※本記事は、ニッタ株式会社 の有価証券報告書(第96期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ニッタってどんな会社?
動力伝動用ベルトのパイオニアとして創業し、現在は産業用部材から半導体・電子部品関連まで幅広く展開するグローバルメーカーです。
■(1) 会社概要
1885年に製革業を開始し、1888年に日本初の動力伝動用革ベルトの製造に成功しました。1945年に現在の母体となる会社を設立後、1968年にニッタ・ムアーカンパニーを設立するなど事業を拡大。2022年の市場区分見直しにより、東証プライム市場へ移行しました。長年の技術蓄積を基盤に多角化を進めています。
連結従業員数は2,940名、単体では1,098名体制です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は関連会社の新田ゴム工業、第3位も関連会社のアイビーピーとなっています。創業家や関連会社が主要株主として名を連ねつつ、機関投資家も保有する安定した株主構成です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.73% |
| 新田ゴム工業 | 10.22% |
| アイビーピー | 8.27% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は北村精一氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 石切山 靖順 | 代表取締役会長兼会長執行役員 | 1981年入社。工業資材事業部長、取締役兼常務執行役員などを経て、2019年代表取締役社長兼社長執行役員に就任。2025年4月より現職。 |
| 北村 精一 | 代表取締役社長兼社長執行役員 | 1984年入社。工業資材事業部長、取締役兼常務執行役員、代表取締役兼専務執行役員などを経て、2025年4月より現職。 |
| 萩原 豊浩 | 取締役兼常務執行役員関連会社担当兼ゲイツ・ユニッタ・アジア株式会社代表取締役副社長 | 1983年入社。工業資材事業部長、取締役兼執行役員などを経て、2024年4月より現職。 |
| 泉 敦 | 取締役兼執行役員ニッタ・ムアー事業部長 | 1985年入社。ニッタ・ムアー事業部技術部長、同事業部技術部上席部長、執行役員ニッタ・ムアー事業部長を経て、2023年6月より現職。 |
| 懸上 耕一 | 取締役兼執行役員コーポレートセンター長兼経営戦略、経営管理、購買担当 | 1987年三井銀行(現三井住友銀行)入行。2007年同社入社。経営管理グループ部長などを経て、2025年4月より現職。 |
社外取締役は、豊島ひろ江(中本総合法律事務所パートナー)、池田剛久(元三井住友ファイナンス&リース代表取締役)、小野友之(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ベルト・ゴム製品事業」「ホース・チューブ製品事業」「化工品事業」「その他産業用製品事業」「不動産事業」「経営指導事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) ベルト・ゴム製品事業
ベルト製品、搬送用製品、ゴム製品、通信機器・電子機器、センサ製品、感温性粘着テープ、RFID製品などを製造販売しています。主要顧客は多岐にわたる産業分野のメーカーや物流業界などです。
製品の販売による対価を主な収益としています。運営は主にニッタが行っているほか、海外ではニッタコーポレーションオブアメリカなどの子会社が展開しています。また、関連会社のゲイツ・ユニッタ・アジアが歯付ベルト等を扱っています。
■(2) ホース・チューブ製品事業
樹脂ホース・チューブ製品、金具およびフィッティング、メカトロ製品などを製造販売しています。自動車業界や建設機械、半導体製造装置メーカーなどが主要な顧客です。
製品の販売による対価を収益としています。運営は主にニッタが行っており、海外では韓国ニッタムアー、ニッタムアー科技(常州)などの子会社が製造販売を担っています。
■(3) 化工品事業
高機能製品、産業資材製品、建設資材製品、防水資材製品などを製造販売しています。インフラ関連や産業機械向けの資材として提供されています。一部事業において工事契約も含まれます。
製品の販売および工事契約に基づく対価を収益としています。運営は主にニッタ化工品が行っており、海外拠点も展開しています。
■(4) その他産業用製品事業
空調製品、医療用ゴム・プラスチック製品などを製造販売しています。半導体工場や病院向けのクリーンルーム用フィルタなどが含まれます。また、関連会社にて精密研磨用パッド等も扱っています。
製品の販売による対価を収益としています。運営は主にニッタ、ニッタエアソリューションズ、浪華ゴム工業などが行っています。
■(5) 不動産事業
同社グループが保有する不動産(オフィスビル、商業施設等)の賃貸を行っています。
テナントからの賃貸料収入を収益としています。運営は主にニッタが行っています。
■(6) 経営指導事業
関係会社に対する経営指導を行っています。
関係会社から受け取る経営指導料を収益としています。運営はニッタが行っています。
■(7) その他
自動車運転免許教習事業、山林事業、牧場経営などを行っています。
教習料金や製品・サービスの販売対価を収益としています。運営はニッタ、北海道ニッタ、新田牧場、芦原自動車教習所などが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、売上高は800億円前後から900億円台へと緩やかに拡大傾向にあります。経常利益は一時的な変動はあるものの、120億円〜140億円規模で推移しており、底堅い収益性を示しています。2025年3月期は半導体関連の需要回復等により増益となりました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 787億円 | 837億円 | 880億円 | 886億円 | 903億円 |
| 経常利益 | 59億円 | 132億円 | 129億円 | 120億円 | 146億円 |
| 利益率(%) | 7.5% | 15.8% | 14.7% | 13.6% | 16.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 38億円 | 72億円 | 96億円 | 55億円 | 63億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は25%〜26%台で改善傾向にあります。営業利益率も上昇しており、原材料価格転嫁の進展や高付加価値製品の販売増が寄与し、収益性が向上しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 886億円 | 903億円 |
| 売上総利益 | 223億円 | 242億円 |
| 売上総利益率(%) | 25.2% | 26.9% |
| 営業利益 | 44億円 | 52億円 |
| 営業利益率(%) | 5.0% | 5.7% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び賞与が60億円(構成比31%)、運賃及び賃借料が26億円(同14%)を占めています。研究開発費は20億円(同11%)となっています。
■(3) セグメント収益
化工品事業が大幅な増収増益となり、全体の業績を牽引しました。主力のベルト・ゴム製品事業は微増収微増益で堅調に推移しています。ホース・チューブ製品事業は減収ながらも増益を確保しました。経営指導事業も関連会社の好調を受け増収増益となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ベルト・ ゴム製品事業 | 295億円 | 297億円 | 34億円 | 35億円 | 11.7% |
| ホース・チューブ製品事業 | 317億円 | 315億円 | 0.1億円 | 1.5億円 | 0.5% |
| 化工品事業 | 118億円 | 130億円 | 5億円 | 10億円 | 7.8% |
| その他 産業用 製品事業 | 115億円 | 115億円 | 4億円 | 3億円 | 2.3% |
| 不動産事業 | 10億円 | 9億円 | 3億円 | 3億円 | 34.2% |
| 経営指導事業 | 18億円 | 23億円 | 15億円 | 19億円 | 81.6% |
| その他 | 13億円 | 13億円 | 0億円 | 0億円 | 3.3% |
| 調整額 | - | - | -17億円 | -20億円 | - |
| 連結(合計) | 886億円 | 903億円 | 44億円 | 52億円 | 5.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
ニッタは、親会社株主に帰属する当期純利益による利益剰余金の増加や円安による為替換算調整勘定の増加により、自己資本比率が85.3%と健全性を維持しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益等により収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、主に有形固定資産の取得による支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、主に配当金の支払いによる支出となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 89億円 | 70億円 |
| 投資CF | -17億円 | -69億円 |
| 財務CF | -37億円 | -52億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「NITTAは動かす、未来へ導く製品で。世の中を前へ、そして人々を幸せに。」という使命を掲げています。国や地域で異なる顧客の要望に応え続け、発明と改良の精神をもって新たな顧客価値を創造し、産業・社会の持続的発展に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
使命を達成するための価値観として、「熱意(情熱を持って挑戦し、変化を起こしつづける)」、「進取(柔軟な発想とものづくりで、未来を切り拓く)」、「誠実(ひたむきに取り組み、お客様の期待を超える)」、「敬意(互いを尊重し、グローバルに社会や環境に貢献する)」を定めています。これらを基盤に、グループ全体が一丸となり価値創造に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
2022年3月期から2031年3月期までの10年間を対象とする中長期経営計画『SHIFT2030』を策定しています。2025年3月期からはフェーズ2が開始され、資本効率指標として事業ROICを導入し、以下の目標を掲げています。
* 2028年3月期目標:売上高1,150億円
* 2028年3月期目標:営業利益率7.0%
* 2028年3月期目標:事業ROIC 7.0%
* 2028年3月期目標:新製品売上比率10.0%
* 2028年3月期目標:海外売上高成長率(2021年3月期比)160%
■(4) 成長戦略と重点施策
「ものづくりを核としたシフトイノベーター」を目指し、成長、企業価値向上、更なるグローバル化への3大SHIFTに取り組んでいます。具体的には、既存事業の持続的成長に加え、新事業の探索や新製品開発を加速させます。また、事業ポートフォリオの見直しや事業ROICの分析・改善を進め、成長分野への投資を強化します。
* 自動車業界:EV化に対応した軽量化や新エネルギー対応製品の開発
* 半導体業界:需要変動に対応する供給体制構築と生産設備の増強
* 持分法適用会社:内燃機関以外の用途開発や一般産業向け製品の強化
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
経営戦略実現のため、「ものづくりを核としたシフトイノベーター」をあるべき姿と定め、イノベーション人材、デジタル人材、グローバル人材、次世代経営人材を特定して育成しています。また、多様性をイノベーションの源泉と捉え、ダイバーシティ推進や健康経営、働き方改革を通じ、社員が能力を最大限発揮できる環境整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.3歳 | 18.3年 | 6,703,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.9% |
| 男性育児休業取得率 | 52.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 79.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 78.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 78.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、イノベーション人材育成のNI研修受講者数(104人)、年次有給休暇取得率(77.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原材料価格・在庫・製品価格の変動
原油、ガス、原材料の大幅な値上げや市況変動により、在庫価値や製品価値が下落するリスクがあります。これに対し、原料価格の推移を注視し、影響を想定するとともに、代替品の探索を進めることでリスク低減を図っています。
■(2) 資材・部材の供給途絶
災害以外の要因、例えば生産中止や戦争・紛争、外注先の倒産などにより、生産に必要な製品の供給が停止または遅延するリスクがあります。代替製品の探索や、メーカーとの関係強化による調達先の確保を通じて対策を講じています。
■(3) 景気後退・悪化による影響
景気変動による販売不振や重要顧客の離反・倒産により、事業計画や見通しが未達となるリスクがあります。各事業部の予算進捗状況を把握し、開示すべき情報が生じた場合には適時適切に開示する体制を整えています。
■(4) 環境問題と脱炭素への動き
環境意識の高まりや脱炭素の動きにより、特に自動車業界でEV化が進展すると、既存製品(内燃機関向けベルト等)の需要が減少する可能性があります。これに備え、自動車の軽量化や新エネルギー対応、内燃機関以外の用途開発などを進めています。



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