※本記事は、日本ヒューム株式会社 の有価証券報告書(第142期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本ヒュームってどんな会社?
基礎事業や下水道関連事業等の社会インフラ整備に貢献する製品・工事を提供するほか、不動産事業も展開する企業です。
■(1) 会社概要
1925年に日本ヒュームコンクリートとして設立し、ヒューム管の製造を開始しました。1949年に東京証券取引所へ上場し、2000年に現在の商号である日本ヒュームへ変更しました。2015年には太陽光発電事業を開始し、事業領域を拡大しました。2024年には株式会社鋼商の株式を取得し連結子会社化しています。
連結従業員数は549名、単体では441名です。筆頭株主は退職給付信託の委託者である太平洋セメントで、同社とは原材料調達等の取引関係があります。第2位は外国法人の常任代理人である香港上海銀行、第3位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| みずほ信託銀行株式会社退職給付信託太平洋セメント口 | 9.65% |
| THE HONGKONG AND SHANGHAI BANKINGCORPORATION LTD-SINGARORE BRANCH PRIVATE BANKING DIVISION CLIENT A/C 8221-623793(常任代理人 香港上海銀行) | 7.64% |
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 6.62% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名、計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は増渕智之氏です。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大川内 稔 | 取締役会長代表取締役 | 1985年入社。国際事業部長、専務取締役経営企画部長、管理本部長等を経て2015年代表取締役社長に就任。2023年4月より現職。 |
| 増渕 智之 | 取締役社長代表取締役 | 1992年入社。経営企画部長、総務部長、常務取締役管理本部副本部長、専務取締役等を歴任。2023年4月より現職。 |
| 井上 克彦 | 専務取締役専務執行役員営業推進本部長兼関東・東北支社長、事業戦略推進統括担当 | 1993年入社。国際事業部長、執行役員九州支社長、取締役常務執行役員等を歴任。2023年4月より現職。 |
| 田中 敏嗣 | 取締役常務執行役員技術本部長 | 太平洋セメントを経て2020年入社。経営企画部部長、技術開発センター長、コンフロンティア代表取締役社長等を歴任。2025年4月より現職。 |
| 櫻井 博 章 | 取締役常務執行役員関西支社長、プレキャスト営業推進担当 | 2003年入社。関西支社長兼営業部長、岡山営業所長、執行役員等を歴任。2025年4月より現職。 |
社外取締役は、前田正博(元東京都下水道局長)、中野良一(元警視庁組織犯罪対策部長)、増江亜佐緒(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「基礎事業」「下水道関連事業」「太陽光発電・不動産事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 基礎事業
コンクリートパイル(杭)の製造・販売および杭打工事などを行っています。建築物や土木構造物の基礎となる重要な部分を担っており、環境に優しい中掘工法やICT施工管理の推進などを行っています。
収益は、顧客である建設会社等から製品代金や工事代金を受け取ることで発生します。運営は、主に日本ヒューム、連結子会社の東邦ヒューム管、技工曙、エヌエィチ・フタバ、鋼商などが行っています。
■(2) 下水道関連事業
ヒューム管やセグメントなどのコンクリート二次製品の製造・販売、および管渠更生工事などを行っています。下水道インフラの老朽化対策や耐震化事業、メンテナンス事業にも注力しています。
収益は、官公庁や建設会社等から製品代金や工事代金を受け取ることで発生します。運営は、日本ヒューム、東邦ヒューム管、技工曙、エヌエィチ・フタバ、日本ヒュームエンジニアリング、鋼商、持分法適用会社のNJS、大和コンクリート工業、東京コンクリート工業、旭コンクリート工業などが行っています。
■(3) 太陽光発電・不動産事業
不動産の賃貸、管理および開発、太陽光発電事業、環境関連機器の販売およびメンテナンスを行っています。
収益は、不動産賃貸による賃料収入や、電力会社への売電収入、機器販売代金等から構成されます。運営は、連結子会社のヒュームズ、環境改善計画などが行っています。
■(4) その他
上記報告セグメントに含まれない事業として、下水道関連工事用機材のレンタルおよび脱炭素マテリアル事業などを行っています。
収益は、顧客からの機材レンタル料等により発生します。運営は、持分法適用会社のエヌエクス、非連結子会社のコンフロンティアなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は300億円前後から370億円規模へ拡大傾向にあります。特に直近の2025年3月期は大幅な増収増益となっており、売上高は過去5期間で最高を記録しました。利益面でも、2023年3月期に一時的な落ち込みが見られましたが、その後回復し、当期純利益は大幅に増加しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 304億円 | 295億円 | 319億円 | 337億円 | 371億円 |
| 経常利益 | 27億円 | 25億円 | 21億円 | 24億円 | 30億円 |
| 利益率(%) | 8.9% | 8.6% | 6.6% | 7.1% | 8.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 21億円 | 21億円 | 16億円 | 19億円 | 30億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、売上総利益率も改善しています。これに伴い営業利益および営業利益率も上昇し、収益性が高まっています。増収効果に加え、利益率の向上が顕著に見られる決算となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 337億円 | 371億円 |
| 売上総利益 | 59億円 | 73億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.5% | 19.6% |
| 営業利益 | 14億円 | 20億円 |
| 営業利益率(%) | 4.1% | 5.5% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与賞与及び手当が18億円(構成比33.7%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全セグメントで黒字を確保しています。主力の下水道関連事業が大幅な増収増益となり、全体の業績を牽引しました。基礎事業も増収増益と堅調です。一方、太陽光発電・不動産事業は前期比で若干の減収減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 基礎事業 | 219億円 | 227億円 | 12億円 | 13億円 | 5.7% |
| 下水道関連事業 | 103億円 | 128億円 | 13億円 | 19億円 | 15.1% |
| 太陽光発電・不動産事業 | 15億円 | 14億円 | 8億円 | 8億円 | 56.5% |
| その他 | 0.7億円 | 0.9億円 | 0.5億円 | 0.8億円 | 82.2% |
| 調整額 | - | - | -19億円 | -21億円 | - |
| 連結(合計) | 337億円 | 371億円 | 14億円 | 20億円 | 5.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
日本ヒュームは、営業活動によるキャッシュ・フローが減少したものの、投資活動では固定資産の売却等により資金を得ています。一方で、財務活動では配当金の支払い等により資金を使用しました。これらの活動の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 28億円 | 9億円 |
| 投資CF | -1億円 | 0.4億円 |
| 財務CF | -8億円 | -25億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「社会基盤の整備に参加し、豊かな人間環境づくりに貢献します」「人の和をはかり、常に従業員の幸福と生き甲斐を求めていきます」「未来を見つめ、たゆまぬ技術開発により、強い会社を目指します」という3つの企業理念を掲げています。
■(2) 企業文化
2025年の創立100周年を通過点とし、「継承と新化」をミッションとして掲げています。多様性と相互信頼で成長軌道を描くことを基本方針とし、創業精神である「NHイズム」の継承と、時代の変革を捉えた進化を目指す文化があります。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画『23-27計画R』を策定し、200年企業に向けた成長軌道を作るべく改革を進めています。
* 2026年3月期目標:連結売上高365億円、連結営業利益17億円
* 2028年3月期目標:連結売上高400億円、連結営業利益22億円
■(4) 成長戦略と重点施策
基本戦略として「事業戦略」「財務戦略」「ESG戦略」を掲げています。事業戦略では、基礎事業での環境に優しい中掘工法の販売強化やICT施工管理の推進、下水道関連事業でのトータルソリューション増強やメンテナンス事業拡大に取り組みます。また、戦略事業であるプレキャスト事業やe-CON事業への投資、脱炭素社会実現への貢献にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人財力の強化」を掲げ、性別・年次・年齢にとらわれない専門性重視の人事制度や、自律的なキャリア形成を支援しています。OJTや研修カリキュラムに加え、リーダーシップ向上や次世代リーダー育成(「寺子屋M」等)に注力し、社員の成長が会社の業績向上につながる人的資本経営を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.1歳 | 17.0年 | 6,624,403円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.1% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 82.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 67.8% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場環境の変化による影響
同社グループを取り巻く経営環境は厳しさを増しており、競争の激化や市場構造の大幅な変化などが、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 法令・制度等の変更
事業運営において建設業法等の関係法令による規制を受けています。現時点では大きな支障はありませんが、これらの規制が強化された場合、今後の事業戦略に影響を与える可能性があります。
■(3) 海外での事業活動について
海外関係会社は主にアジアの新興国で事業を展開しています。そのため、予期しない政治状況の激変、法制度の変更、地政学的なリスクなどが内在しています。



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