※本記事は、不二ラテックス株式会社の有価証券報告書(第78期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 不二ラテックスってどんな会社?
コンドームなどの医療生活用品と、産業向けショックアブソーバ等の精密機器を製造・販売するメーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1949年に日本ラテックス工業所として設立され、コンドームの製造を開始しました。1961年に現在の不二ラテックスへ商号を変更し、1980年には不二精器を設立して緩衝器分野にも進出しました(2002年に吸収合併)。その後、2004年にジャスダックに上場を果たし、直近の2025年には生産効率向上のため栃木工場を閉鎖し、栃木千塚工場への移転統合を完了しています。
同社グループは、連結従業員数253名、単体247名体制で事業を展開しています。筆頭株主は同社取締役の岡本昌大氏で、第2位、第3位にも岡本氏の親族とみられる個人が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 岡本昌大 | 12.17% |
| 岡本和大 | 10.85% |
| 岡本明大 | 9.19% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は近藤安弘氏が務めており、社外取締役の比率は42.9%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 近藤安弘 | 代表取締役社長 | カルソニック、不二精器を経て2002年同社入社。精密機器本部新栃木工場長、精密機器本部長などを歴任し2022年6月より現職。 |
| 金原辰弥 | 取締役管理本部長兼財務部長兼社長室長 | 協和銀行(現りそな銀行)入行、りそなホールディングス金融法人室長を経て2019年同社入社。財務部長などを経て2024年4月より現職。 |
| 岡本昌大 | 取締役医療機器本部長兼ヘルスケア営業部長兼メディカル営業部長 | オカモトを経て2002年同社入社。営業本部長、海外事業部長、医療機器本部長などを歴任し2025年4月より現職。 |
| 畑山幹男 | 取締役(監査等委員) | りそな銀行退職後、2005年同社入社。管理本部長、財務部長などを歴任し2022年6月より現職。 |
社外取締役は、深沢岳久氏(弁護士)、有沢正人氏(元カゴメ常務執行役員)、田中泉氏(フリーキャスター)です。
2. 事業内容
同社グループは、「医療機器事業」「精密機器事業」「SP事業」「食品容器事業」の4つの報告セグメントを展開しています。
■(1) 医療機器事業
コンドームを中心とするヘルスケア用品や、プローブカバーなどの医療用ゴム製品を開発・製造し、一般消費者や医療機関向けに提供しています。バースコントロール総合メーカーとして、避妊から出産介助までの幅広い領域をカバーしています。
収益源は、自社製品を中心とする製品の販売代金です。開発および製造は同社が行い、国内でのコンドーム等の主な販売業務は子会社の不二ライフが担っています。
■(2) 精密機器事業
ショックアブソーバやロータリーダンパーなどの精密緩衝器を開発・製造し、住宅設備、家電、自動車、産業用生産設備メーカーなどの多岐にわたる市場へ供給しています。ユーザーの多様なニーズに合わせた高付加価値な製品展開を強みとしています。
収益源は、産業向け精密機器製品の販売代金です。製造は同社が主体となって行い、中国国内での輸出入および販売業務は子会社のFUJI LATEX SHANGHAIが担当しています。
■(3) SP事業
ゴム風船やフィルムバルーンをはじめとする各種バルーン製品の企画・製造を行うほか、店頭販促用品などの広告・販促ツールを企業やイベント主催者等に提供しています。
収益源は、販売促進用品等の販売代金および企画提案を通じた各種サービスの対価です。国内外のサプライチェーンを活用し、本事業は同社単独で運営しています。
■(4) 食品容器事業
国内最大手のゴム製食品容器メーカーとして、根強い需要のあるアイス用食品容器などのゴム製容器を製造・供給しています。耐熱性・耐油性の改善による食品全般への対応や、用途拡大にも取り組んでいます。
収益源は、製造した食品容器の販売代金です。本事業の運営および製造・販売は、同社が単独で行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績をみると、売上高は81.5億円から68.0億円へと緩やかな減少傾向にあります。一方、利益面では一時的な落ち込みが見られたものの、直近の経常利益は3.4億円と回復基調にあり、利益率も5.0%を確保しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 81.5億円 | 80.9億円 | 75.1億円 | 72.0億円 | 68.0億円 |
| 経常利益 | 4.9億円 | 7.3億円 | 3.8億円 | 1.7億円 | 3.4億円 |
| 利益率(%) | 6.0% | 9.0% | 5.1% | 2.4% | 5.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -1.4億円 | 5.2億円 | 2.9億円 | 3.0億円 | 0.6億円 |
■(2) 損益計算書
前期間と当期間の比較では、売上高が減少した一方で、売上総利益率は21.2%から26.0%へと改善しました。これにより営業利益は2.1億円から4.2億円へと倍増し、収益性の向上が伺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 72.0億円 | 68.0億円 |
| 売上総利益 | 15.3億円 | 17.6億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.2% | 26.0% |
| 営業利益 | 2.1億円 | 4.2億円 |
| 営業利益率(%) | 2.9% | 6.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料・賞与が4.9億円(構成比36.1%)、支払手数料が1.4億円(同10.1%)、福利厚生費が1.1億円(同8.1%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の精密機器事業は堅調な受注を背景に増収増益を達成し、全体の利益を牽引しています。医療機器事業は一部の販売減で減収となったものの、コスト構造の改善により増益となりました。一方でSP事業や食品容器事業は需要の低迷や事業再構築の影響で減収減益となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 医療機器事業 | 25.3億円 | 21.3億円 | 0.1億円 | 0.6億円 | 2.8% |
| 精密機器事業 | 40.7億円 | 44.0億円 | 7.1億円 | 10.2億円 | 23.2% |
| SP事業 | 3.9億円 | 0.9億円 | -0.2億円 | -0.5億円 | -59.3% |
| 食品容器事業 | 2.1億円 | 1.8億円 | -0.3億円 | -1.2億円 | -64.9% |
| 連結(合計) | 72.0億円 | 68.0億円 | 2.1億円 | 4.2億円 | 6.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業で生み出した資金を用いて設備投資と借入金の返済を計画的に進めている健全な財務状況を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 6.3億円 | 6.2億円 |
| 投資CF | 2.8億円 | -0.6億円 |
| 財務CF | -2.8億円 | -3.3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も39.4%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「健康・創造・志の三つの思いを調和させ、『世界の人々の健康と豊かな暮らしに貢献し、人々に喜ばれ、信頼される企業になる』」ことを経営理念としています。真に社会的ニーズに応え、社会経済の発展と社会貢献につながる強固な経営基盤を構築することを目標としています。
■(2) 企業文化
「豊かさの追求、世界No.1・オンリーワン企業を目指す、信用の確立、継続的な成長と発展、イノベーションへの挑戦」を価値観とし、さらに「熱意、誠意、創意」を基本的な行動原則としています。これらを「FUJILATEX WAY」として体系化し、全役職員での共有と実践を推進しています。
■(3) 経営計画・目標
「第5次新中期経営計画」では、「ものづくりの強化」を軸とした成長加速に取り組んでいます。事業構造改革の過程において、収益性指標であるROE(自己資本当期純利益率)は一時的に低下を想定するものの、短期的には8~9%程度を目指し企業価値の向上に努めるとしています。
* 自己資本当期純利益率(ROE):8~9%程度(短期的目標)
■(4) 成長戦略と重点施策
「ものづくり」の強化と各分野でのオンリーワンの存在化を成長戦略の柱としています。医療生活用品分野では老朽化した生産拠点を栃木千塚工場へ統合し、精密機器事業では新工場構想を進めることで、2大工場体制の確立を目指します。同時に、新製品開発や海外市場の開拓にも注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を最重要の経営資源と位置づけ、中長期的な企業価値向上のために人的資本施策を推進しています。多様な人材による新たな価値創造を目指し、自律的なキャリア構築を支援する人材育成と、ダイバーシティ&インクルージョンを前提とした働きやすい職場環境の整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.4歳 | 13.5年 | 5,594,710円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.3% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 62.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 75.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 34.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用した労働者に占める女性労働者の割合(38.9%)、新卒採用の入社後3年以内離職率(7.7%)、キャリア採用の入社後3年以内離職率(21.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 知的財産に関するリスク
開発する製品が多種多様であるため、関連する知的財産権も複雑化しています。新製品開発時に他者の権利を侵害しないよう細心の注意を払っていますが、不当な権利侵害を理由とした訴訟の提起や類似品の製造を完全に防げない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料・部品の調達リスク
合理的な価格での原材料や部品の調達は、サプライヤーの供給能力に依存しています。需要過剰による供給不足や価格高騰、自然災害等によるサプライチェーンの寸断が発生した場合、十分な生産活動が維持できず、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 法的規制などのリスク
同社が製造するメディカル製品等は基本的に薬機法の規制を受けており、製造販売には厚生労働大臣の承認や都道府県知事の許可が必要です。これらの許認可が未承認となったり取り消されたりした場合、事業継続が困難となり業績に影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。