※本記事は、美濃窯業株式会社 の有価証券報告書(第163期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 美濃窯業ってどんな会社?
耐火物事業を祖業とし、プラントエンジニアリングや建材、不動産賃貸など多角的に事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
1918年に岐阜県で設立され、耐火煉瓦の製造を開始しました。1949年に名古屋証券取引所に上場し、2024年3月には東京証券取引所スタンダード市場へ上場しました。プラント部門の新設や子会社の設立などを経て事業を拡大し、2022年には東証市場区分見直しにより名証メイン市場へ移行しています。
連結従業員数は337名、単体では269名です。筆頭株主は社長の親族が資産管理を行う太田事務所で、第2位は主要販売先でもある事業会社の太平洋セメント、第3位は金融機関のみずほ銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 太田事務所 | 6.66% |
| 太平洋セメント | 4.80% |
| みずほ銀行 | 4.37% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は太田滋俊氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 太田 滋俊 | 代表取締役社長 | 1980年同社入社。常務、専務を経て1999年より現職。岩佐機械工業社長などを兼務。 |
| 中島 正也 | 取締役専務執行役員 | 1976年同社入社。常務執行役員、取締役を経て2015年より専務執行役員。2025年4月より現職。 |
| 長谷川 郁夫 | 取締役常務執行役員管理本部長兼総務人事部長 | みずほ銀行出身。2014年同社入社。執行役員、取締役を経て2023年より現職。 |
| 石川 豊 | 取締役常務執行役員RCE事業部長兼資材課担当 | 1985年同社入社。執行役員、取締役を経て2023年より常務執行役員。2025年4月より現職。 |
| 山田 俊彦 | 取締役(監査等委員) | 1979年同社入社。執行役員、取締役を経て2021年より現職。 |
社外取締役は、大島崇文(元日本特殊陶業代表取締役副社長)、佐藤誠(丸紅理事)、澁谷英司(公認会計士)、小林宏明(元エスエス製薬執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「耐火物事業」「プラント事業」「建材及び舗装用材事業」「不動産賃貸事業」および「その他」事業を展開しています。
**耐火物事業**
耐火煉瓦や不定形耐火物、セラミックス製品の製造・販売を行っています。主な顧客はセメント業界などの産業界で、高温下での耐久性が求められる炉や窯の建設・補修に使用されています。
製品の販売による収益が主となります。運営は主に美濃窯業が行っています。
**プラント事業**
工業炉などの設備を設計・製造・施工するプラント部門と、炉内に耐火物を施工するエンジニアリング部門で構成されています。セラミックスや化学業界向けに工業炉を提供し、セメント製造設備等のメンテナンスも行います。
設備の設計・施工請負やメンテナンスサービスによる収益を得ています。運営は美濃窯業および岩佐機械工業が行っています。
**建材及び舗装用材事業**
工場や公共施設向けの屋内塗床材や、遊歩道・駐車場向けの屋外舗装材を提供しています。景観性や透水性に優れた製品群を展開し、建設業界や都市インフラ整備の需要に応えています。
製品の販売および施工工事による収益を得ています。運営は美州興産が販売・施工を、美濃窯業が一部製品の製造・供給を行っています。
**不動産賃貸事業**
同社が所有する不動産の一部を有効活用し、オフィスビルや住宅として賃貸しています。
テナントや入居者からの賃貸料が収益源となります。運営は美濃窯業が行っています。
**その他**
セメント・石灰および環境分野などに向けて、外注品等の販売を行っています。
商品の販売による収益を得ています。運営は主に美濃窯業が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、利益面でも高い水準を維持しています。特に最新期では過去最高の売上高及び利益額を達成しており、安定的な成長が続いています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 118億円 | 124億円 | 146億円 | 142億円 | 151億円 |
| 経常利益 | 12億円 | 9.5億円 | 15億円 | 15億円 | 17億円 |
| 利益率(%) | 10.3% | 7.6% | 10.5% | 10.4% | 11.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 7億円 | 17億円 | 9億円 | 12億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに増加しています。原価率や販管費率のコントロールにより、収益性が向上していることが読み取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 142億円 | 151億円 |
| 売上総利益 | 37億円 | 40億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.0% | 26.7% |
| 営業利益 | 14億円 | 16億円 |
| 営業利益率(%) | 9.5% | 10.5% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が10億円(構成比40%)、荷造及び発送費が4.5億円(同18%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のプラント事業が大きく伸長し、全社の増収を牽引しました。耐火物事業や建材事業も堅調に推移し、全セグメントで増収増益を達成しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 耐火物事業 | 61億円 | 63億円 | 2.5億円 | 3.4億円 | 5.5% |
| プラント事業 | 51億円 | 57億円 | 7.1億円 | 8.3億円 | 14.5% |
| 建材及び舗装用材事業 | 25億円 | 26億円 | 1.9億円 | 2.1億円 | 8.4% |
| 不動産賃貸事業 | 3.8億円 | 4.0億円 | 1.8億円 | 2.0億円 | 49.2% |
| その他 | 1.2億円 | 1.4億円 | 0.2億円 | 0.3億円 | 19.7% |
| 調整額 | -8.4億円 | -10億円 | 0.0億円 | -0.3億円 | - |
| 連結(合計) | 142億円 | 151億円 | 14億円 | 16億円 | 10.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は営業活動で得た資金の一部を投資や借入返済に充てており、財務基盤は安定的です(健全型)。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 19億円 | 12億円 |
| 投資CF | -1.6億円 | -5億円 |
| 財務CF | -4.6億円 | -4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
2030年の「ありたい姿」として、「“セラミックスαカンパニー”への進化」を掲げています。新市場、新製品、新規事業の開発によって付加価値(+α)を生み出し、セラミックス事業を耐火物事業と並ぶ新たな柱へと成長させることを目指しています。
■(2) 企業文化
役員・従業員の行動原則として「行動規範」を定めており、法令遵守、顧客満足度の向上、環境保全、人格尊重などを重視しています。また、経営環境の不透明さが増す中、時代に適合あるいは先取りして経営や事業を変革し、持続的に成長可能な企業体質を作り上げることを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
新中期経営計画「Take Off~新しいステージへの挑戦~」を策定し、2028年3月期に向けた数値目標を設定しています。
* 売上高:175億円
* 営業利益:21億円
* ROS(売上高経常利益率):12.6%
* ROE:9.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
耐火物事業から耐火物セラミックス事業への転換を図り、高成長・高収益が期待される海外事業やセラミックス事業の拡大を目指しています。具体的には、セメント業界向け以外の高付加価値品の売上拡大、次世代省エネルギー型工業炉の販売、リサイクル分野等の新分野開拓などを推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
オンライン動画研修制度や一人当たり年間教育予算の配賦など、社員のスキルアップやリスキリングを促進しています。また、育児奨励休暇制度の制定やエンゲージメントサーベイの実施などを通じ、多様な人材が働きやすい職場環境の整備と社員の帰属意識向上に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.3歳 | 16.6年 | 6,616,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規) | - |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
同社は女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の規定による公表義務の対象ではないため、有報には女性管理職比率および男女賃金差異の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の管理職比率(2.8%)、女性正社員比率(14.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 景気及び市場の動向に係るリスク
主力の耐火物事業はセメント市場向けが多いため、国内建設業界の動向や政府の公共事業政策によってセメント需要が変動した場合、業績に大きな影響を受ける可能性があります。
■(2) 原料、燃料価格の高騰に係るリスク
耐火物原料や重油等の燃料を調達していますが、これらの調達価格が大きく変動した場合、財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。海外からの調達については為替変動の影響も受けます。
■(3) 特定の業界への依存に係るリスク
国内建設業界が最終需要者であるセメント製造設備用れんがやエンジニアリングの売上がグループ全体の約3割を占めています。国内建設業界におけるセメント需要が変動した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 自然災害、感染症による影響に係るリスク
生産拠点が東海地方に集中しており、南海トラフ巨大地震などの大規模災害が発生した場合、生産体制や経営成績に甚大な影響を及ぼす可能性があります。また、感染症の蔓延により建設業界の事業縮小等が起きた場合も影響を受ける可能性があります。



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