西川ゴム工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

西川ゴム工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する、自動車用シール製品(ウェザーストリップ)を主力とするメーカー。自動車用部品および一般産業資材の製造販売を行う。当連結会計年度の業績は、売上高1,206億円(前期比2.3%増)と増収ながら、経常利益は76億円(前期比14.6%減)の減益となった。


#西川ゴム工業転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、西川ゴム工業株式会社 の有価証券報告書(第76期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 西川ゴム工業ってどんな会社?


自動車のドアや窓枠に使われる「シール製品」で高いシェアを持つ独立系部品メーカー。グローバルに展開。

(1) 会社概要


1934年に西川護膜工業所として創業し、1949年に設立されました。1991年に広島証券取引所へ上場し、2000年には東京証券取引所第二部に上場しています。自動車用シール製品を主力とし、1980年代以降、米国、タイ、中国、メキシコ、インドネシア等に現地法人を設立し、グローバル体制を構築しました。

連結従業員数は6,807名、単体では1,370名です。筆頭株主は公益財団法人西川記念財団で、第2位は取引先持株会、第3位は自動車制御ケーブル等を製造する事業会社のハイレックスコーポレーションとなっており、安定的な株主構成です。

氏名 持株比率
公益財団法人西川記念財団 7.92%
西川ゴム工業取引先持株会 6.53%
ハイレックスコーポレーション 6.43%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名、計8名で構成され、女性役員比率は13.0%です。代表取締役社長は小川秀樹氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
西川 正洋 取締役会長 1972年入社。営業本部長等を経て1986年代表取締役社長に就任。中国現地法人の董事長などを歴任し、2017年代表取締役会長。2025年4月より現職。
小川 秀樹 代表取締役社長社長執行役員 1985年入社。上海西川密封件有限公司総経理、グローバル統括本部長、常務取締役、専務取締役などを経て2023年4月より現職。
出口 幸三 代表取締役副社長副社長執行役員技術・生産統括本部長 1992年入社。営業技術部長、技術本部長、西川デザインテクノ代表取締役社長、専務取締役などを経て2025年4月より現職。
久保 勇人 取締役(常勤監査等委員) 1989年入社。ニシカワ・タチャプララート・ラバー・カンパニー副社長、人事部長、上席執行役員総務・人事本部長などを経て2025年6月より現職。


社外取締役は、大迫唯志(弁護士・広島総合法律会計事務所所長)、山本順一(元マツダ技術研究所長・常勤監査役)、藏田修(公認会計士・税理士)、岩﨑玲子(For SDGs代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「北米」「東アジア」「東南アジア」の報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


自動車用部品(ドアシール、ドリップシール等のゴム・樹脂シール製品や内外装製品)および一般産業資材(住宅用外壁目地材等)を製造販売しています。主な顧客は国内自動車メーカーや住宅関連企業です。

収益は、自動車メーカー等の顧客に対する製品販売から得ています。運営は主に同社が行い、製造の一部を子会社の西川物産、西川ゴム山口等に、加工を西川ビッグオーシャン等に委託しています。また、西川デザインテクノが設計業務を担っています。

(2) 北米


米国およびメキシコにおいて、自動車用部品の製造販売を行っています。主な顧客は北米に進出している日系自動車メーカーや現地メーカーです。

収益は、自動車メーカー等への製品販売対価です。運営は、米国のニシカワ・クーパー、メキシコのニシカワ・シーリング・システムズ・メキシコなどの連結子会社が行っています。

(3) 東アジア


中国において、自動車用部品の製造販売および加工を行っています。主な顧客は中国国内の自動車メーカー等です。

収益は、製品の販売対価です。運営は、上海西川密封件、広州西川密封件、湖北西川密封系統などの連結子会社が行っています。

(4) 東南アジア


タイおよびインドネシアにおいて、自動車用部品の製造販売を行っています。主な顧客は東南アジア地域の自動車メーカー等です。

収益は、製品の販売対価です。運営は、タイのニシカワ・タチャプララート・クーパー、インドネシアのPT.ニシカワ・カリヤ・インドネシアなどの連結子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の推移を見ると、売上高は第74期以降増加傾向にあり、第76期には1,206億円に達しました。利益面では、第74期に一時落ち込みましたが第75期に回復し、第76期は経常利益76億円を確保しています。当期純利益も安定して黒字を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 802億円 845億円 982億円 1,179億円 1,206億円
経常利益 60億円 36億円 13億円 89億円 76億円
利益率(%) 7.5% 4.3% 1.4% 7.6% 6.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 27億円 21億円 12億円 50億円 40億円

(2) 損益計算書


前期と比較して売上高は増加しましたが、営業利益は増加したものの、経常利益は減少しました。売上原価率は依然として高い水準にありますが、売上総利益率は改善傾向にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,179億円 1,206億円
売上総利益 187億円 214億円
売上総利益率(%) 15.9% 17.8%
営業利益 66億円 73億円
営業利益率(%) 5.6% 6.1%


販売費及び一般管理費のうち、荷造運搬費が39億円(構成比27.4%)、給料及び手当が35億円(同25.1%)を占めています。

(3) セグメント収益


日本セグメントは増収となりましたが、営業利益は減少しました。北米セグメントは増収となり、営業損失も大幅に縮小しました。東アジアセグメントは減収減益となり、東南アジアセグメントは売上高は横ばいながら増益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 510億円 533億円 52億円 48億円 8.9%
北米 429億円 452億円 -17億円 -1億円 -0.3%
東アジア 116億円 98億円 7億円 4億円 3.7%
東南アジア 124億円 124億円 24億円 25億円 20.5%
連結(合計) 1,179億円 1,206億円 66億円 73億円 6.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ資金(営業CFプラス)の範囲内で投資を行い(投資CFマイナス)、借入金の返済なども進めている(財務CFマイナス)ことから、「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあると言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 149億円 92億円
投資CF -52億円 -43億円
財務CF -94億円 -29億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、社是「正道 和 独創 安全」と経営理念「己の立てる所を深く掘れ そこに必ず泉あらん」を基本としています。これらを基軸に、社会の一員として法令遵守や社会貢献を果たし、時代とともに変化する課題にバランスよくアプローチすることで、ステークホルダーの期待に応える誠実な企業活動を行うことを方針としています。

(2) 企業文化


同社グループはスローガンとして「しなやかでたくましい会社」を掲げています。この実現に向けて、「ダイバーシティの推進」「人権尊重」「働き方改革」を重要課題とし、多様な人材の活用やワークライフバランスの充実などを通じて、社員のやりがいや働きがいに資する職場づくりを目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社は「2030年 グローバル中長期経営計画」を策定しており、KGI(重要目標達成指標)として、資本コストを低下させROE達成を狙う目的から、最適な自己資本比率を55%と定め、2031年3月期までの達成を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


日本セグメントでは、軽量・静音の差別化製品のブランド戦略やAI活用による開発期間短縮等でシェア拡大を図ります。海外では、北米(メキシコ)の業績改善に加え、東アジアでの非日系メーカーへの受注拡大や生産体制強化による収益性回復を目指します。また、財務報告の信頼性確保に向けた内部統制の強化にも取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人的資本経営の実現に向け、経営戦略に必要なスキル・分野を見える化した上で、外部採用やアウトソーシングによる戦略的人材確保と、選抜教育やOJT等による人材育成を進めています。また、ダイバーシティ推進や女性活躍、ワークライフバランスの充実により、魅力ある職場づくりを目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.0歳 20.7年 6,331,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.1%
男性育児休業取得率 64.7%
男女賃金差異(全労働者) 61.1%
男女賃金差異(正規) 74.7%
男女賃金差異(非正規) 82.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.6%)、ワーク・エンゲイジメントスコア(67.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況


同社グループの売上の大半は自動車用部品です。そのため、展開している各国市場において、経済低迷、通商政策の転換、物価動向、材料供給不足等により自動車生産台数が減少した場合、同社グループの業績および財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 自然災害


事業展開する国や地域で地震や豪雨等の自然災害が発生した場合、事業活動に影響が出る可能性があります。BCP策定や防災訓練等の対策を講じていますが、生産現場における減災対策等を含め、完全に被害を回避できるものではなく、業績等に影響を与える可能性があります。

(3) 為替レートの変動


グローバルに事業を展開しているため、外国通貨での取引があります。使用通貨のバランスをとる等の対策を行っていますが、市場状況の変化により大幅な為替変動が生じた場合、同社グループの業績および財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 内部統制の構築等


メキシコ連結子会社での棚卸資産誤謬問題を受け、内部統制強化に取り組んでいますが、重大な欠陥が発見される可能性は否定できず、内部統制システムが有効に機能しない場合、財務報告の信頼性に影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。