ノザワ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ノザワ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東証スタンダード市場に上場する建築材料メーカーです。主力の押出成形セメント製品「アスロック」を中心に、建材の製造・販売・施工を手掛けています。直近の業績は、建設市場の低迷やコスト増等の影響を受け、売上高は前期比で減収、経常利益も減益となりましたが、特別損益の改善により最終利益は増益となりました。


※本記事は、株式会社ノザワ の有価証券報告書(第165期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ノザワってどんな会社?


創業120年を超える老舗建材メーカーです。高層ビル等の外壁に使われる押出成形セメント板「アスロック」のパイオニアとして知られています。

(1) 会社概要


1897年に野澤幸三郎商店として創業し、1913年に日本石綿盤製造を設立しました。1949年に大阪証券取引所へ上場し、1970年には主力製品となる「アスロック」の製造を開始しました。その後、2013年の東証・大証統合に伴い東証二部へ上場し、2017年には全製品を「アスロックNeo」へ切り替えました。2022年の市場区分見直しにより、現在は東証スタンダード市場に上場しています。

2025年3月31日現在、グループ全体の従業員数は338名(単体317名)です。大株主構成を見ると、筆頭株主は取引先で構成されるノザワ取引先持株会、第2位は金融機関の三井住友銀行、第3位は同社と取引関係にある商社の神栄となっています。

氏名 持株比率
ノザワ取引先持株会 5.03%
三井住友銀行 4.84%
神栄 4.15%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性0名、計14名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は野澤俊也氏が務めています。社外取締役比率は18.2%です。

氏名 役職 主な経歴
野澤俊也 代表取締役社長 1988年同社入社。経理部長、専務取締役技術本部担当等を経て、2001年4月より現職。
三浦竜一 専務取締役技術本部長 1987年同社入社。開発部長、生産技術部長、埼玉工場長等を経て、2023年6月より現職。
米田剛 常務取締役販売本部長 1988年同社入社。関西支店長、建設商品部長、海外事業部長等を経て、2023年6月より現職。
邑橋将男 常務取締役品質保証本部長 1983年同社入社。開発部長、技術本部副本部長、リスク対策部長等を経て、2023年6月より現職。
松村正昭 常務取締役技術本部副本部長 1988年同社入社。播州工場長、埼玉工場長、生産技術部長等を経て、2023年6月より現職。
濱本康二 取締役技術本部副本部長 1988年同社入社。技術研究所長、環境推進室長、品質保証部性能確認室長等を経て現職。
藤井邦彦 取締役管理本部長 1992年同社入社。東京支店長、総務部長、人事部長等を経て、2021年6月より現職。
永田健二 取締役生産技術部長 1994年同社入社。エンジニアリング部長、ISO推進室長等を経て、2024年6月より現職。
福田菊光 取締役建設商品部長 1994年同社入社。関西支店長、建設商品部営業推進室長等を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、小鹿彦太(元銀泉代表取締役社長)、吉田裕樹(京町法律事務所代表弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建築材料関連事業」および「その他の事業」を展開しています。

(1) 建築材料関連事業


主力の押出成形セメント製品「アスロック」をはじめ、スレート関連製品、耐火被覆材などの製造、販売、およびこれらを用いた工事の設計・施工を行っています。オフィスビルや工場、倉庫などの外壁材として広く利用されており、建設会社や建材商社が主な顧客となります。

製品の製造・販売による代金および工事請負による対価が主な収益源です。運営は主に同社が行い、連結子会社のノザワ商事が一部製品の販売や副資材の納入、施工等を担当しています。

(2) その他の事業


同社グループが保有する不動産の賃貸や、保険代理店業務を行っています。これらは建築材料関連事業を補完する位置づけにあります。

不動産賃貸料や保険代理店手数料が主な収益源です。不動産賃貸は同社が行い、保険代理店業務は連結子会社のノザワトレーディングが運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は200億円台前半で推移しています。2024年3月期までは回復基調にありましたが、直近の2025年3月期は建設市場の停滞等の影響で減収となりました。経常利益は変動がありつつも黒字を維持しており、利益率は5〜9%台で推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 224億円 205億円 210億円 231億円 220億円
経常利益 19億円 20億円 11億円 19億円 18億円
利益率(%) 8.3% 9.7% 5.5% 8.4% 8.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 11億円 14億円 5億円 8億円 11億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を比較すると、売上高は前期比で減収となり、それに伴い売上総利益も減少しました。一方で販売費及び一般管理費を抑制したものの、営業利益、経常利益ともに減益となりました。しかし、当期利益については、特別損益の改善等により増益を確保しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 231億円 220億円
売上総利益 66億円 61億円
売上総利益率(%) 28.5% 27.9%
営業利益 18億円 17億円
営業利益率(%) 7.7% 7.7%


販売費及び一般管理費のうち、販売運賃が10億円(構成比23%)、給料が6億円(同13%)を占めています。売上原価の低減や販管費の抑制に努めましたが、減収の影響をカバーするには至りませんでした。

(3) セグメント収益


主力の押出成形セメント製品は、高付加価値品の拡販に努めたものの、建設工事の延期等により販売数量が減少し減収となりました。スレート関連は内装用ボードが好調で増収となりましたが、耐火被覆等は工事減少により大幅な減収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
押出成形セメント製品関連 177億円 172億円
スレート関連 9億円 9億円
耐火被覆等 14億円 11億円
その他 30億円 27億円
連結(合計) 231億円 220億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ノザワの当連結会計年度における資金は、前連結会計年度末に比べ減少しました。営業活動による資金は、売上債権の増加等があったものの、税金等調整前当期純利益や減価償却費等により増加しました。投資活動による資金は、有形固定資産の取得による支出等により減少しました。財務活動による資金は、親会社による配当金の支払い等により減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 20億円 4億円
投資CF -12億円 -6億円
財務CF -4億円 -4億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「全員の創意で常に新しい商品を世に問い、居住空間の創造を通して21世紀を勝ち抜く企業集団を作ろう」を経営の基本としています。人々の生活と安全を守り、快適な住環境を創り出す部材・システムを提供することで社会の発展に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


「人を大事に」という創業者の精神を受け継ぎ、社員一人ひとりの人間性を尊重し、働きがいのある明るい職場作りを重視しています。また、「全員の創意」で常に新しい感性を持って創造・開発を行い、独自の技術を結集した世界に通ずる商品を提供し続けることを行動指針としています。

(3) 経営計画・目標


2027年の創業130周年に向けた中期経営計画を推進しています。経営基盤の強化と事業の更なる発展を図るため、全領域での差別化を推進し、以下の数値目標を掲げています。

* 2026年3月期 売上高経常利益率:12%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「全社三大戦略プラスONE」として、以下の戦略を展開しています。「収益拡大戦略」では高付加価値品の拡販、「飛躍成長戦略」では新商品創出、「体質強化戦略」では生産性向上と人材育成を推進します。さらに「プラスONE」としてESG経営に取り組み、持続可能な成長を目指します。

* アスロックの高付加価値品(デザインパネル、工場塗装品等)の拡販
* スレートボードの新商品「ナチュラーレ」等の展開
* NNPS(ノザワ・ニュー・プロダクション・システム)活動による生産性向上

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「およその事業の根源は人」という理念のもと、社員の能力向上とそれを発揮できる環境づくりを推進しています。NNPS活動を通じた問題解決型の人材育成や、階層別・部門別の研修を実施し、公正な評価制度により社歴に関係ない昇進昇格を可能にしています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.7歳 21.4年 6,511,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.3%
男性育児休業取得率 33.3%
男女賃金差異(全労働者) 69.1%
男女賃金差異(正規) 74.9%
男女賃金差異(非正規) 78.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒女性採用比率(50.0%)、積載率(64.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料価格及び調達について


主力製品の原材料であるセメントや、製造に使用する天然ガス・電力等の価格変動リスクがあります。また、輸入原材料については海外情勢の変化等により調達が困難になる可能性があり、業績に影響を及ぼすおそれがあります。これに対し、一定量の備蓄等の対策を講じています。

(2) 販売数量・販売価格の変動について


同社グループの売上高の約8割を押出成形セメント製品が占めており、同事業への依存度が高くなっています。そのため、建設需要の変動や競合との価格競争等により、当該製品の販売数量や価格が変動した場合、グループ全体の業績に大きな影響を与える可能性があります。

(3) 石綿による健康障害について


過去に石綿(アスベスト)を事業に使用していた経緯から、石綿による健康障害に対する補償や損害賠償請求訴訟のリスクがあります。現在も複数の訴訟が係属しており、損失発生可能性が高い案件については引当金を計上していますが、今後の判決内容等によっては追加費用が発生する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。