※本記事は、日本ヒューム株式会社の有価証券報告書(第143期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. 日本ヒュームってどんな会社?
社会インフラを支えるコンクリート製品の製造から施工までをトータルで提供する企業です。
■(1) 会社概要
1925年に日本ヒュームコンクリートとして設立され、ヒューム管の製造を開始しました。1928年に日本ヒューム管へ商号を変更し、1949年に東京証券取引所へ上場を果たしました。2000年に現在の日本ヒュームに商号を変更し、2015年にはセグメント事業を開始しました。直近では2026年にマナックの株式を取得し、中部地域における受注基盤の拡大を図っています。
同社グループの従業員数は連結で701名、単体で458名です。筆頭株主は太平洋セメントの退職給付信託口であり、第2位は持分法適用関連会社である旭コンクリート工業、第3位は海外の金融機関です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| みずほ信託銀行退職給付信託太平洋セメント口 | 8.86% |
| 旭コンクリート工業 | 5.42% |
| THE HONGKONG AND SHANGHAI BANKING CORPORATION LTD-SINGAPORE BRANCH PRIVATE BANKING DIVISION CLIENTS A/C 8221-623793 | 5.22% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は増渕智之氏が務めています。社外取締役比率は27.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 増渕智之 | 取締役社長代表取締役 | 1992年同社入社。経営企画部長、総務人事部長などを経て2023年4月より現職。 |
| 井上克彦 | 専務取締役専務執行役員 | 1993年同社入社。国際事業部長、九州支社長などを経て2023年4月より現職。 |
| 田中敏嗣 | 取締役常務執行役員 | 太平洋セメントを経て2020年入社。技術開発センター長などを経て2023年6月より現職。 |
| 櫻井博章 | 取締役常務執行役員 | 2003年同社入社。関西支社長兼営業部長などを経て2023年6月より現職。 |
社外取締役は、前田正博(元東京都下水道局長)、中野良一(元警視庁組織犯罪対策部長)、増江亜佐緒(元東京弁護士会登録・奥野総合法律事務所)です。
2. 事業内容
同社グループは、「基礎事業」「下水道関連事業」「太陽光発電・不動産事業」および「その他」事業を展開しています。
■基礎事業
コンクリートパイルの製造・販売および杭打工事を提供しており、建設会社などが主な顧客です。都市部や狭隘地などの難条件現場で培った独自の施工ノウハウやICT施工管理システムを有しています。
製品の販売および工事請負の対価を収益としています。運営は日本ヒューム、東邦ヒューム管、技工曙、エヌエィチ・フタバ、鋼商、マナックが行っています。
■下水道関連事業
ヒューム管やセグメントなどのコンクリート製品の製造・販売、管渠更生工事などを提供しています。老朽化した社会インフラの更新・耐震化や維持管理などの需要に対応しています。
製品の販売および工事請負の対価を収益としています。運営は日本ヒューム、東邦ヒューム管、技工曙、エヌエィチ・フタバ、日本ヒュームエンジニアリング、鋼商などが行っています。
■太陽光発電・不動産事業
不動産の賃貸、管理および開発、太陽光発電事業、環境関連機器の販売およびメンテナンスを行っています。自社保有の不動産活用による安定的な収益基盤としての役割を担っています。
不動産の賃貸料や太陽光発電による売電収入などを収益源としています。運営は日本ヒューム、ヒュームズ、環境改善計画が行っています。
■その他
下水道関連工事用機材のレンタルおよび脱炭素マテリアル事業などを展開しています。
レンタル料などを収益源としています。運営はエヌエクスなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実な増加傾向にあり、特に2025年3月期から2026年3月期にかけて大きく伸長しています。経常利益も売上の拡大に伴って増加しており、利益率も継続的に改善しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 295億円 | 319億円 | 337億円 | 371億円 | 402億円 |
| 経常利益 | 25億円 | 21億円 | 24億円 | 30億円 | 38億円 |
| 利益率(%) | 8.6% | 6.6% | 7.1% | 8.2% | 9.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 18億円 | 12億円 | 13億円 | 19億円 | 30億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益がともに増加しています。利益率も前年と比較して向上しており、収益性の高い事業構造への転換やコストの適正化が進んでいることがうかがえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 371億円 | 402億円 |
| 売上総利益 | 73億円 | 81億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.6% | 20.1% |
| 営業利益 | 20億円 | 25億円 |
| 営業利益率(%) | 5.5% | 6.3% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与賞与及び手当が19億円(構成比34%)、賞与引当金繰入額が1億円(同2%)を占めています。売上原価は322億円で、売上高に対する構成比は80%となっています。
■(3) セグメント収益
各セグメントにおいて売上高が前年を上回っています。特に下水道関連事業においては、製品の出荷増加や工事の進捗が業績を牽引し、利益面でも大幅な増益を達成して全社の成長ドライバーとして寄与しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 基礎事業 | 227億円 | 243億円 | 13億円 | 13億円 | 5.5% |
| 下水道関連事業 | 128億円 | 144億円 | 19億円 | 26億円 | 18.1% |
| 太陽光発電・不動産事業 | 14億円 | 15億円 | 8億円 | 9億円 | 58.7% |
| その他 | 1億円 | 1億円 | 1億円 | 1億円 | 85.5% |
| 連結(合計) | 371億円 | 402億円 | 20億円 | 25億円 | 6.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業は赤字ですが、将来成長のための投資を借入などの資金調達で継続している勝負型の状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 9億円 | -35億円 |
| 投資CF | 0億円 | -32億円 |
| 財務CF | -25億円 | 41億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「わが社は、社会基盤の整備に参加し、豊かな人間環境づくりに貢献します。人の和をはかり、常に従業員の幸福と生き甲斐を求めていきます。未来を見つめ、たゆまぬ技術開発により、強い会社を目指します。」という企業理念を掲げ、事業を通じた社会貢献と従業員の幸福を追求しています。
■(2) 企業文化
「『社会インフラを支える』にワクワクを重ねる」を掲げ、仕組みを変えるだけではなく、絶え間のない対話を通じて社員一人ひとりが「自走」し、挑戦を恐れない文化の創出を目指しています。個人の成長が企業の成長と連動し、社会から信頼されるエクセレント企業への進化を推進しています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画『26-30計画NEXT100』において、持続的な価値創造企業への土台構築を目指し、以下の2031年3月期の目標数値を設定しています。
・連結売上高600億円
・連結営業利益48億円
・連結営業利益率8.0%以上
・ROE8.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
社会インフラの老朽化、防災・減災需要の拡大、人手不足による施工省力化ニーズを成長機会と捉えています。長年培ってきた技術力に加え、営業から維持管理までを一体で提供できる事業基盤を活かし、付加価値の高い受注を拡大します。基礎事業の競争力強化とプレキャスト事業の拡大を進めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
あらゆる価値は「人」が創造するという考えのもと、社員がいきいきとやりがいをもって挑戦できる職場環境、企業風土づくりを推進しています。性別・年齢にとらわれない専門性重視や自律的なキャリア形成、マネージャーのリーダーシップ向上など、「人材」を「人財」とする人的資本経営に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.1歳 | 16.1年 | 6,895,031円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.3% |
| 男性育児休業取得率 | 60.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 72.4% |
| 男女賃金差異(正規) | 82.0% |
| 男女賃金差異(非正規) | 66.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(68.6)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 建設市場及び公共投資動向による影響
国内の公共投資および民間建設投資の動向に収益が影響を受けます。国や自治体の財政状況の悪化、民間設備投資の減速などで建設投資が縮小した場合や、想定以上の価格競争が生じた場合、受注量の減少や利益率の低下によって業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) インフラ維持更新需要への対応遅延
老朽化した社会インフラの更新需要が拡大すると見込まれる一方で、自治体の財政制約や人材不足により想定通り投資が進まない可能性があります。また、市場ニーズに対応した製品や工法を適時に提供できない場合、成長機会を取り逃がすリスクがあります。
■(3) 原材料価格・エネルギーコストの変動
セメント、鋼材、生コンクリート、燃料、電力などを多く使用しており、資源価格やエネルギー需給、物流業界の人手不足などの影響を受けます。これらのコストが上昇し、価格改定や受注条件への反映が遅れた場合、収益性に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 技能労働者不足と労務費の上昇
建設業界全体での技能労働者の不足や施工管理人材の確保難、労務費の上昇が進行しています。製造・施工体制の維持や品質確保に必要な人材の確保・育成が想定通りに進まない場合、工期遅延や外注費の上昇によって業績に影響を及ぼす可能性があります。



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