HOYA 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

HOYA 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

HOYAは東京証券取引所プライム市場に上場する企業で、メガネレンズ等のライフケア事業と半導体関連の情報・通信事業を展開しています。直近の業績は、両事業が好調に推移し、売上収益と利益がともに過去最高を更新する大幅な増収増益を達成しました。積極的な設備投資とグローバルな事業展開で成長を続けています。


※本記事は、HOYA株式会社の有価証券報告書(第88期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月5日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. HOYAってどんな会社?


ライフケア事業と情報・通信事業を柱にグローバルなポートフォリオ経営を推進する企業です。

(1) 会社概要


同社は1941年に東洋光学硝子製造所として創業し、光学ガラスの製造を開始しました。1961年に東京証券取引所市場第二部に上場、1973年に同市場第一部へ指定されました。2008年にペンタックスを吸収合併し、2013年にはセイコーエプソンからメガネレンズ開発製造事業を譲り受けるなど、事業の拡大と再編を推進しています。近年も国内外の企業買収や合弁会社の設立を通じて、積極的な事業展開を行っています。

現在の従業員数は連結で37,752名、単体で3,313名です。大株主については、上位3名がいずれも信託銀行等の機関投資家や資産管理業務を行う金融機関となっており、安定した株主構成を維持しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 18.51%
日本カストディ銀行(信託口) 6.88%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001(常任代理人みずほ銀行決済営業部) 4.11%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性3名の計8名で構成され、女性役員比率は37.5%です。代表執行役最高経営責任者(CEO)は池田英一郎氏が務めています。取締役7名のうち5名が社外取締役であり、独立した監督体制を構築しています。

氏名 役職 主な経歴
池田英一郎 取締役 代表執行役最高経営責任者(CEO) 1992年入社。オプティクス事業部光学レンズSBU長、執行役CTO等を経て2022年より現職。
廣岡亮 取締役 代表執行役最高財務責任者(CFO) 1996年住友信託銀行入社。2002年入社。オランダ支店DeputyCFO等を経て2022年より現職。


社外取締役は、吉原寛章(元KPMG LLPマネージングパートナー)、阿部康行(元住商情報システム社長)、長谷川隆代(元昭和電線ケーブルシステム社長)、西村美香(元GILDE HEALTHCARE PARTNERS Operational Partner)、佐藤基嗣(元パナソニックHD副社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ライフケア」「情報・通信」および「その他」事業を展開しています。

(1) ライフケア


メガネレンズやコンタクトレンズといったヘルスケア関連製品と、医療用内視鏡や白内障用眼内レンズなどのメディカル関連製品を提供しています。一般消費者や国内外の医療機関を主要な顧客とし、健康と医療を支える高品質な製品群を展開しています。

収益源は、製品の販売代金や保守サービス料です。小売店を通じたヘルスケア製品の販売や、医療機関に向けた医療機器の販売などから収益を得ています。運営は主にHOYAが担い、海外においては各種関連子会社が製造や販売をサポートしています。

(2) 情報・通信


半導体用マスクブランクスやHDD用ガラスサブストレートなどのエレクトロニクス関連製品、および光学レンズや光関連機器などの映像関連製品を製造・販売しています。顧客は主にグローバルに展開するデジタル機器メーカーや半導体メーカーです。

収益源は、電子部品や光学部品等の製品販売代金です。高度な技術が求められる製品群をメーカー等へ提供して収益を得ています。運営は主にHOYAが行い、海外の各地域において製造・販売子会社が事業活動を展開しています。

(3) その他


報告セグメントに含まれない事業として、音声合成ソフトウェア事業などを展開していました。顧客はシステム開発企業や一般事業会社など幅広い層にわたり、音声技術を活用したサービスを提供していました。

収益源は、ソフトウェアの販売やライセンス提供による収益です。運営は主に関連子会社が担当していましたが、同事業は2025年10月に譲渡が完了しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上収益と税引前利益がともに右肩上がりで成長を続けています。特に直近の事業年度では、情報・通信事業における需要増やライフケア事業の好調により、大幅な増収増益を達成し、売上収益と利益が過去最高を更新しました。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 6,615億円 7,236億円 7,626億円 8,660億円 9,477億円
税引前利益 2,107億円 2,158億円 2,366億円 2,600億円 3,277億円
利益率(%) 31.9% 29.8% 31.0% 30.0% 34.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 1,653億円 1,688億円 1,826億円 2,018億円 2,515億円

(2) 損益計算書


売上収益は前期から増加し増収となっています。売上総利益も増加していますが、利益率は安定した水準を維持しています。主力事業の好調が継続し、強固な収益基盤を構築していることが伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 8,660億円 9,477億円
売上総利益 1,334億円 1,394億円
売上総利益率(%) 15.4% 14.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が177億円(構成比23%)、研究費が150億円(同19%)、支払手数料が124億円(同16%)、広告宣伝費が51億円(同7%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上収益を見ると、ライフケア事業ではメガネレンズの高付加価値製品の販売増やコンタクトレンズの新規出店により増収となりました。情報・通信事業では半導体用マスクブランクスや映像関連製品の需要が高位に推移し、大幅な増収を牽引しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
ライフケア 5,509億円 5,907億円
情報・通信 3,116億円 3,552億円
その他 40億円 23億円
連結(合計) 8,660億円 9,477億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFと財務CFはマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 2,351億円 2,784億円
投資CF -332億円 -76億円
財務CF -1,904億円 -2,613億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は25.4%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は81.5%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、持続的成長と企業価値の最大化を経営方針として掲げています。その実現のため、ビジネスモデルや営業地域などが異なる複数の事業を展開してリスクを分散し、グループ全体の収益性や安定性、成長性を確保するポートフォリオ経営を推進しています。社会の進展を支える製品を通じてステークホルダーの満足を追求しています。

(2) 企業文化


同社は「個人の尊重」を経営基本原則の一つに据え、個人の自主性と創造性を最大限に発揮できる企業文化を育んでいます。多様性を尊重し、その違いを活かすことで変化に柔軟に対応する組織を目指しています。また、公平性と透明性を確保しつつ、成果志向(Pay for Performance)を重視する価値観が根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社は、資本に対するコストを上回る利益を生むことで企業価値が増大するという考えのもと、経営指標としてSVA(Shareholders Value Added)を導入し効率的な経営に努めています。また、環境目標として以下の数値目標を掲げています。

* 2040年までに事業活動で使用する電力の100%を再生可能エネルギー由来にする
* 2040年までに2021年度比でCO2排出量を100%削減する

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向け、成長性の高い領域へ経営資源を積極的に配分する戦略を推進しています。世界的な高齢化を背景とするライフケア事業と、情報化社会の進展に伴う情報・通信事業を成長ドライバーと位置づけています。また、内部開発やM&Aを通じた新たな事業や技術の創出、地政学リスクへの対応、サイバーセキュリティの強化を重点施策として取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、分権型・ポートフォリオ経営を支える人材ポートフォリオの構築と高度化を人材戦略の柱としています。自律的かつ迅速な意思決定を可能にするため、将来の成長領域を見据えた人的投資や技術人材の育成を強化しています。また、社員のキャリア自律を支援し、多様な人材が長期的に活躍できる環境づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 47.6歳 18.7年 9,704,451円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 18.1%
男性育児休業取得率 80.6%
男女賃金差異(全従業員) 40.1%
男女賃金差異(正規従業員) 58.6%
男女賃金差異(非正規従業員) 84.5%


また、同社は「人的資本」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、海外現地法人の日本人以外の責任者比率(約90%)、行動基準の順守に関する確認書の提出率(99.5%)、国内における女性非正規従業員比率(33.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国際情勢と為替変動の影響


為替の大幅な変動や、事業展開国における政治・経済状況の変化、予期せぬ事象の発生が事業遂行に影響を及ぼす可能性があります。高付加価値製品の販売促進や生産地の多様化などの対策を講じていますが、想定を超える外部環境の変化は業績や財務状況に影響を与えるリスクがあります。

(2) 情報管理とサイバーセキュリティのリスク


事業遂行において多くの個人情報や機密情報を保有しており、IT資産の適切な管理や従業員教育などの対策を実施しています。しかしながら、万一情報流出が発生した場合には、社会的信用の低下や損害賠償責任が生じ、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 製品の品質と製造物責任のリスク


同社は高い品質基準に基づいて多様な製品を製造し、国際的な品質マネジメントシステムの認証を取得して製品安全の向上に努めています。しかし、万一品質問題が発生しリコールや製造物責任が問われた場合、回収費用の発生や顧客の信頼低下を招くリスクがあります。

(4) 資材等の安定調達に関するリスク


生産活動に必要な原材料や部品の中には、特殊性から調達先が限定されるものがあります。代替品の検討や契約等を通じて安定調達を図っていますが、災害や価格高騰により必要な資材が確保できない場合、製品の出荷遅延等の機会損失が発生する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。