※本記事は、株式会社エーアンドエーマテリアルの有価証券報告書(第26期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. エーアンドエーマテリアルってどんな会社?
エーアンドエーマテリアルは、建設・建材や工業製品・エンジニアリングの分野で不燃材料や保温保冷材等を提供する企業です。
■(1) 会社概要
1914年に浅野スレートとして創立、1924年に朝日スレート(後のアスク)が設立され、2000年に両社が合併してエーアンドエーマテリアルが発足しました。近年は積極的なM&Aを進め、2024年にユニボード、2025年にデコールを子会社化し、建材分野の事業規模を拡大しています。
従業員数は連結1,001名、単体217名です。筆頭株主はセメント事業等を手掛ける太平洋セメントで、持株比率は20.35%となっています。第2位は明治安田生命保険、第3位は海外金融機関が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 太平洋セメント | 20.35% |
| 明治安田生命保険相互会社(常任代理人日本カストディ銀行) | 4.12% |
| INTERACTIVE BROKERS LLC(常任代理人インタラクティブ・ブローカーズ証券) | 2.77% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は巻野徹氏が務めています。取締役は6名で、うち2名が社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 巻野徹 | 代表取締役社長 | 1979年秩父セメント入社。太平洋セメント関連事業部長などを経て同社へ入社し、2015年より現職。 |
| 大橋徹也 | 取締役副社長執行役員 | 1982年小野田セメント入社。太平洋セメント取締役専務執行役員等を経て、2024年より現職。 |
| 大島武人 | 取締役専務執行役員 | 1987年浅野スレート入社。エーアンドエー大阪代表取締役社長等を経て、2025年より現職。 |
| 髙原一登 | 取締役専務執行役員 | 1988年アスク入社。エーアンドエー茨城代表取締役社長等を経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、田倉榮美(田倉法律事務所開設)、菅谷朋子(聖橋法律事務所開設)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建設・建材事業」「工業製品・エンジニアリング事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 建設・建材事業
主に住宅や非住宅の建築物向けに、不燃建築材料などの各種建築材料の製造・販売を行っています。また、鉄骨耐火被覆工事や建築工事の設計および施工も手掛けており、安全で快適な生活環境や社会基盤の構築に貢献しています。
各種建築材料や化粧板の販売、および工事の施工による対価が主な収益源です。製品の製造・販売は同社のほか、子会社のエーアンドエー茨城やエーアンドエー大阪、ユニボード、デコールが担い、工事の設計・施工は主にエーアンドエークレストが行っています。
■(2) 工業製品・エンジニアリング事業
産業プラントや船舶、自動車分野向けに、不燃紡織品、摩擦材・シール材、保温保冷断熱材、防音材、非金属製伸縮継手などの工業用材料や機器の製造・販売を行っています。加えて、保温・保冷・防音・耐火工事の設計や施工も手掛けています。
工業用資材や自動車用摩擦材の販売、およびプラントや船舶向けの工事施工による対価を収益源としています。製造・販売は同社とアスクテクニカ、朝日珪酸工業などが担当し、工事の設計・施工はアスク・サンシンエンジニアリングやアスク沖縄が行っています。
■(3) その他
報告セグメントに含まれない事業として、不動産賃貸事業を展開しています。神奈川県その他の地域において、賃貸用のオフィスビルなどを保有・管理しています。
保有する賃貸等不動産からの賃貸収入を主な収益源としています。この不動産賃貸事業は、主に同社および一部の連結子会社が主体となって運営を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は過去5期にわたり一貫して増加傾向にあります。一方で経常利益は期によって変動があり、利益率も3〜5%台を推移しています。当期利益は、製品価格の改定やM&Aによる事業拡大の寄与があるものの、原燃料費や物流費などのコスト増加や特別損失の計上などが影響し、赤字となる期も見られます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 359億円 | 392億円 | 413億円 | 434億円 | 457億円 |
| 経常利益 | 16億円 | 15億円 | 24億円 | 19億円 | 16億円 |
| 利益率(%) | 4.4% | 3.7% | 5.8% | 4.3% | 3.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -1億円 | 4億円 | 16億円 | -10億円 | 7億円 |
■(2) 損益計算書
売上高と売上総利益はともに前期から増加しており、売上総利益率も微増と堅調な推移を示しています。しかし、事業拡大や各種コストの上昇に伴い販売費及び一般管理費が増加したため、営業利益および営業利益率は低下する結果となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 434億円 | 457億円 |
| 売上総利益 | 98億円 | 104億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.6% | 22.8% |
| 営業利益 | 19億円 | 17億円 |
| 営業利益率(%) | 4.4% | 3.7% |
販売費及び一般管理費(約87億円)のうち、給料及び賃金が21億円(構成比24%)、運搬費が19億円(同22%)を占めています。
■(3) セグメント収益
建設・建材事業は、M&Aによる事業拡大や価格改定により増収となりましたが、各種コスト高騰の影響で減益となりました。工業製品・エンジニアリング事業は、船舶関連の材料販売が好調だったものの、工事部門の長期案件の端境期や工程遅延が響き、減収減益となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 建設・建材事業 | 187億円 | 231億円 | 25億円 | 23億円 | 9.8% |
| 工業製品・エンジニアリング事業 | 247億円 | 226億円 | 14億円 | 13億円 | 5.9% |
| その他 | 1億円 | 1億円 | 0.4億円 | 0.4億円 | 62.5% |
| 連結(合計) | 434億円 | 457億円 | 19億円 | 17億円 | 3.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 12億円 | 15億円 |
| 投資CF | -26億円 | -27億円 |
| 財務CF | -5億円 | 8億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は39.5%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「建材に関する生産、化粧加工、施工の技術」と「熱、音、その他のエネルギーをコントロールする技術」をもとに、安全で安心でき、快適な環境を創造する事業を通じて、生活環境と社会基盤の充実並びに産業の発展に貢献する企業グループになることを目指しています。
■(2) 企業文化
お客様や市場の声を敏感に受け止め、新商品・新事業の研究・開発や市場投入を絶え間なく継続し、安全で高品質な商品やサービスを提供し続けることを重視しています。また、法と社会秩序を遵守し、環境保全に配慮しながら天然資源の有効活用や環境負荷の低減を図る行動を基本方針としています。
■(3) 経営計画・目標
新たな未来像を描いた長期経営構想「Vision2033」において10年後のありたい姿を目指しています。その実現に向けた最初の3年間を、1st Stage「挑戦と変革」をキーワードとする「2026中期経営計画」として策定し、持続的な発展と企業価値の向上に取り組んでいます。
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画のもと、「新ビジネスモデルとコーポレートブランドの確立による収益拡大」「戦略的M&Aによる事業規模の拡大」「DX基盤整備による業務改革の実現」の3つを成長戦略の柱としています。これらとサステナビリティ課題への取り組みを相乗的に推進し、社会課題の解決に貢献し続ける企業への進化を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人こそが企業の最も重要な財産である」という考えのもと、従業員一人ひとりの能力を最大限に発揮することに注力しています。「セルフ・キャリアデザイン制度」を導入し、従業員の主体的なキャリア形成を支援しているほか、福利厚生の拡充や継続的な賃上げを通じて、エンゲージメントの向上と優秀な人材の確保・定着を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.3歳 | 17.0年 | 6,998,038円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.5% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全) | 63.1% |
| 男女賃金差異(正規) | 66.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 68.7% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 建設および工業用市場の景気変動リスク
住宅や非住宅の建築投資、ならびに工業用材料や保温保冷工事等の関連市場の動向は、景気変動の影響を受けやすい状況にあります。著しい景気後退や経済情勢の悪化、建設資材価格の高止まり等が生じた場合、受注や価格競争の面で同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 石綿(アスベスト)問題に係るリスク
同社は過去に石綿を含有する製品を製造していた経緯があり、石綿による健康障害に対する補償や支援費用の発生、ならびに損害賠償請求訴訟の提訴等が継続しています。今後、新たな訴訟や判決により追加の費用負担が生じた場合、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 製品の品質維持に関するリスク
同社グループは万全の品質管理体制のもとで製品の製造を行っていますが、予期せぬ重大な欠陥が発生した場合には、企業の社会的評価が低下する恐れがあります。また、欠陥への対応に伴う費用の発生や売上の減少により、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 海外事業活動に関するリスク
同社グループはインドネシア等の東南アジアで事業を展開しています。これらの地域においては、予期しない政治的混乱や急激な金融情勢の変化、現地政府による突発的な法規制等のカントリーリスクが存在しており、顕在化した場合には海外での事業活動に支障が生じる可能性があります。



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