SECカーボン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SECカーボン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SECカーボンは東証スタンダード市場に上場し、アルミニウム製錬用カソードブロックや人造黒鉛電極などの炭素製品の製造・販売を主力とします。直近の第106期は、主要製品の販売数量減少や在庫調整の遅れ等の影響を大きく受け、前期比で減収、各段階利益も減益となり、親会社株主に帰属する当期純損失を計上しています。


※本記事は、SECカーボン株式会社の有価証券報告書(第106期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. SECカーボンってどんな会社?


同社はアルミニウム製錬用カソードブロックや人造黒鉛電極などの炭素製品を製造する専業メーカーです。

(1) 会社概要


1934年に昭和電極として設立され、1946年に人造黒鉛電極の製造を開始しました。1984年にエスイーシーへ商号変更し大証二部に上場、1986年の合併を経てアルミニウム製錬用カソードブロックの製造を開始しました。2006年に現在のSECカーボンへ商号変更しています。

従業員数は連結で282名、単体で279名です。筆頭株主はその他の関係会社であり取引先でもある大谷製鉄で、第2位は三菱商事、第3位は住友商事と、事業上の取引関係を有する総合商社が大株主に名を連ねています。

氏名 持株比率
大谷製鉄 19.85%
三菱商事 9.78%
住友商事 5.02%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は中島耕が務めています。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
大谷民明 代表取締役会長 1969年同社入社。1993年総務部長などを経て、2005年代表取締役社長、2018年より現職。
中島耕 代表取締役社長 1986年同社入社。2014年京都工場業務部長、2017年常務取締役などを経て、2018年より現職。
長谷川和重 取締役 1992年三菱商事入社、2019年同社へ出向。2021年三菱商事退職し同社取締役就任。2025年より現職。
田畑洋 取締役 1992年同社入社。2014年京都工場品質保証室長、2021年取締役執行役員などを経て、2025年より現職。
岩井清一 取締役 2001年同社入社。2008年法務管理部長、2016年執行役員経営企画室長などを経て、2024年より現職。


社外取締役は、大谷壽一(大谷製鉄代表取締役社長)、森千春(森千春会計事務所開設)です。

2. 事業内容


同社グループは、炭素製品および鉄鋼製品の事業を展開しています。

炭素製品事業


アルミニウム製錬用カソードブロックや人造黒鉛電極、特殊炭素製品、ファインパウダーなどの各種炭素製品を製造し、国内外のアルミニウム業界や電炉鋼業界、半導体関連業界の顧客に提供しています。

製品の販売による収益を主な収入源としています。事業の運営は主にSECカーボンが行い、製造した製品を子会社の東邦カーボンなどが仕入れて販売する体制をとっています。

鉄鋼製品事業


電炉製鉄によって各種鉄鋼製品を製造し、建設業界などの需要家に向けて販売しています。

鉄鋼製品の販売収益を主な収入源としています。この事業は、同社から人造黒鉛電極を購入している「その他の関係会社」の大谷製鉄が運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高および経常利益は2024年3月期まで拡大傾向にありましたが、その後はアルミニウム製錬会社におけるカソードブロックの在庫調整の遅れや特殊炭素製品等の需要減退などの影響を受け、2期連続で減収減益となっています。直近の期では減損損失の計上等により最終赤字となりました。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 229億円 304億円 373億円 312億円 251億円
経常利益 38億円 76億円 116億円 77億円 57億円
利益率(%) 16.5% 25.0% 31.0% 24.7% 22.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 30億円 54億円 73億円 57億円 -1億円

(2) 損益計算書


売上高の減少に伴い売上総利益も縮小しています。これに加えて販売費及び一般管理費等の負担率が相対的に高まったことで、営業利益および営業利益率も前期と比較して低下する結果となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 312億円 251億円
売上総利益 111億円 78億円
売上総利益率(%) 35.6% 31.2%
営業利益 68億円 40億円
営業利益率(%) 21.9% 16.0%


販売費及び一般管理費のうち、荷造費、運賃及び保管料が9.1億円(構成比24%)、販売手数料が8.0億円(同21%)、給料・諸手当が6.2億円(同16%)を占めています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動で生み出した利益で借入金の返済や株主還元を行いつつ、将来に向けた投資も手元資金で賄っている「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 45億円 78億円
投資CF -54億円 -71億円
財務CF -30億円 -20億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-0.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は89.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「わが社は流動する変化に挑み、無限の可能性を探求し、業界の最高峰をめざす」などを経営理念として掲げています。また、世界から信頼され成長し続けるカーボンメーカーとして地球環境を大切にし、社会の発展に貢献することをミッションに掲げ、企業活動を展開しています。

(2) 企業文化


経営理念にある「需要家の要望に応える製品を創造する」「社員及び株主の幸福を増進する」「社会の福祉発展に寄与する」といった価値観を重視しています。また、法令遵守の徹底やサステナビリティ経営の推進を通じて、社会的責任を認識しながら持続的な成長を目指す企業文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社は、激変する外部環境に鑑み、三か年の中期経営計画に代えて、2026年4月に公表した中長期経営方針「2030 Make Real」の実践に軸足を置いています。この方針において、以下の数値目標を掲げて資本効率を重視した経営を推進しています。

* 2030年度までにROE12%の達成

(4) 成長戦略と重点施策


事業収益力の回復、成長領域の具体化、事業基盤の強化、および資本効率の向上を重要な経営課題と認識しています。これらの課題に対応するため、「成長戦略の強化」「資本政策の推進」「経営体質の強化」の3本柱を基本方針に設定しています。具体的には、ものづくりの底上げ、人材の質と量の再定義、IT基盤強化、カーボンニュートラルへの貢献、投資の加速などを重点目標として取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人材を重要な経営資本と位置づけ、多様な人材の確保・育成・活躍促進を通じて組織力およびモノづくり力の強化を図っています。性別、国籍、年齢を問わず多様な人材の確保を目指し、女性やキャリア採用を積極的に行うとともに、各種教育メニューや研修システムを整備し、従業員の自律的な成長と働きやすい職場環境づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.0歳 18.0年 7,766,222円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.9%
男性育児休業取得率 63.6%
男女の賃金の差異(全労働者) 71.1%
男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 77.0%
男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 79.9%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 製品需要や市況変動による影響


アルミニウム業界や電炉鋼業界、半導体関連業界の設備投資動向の影響を受けます。中国・インドメーカーとの競争激化や新規設備投資の延期などで需要が変動した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。高付加価値製品の開発や長期契約等でリスク低減に努めています。

(2) 原材料価格の上昇および調達リスク


同社が使用する原材料は、石油石炭価格や需給バランスの影響を大きく受けます。特定サプライヤーへの依存や供給元設備のトラブル、地政学リスク等により安定調達に支障が生じる可能性があり、価格高騰等を販売価格に十分に転嫁できない場合は業績に影響が及ぶ可能性があります。

(3) 為替変動および中東情勢の影響


同社の輸出比率は総売上の5割を超えており、為替変動の影響を強く受けます。さらに、海上輸送を利用しているため、中東情勢の悪化により物流費の増加や納期遅延が生じるリスクがあります。為替予約等のヘッジや輸送ルートの見直しを進めていますが、完全な回避は困難です。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。