※本記事は、不二ラテックス株式会社 の有価証券報告書(第77期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 不二ラテックスってどんな会社?
コンドーム等の医療機器と、産業用緩衝器(ショックアブソーバ)等の精密機器を二本柱とするメーカーです。
■(1) 会社概要
1949年に設立され、コンドームの製造を開始しました。1981年に精密機器事業へ参入し、事業の多角化を推進しています。2004年にJASDAQへ上場し、2014年には新素材IR製コンドーム「SKYN」を発売するなど技術開発に注力してきました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在はスタンダード市場に上場しています。
従業員数は連結250名、単体245名です。筆頭株主は取締役の岡本昌大氏で、第2位は同じく取締役の岡本和大氏、第3位も個人株主の岡本明大氏となっており、創業家関連の個人が大株主の上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 岡本昌大 | 12.17% |
| 岡本和大 | 10.85% |
| 岡本明大 | 9.19% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は近藤安弘氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 近藤安弘 | 代表取締役社長 | 1988年カルソニック入社。不二精器を経て2002年同社入社。精密機器本部長などを歴任し、2022年6月より現職。 |
| 金原辰弥 | 取締役管理本部長兼財務部長兼社長室長 | 1987年協和銀行入行。りそなホールディングスを経て2019年同社入社。管理本部長等を歴任し、2024年4月より現職。 |
| 岡本昌大 | 取締役医療機器本部長兼ヘルスケア営業部長兼メディカル営業部長 | 1999年オカモト入社。2002年同社入社。営業本部長、経営統轄本部長等を歴任し、2025年4月より現職。 |
| 畑山幹男 | 取締役(監査等委員) | 2005年りそな銀行退職後、同社入社。財務部長、管理本部長等を歴任し、2022年6月より現職。 |
社外取締役は、深沢岳久(弁護士)、大西恭二(元伊藤忠テクノソリューションズ取締役専務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「医療機器事業」「精密機器事業」「SP事業」「食品容器事業」の4つの報告セグメントを展開しています。
■(1) 医療機器事業
コンドームやプローブカバーなどのゴム製品を製造・販売しています。避妊から出産介助までの領域をカバーする製品群を展開し、主力ブランドには新素材コンドーム「SKYN」などがあります。
収益は、ドラッグストアや医療機関等への製品販売代金です。製造は同社が行い、コンドーム等の販売は主に子会社の不二ライフ株式会社が行っています。
■(2) 精密機器事業
産業用緩衝器(ショックアブソーバ)やロータリーダンパー等の精密機器を製造・販売しています。住宅設備、家電、自動車、産業用生産設備など多岐にわたる市場へ高機能な製品を提供しています。
収益は、メーカーや商社等への製品販売代金です。製造・販売は同社が行い、中国での輸出入・販売はFUJI LATEX SHANGHAI CO.,LTD.が担当しています。
■(3) SP事業
ゴム風船やフィルムバルーンを中心とした広告・販売促進用品を取り扱っています。イベントや店頭販促における対面コミュニケーションツールとして企画提案を行っています。
収益は、企業や代理店等への販促用品の販売代金です。運営は同社が行っています。
■(4) 食品容器事業
ゴム製の食品容器等を製造・販売しています。国内最大手のゴム製食品容器メーカーとして、安定した品質で製品を供給しています。
収益は、食品メーカー等への製品販売代金です。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は70億〜80億円台で推移していますが、直近は減少傾向にあります。利益面では、前期まで営業黒字を維持しているものの、当期は減益となりました。利益率は低下傾向にありますが、当期は特別利益の計上により最終利益は確保しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 69億円 | 81億円 | 81億円 | 75億円 | 72億円 |
| 経常利益 | 2.3億円 | 4.9億円 | 7.3億円 | 3.8億円 | 1.7億円 |
| 利益率(%) | 3.3% | 6.0% | 9.0% | 5.1% | 2.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.6億円 | -1.7億円 | 5.0億円 | 2.8億円 | 3.0億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の減少に伴い、売上総利益および営業利益が縮小しています。特に営業利益率は前期の5.9%から2.9%へと低下しており、収益性の低下が見られます。コストコントロールや販売価格適正化を進めましたが、減収影響を吸収しきれませんでした。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 75億円 | 72億円 |
| 売上総利益 | 18億円 | 15億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.9% | 21.2% |
| 営業利益 | 4.4億円 | 2.1億円 |
| 営業利益率(%) | 5.9% | 2.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料・賞与が4.6億円(構成比35%)、支払手数料が1.4億円(同10%)を占めています。売上原価においては、材料費や労務費等の製造コストが大部分を占めています。
■(3) セグメント収益
医療機器事業は増収となったものの、精密機器事業、SP事業、食品容器事業が減収となりました。利益面では、精密機器事業が減益となり、SP事業と食品容器事業は赤字に転落しました。医療機器事業は横ばいの利益水準を維持しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 医療機器事業 | 24億円 | 25億円 | 0.1億円 | 0.1億円 | 0.3% |
| 精密機器事業 | 42億円 | 41億円 | 8.3億円 | 7.1億円 | 17.4% |
| SP事業 | 7.4億円 | 3.9億円 | 0.4億円 | -0.2億円 | -5.8% |
| 食品容器事業 | 2.4億円 | 2.1億円 | 0.3億円 | -0.3億円 | -14.7% |
| 連結(合計) | 75億円 | 72億円 | 4.4億円 | 2.1億円 | 2.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 2.1億円 | 6.3億円 |
| 投資CF | -1.2億円 | 2.8億円 |
| 財務CF | -3.5億円 | -2.8億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.5%で市場平均(スタンダード市場7.2%)を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.8%で市場平均(同57.5%)を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「健康・創造・志」の三つの思いを調和させ、「世界の人々の健康と豊かな暮らしに貢献し、人々に喜ばれ、信頼される企業になる」ことを経営理念として掲げています。真に社会的ニーズに応え、社会貢献につながる強固な経営基盤を構築することを目標としています。
■(2) 企業文化
同社は、経営理念、価値観、行動指針を「FUJILATEX WAY」として体系化しています。豊かさの追求やイノベーションへの挑戦などを価値観とし、「熱意、誠意、創意」を基本的な行動原則としています。これらを全役職員で共有し、日々の業務活動の拠り所とすることで、企業価値の向上と社会貢献を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は「第5次新中期経営計画(2024年3月期から2026年3月期)」を推進中ですが、事業構造改革の過程にあるため、目標とする経営指標である自己資本当期純利益率(ROE)について、一旦7%前後の水準を想定しています。中期的には以下の水準を目指しています。
* 自己資本当期純利益率(ROE):8~9%程度
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「ものづくり」の強化を軸とした成長加速に取り組んでいます。特に医療機器事業では、老朽化した工場の統合とコンドーム製造事業の停止(SKYN等は継続)を決定し、生産拠点の再編による効率化を進めています。精密機器事業では新工場用地を確保し、生産能力の増強を図っています。
* 医療生活用品の中核拠点確立と技術力・開発力の強化
* 精密機器事業における新素材開発と高付加価値製品の投入
* 海外市場の開拓と販売ネットワークの拡大
* 生産性向上と効率性を追求した設備投資(スマートファクトリー化等)
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、中長期的視点で優れた人材を継続的に採用・育成する方針です。個々の能力とモチベーション、新たな創意工夫を引き出すため、働きがいのある職場環境の整備や拡充を行い、働く人の視点での働き方改革を推進しています。また、多様な人材による価値創造を目指し、ダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.6歳 | 13.2年 | 5,394,627円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 57.7% |
| 男女賃金差異(正規) | 71.3% |
| 男女賃金差異(非正規) | 37.5% |
※女性管理職比率について、同社は女性活躍推進法の規定による公表義務の対象ではないため、記載を省略しています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用した労働者に占める女性労働者の割合(56.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原材料・部品の調達リスク
同社製品の主要原材料は値上げ圧力が強く、市況変動による価格上昇が製品原価に影響を及ぼす可能性があります。また、調達はサプライヤーの供給能力に依存しており、自然災害等によるサプライチェーンの寸断や供給不足が発生した場合、生産活動や業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 災害発生のリスク
同社グループの生産拠点は栃木県に集中しており、予期せぬ地震や災害が発生した場合、大きな損害を受ける可能性があります。特に、築年数が経過し老朽化が進んだ一部の工場については、災害により甚大な被害を受けるリスクも想定されています。
■(3) 知的財産に関するリスク
開発する製品に関連する知的財産権は複雑で多岐にわたります。他者の権利侵害には細心の注意を払っていますが、第三者から訴訟を提起されるリスクや、自社の権利が侵害され類似品が製造されるリスクがあります。これらは事業展開や業績に影響を及ぼす可能性があります。



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