※本記事は、ノリタケ株式会社の有価証券報告書(第145期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ノリタケってどんな会社?
研削砥石などの工業機材や電子材料を軸に、多角的な事業展開で産業と食卓を支えるメーカーです。
■(1) 会社概要
1904年に日本陶器合名会社として創立され、輸出用陶磁器の製造を開始しました。1914年には日本初のディナーセットを完成させ、1939年より工業用研削砥石の本格製造を開始しました。1949年に株式上場を果たし、その後複数回の組織再編を経て、2024年にノリタケへ商号変更しています。
従業員数は連結で4,901名、単体で1,722名です。大株主については、筆頭株主および第2位株主ともに資産管理業務などを行う信託銀行や生命保険会社等の金融機関が占めており、安定した資本基盤を背景に事業運営が行われています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.67% |
| 明治安田生命保険 | 9.22% |
| INTERTRUST TRUSTEES(CAYMAN)LIMITED SOLELY IN ITS CAPACITY AS TRUSTEE OF JAPAN−UP | 6.88% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性4名の計10名で構成され、女性役員比率は40.0%です。代表取締役会長は加藤博、代表取締役社長執行役員は東山明が務めています。社外取締役比率は50.0%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 加藤博 | 代表取締役会長 | 1979年入社。財務部長、執行役員、取締役常務執行役員などを経て2018年より代表取締役社長執行役員。2024年より現職。 |
| 東山明 | 代表取締役社長執行役員研究開発センター、知財企画部担当 | 1986年入社。エンジニアリング事業部長、取締役専務執行役員などを経て2022年に代表取締役副社長執行役員。2024年より現職。 |
| 岡部信 | 取締役専務執行役員コーポレートサービス統括部、人財マネジメント部、経営企画室担当、Noritake U.S.A., Inc. 社長、Noritake Lanka Porcelain (Private) Limited 会長 | 1983年三菱商事入社。2020年ノリタケ常務執行役員。2022年米国およびスリランカ現地法人社長・会長。2023年より現職。 |
| 前田智朗 | 取締役専務執行役員工業機材事業本部長 | 1990年入社。エンジニアリング事業部長、執行役員を経て2023年より工業機材事業本部長。2025年より現職。 |
| 夫馬裕子 | 取締役常勤監査等委員 | 1986年入社。経営企画室長、執行役員、取締役常務執行役員として総務や法務等を担当。2025年より現職。 |
社外取締役は、藤岡高広(元愛知製鋼会長)、船引英子(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング執行役員)、唯美津木(現東海国立大学機構名古屋大学教授)、森崎孝(元三菱UFJフィナンシャル・グループ常務執行役員)、松本千佳(現ブラザー工業社外監査役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「工業機材事業」「セラミック・マテリアル事業」「エンジニアリング事業」「食器事業」を展開しています。
■工業機材事業
研削砥石、ダイヤモンド工具、研磨布紙などの製造販売を行っており、主に自動車、鉄鋼、ベアリング、電子・半導体業界等の法人顧客へ製品を提供しています。
収益源は各製品の販売代金です。運営はノリタケのほか、販売を担うゼンノリタケ、製造を担う日本レヂボンなどの子会社が国内・海外市場で担当しています。
■セラミック・マテリアル事業
電子ペースト、セラミックコア、蛍光表示管、電子部品材料などの製造販売を行っており、自動車やAI関連、通信機器などを扱うエレクトロニクス企業を顧客としています。
収益源は製品の販売代金です。運営はノリタケのほか、ノリタケ伊勢や共立マテリアルなどの関連子会社が連携し、製造・販売体制を構築しています。
■エンジニアリング事業
各種工業炉や混合・濾過装置、超硬丸鋸切断機などの製造販売を行っており、主にエネルギーやエレクトロニクス、食品関連の法人を顧客としています。
収益源は装置の販売代金およびメンテナンス等のアフターサービス料です。運営はノリタケが中核となり、ノリタケTCFやノリタケマシンテクノなどの子会社が製造・販売を支援しています。
■食器事業
ホテル・レストランなどの業務用から一般消費者向けまで、高品質な陶磁器等の食器製造販売を行っています。
収益源は食器類の販売代金です。運営はノリタケが主体となり、海外市場においてはスリランカのNoritake Lanka Porcelainなどの子会社が製造・供給を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間において、売上高は1,200億円台から1,400億円台へと順調に拡大しており、経常利益も100億円台を安定して確保しています。5期連続で黒字を維持しており、着実な成長傾向が見て取れます。
| 項目 | 141期 | 142期 | 143期 | 144期 | 145期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,276億円 | 1,395億円 | 1,379億円 | 1,382億円 | 1,429億円 |
| 経常利益 | 125億円 | 124億円 | 146億円 | 140億円 | 152億円 |
| 利益率(%) | 9.8% | 8.9% | 10.6% | 10.2% | 10.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 41億円 | 60億円 | 66億円 | 83億円 | 86億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の拡大に伴い売上総利益も増加し、売上総利益率は28%台後半を維持しています。営業利益も着実に伸びており、収益性の向上が確認できます。
| 項目 | 144期 | 145期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,382億円 | 1,429億円 |
| 売上総利益 | 386億円 | 410億円 |
| 売上総利益率(%) | 28.0% | 28.7% |
| 営業利益 | 102億円 | 111億円 |
| 営業利益率(%) | 7.4% | 7.8% |
販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び従業員給料が97億円(構成比約32%)、減価償却費が15億円(同5%)を占めています。
■(3) セグメント収益
工業機材事業は為替などの影響で減益となりましたが、セラミック・マテリアル事業はAIサーバー向け等の需要拡大が牽引して大幅増益となり、全体の業績向上に貢献しました。
| 区分 | 売上(144期) | 売上(145期) | 利益(144期) | 利益(145期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 工業機材 | 564億円 | 564億円 | 18億円 | 16億円 | 2.8% |
| セラミック・マテリアル | 455億円 | 500億円 | 67億円 | 83億円 | 16.6% |
| エンジニアリング | 291億円 | 298億円 | 17億円 | 18億円 | 6.1% |
| 食器 | 72億円 | 67億円 | -0.6億円 | -6億円 | -9.6% |
| 連結(合計) | 1,382億円 | 1,429億円 | 102億円 | 111億円 | 7.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 144期 | 145期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 20億円 | 100億円 |
| 投資CF | -53億円 | -77億円 |
| 財務CF | -30億円 | -15億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、創業者が記した「事業を通じて社会に貢献する」という精神を経営理念の核としています。また、2030年のありたい姿(VISION2030)として「マテリアル×プロセスの独自技術で変化する社会の欠かせない推進役へ」を掲げ、不確実な時代においても社会貢献を果たす企業を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、「地球を元気に」「社会を便利に」「人と社会を幸福に」することを目標に掲げる文化を有しています。長年培ったセラミックスの要素技術を起点に、顧客ニーズに対応する新商品開発へ全社一丸で取り組み、持続可能な社会の実現と企業価値の継続的向上を重視する価値観が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
第13次中期経営計画(2025年度〜2027年度)において「成長基盤の確立」を位置付け、両利きの経営による収益基盤の構築と投資を推進しています。最終年度の2027年度には以下の目標を掲げています。
* 売上高1,575億円
* 営業利益135億円
■(4) 成長戦略と重点施策
従来の基盤領域から「環境・エレクトロニクス・ウェルビーイング」の成長3領域へ事業を転換する「選択と集中」を進めています。既存事業の高付加価値化やオープンイノベーションの活用、さらにはDX推進と人的資本への投資による経営基盤の高度化を図り、社会課題の解決と事業成長の両立を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業戦略と連動した人財戦略を策定し、タレントマネジメントシステムによる従業員のスキル可視化や人材投資の強化を進めています。多様な人材の役割に基づく新人事制度の定着を通じて、従業員のチャレンジ精神醸成やエンゲージメント向上を図り、組織風土改革を実現する方針を掲げています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 145期 | 44.8歳 | 21.3年 | 6,971,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.1% |
| 男性育児休業取得率 | 96.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 76.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 80.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(71.7%)、ストレス総合リスク(97)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済状況の変動と需要への影響
同社グループは自動車や鉄鋼、電子・半導体など幅広い分野へ製品を提供しているため特定分野に依存しない構成ですが、国内外の景気や設備投資などの経済状況が悪化した場合、各業界の需要減少により業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 競合他社との競争激化と技術革新
セラミックスの要素技術をもとに新商品・新技術の開発に取り組んでいますが、国内外の競合他社と激しい競争状態にあります。技術革新のスピードが速い業界において、商品の陳腐化や新商品の投入時機を逸した場合、競争力を失うおそれがあります。
■(3) 原材料等の安定調達と価格高騰
高品質な製品の製造には原材料の安定的入手が不可欠ですが、地政学的情勢の変化等により供給停止が長期化した場合や、原材料・燃料価格が急激に高騰しコスト上昇分を製品価格へ転嫁しきれない場合、収益性が低下するリスクがあります。
■(4) 海外市場の情勢変化と為替変動
売上の約45%を海外市場が占めグローバルに展開しているため、各国の政治情勢不安や予期せぬ法規制変更等の影響を受けます。また、急激な為替変動は輸出入価格や円換算後の連結業績に悪影響を与える可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。