ノザワ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ノザワ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ノザワは東京証券取引所スタンダード市場に上場しており、押出成形セメント製品を中心とした建築材料関連事業を主力としています。一般建築向け外壁材「アスロック」等の製造販売や関連工事の請負などを展開しています。直近の業績トレンドは、売上高は増加したものの、特別損失などの影響で純利益は減益となる増収減益の傾向を示しています。


※本記事は、株式会社ノザワの有価証券報告書(第166期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ノザワってどんな会社?

建築材料の製造販売および関連工事を主力とする同社の特徴を解説します。

(1) 会社概要

1897年に野澤幸三郎商店を創立し、1913年に日本石綿盤製造を設立したのが始まりです。1949年に大阪証券取引所市場第一部に上場し、1969年にノザワに商号を変更しました。1970年より押出成形セメント製品「アスロック」の製造を開始し、2022年の市場再編によりスタンダード市場へ移行しています。

従業員数は連結で332名、単体で311名です。筆頭株主はノザワ取引先持株会で、第2位は三井住友銀行、第3位は神栄となっています。

氏名 持株比率
ノザワ取引先持株会 5.89%
三井住友銀行 4.77%
神栄 4.08%

(2) 経営陣

同社の役員は男性14名、女性0名の計14名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は野澤俊也氏が務めています。社外取締役比率は14.3%です。

氏名 役職 主な経歴
野澤俊也 代表取締役社長 1988年同社入社。経理部長、専務取締役技術本部担当等を経て、2001年4月より現職。
三浦竜一 専務取締役技術本部長 1987年同社入社。開発部長、埼玉工場長等を経て、2023年6月より現職。
米田剛 常務取締役販売本部長 1988年同社入社。関西支店長、海外事業部長等を経て、2023年6月より現職。
邑橋将男 常務取締役品質保証本部長 1983年同社入社。開発部長、海外事業部長、リスク対策部長等を経て、2023年6月より現職。
松村正昭 常務取締役技術本部副本部長 1988年同社入社。播州工場長、埼玉工場長等を経て、2023年6月より現職。
濱本康二 取締役技術本部副本部長 1988年同社入社。技術研究所長、生産技術部長、製品保証部性能確認室長等を経て、2018年6月より現職。
藤井邦彦 取締役管理本部担当 1992年同社入社。九州支店長、総務部長、人事部長等を経て、2026年2月より現職。
永田健二 取締役埼玉工場長 1994年同社入社。エンジニアリング部長、生産技術部長等を経て、2026年2月より現職。
福田菊光 取締役建設商品部長 1994年同社入社。関西支店長、建設商品部マーケティング室長等を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、小鹿彦太氏(元銀泉代表取締役兼専務執行役員)、吉田裕樹氏(京町法律事務所共同代表)です。

2. 事業内容

同社グループは、「建築材料関連事業」および「その他」を展開しています。

建築材料関連事業

一般建築向け外壁材「アスロック」等の押出成形セメント製品や、スレートボードなどの建築材料の製造、販売および工事の請負、設計、監理を行っています。顧客の多様なニーズに対応するため、製品の意匠性向上や機能特化型商品の開発を進め、快適な住環境の創出と環境負荷低減に貢献する資材を提供しています。

収益は主に、建築材料の製品販売代金や工事の請負代金から得ています。製品の製造および販売は同社が行うほか、販売および副資材の納入、工事の設計・施工については子会社のノザワ商事が担っています。

その他

報告セグメントに含まれないその他の事業として、不動産の賃貸業務および損害保険・生命保険の代理店業務を展開しています。

収益は主に、不動産の賃貸料や保険代理店としての手数料から得ています。不動産賃貸は同社が行い、保険代理店業務は子会社のノザワトレーディングが運営しています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績をみると、売上高は200億円台から230億円台の間で堅調に推移しています。経常利益も一定水準を確保していますが、当期純利益については特別損失の計上などの影響により年度によって変動が見られます。全体として安定した事業基盤を維持しつつ推移しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 205億円 210億円 231億円 220億円 223億円
経常利益 20億円 11億円 19億円 18億円 22億円
利益率(%) 9.7% 5.5% 8.4% 8.4% 9.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 14億円 5億円 8億円 11億円 5億円

(2) 損益計算書

売上高は前期から微増となり、売上総利益も増加しています。これに伴い、営業利益および営業利益率も前期を上回る水準へ向上しており、本業の収益性が改善していることがうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 220億円 223億円
売上総利益 61億円 63億円
売上総利益率(%) 27.9% 28.3%
営業利益 17億円 20億円
営業利益率(%) 7.7% 8.9%


販売費及び一般管理費のうち、販売運賃が10億円(構成比22%)、給料が6億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益

同社は建築材料関連事業の単一セグメントであるため、製品・サービスごとの売上高推移を分析します。主力の押出成形セメント製品関連の売上が堅調に推移し、全体の増収を牽引しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
押出成形セメント製品関連 172億円 175億円
その他 48億円 48億円
連結(合計) 220億円 223億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

営業CF・投資CF・財務CFの推移をみると、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状態となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 4億円 2億円
投資CF -6億円 -8億円
財務CF -4億円 -5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

「全員の創意で常に新しい商品を世に問い、居住空間の創造を通して21世紀を勝ち抜く企業集団を作ろう」を経営の基本としています。人々の生活と安全を守り、快適な住環境を創り出す部材・システムを提供し、社会の発展に貢献する企業を目指しています。

(2) 企業文化

社員一人ひとりの人間性を尊重し、働きがいのある明るい職場を作り個々の能力向上を図ることを重視しています。未来に向けて常時新しい感性を持って創造・開発を行い、独自の技術を結集した世界に通ずる商品を提供し続け、社会と共生を図る文化が醸成されています。

(3) 経営計画・目標

企業価値の持続的な向上を図るため、株主資本コストを上回る資本収益性の達成を重要な経営目標として位置付けています。また、市場からの評価指標である株価純資産倍率(PBR)1倍以上の達成を目指し、以下の数値目標を掲げています。

* ROE 8.0%
* PBR 1.0倍

(4) 成長戦略と重点施策

中期経営計画「NOZAWA NEXT3」のもと、社会課題の解決に貢献する新商品・新工法開発による「志」、商品ラインアップの充実や現場塗装工法「ミルフィア」などの新事業拡大を図る「実」、AI活用やDX推進による生産性向上と人的資本の充実を進める「礎」の3つの領域に注力しています。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

社員の能力向上を図り、その能力を最大限に発揮できる環境づくりを推進しています。能力に応じた階層別・部門別研修を通じた人材育成を行うとともに、定量評価による公正な評価制度を導入し、社歴に関係なく昇進昇格が可能な制度を構築しています。また、多様な人材の採用やワークライフバランスの充実に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 46.9歳 22.3年 6,679,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 66.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 72.9%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 72.4%

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 景気変動による需要減少

主力製品である押出成形セメント製品は、公共投資や民間設備投資、新設住宅着工戸数などの動向に強い影響を受けます。経済環境の悪化によりこれらの投資が減少した場合、同社グループの販売数量が低下し、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料価格の高騰と調達制約

製品製造にはセメントや輸入原材料のほか、天然ガスなどのエネルギーを使用しています。原材料価格や為替相場の変動、さらには地政学リスクの顕在化等によって原材料の安定的な調達が困難になったり調達コストが上昇したりした場合、同社の収益を圧迫するリスクがあります。

(3) ドライバー不足による物流コスト上昇

製品の納入は外部の運送会社へ委託しているため、物流業界におけるトラックドライバー不足により出荷の停滞が生じるリスクがあります。また、これに伴って物流コストが大幅に上昇した場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 石綿(アスベスト)健康被害に係る訴訟

同社グループは過去に石綿を事業に使用しており、石綿による健康障害に対する補償の発生や損害賠償請求訴訟に関連するリスクを抱えています。現在も複数の裁判が係属しており、今後の判決や和解案の内容によっては追加の損失が発生し、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。