※本記事は、三谷セキサン株式会社 の有価証券報告書(第92期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 三谷セキサンってどんな会社?
独自の技術力を強みとするコンクリートパイルやポールの製造販売、およびその施工を行う企業グループです。
■(1) 会社概要
同社は1956年9月、福井市にて北陸石産工業として設立され、砂利の生産販売を開始しました。1963年にはコンクリートパイルの生産に着手し、同年6月に大阪証券取引所市場第二部に上場を果たしています。1983年に現在の三谷セキサンへと商号を変更しました。その後、2005年には福井システムズおよびゲイトウェイ・コンピュータを買収して情報関連事業へ本格参入するなど多角化を進め、2013年には東京証券取引所市場第一部銘柄に指定されています。
現在、同社グループは連結子会社20社を含む構成で事業を展開しており、連結従業員数は1,174名、単体では350名体制です。筆頭株主は一般財団法人三谷市民文化振興財団で、第2位株主にはその他の関係会社である三谷商事が名を連ねています。第3位も一般財団法人三谷進一育英会となっており、創業家に関連する財団や関連企業が主要株主として安定的な持株構造を形成していることが特徴です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 一般財団法人三谷市民文化振興財団 | 12.33% |
| 三谷商事 | 10.29% |
| 一般財団法人三谷進一育英会 | 8.03% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は三谷進治氏が務めています。なお、社外取締役は1名で、取締役全体の約16.7%を占めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 三谷 進治 | 代表取締役社長社長経営執行役 | 1997年6月同社取締役就任。財務部長、専務取締役を経て、2001年12月より現職。 |
| 田中 昌郁 | 専務取締役専務経営執行役パイル・ポール事業本部兼技術本部担当 | 1982年4月同社入社。大阪支店長、東京支店長、常務取締役などを歴任し、2018年6月より現職。 |
| 三谷 聡 | 取締役相談役 | 1985年2月同社取締役就任。取締役副社長を経て1994年12月代表取締役社長に就任。1998年6月より三谷商事代表取締役社長および同社取締役相談役を務める。 |
| 渡辺 崇嗣 | 取締役 | 2000年5月駒屋代表取締役社長に就任(現任)。2003年6月同社監査役を経て、2006年6月より現職。 |
| 阿部 亨 | 取締役経営執行役管理本部兼砂利事業本部兼水工資材事業本部担当 | 2002年1月同社入社。総務部長、管理本部長などを経て、2015年6月より管理本部、砂利事業本部、水工資材事業本部担当として現職。 |
社外取締役は、山口浩二(山口伊三郎家具 代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「コンクリート二次製品関連事業」「情報関連事業」および「その他事業」を展開しています。
■(1) コンクリート二次製品関連事業
コンクリートパイル、ポール、コンクリートブロック(環境製品)、砂利製品等の製造販売を行っています。また、これら製品の施工や技術提供も手掛けており、建設会社や官公庁などが主な顧客となります。主力製品であるコンクリートパイルは、建築物や土木構造物の基礎として不可欠な資材です。
収益は、製品の販売代金および工事請負代金から得ています。製品販売と請負工事は単一の履行義務として識別されることが多く、工事の進捗に応じて収益を認識します。運営は主に三谷セキサンが担うほか、滋賀セキサン、東京セキサン、セキサンピーシー、福井リサイクルセンターなどのグループ会社が行っています。
■(2) 情報関連事業
情報システムの構築や、コンピュータ等のハードウェア・ソフトウェアの販売を行っています。地方自治体や民間企業向けに、情報処理の委託計算やシステム開発サービスを提供しており、ITインフラの整備や業務効率化を支援しています。
収益は、システム構築やソフトウェア開発の対価、およびハードウェア等の販売代金から得ています。ソフトウェアの受託製作については、進捗度に応じた収益認識を行う場合があります。この事業は、主に子会社の福井システムズおよびゲイトウェイ・コンピュータが運営しています。
■(3) その他事業
ビジネスホテルの運営、ボウリング場などの施設管理、環境衛生事業(廃棄物収集運搬等)、不動産賃貸、太陽光発電事業など多岐にわたるサービスを提供しています。一般消費者や事業者を顧客とし、地域社会に密着したサービスを展開しています。
収益は、ホテルの宿泊料、施設の利用料、廃棄物処理の委託料、不動産の賃料、売電収入などから構成されています。運営主体は事業により異なり、ホテル事業等は浦和スプリングレーンズ、環境衛生事業等はトスマク・アイ、その他事業の一部は三谷セキサンや地域子会社が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は600億円台後半から800億円台後半へと拡大傾向にあります。特に利益面での成長が著しく、経常利益は80億円規模から直近では149億円へと大幅に増加しました。利益率も上昇傾向にあり、収益性が高まっています。当期純利益も順調に推移し、安定した成長軌道を描いています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 689億円 | 773億円 | 861億円 | 831億円 | 878億円 |
| 経常利益 | 80億円 | 84億円 | 109億円 | 134億円 | 149億円 |
| 利益率(%) | 11.7% | 10.8% | 12.7% | 16.1% | 17.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 54億円 | 53億円 | 82億円 | 93億円 | 102億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は22%台から23%台へと改善しました。営業利益率も14.6%から15.8%へと上昇しており、コストコントロールと付加価値の高い製品・工事の提供が利益率の向上に寄与していることが伺えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 831億円 | 878億円 |
| 売上総利益 | 186億円 | 207億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.4% | 23.5% |
| 営業利益 | 121億円 | 139億円 |
| 営業利益率(%) | 14.6% | 15.8% |
販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び給与手当賞与が31億円(構成比46%)、福利厚生費が7億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のコンクリート二次製品関連事業は売上高が横ばいながらも利益を確保しました。情報関連事業は売上高・利益ともに大幅な増収増益を達成し、全体の成長を牽引しています。その他事業もインバウンド需要の回復等により、売上・利益ともに大きく伸長しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| コンクリート二次製品関連 | 684億円 | 683億円 | 103億円 | 105億円 | 15.4% |
| 情報関連 | 76億円 | 103億円 | 8億円 | 18億円 | 17.8% |
| その他 | 71億円 | 92億円 | 18億円 | 26億円 | 28.1% |
| 調整額 | - | - | -8億円 | -11億円 | - |
| 連結(合計) | 831億円 | 878億円 | 121億円 | 139億円 | 15.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社グループの運転資金及び設備投資資金等は、原則として自己資金または銀行からの借入により調達しております。
営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権の減少により大幅に増加しました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出が主な内容です。
財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得及び配当金の支払いによる支出が主な内容です。
| 項目 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|
| 営業CF | 98億円 | 87億円 | 134億円 |
| 投資CF | -70億円 | -38億円 | -53億円 |
| 財務CF | -12億円 | -22億円 | -56億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、独自の製品・新技術の開発に努め、より高性能の商品・工法を提供していくことで、顧客のニーズに応え、社会資本の整備と快適な環境の創造に貢献することを経営の基本としています。また、構築物の基礎支持力を提供するメーカーとして、高品質の製品・技術の研究に取り組み、他社との差別化を図り、収益性と財務体質を強化することを目標としています。
■(2) 企業文化
同社は「開拓者精神」と「働きがいのある職場達成」を社是とし、「豊かな技術で未来を創造する」を企業理念として掲げています。グループ内外で連携した研究開発体制を敷き、コンクリート製品や施工技術の開発に積極的に取り組む姿勢を重視しています。また、法令遵守や安全確保を徹底し、社会からの信頼獲得を目指す文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は、独自の製品・新技術の開発を通じて高性能な商品・工法を提供し、顧客ニーズに応えることを目指しています。また、キャッシュ・フロー経営を重視し、財務体質の強化と事業経営全般の効率化に取り組む方針です。具体的な数値目標として、収益性の向上と財務体質の強化を掲げていますが、詳細な中期経営計画の数値目標については有価証券報告書内に明記されていません。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向けて、顧客ニーズに対応した新製品・新技術の開発を積極的に進め、技術力と営業力の向上に努める方針です。主力のパイル事業においては、競合との差別化を図るため、高品質なコンクリートや施工管理技術の研究に注力します。また、価格競争の激化や原材料価格の高止まりに対応するため、採算管理の徹底や経費抑制によるコストダウンも重点施策としています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、全社員が仕事に対する意識やモチベーションを高め、能力を十分に発揮し、仕事と生活の調和を図ることができる働きやすい環境づくりを目指しています。具体的には、働きがいのある職場づくり、心身ともに健康に働ける環境づくりを推進するほか、小学校入学前の子を持つ社員向けの時短勤務制度の策定や、年次有給休暇の取得促進を行動計画として掲げています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.1歳 | 10.1年 | 6,703,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 需要動向と価格競争
同社グループの主力であるパイル部門の需要は、民間建設需要に大きく左右される傾向があります。想定以上の需要減退が発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、競合他社との価格競争の激化や新規参入により、製品・サービスの価格が低下し、収益性が圧迫されるリスクもあります。
■(2) 収益認識と工事進行基準
パイル工事は一定期間にわたり収益を認識する方法(進行基準)を採用しており、工事原価の見積りが重要になります。設計変更や工程の遅延、原材料価格の変動等により、当初の見積りと実際の原価に乖離が生じた場合、収益計画の見直しが必要となり、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 不採算工事の発生
パイル工事において、受注時の競争激化による低価格受注や、施工中の予期せぬトラブル、工期遅延等により工事原価が増加し、不採算となるリスクがあります。見積総原価が収益総額を超過した場合は工事損失引当金を計上する必要があり、業績悪化の要因となり得ます。工事部門と技術部門が連携し、フォロー体制を強化しています。



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