※本記事は、ニッタ株式会社の有価証券報告書(第97期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ニッタってどんな会社?
ニッタは、産業用ベルトやホース・チューブ製品を主力とし、多様な業界のものづくりを支えるメーカーです。
■(1) 会社概要
1885年に製革業として創業し、1888年に日本初の動力伝動用革ベルトを製造しました。その後、海外企業との合弁会社設立等で事業を拡大し、1995年に大阪証券取引所市場第二部、1996年に東京証券取引所市場第二部へ上場しました。1997年の市場第一部指定を経て、現在はグローバルに事業を展開しています。
従業員数は連結で2,993名、単体で1,104名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は事業会社の主要株主として資本関係を持つと推測される新田ゴム工業、第3位はアイビーピーとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.91% |
| 新田ゴム工業 | 10.36% |
| アイビーピー | 6.93% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長兼社長執行役員は北村精一氏です。社外取締役比率は25.0%(12名中3名)です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 北村精一 | 代表取締役社長兼社長執行役員 | 1984年同社入社。工業資材事業部長などを経て、2025年4月より現職。 |
| 石切山靖順 | 取締役会長 | 1981年同社入社。代表取締役社長兼社長執行役員などを経て、2026年4月より現職。 |
| 萩原豊浩 | 取締役兼専務執行役員営業統括兼関連会社担当ゲイツ・ユニッタ・アジア代表取締役副社長 | 1983年同社入社。工業資材事業部長などを経て、2026年4月より現職。 |
| 泉敦 | 取締役兼常務執行役員ニッタ・ムアー事業部長 | 1985年同社入社。ニッタ・ムアー事業部技術部長などを経て、2026年4月より現職。 |
| 懸上耕一 | 取締役兼常務執行役員コーポレートセンター長兼経営戦略、購買担当 | 1987年三井銀行入行。2007年同社入社。経営管理グループ上席部長などを経て、2026年4月より現職。 |
社外取締役は、豊島ひろ江(中本総合法律事務所パートナー)、池田剛久(元三井住友ファイナンス&リース代表取締役専務執行役員)、小野友之(小野公認会計士事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ベルト・ゴム製品事業」「ホース・チューブ製品事業」「化工品事業」「その他産業用製品事業」「不動産事業」「経営指導事業」および「その他」事業を展開しています。
■ベルト・ゴム製品事業
物流、食品、金融、紙工、繊維、半導体など幅広い業界に向けた高機能な平ベルト製品や搬送用製品、ゴム製品、電子部品向けの感温性粘着テープ等を開発・提供しています。
顧客からの製品販売対価を主な収益源としています。国内では同社やパワーテクノなどが事業を展開し、海外ではニッタコーポレーションオブアメリカ等の現地子会社が製造・販売を担っています。
■ホース・チューブ製品事業
自動車業界向けの燃料タンク周りやエアブレーキ用の樹脂ホース・チューブ製品、金具、半導体製造装置向けの継手、ロボットの先端ツールを交換できるメカトロ製品等を提供しています。
製品の販売や新規プログラムの受注に伴う対価が主な収益源です。国内では同社が中心となり、海外では韓国ニッタムアーやニッタムアー科技(常州)有限公司などの子会社が事業を運営しています。
■化工品事業
鉄道車両向けの空気ばねや軸ばねといったゴム製品をはじめ、産業用防振ゴム、OA機器用部品、建設・防水資材などの高機能製品や産業資材製品を開発・製造しています。
各産業のメーカーや建設会社への製品販売により収益を得ています。事業の運営は、主に国内子会社であるニッタ化工品が担っており、タイや中国の海外子会社も展開を支援しています。
■その他産業用製品事業
半導体や製薬業界のクリーンルーム向け空調フィルター製品や、医療用のゴム・プラスチック製品などを提供し、安心・安全な環境の構築や維持管理に貢献しています。
製品の販売による収益が柱となっています。国内では同社やニッタエアソリューションズ、浪華ゴム工業が事業を運営し、台湾やインドの現地法人も海外市場での販売を担っています。
■不動産事業
同社が保有する土地や建物の有効活用を目的とし、賃貸オフィスビルや賃貸商業施設、関係会社向けの賃貸用倉庫などの不動産物件を管理・運用しています。
テナントや関係会社からの不動産賃貸収入を収益源としています。同事業は主に同社単独で運営されており、契約期間にわたって安定的な収益を計上するモデルとなっています。
■経営指導事業
持分法適用会社をはじめとする関係会社に対し、経営管理や事業運営に関する指導、業務支援などの各種サービスを日常的かつ継続的に提供しています。
契約に基づく役務提供の対価として、関係会社から受領する経営指導料を収益としています。同事業は同社が主体となって運営し、グループ全体のガバナンスと連携強化を図っています。
■その他
報告セグメントに含まれない事業として、自動車運転免許教習事業や北海道における山林事業、畜産事業、業務受託など、多岐にわたるサービスや事業を展開しています。
教習料金や特産品の販売代金、受託手数料などを収益源としています。同社に加え、北海道ニッタ、新田牧場、芦原自動車教習所などの子会社がそれぞれの専門領域で事業を運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
同社の連結業績は、主力事業における物流業界や半導体業界向けの需要増、および製品の価格転嫁の進展により、売上高と利益が順調に拡大しています。直近の期では売上高が900億円台に到達し、利益水準も維持しながら過去最高の業績を更新する成長トレンドを示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 903億円 | 918億円 |
| 経常利益 | 146億円 | 148億円 |
| 利益率(%) | 16.2% | 16.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 121億円 | 135億円 |
■(2) 損益計算書
直近の損益状況を見ると、増収に伴い売上総利益も拡大しており、付加価値の高い製品の販売増加が利益率の向上に寄与しています。営業利益も着実に成長しており、本業の収益力が強化されていることがうかがえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 903億円 | 918億円 |
| 売上総利益 | 242億円 | 259億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.9% | 28.2% |
| 営業利益 | 52億円 | 59億円 |
| 営業利益率(%) | 5.7% | 6.4% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び賞与が63億円(構成比31%)、運賃及び賃借料が26億円(同13%)、研究開発費が23億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力であるベルト・ゴム製品事業およびホース・チューブ製品事業が全社売上を牽引しており、直近の期においても順調に売上規模を拡大させています。一方で、化工品事業は需要の低調により減収となるなど、セグメント間で業績の明暗が分かれています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| ベルト・ゴム製品事業 | 297億円 | 306億円 |
| ホース・チューブ製品事業 | 315億円 | 330億円 |
| 化工品事業 | 130億円 | 117億円 |
| その他産業用製品事業 | 115億円 | 117億円 |
| 不動産事業 | 9億円 | 10億円 |
| 経営指導事業 | 23億円 | 25億円 |
| その他 | 13億円 | 13億円 |
| 連結(合計) | 903億円 | 918億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 70億円 | 96億円 |
| 投資CF | -69億円 | -31億円 |
| 財務CF | -52億円 | -55億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は85.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、ステークホルダーに対する役割としての使命、価値観、行動指針からなる「NITTAグループ理念」を掲げています。使命として「NITTAは動かす、未来へ導く製品で。世の中を前へ、そして人々を幸せに。」を制定しており、事業活動やサステナビリティの判断基準として、価値創造に取り組んでいます。
■(2) 企業文化
同社は、国や地域で異なる顧客の要望に対し、コツコツと応え続ける姿勢と、発明と改良の精神を重んじています。「My Mission運動」を通じた企業理念の浸透を図り、社員一人ひとりが自ら考え、行動・挑戦し、仲間とともに未来を切り拓くという価値観を共有することで、新たな価値創造に挑戦する文化を醸成しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2031年3月期までの10年間を対象とする中長期経営計画「SHIFT2030」を推進し、10年後のあるべき姿を「ものづくりを核としたシフトイノベーター」と定めています。フェーズ3(2031年3月期)における連結業績目標として、以下の指標を掲げています。
* 売上高:1,200億円
* 営業利益率:8.0%
* 事業ROIC:9.0%
* 新製品売上比率:10.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「成長へのSHIFT」「企業価値向上へのSHIFT」「更なるグローバル化へのSHIFT」の3大SHIFTを推進しています。自動車のEV化や半導体需要の拡大を見据え、軽量化や新エネルギー対応の製品開発を加速させるとともに、製品・事業ポートフォリオの最適化による資本効率の改善とグローバル展開の強化に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人材こそ最大の資本」と考え、経営戦略と連動した人材育成を推進しています。イノベーション人材やデジタル人材、グローバル人材の計画的な育成に加え、人事制度の改定による高度専門人材や地域限定社員の登用、ダイバーシティの推進、健康経営や柔軟な働き方の拡充により、多様な人材が能力を最大限に発揮できる環境を整備しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.2歳 | 17.8年 | 6,803,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.9% |
| 男性育児休業取得率 | 121.4% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 79.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 79.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 73.2% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(78.7%)、離職率(6.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 資材・部材の供給途絶リスク
同社の事業において、製品の生産中止や戦争・紛争等による供給停止、外注先の倒産などにより原材料の調達が困難となるリスクがあります。これに対し、代替製品や新たな調達先の探索、BCP(事業継続計画)の継続的な策定を通じて、サプライチェーンの寸断を防ぐ取り組みを進めています。
■(2) 原材料価格や在庫価値の変動リスク
原油やガス、原材料価格の大幅な値上げ、あるいは市況の変化による在庫や製品価値の下落が業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は原料価格の推移を注視するとともに、代替品の探索や製造原価の低減活動を継続し、収益性の維持・向上に努めています。
■(3) 情報システムへのサイバー攻撃リスク
サプライチェーンを狙ったサイバー攻撃やランサムウェアの侵入により、重要なデータが喪失・流出するリスクがあります。対策として、サプライヤーへのセキュリティ指導やAIを活用した自動防御システムの構築、データのバックアップ体制整備、役職員への教育を徹底し、情報資産の保護を図っています。
■(4) 景気変動や需要業界の変化リスク
同社製品の主要な販売先である自動車・半導体業界などの景気後退や、米国の関税政策、顧客の事業縮小等が業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。事業部ごとの予算進捗を定期的に把握し、適切な情報開示と変化への迅速な対応体制を整えることで影響の最小化に努めています。



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