日本坩堝 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本坩堝 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本坩堝は東京証券取引所 スタンダード市場に上場しており、金属溶解用ルツボや耐火物の製造販売を行う耐火物事業、工業炉の設計施工などを手掛けるエンジニアリング事業を主力としています。直近の業績は、エンジニアリング事業の伸長などにより増収増益で着地しました。


※本記事は、日本坩堝株式会社 の有価証券報告書(第185期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本坩堝ってどんな会社?


日本坩堝は、1885年創業の老舗企業であり、耐火物事業とエンジニアリング事業を柱に展開するメーカーです。

(1) 会社概要


同社の歴史は1885年、黒鉛坩堝製造を目的に大日本坩堝会社が開業したことに始まります。1906年に帝国坩堝として設立され、翌年合併を経て日本坩堝が発足しました。1950年には東京証券取引所に上場を果たし、近年では2024年にVQP2023(有限会社三友築炉の親会社)を子会社化するなど、事業基盤の強化を進めています。

2025年3月31日現在、連結従業員数は258名、単体では188名体制です。筆頭株主は株式会社SBI証券、第2位は個人株主の岡田民雄氏、第3位は資産管理業務を行う株式会社みずほ銀行(常任代理人 株式会社日本カストディ銀行)となっており、金融機関や個人投資家が主要株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
SBI証券 5.14%
岡田民雄 4.87%
みずほ銀行 4.83%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長は西村有司氏が務めています。社外取締役比率は18.2%です。

氏名 役職 主な経歴
大久保 正 志 代表取締役会長 1973年同社入社。経理部長、管理部長、常務取締役などを経て2011年代表取締役社長に就任。2023年6月より現職。
西 村 有 司 代表取締役社長 1997年同社入社。東京支店長、営業部長、取締役営業部長などを歴任。2023年6月より現職。
広 野 玲緒奈 専務取締役営業部門・工業炉事業管掌 1984年富士銀行(現みずほ銀行)入行。2015年同社入社。経理部長、管理部長、常務取締役などを経て2025年4月より現職。
小 松 俊 夫 取締役 1982年同社入社。調達部長、技術センター技術部長、取締役鉄鋼部門長などを歴任。2025年4月より現職。
岡   信 幸 取締役 1982年同社入社。大阪工場長、取締役生産部門管掌などを歴任。2025年4月より現職。
岡 本   聡 取締役企画・管理部門管掌総務部長 1988年富士銀行(現みずほ銀行)入行。2019年同社総務部長。取締役管理部門管掌を経て2025年4月より現職。


社外取締役は、岩谷誠治(岩谷誠治公認会計士事務所代表)、岡松暁子(法政大学人間環境学部教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「耐火物」「エンジニアリング」「不動産事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 耐火物事業


鋳造市場および鉄鋼市場向けに、黒鉛坩堝、定形耐火物、不定形耐火物の製造販売を行っています。また、鋳物材料の仕入販売も手掛けており、自動車関連産業や鉄鋼メーカーなどが主な顧客です。

収益は、顧客への製品販売による代金や仕入販売による売上から得ています。運営は主に日本坩堝が担っており、連結子会社のアジア耐火、非連結子会社の日坩商貿(上海)有限公司、関連会社の久精日坩(江蘇)新材料科技有限公司なども製造販売や販売を行っています。

(2) エンジニアリング事業


工業炉市場および環境・工事市場向けに、各種工業炉の設計施工、付帯機器の販売、築炉工事請負などを提供しています。工業炉の新設や焼却炉等のメンテナンス工事が主な業務です。

収益は、顧客からの工事請負代金や機器販売代金から得ています。運営は日本坩堝が主体となり、連結子会社の眞保炉材工業や有限会社三友築炉が築炉工事を担当しています。

(3) 不動産事業


本社ビルや大阪倉庫の賃貸、豊田工場における太陽光発電事業を行っています。保有する不動産資産の有効活用を図る事業です。

収益は、テナントからの賃貸料や売電収入から得ています。運営は日本坩堝が行っています。

(4) その他


塗料循環装置等に関する事業を展開しています。主に自動車関連向けの塗装工程に係る自動省力機や塗料循環装置の設計製造を手掛けています。

収益は、製品の販売や設計製造の対価として得ています。運営は連結子会社の日本ピーシーエスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実な増加傾向にあります。特に直近の第185期は過去最高の売上高を記録しました。利益面でも、経常利益、当期純利益ともに変動はあるものの、直近では増益基調にあり、利益率も改善傾向が見られます。全体として、事業規模の拡大とともに収益性も向上している状況です。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 77億円 87億円 88億円 96億円 98億円
経常利益 1.2億円 3.1億円 1.5億円 3.2億円 4.9億円
利益率(%) 1.6% 3.6% 1.7% 3.4% 5.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.2億円 2.1億円 0.1億円 5.0億円 3.7億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は微増し、売上総利益率は改善しています。営業利益および営業利益率は大幅に伸長しており、本業の収益力が強化されていることが伺えます。売上原価や販管費のコントロールが進み、利益が出やすい体質へと変化している様子が見て取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 96億円 98億円
売上総利益 25億円 28億円
売上総利益率(%) 26.2% 28.3%
営業利益 3.1億円 4.7億円
営業利益率(%) 3.2% 4.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が4.6億円(構成比20%)、研究開発費が3.4億円(同15%)を占めています。売上原価については、原材料費や労務費などが含まれますが、詳細な内訳比率は記載されていません。

(3) セグメント収益


全セグメントにおいて、前期比で概ね安定または増加傾向にあります。特にエンジニアリング事業は売上・利益ともに伸長しており、全体の業績を牽引しています。耐火物事業も増益を確保しました。不動産事業は安定的な収益源となっていますが、その他事業(塗料循環装置事業)は売上が減少し、営業損失を計上しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
耐火物 54億円 54億円 4.3億円 4.6億円 8.5%
エンジニアリング 32億円 35億円 3.3億円 4.5億円 12.8%
不動産事業 3.8億円 3.8億円 2.3億円 2.2億円 58.5%
その他 6.3億円 4.8億円 -0.2億円 -0.3億円 -6.0%
調整額 - - -6.5億円 -6.3億円 -
連結(合計) 96億円 98億円 3.1億円 4.7億円 4.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、安定的な財務体質の維持と高い資本効率の追求を軸とした経営資源配分を基本方針としています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や売上債権の減少などにより大幅な収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得により支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済などにより支出となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 4.5億円 10.5億円
投資CF -2.2億円 -7.8億円
財務CF -3.8億円 -1.0億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「創造性豊かな活力に満ちた役職員により、伝統を守りつつ、いかなる時代、いかなる環境にも適合する会社を目指す」ことを経営理念としています。すべてのステークホルダーの期待に応え、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を最重要課題と位置付けています。

(2) 企業文化


同社は、伝統を守りながらも環境変化に適合することを重視しています。内部統制システムの整備・強化を図り、経営の透明性・公平性を確保するとともに、迅速な意思決定による経営効率化を目指しています。役職員全員が誇りを持てる会社であり続けることを組織活性化の基本方針としています。

(3) 経営計画・目標


同社は「中期経営計画2027~Crucible3R Ver.2」(2026年3月期から2028年3月期)を策定しています。Rebirth(再生)、Re-create(価値の再創造)、Reconstruct(事業構造の再構築)をキーワードとし、以下の数値目標を掲げています。

* 2027年度 連結売上高:110億円
* 2027年度 連結経常利益:8.3億円
* 2027年度 連結ROE:8.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「中期経営計画2027」では、事業構造の再構築を加速し、発展に向けた攻勢を進める方針です。財務戦略では営業キャッシュ・フローを原資とした戦略的投資を行い、顧客満足向上戦略では「ファースト・コール・カンパニー」を目指します。また、業務生産性の向上や組織活性化により、サステナビリティへの取り組みや新規事業創出を強化します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「組織と人の活性化」を経営戦略の土台とし、組織風土改革、優秀人財の確保、人財育成、ダイバーシティを重点課題としています。エンゲージメント向上やダイレクト・リクルーティングの活用、階層別研修の充実などを通じ、社員の成長と貢献を支援する仕組みづくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.5歳 14.6年 6,689,814円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」および「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」の規定による公表義務の対象でないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ストレスチェック総合リスク値(92(2025年度目標))、有給休暇取得率(73%(2024年度実績))などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自動車のEV化について


鋳造事業は同社グループの最大事業であり、その市場の約9割が自動車業界向けです。自動車業界のEV化加速によりエンジン部品等の構造が変化することで、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は部品構成の変化やメーカー動向を注視し、製品・サービスの適合を進めています。

(2) 鉄鋼事業について


鉄鋼事業は売上高の約1割を占めますが、鉄鋼業界における製鉄所再編や設備縮減の動きが業績に影響する可能性があります。国内では高い技術力と対応力でシェア維持と利益率向上に努め、海外では新技術開発やロイヤリティー収入の確保を図る方針です。

(3) エンジニアリング事業について


エンジニアリング事業は売上高の3割超を占めますが、工事完了時の検収プロセスや取引額の大きさから、売上の期間帰属等が業績に影響を与える可能性があります。同社は、特に慎重な判断を行い、適正な収益認識に努めるとしています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。