値を掲げています。

* 売上高経常利益率:5%以上の安定的な達成

(4) 成長戦略と重点施策

同社は、既存事業分野における選択と集中を進め、成長が期待できるコア分野への差別化商品の早期投入や効率的な営業により利益を実現する方針です。また、あらゆるプロセスでのコストダウンを図るとともに、コア・コンピタンスを生かした新規事業展開に取り組みます。製品開発においては、「イノベーションセンター」を活用し、高機能・高品質な製品の研究開発に注力しています。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

同社グループは、「教育は経営が期待する人材を育成し、かつその過程において従業員の自己表現に寄与するものである」という理念の下、広い視野や社会規範への適応力、専門性を持つ人材の育成を目指しています。OJTとOFF-JTを組み合わせた各種教育・研修制度を整備し、持続的成長に向けた人材育成を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.6歳 17.3年 6,333,000円


※平均年間給与は、基準外賃金及び賞与を含んでおります。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.9%
男性育児休業取得率 87.5%
男女賃金差異(全労働者) 75.1%
男女賃金差異(正規) 74.1%
男女賃金差異(非正規) 81.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正社員の年次有給休暇取得率(89.9%)、採用者における女性の割合(12.5%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内・国外の経済情勢

原材料の調達及び価格の高騰、テロや戦争、感染症などの社会的混乱により生産・販売活動に支障が出た場合、業績に影響を与える可能性があります。同社は複数取引先からの調達や代替品への切り替え、在庫の分散化などによりリスク軽減を図っています。

(2) 災害等(自然災害、事故)

大地震等の自然災害や事故により生産停止・制限となった場合、またサプライチェーンに支障が出た場合、業績に影響を与える可能性があります。同社は事業所内での在庫確保や外部倉庫の活用により安定供給を図っています。

(3) 製品品質

生産上のトラブルや契約不適合等により重大なクレームが発生した場合、信用力低下を招き業績に影響を与える可能性があります。同社は品質マネジメントシステムの構築や設備のメンテナンス等により品質維持に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。