#西川ゴム工業転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、西川ゴム工業株式会社 の有価証券報告書(第76期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 西川ゴム工業ってどんな会社?
自動車のドアや窓枠に使われる「シール製品」で高いシェアを持つ独立系部品メーカー。グローバルに展開。
■(1) 会社概要
1934年に西川護膜工業所として創業し、1949年に設立されました。1991年に広島証券取引所へ上場し、2000年には東京証券取引所第二部に上場しています。自動車用シール製品を主力とし、1980年代以降、米国、タイ、中国、メキシコ、インドネシア等に現地法人を設立し、グローバル体制を構築しました。
連結従業員数は6,807名、単体では1,370名です。筆頭株主は公益財団法人西川記念財団で、第2位は取引先持株会、第3位は自動車制御ケーブル等を製造する事業会社のハイレックスコーポレーションとなっており、安定的な株主構成です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 公益財団法人西川記念財団 | 7.92% |
| 西川ゴム工業取引先持株会 | 6.53% |
| ハイレックスコーポレーション | 6.43% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名、計8名で構成され、女性役員比率は13.0%です。代表取締役社長は小川秀樹氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 西川 正洋 | 取締役会長 | 1972年入社。営業本部長等を経て1986年代表取締役社長に就任。中国現地法人の董事長などを歴任し、2017年代表取締役会長。2025年4月より現職。 |
| 小川 秀樹 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1985年入社。上海西川密封件有限公司総経理、グローバル統括本部長、常務取締役、専務取締役などを経て2023年4月より現職。 |
| 出口 幸三 | 代表取締役副社長副社長執行役員技術・生産統括本部長 | 1992年入社。営業技術部長、技術本部長、西川デザインテクノ代表取締役社長、専務取締役などを経て2025年4月より現職。 |
| 久保 勇人 | 取締役(常勤監査等委員) | 1989年入社。ニシカワ・タチャプララート・ラバー・カンパニー副社長、人事部長、上席執行役員総務・人事本部長などを経て2025年6月より現職。 |
社外取締役は、大迫唯志(弁護士・広島総合法律会計事務所所長)、山本順一(元マツダ技術研究所長・常勤監査役)、藏田修(公認会計士・税理士)、岩﨑玲子(For SDGs代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「北米」「東アジア」「東南アジア」の報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 日本
自動車用部品(ドアシール、ドリップシール等のゴム・樹脂シール製品や内外装製品)および一般産業資材(住宅用外壁目地材等)を製造販売しています。主な顧客は国内自動車メーカーや住宅関連企業です。
収益は、自動車メーカー等の顧客に対する製品販売から得ています。運営は主に同社が行い、製造の一部を子会社の西川物産、西川ゴム山口等に、加工を西川ビッグオーシャン等に委託しています。また、西川デザインテクノが設計業務を担っています。
■(2) 北米
米国およびメキシコにおいて、自動車用部品の製造販売を行っています。主な顧客は北米に進出している日系自動車メーカーや現地メーカーです。
収益は、自動車メーカー等への製品販売対価です。運営は、米国のニシカワ・クーパー、メキシコのニシカワ・シーリング・システムズ・メキシコなどの連結子会社が行っています。
■(3) 東アジア
中国において、自動車用部品の製造販売および加工を行っています。主な顧客は中国国内の自動車メーカー等です。
収益は、製品の販売対価です。運営は、上海西川密封件、広州西川密封件、湖北西川密封系統などの連結子会社が行っています。
■(4) 東南アジア
タイおよびインドネシアにおいて、自動車用部品の製造販売を行っています。主な顧客は東南アジア地域の自動車メーカー等です。
収益は、製品の販売対価です。運営は、タイのニシカワ・タチャプララート・クーパー、インドネシアのPT.ニシカワ・カリヤ・インドネシアなどの連結子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の推移を見ると、売上高は第74期以降増加傾向にあり、第76期には1,206億円に達しました。利益面では、第74期に一時落ち込みましたが第75期に回復し、第76期は経常利益76億円を確保しています。当期純利益も安定して黒字を維持しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 802億円 | 845億円 | 982億円 | 1,179億円 | 1,206億円 |
| 経常利益 | 60億円 | 36億円 | 13億円 | 89億円 | 76億円 |
| 利益率(%) | 7.5% | 4.3% | 1.4% | 7.6% | 6.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 27億円 | 21億円 | 12億円 | 50億円 | 40億円 |
■(2) 損益計算書
前期と比較して売上高は増加しましたが、営業利益は増加したものの、経常利益は減少しました。売上原価率は依然として高い水準にありますが、売上総利益率は改善傾向にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,179億円 | 1,206億円 |
| 売上総利益 | 187億円 | 214億円 |
| 売上総利益率(%) | 15.9% | 17.8% |
| 営業利益 | 66億円 | 73億円 |
| 営業利益率(%) | 5.6% | 6.1% |
販売費及び一般管理費のうち、荷造運搬費が39億円(構成比27.4%)、給料及び手当が35億円(同25.1%)を占めています。
■(3) セグメント収益
日本セグメントは増収となりましたが、営業利益は減少しました。北米セグメントは増収となり、営業損失も大幅に縮小しました。東アジアセグメントは減収減益となり、東南アジアセグメントは売上高は横ばいながら増益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 510億円 | 533億円 | 52億円 | 48億円 | 8.9% |
| 北米 | 429億円 | 452億円 | -17億円 | -1億円 | -0.3% |
| 東アジア | 116億円 | 98億円 | 7億円 | 4億円 | 3.7% |
| 東南アジア | 124億円 | 124億円 | 24億円 | 25億円 | 20.5% |
| 連結(合計) | 1,179億円 | 1,206億円 | 66億円 | 73億円 | 6.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業で稼いだ資金(営業CFプラス)の範囲内で投資を行い(投資CFマイナス)、借入金の返済なども進めている(財務CFマイナス)ことから、「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあると言えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 149億円 | 92億円 |
| 投資CF | -52億円 | -43億円 |
| 財務CF | -94億円 | -29億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、社是「正道 和 独創 安全」と経営理念「己の立てる所を深く掘れ そこに必ず泉あらん」を基本としています。これらを基軸に、社会の一員として法令遵守や社会貢献を果たし、時代とともに変化する課題にバランスよくアプローチすることで、ステークホルダーの期待に応える誠実な企業活動を行うことを方針としています。
■(2) 企業文化
同社グループはスローガンとして「しなやかでたくましい会社」を掲げています。この実現に向けて、「ダイバーシティの推進」「人権尊重」「働き方改革」を重要課題とし、多様な人材の活用やワークライフバランスの充実などを通じて、社員のやりがいや働きがいに資する職場づくりを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は「2030年 グローバル中長期経営計画」を策定しており、KGI(重要目標達成指標)として、資本コストを低下させROE達成を狙う目的から、最適な自己資本比率を55%と定め、2031年3月期までの達成を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
日本セグメントでは、軽量・静音の差別化製品のブランド戦略やAI活用による開発期間短縮等でシェア拡大を図ります。海外では、北米(メキシコ)の業績改善に加え、東アジアでの非日系メーカーへの受注拡大や生産体制強化による収益性回復を目指します。また、財務報告の信頼性確保に向けた内部統制の強化にも取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人的資本経営の実現に向け、経営戦略に必要なスキル・分野を見える化した上で、外部採用やアウトソーシングによる戦略的人材確保と、選抜教育やOJT等による人材育成を進めています。また、ダイバーシティ推進や女性活躍、ワークライフバランスの充実により、魅力ある職場づくりを目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 45.0歳 | 20.7年 | 6,331,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.1% |
| 男性育児休業取得率 | 64.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.1% |
| 男女賃金差異(正規) | 74.7% |
| 男女賃金差異(非正規) | 82.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.6%)、ワーク・エンゲイジメントスコア(67.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済状況
同社グループの売上の大半は自動車用部品です。そのため、展開している各国市場において、経済低迷、通商政策の転換、物価動向、材料供給不足等により自動車生産台数が減少した場合、同社グループの業績および財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 自然災害
事業展開する国や地域で地震や豪雨等の自然災害が発生した場合、事業活動に影響が出る可能性があります。BCP策定や防災訓練等の対策を講じていますが、生産現場における減災対策等を含め、完全に被害を回避できるものではなく、業績等に影響を与える可能性があります。
■(3) 為替レートの変動
グローバルに事業を展開しているため、外国通貨での取引があります。使用通貨のバランスをとる等の対策を行っていますが、市場状況の変化により大幅な為替変動が生じた場合、同社グループの業績および財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 内部統制の構築等
メキシコ連結子会社での棚卸資産誤謬問題を受け、内部統制強化に取り組んでいますが、重大な欠陥が発見される可能性は否定できず、内部統制システムが有効に機能しない場合、財務報告の信頼性に影響が及ぶ可能性があります。



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