富士石油 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

富士石油 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。石油の精製、貯蔵、販売を行う独立系石油会社で、千葉県の袖ケ浦製油所を拠点としています。2025年3月期は、非定期修理年度により販売数量が増加し増収となるも、原油価格下落に伴う在庫評価損の計上等により、経常損益および当期純損益は赤字に転落しました。


※本記事は、富士石油株式会社 の有価証券報告書(第23期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 富士石油ってどんな会社?


原油の調達から精製、販売までを一貫して行う石油会社です。袖ケ浦製油所を有し、大手元売等へ供給しています。

(1) 会社概要


同社は、2003年にアラビア石油と旧富士石油が株式移転により共同持株会社として設立されました。2013年には旧富士石油を吸収合併し、現在の商号に変更しています。2022年の市場区分見直しにより東証プライム市場へ移行しました。2024年4月には出光興産と資本業務提携契約を締結し、協業を深化させています。

連結従業員数は672名、単体従業員数は491名です。筆頭株主は同社の主要取引先でもある出光興産で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位はクウェートの国営石油会社であるクウェート石油公社です。

氏名 持株比率
出光興産 22.01%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.90%
クウェート石油公社 7.50%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性2名、計15名で構成され、女性役員比率は13.3%です。代表取締役社長社長執行役員は山本重人氏です。取締役11名のうち社外取締役は6名で、その比率は54.5%です。

氏名 役職 主な経歴
山本 重人 代表取締役社長社長執行役員 1981年4月旧富士石油入社。業務部長、常務取締役、専務取締役などを経て2021年6月より現職。
川畑 尚之 代表取締役常務執行役員 1983年4月旧富士石油入社。袖ケ浦製油所工務部長、取締役袖ケ浦製油所副所長、常務執行役員などを経て2023年6月より現職。
岩本 巧 取締役常務執行役員 1984年4月旧富士石油入社。袖ケ浦製油所総務部長、取締役企画部長、常務執行役員などを経て2023年6月より現職。
津田 雅之 取締役常務執行役員 1985年4月日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行。常務執行役員などを経て2019年6月同社取締役就任。2023年6月より現職。
渡邊 厚夫 取締役執行役員 1989年4月通商産業省(現経済産業省)入省。内閣府知的財産戦略推進事務局次長などを経て2021年11月同社参与。2023年6月より現職。


社外取締役は、前澤浩士(元出光興産常務執行役員)、山本順三(出光興産常務執行役員)、佐藤良(元住友化学執行役員)、ムハンマド・シュブルーミー(サウジアラビア政府エネルギー省)、ハーリド・サバーハ(クウェート石油公社幹部)、坂本倫子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「石油精製/販売事業」の単一セグメントを展開しています。

石油精製/販売事業


同社は、原油の精製、貯蔵、調達、販売を行っています。千葉県の京葉臨海コンビナートに位置する袖ケ浦製油所を主要拠点とし、ガソリン、ナフサ、ジェット燃料、軽油、重油などの石油製品を生産しています。また、連結子会社を通じて原油・石油製品の調達や販売、輸送、タンカーの保有・運航なども行っています。

主な収益源は、出光興産やENEOSなどの大手石油元売や電力会社、航空会社等への石油製品の販売代金です。同社が精製・供給を行い、子会社の富士石油販売が石油製品の販売や納入代行を行っています。また、ペトロプログレス等の子会社が原油・石油製品の調達・販売を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は原油価格の変動等により大きく増減しています。2023年3月期に過去最高の8509億円を記録した後、翌期は減少しましたが、当期は再び8000億円台へ増加しました。利益面では、在庫評価の影響や海外市況の変動によりブレが大きく、当期は経常損益、当期純損益ともに赤字に転落しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3,446億円 4,860億円 8,509億円 7,237億円 8,402億円
経常利益 83億円 161億円 47億円 187億円 -39億円
利益率(%) 2.4% 3.3% 0.6% 2.6% -0.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 41億円 135億円 6億円 126億円 -69億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しましたが、売上総損益および営業損益は赤字となりました。これは主に在庫評価損益の影響によるものです。前期は在庫影響が利益を押し上げましたが、当期は逆に原価を押し上げる要因となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 7,237億円 8,402億円
売上総利益 221億円 -5億円
売上総利益率(%) 3.1% -0.1%
営業利益 162億円 -56億円
営業利益率(%) 2.2% -0.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が13億円(構成比26%)、運賃保管料が7億円(同14%)、役員報酬が3億円(同6%)を占めています。売上原価については、原材料費等の変動費が大半を占める構造となっています。

(3) セグメント収益


同社は石油精製/販売事業の単一セグメントです。当期は定期修理がなく販売数量が増加したこと等により増収となりましたが、利益面では在庫評価の影響や、海外製品市況が低位に推移したこと等により損失となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
連結(合計) 7,237億円 8,402億円 162億円 -56億円 -0.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は健全型(営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業)です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 74億円 314億円
投資CF -51億円 -49億円
財務CF -12億円 -278億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-6.7%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は23.0%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「エネルギーの安定供給」「安全の確保と地球環境の保全」「ステークホルダーとの共存共栄」「活力に満ちた働きがいのある職場」を企業理念として掲げています。社会インフラとしての使命を果たしつつ、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


グループ企業が一体となってステークホルダーにとっての企業価値最大化を図ることを方針としています。経営の透明性向上、安定的な経営・収益基盤の維持、株主への利益還元、持続的な成長への挑戦を掲げ、コンプライアンスの徹底や正確な情報開示にも努める文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


2021年から2024年度の第三次中期事業計画では、最終年度の目標として以下の数値を掲げていました。2024年度の実績は在庫影響により利益目標は未達となりましたが、財務目標であるネットD/Eレシオは達成しました。次期中期事業計画は外部環境の変化等を見極めつつ策定を進めています。

* 営業利益(在庫影響除き):100億円
* 経常利益(在庫影響除き):85億円
* 当期純利益:75億円
* ROE:10%以上
* ネットD/Eレシオ:1.5倍以下

(4) 成長戦略と重点施策


「石油精製事業の更なる基盤強化」と「脱炭素社会に向けた取組み強化」を基本方針としています。デジタル技術活用による設備の稼働信頼性向上やコスト競争力強化を図る一方、省エネルギーの深化や、SAF(持続可能な航空燃料)の供給検討、アンモニア混焼の実証など、脱炭素ビジネスの追求にも注力しています。また、出光興産との資本業務提携により、原油調達や定期修理の共同化など協業を深化させています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「共有・貢献」「自律・挑戦」「高い人間性」「専門性・技術力」を備えた「期待する人財」の育成を目指しています。また、多様な人材が活躍できるよう、複線型人事制度やフレックスタイム制、テレワーク制度などを整備しています。女性活躍推進やシニア層の活用にも積極的に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.5歳 19.7年 7,664,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.9%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 74.7%
男女賃金差異(正規雇用) 79.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 51.4%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市況変動リスク


原油価格の下落は在庫評価損を発生させ、売上原価を押し上げる要因となります。また、石油製品市況は需給や原油価格動向等の外部要因により大きく変動するため、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。為替レートの変動も、原材料調達コスト等を通じて業績に影響を及ぼします。

(2) 気候変動に関するリスク


世界的な脱炭素化の流れにより、石油製品需要が想定以上の速さで減少した場合、事業及び業績に影響が生じる可能性があります。同社は脱炭素社会に向けた取組みを強化していますが、急激な環境規制の強化やエネルギー転換の進展は、長期的な経営リスクとなり得ます。

(3) 競争環境に関するリスク


国内の石油製品需要は、少子高齢化や低燃費車の普及等により構造的な減少傾向にあります。需要に対し供給能力が過剰となることで競争が激化した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は基盤強化やコスト競争力の向上に努めていますが、需要減退のペース次第では厳しい競争環境が予想されます。

(4) 災害、事故等による操業リスク


地震や台風などの自然災害、事故等により生産設備や情報システムに障害が発生した場合、操業停止を余儀なくされる可能性があります。同社は事業継続計画(BCP)を策定していますが、停止が長期化した場合には業績に重大な影響が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。