※本記事は、日本コンクリート工業株式会社 の有価証券報告書(第94期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本コンクリート工業ってどんな会社?
コンクリートポール・パイルの製造販売および関連工事を行う基礎・土木分野の老舗企業です。
■(1) 会社概要
1948年にコンクリートトラフの製造販売を目的として設立され、1951年には「NC式」鋼線コンクリートポールを発明しました。1962年にNCS-PCパイルの開発・製造を開始し、1967年に東京証券取引所市場第一部に上場しました。2022年の市場区分再編に伴い、プライム市場へ移行しています。
連結従業員数は1,353名、単体では361名です。筆頭株主は事業会社である日本製鉄で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には退職給付信託口としての信託銀行が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本製鉄 | 12.69% |
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 10.19% |
| みずほ信託銀行株式会社 退職給付信託 太平洋セメント口 再信託受託者 株式会社日本カストディ銀行 | 6.64% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.0%です。代表取締役社長執行役員は塚本博氏です。社外取締役比率は27.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 塚 本 博 | 代表取締役社長執行役員 | 1988年同社入社。NC東日本コンクリート工業社長、同社生産管理部長、取締役専務執行役員などを経て2021年6月より現職。 |
| 椙 田 宜 彦 | 取締役常務執行役員 | 三井情報開発、日本興業銀行を経て、テーブルマーク取締役常務執行役員などを歴任。2019年同社執行役員となり、2024年4月より現職。 |
| 饗 場 潔 | 取締役常務執行役員 | 1993年東京電力入社。同社福島第二原子力発電所原子力計画部長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 小 寺 満 | 取締役執行役員 | 1992年同社入社。技術開発第三部長、NC関東パイル製造社長などを経て、2020年取締役執行役員技術開発部長に就任。2021年6月より現職。 |
| 角 柄 明 彦 | 取締役執行役員 | 1982年住友商事入社。三井住商建材(現SMB建材)代表取締役社長を経て、2021年同社執行役員に就任。2022年6月より現職。 |
社外取締役は、間塚道義(元富士通代表取締役会長兼社長)、松本武徳(元国土交通省大阪航空局長)、広瀬史乃(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「基礎事業」「コンクリート二次製品事業」および「不動産・太陽光発電事業」を展開しています。
■(1) 基礎事業
パイル製品(コンクリートパイル等)の製造・販売およびパイル基礎工事等の請負を行っています。建設会社等の顧客に対し、製品の提供や施工サービスを提供しています。
収益は、パイル製品の販売代金および工事請負代金から構成されています。運営は、日本コンクリート工業、NC日混工業、NC西日本パイル製造、NC貝原パイル製造、NC四国コンクリート工業、NC関東パイル製造、NC東日本コンクリート工業、NC中部パイル製造、NC九州、北海道コンクリート工業、東北ポール等が行っています。
■(2) コンクリート二次製品事業
ポール製品(コンクリートポール等)および土木製品(PC-壁体、セグメント等)の製造・販売、ならびにこれらに付帯する施工等を行っています。電力会社や通信会社、官公庁等が主な顧客です。
収益は、製品の販売代金および工事請負代金等から得ています。運営は、日本コンクリート工業、NCセグメント、NCプレコン、NC中日本コンクリート工業、フリー工業、NC九州、東北ポール等に加え、海外子会社や関連会社も関与しています。
■(3) 不動産・太陽光発電事業
保有する不動産の賃貸および太陽光発電による売電事業を行っています。
収益は、賃貸先からの不動産賃貸料および電力会社への売電収入です。運営は主に日本コンクリート工業とフリー工業が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は500億円前後で推移しています。経常利益は黒字を維持しているものの変動があり、直近では減益となりました。当期純利益(親会社所有者帰属)については、黒字と赤字を繰り返す不安定な状況が見られ、直近では損失を計上しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 489億円 | 474億円 | 530億円 | 537億円 | 527億円 |
| 経常利益 | 32億円 | 16億円 | 1億円 | 22億円 | 15億円 |
| 利益率(%) | 6.5% | 3.3% | 0.2% | 4.2% | 2.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 15億円 | 6億円 | -8億円 | -0.5億円 | -7億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は微減し、売上総利益および営業利益も減少しました。特に営業利益率は低下しており、収益性の低下が見られます。コスト面では、売上原価率は横ばいまたは微減ですが、販売費及び一般管理費の負担が増加傾向にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 537億円 | 527億円 |
| 売上総利益 | 89億円 | 87億円 |
| 売上総利益率(%) | 16.6% | 16.4% |
| 営業利益 | 18億円 | 10億円 |
| 営業利益率(%) | 3.4% | 1.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料・賞与手当が27億円(構成比35%)、賞与引当金繰入額が5億円(同7%)を占めています。売上原価には、2200万円(前期)、3200万円(当期)の棚卸資産評価損が含まれています。
■(3) セグメント収益
基礎事業は減収大幅減益となりました。需要減や工事遅延に加え、生産量減少による収支悪化が影響しました。コンクリート二次製品事業は増収増益で、ポールの出荷は減少しましたが、土木製品事業が好調でした。不動産・太陽光発電事業は安定的に推移し、微増収増益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 基礎事業 | 265億円 | 242億円 | 12億円 | 1億円 | 0.5% |
| コンクリート二次製品事業 | 268億円 | 281億円 | 20億円 | 24億円 | 8.4% |
| 不動産・太陽光発電事業 | 3億円 | 3億円 | 2億円 | 2億円 | 61.9% |
| その他 | - | - | - | - | - |
| 調整額 | - | - | -16億円 | -17億円 | - |
| 連結(合計) | 537億円 | 527億円 | 18億円 | 10億円 | 1.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業・投資・財務いずれもマイナスで資金繰りが危機的な**末期型**です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 58億円 | -3億円 |
| 投資CF | -14億円 | -27億円 |
| 財務CF | -5億円 | -11億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-0.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「コンクリートを通して、安心・安全で豊かな社会づくりに貢献する」という経営理念を掲げています。中長期ビジョンとして「未来の社会生活基盤と地球環境を護る」を掲げ、社会インフラ強靭化の一翼を担い、環境負荷を低減させる技術と商品群を提供することで社会に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
「グループの変革と持続的成長により新たな価値を創出し、持続可能な社会に貢献する」という中期経営方針のもと、ESGや「資本コストや株価を意識した経営の実現」を重視しています。また、コンプライアンスやサステナビリティへの取り組みを強化し、ステークホルダーからの期待に応える誠実な企業活動を推進する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
2024年5月に発表した中期経営計画において、「コア事業の収益力向上」と「付加価値創造に向けた経営基盤強化」を両輪とし、既存事業の強化と成長分野の伸長を目指しています。足元では受注確保や生産性向上による業績回復を図りつつ、中長期的には研究開発や成長投資を着実に進める方針です。
■(4) 成長戦略と重点施策
激甚化する自然災害への防災・減災製品や、建設業の課題解決に資するプレキャストコンクリート製品に注力しています。また、カーボンニュートラルの観点から、CO2固定化・利活用技術(CCUS)やグリーン製品(低炭素型コンクリート)の開発・普及を進め、新たな成長機会を獲得する戦略です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「自ら変革と成長に取り組む人づくり」を目的とし、多様な個性・価値観を持つ人材が能力を最大限発揮できる人事・教育制度の整備を進めています。また、従業員が健康で働きやすい職場や風土づくりを積極的に推進し、新たな価値を創造する組織形成を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.7歳 | 12.0年 | 5,909,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.7% |
| 男性育児休業取得率 | 42.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 73.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 58.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、CO2排出量(21,900トン)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原材料価格の動向
ポール・パイル等の主要原材料である鋼材・セメントや原油価格の上昇は、製造・物流コストを押し上げる要因となります。製品価格への転嫁が遅れた場合、同社グループの収益を圧迫する可能性があります。
■(2) 製品需要動向
主要製品であるパイル・プレキャスト製品及び工事の売上は、国内建設市場の需要動向に大きく左右されます。急激な景気後退等により民間設備投資が抑制され、需要が想定以上に落ち込んだ場合、収益が悪化する可能性があります。
■(3) 金融費用(金利変動)
事業資金を主に金融機関からの借入により調達しており、有利子負債残高は138億57百万円となっています。金融情勢の変化により金利が上昇した場合、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) シンジケートローン契約等の財務制限条項
金融機関との間でシンジケートローン契約等を締結しており、純資産額や損益に関する財務制限条項が付されています。これらの条項に抵触した場合、期限の利益を喪失し借入金の即時返済義務が生じる可能性があり、財政状態に重大な影響を与えるおそれがあります。



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