※本記事は、西川ゴム工業株式会社の有価証券報告書(第77期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 西川ゴム工業ってどんな会社?
自動車のドアや窓などに使われるシール部品を主力とし、グローバル市場で事業を展開する部品メーカーです。
■(1) 会社概要
西川ゴム工業は1949年に設立され、スポンジゴム製品の製造販売から事業を拡大しました。1986年には米国に合弁会社を設立して本格的な海外進出を開始し、その後タイ、中国、メキシコ、インドネシアなどへグローバルに生産拠点を広げてきました。1991年には上場を果たし、現在は国内外の幅広い自動車メーカーに製品を供給しています。
現在の従業員数は連結で6,294名、単体で1,384名です。筆頭株主は公益財団法人西川記念財団であり、第2位には自動車用部品の取引関係にある事業会社のハイレックスコーポレーション、第3位には西川ゴム工業取引先持株会が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 公益財団法人西川記念財団 | 8.44% |
| ハイレックスコーポレーション | 6.85% |
| 西川ゴム工業取引先持株会 | 5.85% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は13.0%です。代表取締役社長は小川秀樹氏が務めており、社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小川秀樹 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1985年入社。上海等の中国現地法人で董事長を歴任。グローバル統括本部長や営業本部管掌などを経て、2023年より現職。 |
| 西川正洋 | 取締役会長 | 1972年入社。1986年に代表取締役社長に就任し長年経営を牽引。海外子会社の董事長を歴任後、2017年に代表取締役会長となり、2025年より現職。 |
| 出口幸三 | 代表取締役副社長副社長執行役員技術、生産、営業、品質保証管掌 | 1992年入社。米国子会社での営業技術エンジニアを経て、技術本部長などを歴任。技術・生産統括本部長等を経て、2025年より現職。 |
| 久保勇人 | 取締役(常勤監査等委員) | 1989年入社。タイ子会社の管理担当副社長を経て、人事部長、総務・人事本部長などの管理部門を歴任。2025年より現職。 |
社外取締役は、大迫唯志(弁護士)、山本順一(元マツダ技術研究所長)、藏田修(公認会計士)、岩﨑玲子(元TOPPAN代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」、「北米」、「東アジア」、「東南アジア」の報告セグメントを展開しています。
■日本
自動車用部品(ゴム・樹脂シール製品および内外装製品等)や住宅用外壁目地材の製造販売を行っています。また、スキンケア製品や一般産業資材等も取り扱っており、国内外の自動車メーカーや住宅メーカーなどを主要顧客としています。
収益は製品の販売による代金から得ています。事業の運営は西川ゴム工業が主体となり、製造や加工などを西川物産や西川ビッグオーシャン、西川ゴム山口などのグループ会社と分担して行っています。
■北米
米国およびメキシコを中心に、現地の自動車メーカーや日系自動車メーカーの海外拠点向けに自動車用部品の製造と販売を行っています。北米市場の需要に応える製品供給を担っています。
製品の納入による販売代金が主な収益源です。運営はニシカワ・クーパー LLCおよびニシカワ・シーリング・システムズ・メキシコが主体となって行っています。
■東アジア
中国市場において、自動車用部品の製造販売および設備の販売を行っています。日系および中国現地の自動車メーカーに加え、欧州メーカー向けの生産・販売拠点としての役割も担っています。
自動車用部品や関連設備の販売代金により収益を得ています。事業の運営は上海西川密封件、広州西川密封件、湖北西川密封系統、および西川橡胶(上海)が担当しています。
■東南アジア
タイやインドネシアを拠点に、現地の自動車市場に向けた自動車用部品の製造と販売を行っています。樹脂製品の内製化を進めるなど、収益性の改善と競争力強化に取り組んでいます。
収益源は自動車メーカー等への製品の販売代金です。運営はニシカワ・タチャプララート・クーパー Ltd.およびPT. ニシカワ・カリヤ・インドネシアが主体となって行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は一貫して増加傾向にあり、直近5年間で順調に事業規模を拡大しています。利益面では一時的な増減があるものの、直近の期においては経常利益、当期利益ともに大幅な増益を達成し、利益率も大きく改善して高い収益性を確保しています。
| 項目 | 第73期 | 第74期 | 第75期 | 第76期 | 第77期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 845億円 | 982億円 | 1179億円 | 1206億円 | 1221億円 |
| 経常利益 | 36億円 | 13億円 | 89億円 | 76億円 | 112億円 |
| 利益率(%) | 4.3% | 1.4% | 7.6% | 6.3% | 9.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 43億円 | 35億円 | 40億円 | 51億円 | 101億円 |
■(2) 損益計算書
売上高が堅調に推移するなかで、売上原価の低減や価格転嫁等の効果により売上総利益が増加しています。営業利益も前期間から大幅に伸びており、収益性の改善が明確に表れています。
| 項目 | 第76期 | 第77期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1206億円 | 1221億円 |
| 売上総利益 | 214億円 | 234億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.8% | 19.2% |
| 営業利益 | 73億円 | 91億円 |
| 営業利益率(%) | 6.1% | 7.5% |
■(3) セグメント収益
北米セグメントは受注車種の増産や為替の影響で増収となりました。一方、東アジアおよび東南アジアセグメントは日本車販売の低迷などで減収となったものの、費用抑制の徹底により利益水準を維持しています。日本セグメントも増産効果で増収を確保しました。
| 区分 | 売上(第76期) | 売上(第77期) |
|---|---|---|
| 日本 | 533億円 | 536億円 |
| 北米 | 452億円 | 476億円 |
| 東アジア | 98億円 | 89億円 |
| 東南アジア | 124億円 | 120億円 |
| 連結(合計) | 1206億円 | 1221億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態です。
| 項目 | 第76期 | 第77期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 92億円 | 122億円 |
| 投資CF | -43億円 | -9億円 |
| 財務CF | -29億円 | -97億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.6%で、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、社是である「正道・和・独創・安全」と、経営理念の「己の立てる所を深く掘れ そこに必ず泉あらん」を基軸としています。事業を通じて社会に貢献するだけでなく、環境や社会問題にもバランスよくアプローチし、高い倫理観と誠実な企業活動を通じて持続的に存在価値を高めることを目指しています。
■(2) 企業文化
多様な価値観を持つ社員一人ひとりが挑戦し成長し続ける企業文化の醸成を重視しています。また、変化に柔軟に対応して新たな価値創出に挑む「弾力発想。」や、社員が一致協力して業務に取り組む「全員経営」をスローガンに掲げ、多様性(ダイバーシティ)の推進や働き方改革を推進しています。
■(3) 経営計画・目標
「2030年 グローバル中長期経営計画」を推進し、資本コストを意識した経営と持続的な企業価値の向上を目指しています。財務目標として、最適な自己資本比率を55%と定め、ROEおよびROICの確実な達成をKGIとして設定しています。
* 売上高:1,180億円(2027年3月期見通し)
* 営業利益:75億円(2027年3月期見通し)
■(4) 成長戦略と重点施策
軽量化・静音化を実現する差別化製品「ESquare(イースクエア)」のブランド戦略を打ち立て、国内外でのプロモーションと技術移転を推進しています。また、海外事業の立て直しや拠点間連携を進め、欧州メーカー等からの受注拡大による収益性の向上と競争力強化を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「グローバルニッチトップ企業」を目指し、次世代経営幹部やグローバルマネジメント人材、開発技術者などの重点強化人材を定義しています。専門性を持つ外部人材の採用に加えて、階層別教育や選抜型教育、DX/AI教育等を通じて既存社員の能力向上を図り、多様な人材が活躍できる職場環境の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 第77期 | 45.3歳 | 20.7年 | 6,734,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.6% |
| 男性育児休業取得率 | 60.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.3% |
| 男女賃金差異(正規) | 73.7% |
| 男女賃金差異(非正規) | 87.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ワーク・エンゲイジメントスコア(67.7%)、障がい者雇用率(2.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原材料の調達と価格変動
原材料および部品を複数のグループ外供給元から調達しているため、中東情勢などの影響により原材料の継続的な確保が困難になったり、価格が急騰したりした場合には、生産活動や収益に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は調達先の分散や代替品の検討を進めています。
■(2) 情報セキュリティとサイバー攻撃
業務で使用する情報システムにおいて、機器の不具合や高度化するサイバー攻撃により重大な障害が発生した場合、システムの停止による生産活動の支障や機密情報の漏洩が生じるリスクがあります。同社はセキュリティガイドラインに基づいた対策や社員への教育を強化しています。
■(3) 海外進出国における税務対応
グローバルに事業を展開しているため、進出する国や地域の税務処理において現地の税務当局と解釈や認識に相違が生じるリスクがあります。想定外の追加課税や罰金などが発生し、財務状況に影響を及ぼす可能性があるため、外部専門家を活用した適正な税務申告体制を構築しています。



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