美濃窯業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

美濃窯業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場および名古屋証券取引所メイン市場に上場する美濃窯業は、耐火物やセラミックス製品の製造、プラントの設計・施工などを主力事業として展開しています。直近の業績は、売上高が前年比増の162億円、営業利益も増加し16億円と、増収増益のトレンドを維持し安定成長を続けています。


※本記事は、美濃窯業株式会社の有価証券報告書(第164期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 美濃窯業ってどんな会社?


耐火煉瓦の製造から始まり、各種産業向け耐火物やセラミックスの製造、プラントの設計・施工まで幅広く展開する企業です。

(1) 会社概要


1918年に岐阜県瑞浪市で耐火煉瓦などの製造を目的に設立されました。1949年に名古屋証券取引所に上場し、1958年には窯炉の設計施工を行う築炉部門(現プラント部)を新設しました。2021年には岩佐機械工業を完全子会社化するなど事業基盤を拡大し、2024年に東京証券取引所スタンダード市場へ上場を果たしています。

従業員数は連結で346名、単体で279名です。筆頭株主は創業者および役員の資産管理会社である太田事務所で、第2位は主要な取引先でもある事業会社の太平洋セメント、第3位は金融機関であるみずほ銀行となっています。

氏名 持株比率
太田事務所 6.66%
太平洋セメント 4.80%
みずほ銀行 4.37%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は太田滋俊氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
太田滋俊 代表取締役社長 1980年同社入社。1987年取締役企画担当等を経て、1999年より代表取締役社長。グループ各社の代表取締役社長や取締役会長等も歴任し現職。
中島正也 取締役専務執行役員 1976年同社入社。2003年執行役員プラント部長補佐等を経て、2010年取締役・常務執行役員。2015年より取締役・専務執行役員となり現職。
長谷川郁夫 取締役常務執行役員管理本部長兼総務人事部長 1988年第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。2014年同社管理担当部門長に就任。2016年取締役等を経て、2023年より現職。
石川豊 取締役常務執行役員RCE事業部長兼資材課担当 1985年同社入社。2015年執行役員プラント部長等を経て、2023年取締役常務執行役員RE事業部長。2025年より現職。
山田俊彦 取締役(監査等委員) 1979年同社入社。2012年執行役員営業企画部長、2015年取締役執行役員等を経て、2016年取締役・執行役員RE事業部長。2021年より現職。


社外取締役は、大島崇文(元日本特殊陶業代表取締役副社長)、佐藤誠(丸紅理事)、澁谷英司(等松・青木監査法人出身の公認会計士)、小林宏明(元エスエス製薬執行役員統括部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「耐火物セラミックス事業」「プラント事業」「建材及び舗装用材事業」「不動産賃貸事業」および「その他」の事業を展開しています。

耐火物セラミックス事業


耐火煉瓦、不定形耐火物、その他の耐火材料の製造および販売を行っています。これらの製品は、高温下での耐久性や耐火性が求められるセメント業界などの産業向けに、炉や窯の建設、補修、修理などの用途で提供されています。

顧客からの要求スペックに応じたカスタマイズ製品や高品質な耐火物を提供し、その製品代金として収益を得ています。本事業の運営は主に同社が主体となって行っています。

プラント事業


工業炉などの設備設計・製造・施工を行うプラント部門と、工業炉内に耐火物を施工するエンジニアリング部門で構成されています。セラミックス業界や化学業界、セメント・石灰製造などの素材産業向けに展開しています。

プラント設備の設計・製造・施工代金や、提案型技術サービス、設備のメンテナンス費用として顧客から収益を得ています。本事業の運営は、同社および岩佐機械工業が行っています。

建材及び舗装用材事業


工場やビル向けの屋内用塗床材、遊歩道や駐車場向けの屋外用舗装材など、建材および舗装用材の製造・販売・施工を行っています。建設業界や都市インフラなど、さまざまな環境に配慮した製品群を提供しています。

製品の販売代金や施工費用として顧客から収益を得ています。本事業は主に美州興産が販売および施工を担当し、同社が一部の舗装用材や加工製品を製造して供給する体制で運営されています。

不動産賃貸事業


同社が所有している不動産の一部を活用し、オフィスビルや住宅向けに不動産賃貸を行う事業を展開しています。

テナントや入居者から受け取る賃料を安定的な収益源としています。本事業の運営は同社が行い、グループ全体の収益を支える事業基盤として位置づけられています。

その他


報告セグメントに含まれない事業として、セメントや石灰、環境分野などさまざまな産業分野で使用される外注品等の販売を行っています。

取引先等へ外注品の販売を行うことで収益を得ています。本事業の運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、売上高が一時的な足踏みを経て増加傾向にあり、順調に事業規模を拡大しています。経常利益も売上の成長に伴って安定して推移しており、収益力の高さが伺えます。利益率も10%台を維持し、底堅い業績トレンドを示しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 124億円 146億円 142億円 151億円 162億円
経常利益 9億円 15億円 15億円 17億円 17億円
利益率(%) 7.6% 10.5% 10.4% 11.2% 10.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 7億円 17億円 9億円 11億円 11億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も前年から増加しています。原価や販売費の増加を適切にコントロールしており、営業利益も堅調に推移しています。各利益水準は安定しており、底堅い事業運営が行われていることが読み取れます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 151億円 162億円
売上総利益 40億円 41億円
売上総利益率(%) 26.7% 25.4%
営業利益 16億円 16億円
営業利益率(%) 10.5% 9.9%


販売費及び一般管理費のうち、荷造及び発送費が4億円(構成比17%)、従業員給与及び手当が5億円(同18%)を占めています。売上原価は120億円で大部分を構成しており、原燃料価格や労務費などの影響が反映されています。

(3) セグメント収益


耐火物セラミックス事業とプラント事業は増収となり全体を牽引しましたが、プラント事業は労務費などの原価上昇により減益となりました。建材及び舗装用材事業は需要減により減収となりましたが、価格改定やコスト削減で利益への影響を最小限に留めています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
耐火物セラミックス事業 63億円 70億円 3億円 4億円 6.0%
プラント事業 57億円 64億円 8億円 7億円 11.4%
建材及び舗装用材事業 26億円 23億円 2億円 2億円 9.4%
不動産賃貸事業 4億円 4億円 2億円 2億円 49.5%
その他 1億円 0.7億円 0.3億円 0.2億円 29.1%
調整額 -10億円 -8億円 -0.3億円 0.2億円 -
連結(合計) 151億円 162億円 16億円 16億円 9.9%


同社のキャッシュ・フローは、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業を示す「健全型」となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 12億円 22億円
投資CF -5億円 -10億円
財務CF -4億円 -5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.3%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も70.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、役員および従業員の行動の原則を示す「行動規範」において、法令の遵守、顧客満足度の向上、適正な会計と報告、環境の保全、人格の尊重、情報の管理、地域社会との共生、反社会的勢力への対処を掲げています。この規範を実践することが企業価値を向上させ、社会への貢献につながるものと認識し、経営理念としています。

(2) 企業文化


同社の企業文化は、「絶えず変化する時代の中、常に挑戦し続け、自ら創造することができる人材の確保、育成こそが企業の最大の資源であり成長・発展の根源である」という考えに立脚しています。適材適所、公平な能力評価、そして働きがいや生きがいのある職場づくりに重点を置く組織文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


2030年のありたい姿として、「“セラミックスαカンパニー”への進化」を掲げています。新市場、新製品、新規事業の開発によって+αを生み出し、セラミックス事業を新たな柱へと成長させることを目標としています。
・売上高220億円+α
・営業利益30億円+α
・2028年3月期計画:売上高175億円、営業利益21億円

(4) 成長戦略と重点施策


持続的な成長と企業価値の向上を図るため、事業ポートフォリオの最適化による経営資源の効率的配分と収益力の向上を推進します。耐火物セラミックス事業では高付加価値製品の拡販やリサイクル事業の強化、プラント事業では次世代省エネルギー型工業炉の開発による新分野開拓を進め、収益基盤の多様化と事業領域の拡大を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


変化の激しいビジネス環境に対応するため、従業員の専門性の向上やリスキリング(学び直し)、自律的なキャリア形成を強力に支援しています。オンライン動画研修サービスの活用や教育投資の拡充に加え、管理職を目指す意欲のある女性社員を対象としたキャリア研修などを実施し、それぞれのライフステージやキャリアに応じた育成環境を整えています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.5歳 16.7年 6,824,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.8%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用労働者) -
男女賃金差異(パート・有期労働者) -

※同社は公表義務の対象ではないため、有報には男女の賃金の差異に関する記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性正社員比率(15.8%)、一人当たりの年間教育予算(5,000円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 景気及び市場の動向による影響

同社の主力である耐火物セラミックス事業はセメント市場向けが多く、国内建設業界の動向や政府の公共事業政策によるセメント需要の変動によって、業績が大きな影響を受ける可能性があります。また、プラント事業も設備投資の動向次第で影響を受けます。

(2) 原料・燃料価格の高騰

耐火物原料および重油などの燃料を国内外の複数の取引先から調達しています。為替予約等により価格変動リスクの軽減を図っていますが、調達価格が大きく変動した場合、同社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 自然災害による影響

岐阜県や愛知県などに生産拠点を有しており、定期点検や耐震診断などの災害防止対策を講じています。しかし、南海トラフ巨大地震のような大規模地震が発生した場合、生産体制や業績に大きな影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。