※本記事は、株式会社エーアンドエーマテリアル の有価証券報告書(第25期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. エーアンドエーマテリアルってどんな会社?
エーアンドエーマテリアルは、不燃建材や熱・音コントロール技術を核に、建設・工業分野で製品と工事を提供する企業グループです。
■(1) 会社概要
1914年に浅野スレート工場として創業し、日本初の石綿スレート製造を開始しました。1924年に朝日スレート(後の朝日石綿工業)を設立し、1949年に株式を上場しました。2000年に両社が合併して現在のエーアンドエーマテリアルが発足しました。2022年には東証スタンダード市場へ移行しています。
同社グループは連結従業員898名、単体209名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は、セメント等原材料の仕入先であり、工事受注等の取引関係もある事業会社の太平洋セメント(持株比率42.42%)です。第2位以下は信託銀行や証券会社が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 太平洋セメント | 42.42% |
| 明治安田生命保険相互会社(常任代理人日本カストディ銀行) | 2.98% |
| INTERACTIVE BROKERS LLC(常任代理人インタラクティブ・ブローカーズ証券) | 2.03% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は巻野 徹氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 巻野 徹 | 代表取締役社長 | 秩父セメント(現太平洋セメント)入社、同社関連事業部長等を経て2012年同社取締役、2015年より現職。 |
| 大橋 徹也 | 取締役副社長執行役員 | 小野田セメント(現太平洋セメント)入社、同社取締役専務執行役員等を経て2024年より現職。 |
| 大島 武人 | 取締役専務執行役員 | 浅野スレート入社、エーアンドエー大阪社長等を経て2025年より現職。 |
| 髙原 一登 | 取締役専務執行役員 | アスク入社、エーアンドエー大阪社長、同社管理本部長等を経て2025年より現職。 |
社外取締役は、田倉 榮美(弁護士)、菅谷 朋子(弁護士・国土交通省中央建設工事紛争審査会特別委員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建設・建材事業」「工業製品・エンジニアリング事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 建設・建材事業
不燃建築材料や低圧メラミン化粧板の製造・販売を行うほか、鉄骨耐火被覆工事などの設計・施工を手掛けています。オフィスビルや商業施設、住宅などが主な対象市場です。
収益は、顧客への製品販売や工事施工による対価から得ています。運営は、同社が製造・販売を行うほか、子会社の株式会社エーアンドエー茨城や株式会社エーアンドエー大阪が製造し同社が仕入販売を行っています。また、ユニボード株式会社が化粧板を製造・販売し、株式会社エーアンドエークレストが工事の設計・施工を担当しています。
■(2) 工業製品・エンジニアリング事業
不燃紡織品、船舶用資材、工業用摩擦材、シール材、保温保冷断熱材などの製造・販売を行うほか、各種プラントや空調設備の保温・保冷・防音・耐火工事等の設計・施工を行っています。
収益は、工業用材料・機器の販売やエンジニアリング工事の対価から得ています。運営は、同社が仕入販売を行うほか、株式会社アスクテクニカや朝日珪酸工業株式会社が製造を担当しています。工事部門では、アスク・サンシンエンジニアリング株式会社やアスク沖縄株式会社が設計・施工を行っています。
■(3) その他
不動産の賃貸等を行っています。
収益は、保有する不動産の賃貸料収入等から得ています。運営は主に同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は第22期に一時減少したものの、その後は増加傾向にあります。利益面では、第24期に大きく伸長しましたが、第25期は減益となり、当期純利益は赤字に転じています。自己資本比率は40%台で推移しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 372億円 | 359億円 | 392億円 | 413億円 | 434億円 |
| 経常利益 | 16億円 | 16億円 | 15億円 | 24億円 | 19億円 |
| 利益率(%) | 4.2% | 4.4% | 3.7% | 5.8% | 4.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | 10億円 | 9億円 | 27億円 | -10億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は増加し、売上総利益も増加しましたが、販売費及び一般管理費の増加等の影響により、営業利益は減少しました。売上高営業利益率は低下しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 413億円 | 434億円 |
| 売上総利益 | 93億円 | 98億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.5% | 22.6% |
| 営業利益 | 23億円 | 19億円 |
| 営業利益率(%) | 5.6% | 4.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び賃金が19億円(構成比24%)、運搬費が18億円(同23%)を占めています。売上原価では、詳細な内訳データはありません。
■(3) セグメント収益
建設・建材事業は、価格改定や高付加価値商品の販売拡大、子会社化の影響等で増収となりましたが、コスト増やM&A関連費用等により減益となりました。工業製品・エンジニアリング事業は、船舶関連製品の出荷増や大型工事の完工により増収増益を達成しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 建設・建材事業 | 176億円 | 187億円 | 26億円 | 25億円 | 13.1% |
| 工業製品・エンジニアリング事業 | 236億円 | 247億円 | 12億円 | 14億円 | 5.7% |
| その他 | 0.6億円 | 0.6億円 | 0.4億円 | 0.4億円 | 61.4% |
| 調整額 | -3億円 | -3億円 | -15億円 | -20億円 | - |
| 連結(合計) | 413億円 | 434億円 | 23億円 | 19億円 | 4.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社グループは、営業費用や生産設備増強等に係る投資資金を、営業活動によるキャッシュ・フローと金融機関からの借入で賄う方針です。
営業活動による資金は増加しましたが、前期に比べると減少しました。これは、固定資産売却益の計上により資金が減少した一方、税金等調整前当期純利益の計上により資金が増加したこと等によるものです。
投資活動では、有形固定資産の売却による収入があったものの、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得により資金が減少しました。
財務活動では、配当金の支払額により資金が減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 31億円 | 12億円 |
| 投資CF | 5億円 | -26億円 |
| 財務CF | -31億円 | -5億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「建材に関する生産、化粧加工、施工の技術」と「熱、音、その他のエネルギーをコントロールする技術」をもとに、安全で安心でき、快適な環境を創造することを通じて、生活環境と社会基盤の充実および産業の発展に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
法令と社会秩序を遵守し、的確な企業統治と内部統制システムを確立することで、経営の質的レベルアップを図り、社外からの安心感・安定感を高めることを重視しています。また、全ての企業活動において環境保全に配慮し、天然資源の有効活用や環境負荷低減を図ることで社会への貢献に努める姿勢を持っています。
■(3) 経営計画・目標
長期経営構想「Vision2033」で10年後のありたい姿を目指し、最初の3年間を「2026中期経営計画」として策定しています。サステナブルな事業活動を通じて社会課題の解決に貢献し続ける企業への進化を目指し、持続的な発展と企業価値の向上に取り組んでいます。
■(4) 成長戦略と重点施策
「2026中期経営計画」では、「挑戦と変革」をキーワードに、新ビジネスモデルとコーポレートブランドの確立による収益拡大、戦略的M&Aによる事業規模の拡大、DX基盤整備による業務改革の実現を主要施策としています。また、中長期CSRビジョン「CSR2033」と連動し、サステナビリティ課題への取り組みを推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「CSR2033」において、事業活動を支える「従業員」を重視し、従業員エンゲージメントの向上に取り組んでいます。サステナビリティ方針では、快適な職場づくりとダイバーシティの推進を掲げ、労働環境の整備や人材育成、女性活躍を含む多様性を尊重した組織づくりを目指しています。また、働き方改革や採用力強化のため本社移転を実施しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.9歳 | 18.0年 | 6,873,989円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.1% |
| 男性育児休業取得率 | 40.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(60.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 景気変動、経済情勢のリスク
住宅・非住宅分野の新築投資減少や、工業用材料・保温保冷工事の国内関連市場の動向により、受注や価格面で影響を受ける可能性があります。著しい景気変動や経済情勢の悪化があった場合、同社グループの業績や財政状態に影響を与える可能性があります。
■(2) 債権におけるリスク
顧客に対して売掛金や受取手形等の債権を有しています。与信管理や債権保全には注意していますが、顧客の経営状況が悪化した場合には、債権回収のリスクが顕在化する可能性があります。
■(3) 製品の品質維持のリスク
万全の品質管理体制のもとで製品の品質・性能の確保に努めていますが、予期せぬ重大な欠陥が発生した場合には、同社グループの評価や業績、財政状態に影響を与える可能性があります。
■(4) 石綿問題に係るリスク
過去に製造した石綿含有製品に関連して、健康障害に対する補償・支援費用の発生や、損害賠償請求訴訟の提訴により、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。



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