ロンシール工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ロンシール工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ロンシール工業は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、建築用床材、防水資材、車両用床材などの合成樹脂加工品事業を主力として展開する企業です。直近の業績は、販売価格改定などの効果が表れ、売上高は前年を上回り増収となるとともに、経常利益も大きく増加して増収増益を達成し、堅調な推移を見せています。


※本記事は、ロンシール工業株式会社の有価証券報告書(第83期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ロンシール工業ってどんな会社?


合成樹脂の加工を主力とし、床材や防水材などの建材製品を提供する企業です。

(1) 会社概要


1928年9月、川口ゴム製作所として創立しゴム製品の製造に着手しました。1947年12月に輸入原料により日本で初めて塩化ビニル製品の製造に成功し、1950年12月には塩化ビニル加工工場へ全面転換しました。1962年9月に東京証券取引所市場第二部に上場し、1972年7月にロンシール工業に商号を変更しています。

従業員数は連結で419名、単体で365名です。筆頭株主は事業会社の東ソーで、第2位は外国法人のINTERACTIVE BROKERS LLC、第3位はみずほ銀行です。

氏名 持株比率
東ソー 38.14%
INTERACTIVE BROKERS LLC(常任代理人インタラクティブ・ブローカーズ証券) 6.47%
みずほ銀行 4.58%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長 社長執行役員は西岡秀明氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
西岡秀明 代表取締役社長社長執行役員 1986年東洋曹達工業(現東ソー)入社。同社執行役員ポリマー事業部長等を経て、2023年6月より現職。
蓮沼修 取締役常務執行役員土浦事業所長 1983年東洋曹達工業(現東ソー)入社。大洋塩ビ取締役、東ソー執行役員等を経て、2024年6月より現職。
井関直彦 取締役常務執行役員人事・総務部、経理部、監査室、CSR推進室担当 1986年日本興業銀行入行。みずほ証券シニアエグゼクティブ等を経て、2023年6月より現職。
石澤英夫 取締役常務執行役員品質保証部、経営管理部、情報システム部、購買部担当 1989年東ソー入社。同社ポリマー事業部企画管理室長、同社執行役員等を経て、2025年6月より現職。
前田篤 取締役(監査等委員) 1990年同社入社。同社品質保証部長、執行役員土浦事業所副事業所長等を経て、2020年6月より現職。


社外取締役は、神長俊樹(元デイ・シイ代表取締役社長)、渡部秀樹(元デンカ常務執行役員)、米澤啓(東ソー常勤監査役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「合成樹脂加工品事業」および「不動産賃貸事業」を展開しています。

合成樹脂加工品事業


建築用床材、防水資材、住宅資材、壁装材、車両用床材、フィルム基材などを顧客へ提供しています。ビルや居住空間を彩る機能的な床材や意匠性の高い壁紙のほか、ビルの屋上防水、鉄道・バスなどの車両床材など、快適技術と環境技術の視点から生まれた多彩な製品を展開しています。

製品の販売や工事による収益を主な収益源としています。事業の運営は、製造販売会社であるロンシール工業を中心に、国内外での販売や施工を行う連結子会社のロンテクノ、ロンシールインコーポレイテッド(米国)などが連携して行っています。

不動産賃貸事業


ショッピングセンター施設などの賃貸等不動産を所有し、テナント企業に対して不動産賃貸サービスを提供しています。長期的かつ安定した取引の継続に向け、テナント企業と定期的に情報交換を行い、適切な賃料設定と良好な関係構築に努めています。

テナント企業から受け取る不動産賃貸料を主な収益源としています。事業の運営は、ロンシール工業が単独で行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は安定して成長を続けており、2022年3月期の181億円から2026年3月期には221億円まで増加しています。経常利益は原材料価格やエネルギー価格の変動などの影響を受けて増減を繰り返していますが、直近では販売価格改定の効果により大幅な増益となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 181億円 196億円 210億円 214億円 221億円
経常利益 14億円 7億円 12億円 10億円 14億円
利益率(%) 7.6% 3.4% 5.6% 4.4% 6.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 4億円 8億円 0.1億円 10億円

(2) 損益計算書


売上高は着実に増加し、売上総利益および営業利益ともに前年を大きく上回る結果となりました。販売価格の改定が奏功したことで利益率も改善傾向にあり、営業利益率は前年の4.1%から6.1%へと成長しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 214億円 221億円
売上総利益 75億円 84億円
売上総利益率(%) 35.0% 37.8%
営業利益 9億円 13億円
営業利益率(%) 4.1% 6.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が20億円(構成比28%)、運賃及び荷造費が11億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


合成樹脂加工品事業は、国内床材や防水資材などが減収となったものの、住宅資材や輸出用床材などが増加し、セグメント全体で増収増益となりました。不動産賃貸事業も賃貸料収入を安定して確保しており、増益に寄与しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
合成樹脂加工品事業 211億円 217億円 6億円 11億円 4.9%
不動産賃貸事業 4億円 4億円 2億円 3億円 74.4%
連結(合計) 214億円 221億円 9億円 13億円 6.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CF・財務CFがマイナスであり、本業の営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の健全型を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 11億円 13億円
投資CF -5億円 -17億円
財務CF -3億円 -3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


どんな環境下にあっても『ステークホルダーの信頼に応え続けること』を経営の基本方針に掲げています。顧客のニーズに合致するものを良質適価で提供する会社として、創造的な高品質・高機能の商品をスピーディーに市場に投入し、長期に安定した株主価値の創造による継続的な配当を目指しています。

(2) 企業文化


『人と地球にやさしいものづくり』を企業理念とし、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでいます。「ロンシールグループ 行動指針」を定め、一人一人がその能力を発揮できる快適な職場をつくることを重視し、多様な才能や価値観を持つ人々が最大限に自己の能力を発揮できるような職場環境づくりを推進しています。

(3) 経営計画・目標


安定配当の実現には期間損益の確実な確保が前提となることから、売上高経常利益率を主な経営指標として定めています。事業環境の変化にスピーディーに対応できる体制整備と事業基盤の強化を推し進めることで、安定した利益を確保し続ける企業への変革を目指しています。

・売上高経常利益率5%以上の安定的な達成

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業分野における選択と集中を進め、今後成長が期待できるコア分野に対して市場への差別化商品の早期投入と効率的な営業により利益を実現する方針です。同時に、将来性が見込めない事業分野については縮小・撤退を図り、コア・コンピタンスを生かした新規事業展開にも取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な成長と企業価値の向上の源泉は『人材』であると位置付け、安全を何よりも優先した労働環境の整備に取り組んでいます。職場で実際の業務に取り組みながら行う育成方法であるOJTと、階層別教育や選択型自己啓発などのOFF-JTを組み合わせることで、持続的成長に向けた人材育成を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.5歳 17.3年 6,497,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.0%
男性育児休業取得率 83.3%
男女賃金差異(全労働者) 75.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 75.9%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) 72.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正社員の年次有給休暇取得率(90.9%)、従業員における女性の割合(22.7%)、育児休業取得率(女性)(100.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内・国外の経済情勢

国内外におけるテロ、戦争、感染症などの予期しえない社会的混乱により、原材料の調達や価格高騰、生産・販売活動に支障が出た場合、業績に影響を与える可能性があります。同社は複数の取引先からの調達や代替品への切り替え、外部倉庫の活用等でリスク軽減に努めています。

(2) 災害等(自然災害、事故)

製造設備の維持管理を適切に行っていますが、大地震などの自然災害や不慮の事故により生産停止・生産制限となった場合、またサプライチェーンに支障が出た場合、業績に影響を与える可能性があります。同社は事業所内に一定程度の在庫を確保しつつ外部倉庫を活用し安定供給を図っています。

(3) 製品品質

品質の安定性確保と機能性向上に努めていますが、生産上のトラブルや過失、契約内容への不適合などにより、信用力の低下や重大なクレームが発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。品質マネジメントシステムの構築や設備の定期メンテナンスで継続的な維持・改善に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。