ノリタケ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ノリタケ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライムおよび名証プレミア市場に上場する同社は、工業機材、セラミック・マテリアル、エンジニアリング、食器事業を展開する企業グループです。直近の業績は、売上高が微増し、営業利益は減少したものの、投資有価証券売却益の計上などにより親会社株主に帰属する当期純利益は増益となりました。


※本記事は、ノリタケ株式会社 の有価証券報告書(第144期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ノリタケってどんな会社?


研削砥石などの工業機材から祖業である食器まで幅広く展開し、セラミックス技術を核に多角化を進める企業です。

(1) 会社概要


同社のルーツは1904年の日本陶器合名会社創立に遡り、1914年に日本初のディナーセットを完成させました。1917年には日本陶器を設立し、1939年より工業用研削砥石の本格製造を開始して事業を拡大しました。2000年代以降はグループ再編を進め、2024年には現在の「ノリタケ」へと商号変更を行っています。

2025年3月31日現在、グループ全体の従業員数は4,921名、単体では1,784名です。筆頭株主は資産管理を行う日本マスタートラスト信託銀行で、続いて明治安田生命保険、第一生命保険などの機関投資家が並びます。また、森村グループの一員としてTOTOや日本碍子も大株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.08%
明治安田生命保険相互会社(常任代理人 日本カストディ銀行) 8.97%
第一生命保険株式会社(常任代理人 日本カストディ銀行) 7.24%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は東山明氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
加藤博 代表取締役会長 1979年入社。財務部長、取締役常務執行役員などを経て、2018年代表取締役社長執行役員に就任。2024年4月より現職。
東山明 代表取締役社長執行役員研究開発センター、知財企画部担当 1986年入社。エンジニアリング事業部長、取締役専務執行役員、代表取締役副社長執行役員などを経て、2024年4月より現職。
岡部信 取締役専務執行役員 1983年三菱商事入社。同社常務執行役員を経て、2020年ノリタケ入社。工業機材事業本部副本部長などを経て、2023年6月より現職。
夫馬裕子 取締役常務執行役員 1986年入社。経営企画室長、執行役員などを経て、2024年4月より現職。総務部、法務部、秘書室、監査室担当。
中村吉雅 取締役常勤監査等委員 1989年入社。財務部長、執行役員などを経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、山本良一(元J.フロント リテイリング代表執行役社長)、藤岡高広(愛知製鋼代表取締役会長)、猿渡辰彦(元TOTO代表取締役副社長)、森崎孝(三菱総合研究所取締役会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「工業機材」「セラミック・マテリアル」「エンジニアリング」「食器」事業を展開しています。

(1) 工業機材事業


製造業の基盤を支える研削砥石、ダイヤモンド工具、研磨布紙などの製造・販売を行っています。主な顧客は自動車、鉄鋼、ベアリングなどの製造業界です。

収益は製品の販売対価として得ています。運営は、ノリタケが研削砥石等の製造・販売を行うほか、子会社の日本レヂボンなどが研磨布紙の製造を行い、販売面では株式会社ゼンノリタケや米国のNoritake U.S.A., Inc.などの子会社が担っています。

(2) セラミック・マテリアル事業


電子ペースト、厚膜回路基板、蛍光表示管、セラミック原料、石膏などを提供しています。電子部品や半導体、自動車関連メーカーなどが主な顧客です。

製品販売による収益が主です。ノリタケが電子ペースト等を製造・販売するほか、ノリタケ伊勢電子が蛍光表示管を、共立マテリアルがセラミック原料等を製造・販売しています。海外ではPT. Noritake Indonesiaなどが製造拠点を持ちます。

(3) エンジニアリング事業


各種工業炉(焼成炉・乾燥炉)、スタティックミキサー、濾過装置などの産業機械装置を提供しています。エネルギー、エレクトロニクス、化学業界などが顧客です。

装置の販売対価が収益源です。ノリタケが製造・販売を行うほか、各種工業炉の製造を株式会社ノリタケTCFが、国内販売の一部を株式会社ノリタケマシンテクノが行っています。

(4) 食器事業


家庭用およびホテル・レストラン向けの陶磁器食器を提供しています。一般消費者や宿泊・飲食業が顧客です。

食器の販売対価が収益となります。ノリタケが製造・販売を行うほか、スリランカの子会社Noritake Lanka Porcelain (Private) Limitedが製造を行い、米国などの販売子会社を通じてグローバルに展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、売上高は第142期以降1,380億円前後で安定して推移しています。経常利益は120億円から140億円台を維持しており、利益率は10%前後と安定した収益性を保っています。当期純利益は右肩上がりの傾向にあり、第144期には過去最高水準となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,070億円 1,276億円 1,395億円 1,379億円 1,382億円
経常利益 45億円 125億円 124億円 146億円 140億円
利益率(%) 4.2% 9.8% 8.9% 10.6% 10.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 28億円 91億円 100億円 115億円 129億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で横ばいですが、売上総利益率は微増しています。営業利益および営業利益率は若干低下しました。全体として売上原価のコントロールは効いていますが、販管費の増加が営業利益の押し下げ要因となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,379億円 1,382億円
売上総利益 378億円 386億円
売上総利益率(%) 27.4% 28.0%
営業利益 107億円 102億円
営業利益率(%) 7.8% 7.4%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び従業員給料が94億円(構成比33%)、減価償却費が14億円(同5%)を占めています。売上原価には、商品や製品の製造・仕入コストが含まれています。

(3) セグメント収益


工業機材事業とエンジニアリング事業、食器事業は増収となりましたが、セラミック・マテリアル事業は減収となりました。利益面では、セラミック・マテリアル事業が増益となった一方、工業機材事業とエンジニアリング事業は減益となりました。食器事業は黒字転換を果たしています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
工業機材 557億円 564億円 25億円 17億円 3.0%
セラミック・マテリアル 466億円 455億円 62億円 66億円 14.5%
エンジニアリング 286億円 291億円 22億円 19億円 6.6%
食器 70億円 72億円 -1億円 0.1億円 0.2%
連結(合計) 1,379億円 1,382億円 107億円 102億円 7.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ノリタケのキャッシュ・フローの状況について解説します。

営業活動によるキャッシュ・フローは、仕入債務の減少や法人税等の支払額増加により、前年より減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却収入が増加した一方、固定資産取得や定期預金預入による支出が増加し、支出額が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の増加により、支出額が減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 220億円 20億円
投資CF -32億円 -53億円
財務CF -135億円 -30億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、創業者が「我カ社ノ精神」に記した「事業を通じて社会に貢献する」という姿勢を経営理念の核としています。また、「良品」「輸出」「共栄」を社是として掲げ、持続可能な社会の実現と企業価値の継続的な向上を目指しています。

(2) 企業文化


同社は創業者の精神を受け継ぎ、「ノリタケグループ企業倫理綱領」を策定し、高い企業倫理の実践を重視しています。ガバナンスの強化、地球環境への配慮、社会を便利にし人を幸福にする製品・サービスの提供を通じて、ステークホルダーとの共存共栄を図る文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


2030年度のありたい姿「VISION2030」の実現に向け、2025年度から2027年度までの「第13次中期経営計画」を推進しています。本計画期間を「成長基盤の確立」と位置づけ、以下の数値目標を掲げています。

* 連結売上高:1,575億円
* 連結営業利益:135億円
* 連結経常利益:175億円
* ROE:9%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「選択と集中」を基本方針とし、従来の基盤領域から、成長が見込まれる「環境」「エレクトロニクス」「ウェルビーイング」の3分野へ事業領域の転換を図ります。

* 強固な収益基盤の構築:成長領域への積極投資、新商品開発、価格適正化や原価低減による収益改善。
* 成長加速に向けた投資:市場起点の事業横断的な投資機会の探索、M&Aや資本提携、オープンイノベーションによる新事業創出。
* 経営基盤の高度化:サステナビリティ経営の推進、人的資本経営の強化、DXの推進。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「VISION2030」実現に向け、人材投資の強化、タレントマネジメントの実践、新人事制度の導入、従業員エンゲージメントを高める社内環境の整備を柱とする人財戦略を推進しています。特に「従業員の心」の面からのアプローチを重視し、多様な人材が活躍できる組織風土の改革に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.8歳 21.4年 6,710,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.9%
男性育児休業取得率 71.4%
男女賃金差異(全労働者) 72.6%
男女賃金差異(正規) 75.0%
男女賃金差異(非正規) 79.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(71.3%)、ストレスチェック受検率(96.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況の変動に関するリスク


同社グループは自動車、鉄鋼、半導体など幅広い分野に製品を提供していますが、国内外の景気、設備投資、個人消費などの経済状況の影響を受けます。これらの需要動向が悪化した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料、燃料の高騰について


窯業を中心とする事業を展開しているため、原材料や燃料価格の高騰は製造コストの上昇に直結します。生産性向上や価格転嫁に努めていますが、過度な急激な価格上昇を吸収しきれない場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 為替の変動について


セラミック・マテリアル事業や食器事業は輸出比率が高く、原材料の輸入も行っています。短期的な変動は為替予約等で対応していますが、急激な為替変動は輸出入価格や外貨建て資産の評価に影響を与え、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 海外情勢の変化によるリスク


売上の約47%が海外市場であり、海外生産も展開しています。各国の政治情勢不安、経済の不確実性、予期せぬ法規制や税制の変更、テロや紛争などが発生した場合、事業活動が制約され、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。