※本記事は、株式会社松風 の有価証券報告書(第153期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 松風ってどんな会社?
歯科材料・機器の総合メーカーとして世界的に事業を展開し、ネイル関連製品の製造・販売も手掛ける企業です。
■(1) 会社概要
1922年に松風陶歯製造として創業し、人工歯の製造を開始しました。1989年に大証二部および京都証券取引所に上場し、2000年代以降は海外現地法人の設立やドイツ企業の買収を通じてグローバル展開を加速させました。2012年に東証一部指定銘柄となり、2020年には三井化学等と資本業務提携を行っています。2022年の市場区分見直しにより、現在は東証プライム市場に上場しています。
2025年3月31日現在の従業員数は連結で1,413名、単体で523名です。大株主構成は、筆頭株主が資本業務提携先である事業会社、第2位が資産管理業務を行う信託銀行、第3位が地域の金融機関となっており、事業パートナーや安定株主が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三井化学 | 20.14% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.10% |
| 京都銀行 | 4.00% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長 社長執行役員は髙見哲夫氏です。社外取締役比率は30.8%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 根來 紀行 | 代表取締役会長 | 1981年同社入社。研究開発部長、常務取締役研究開発・技術・生産担当などを経て2009年取締役社長に就任。2015年より代表取締役社長 社長執行役員を務め、2022年6月より現職。 |
| 髙見 哲夫 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1983年同社入社。営業部長、東京支社長、常務執行役員営業担当などを歴任。2022年6月より現職。 |
| 山嵜 文孝 | 取締役 専務執行役員総合企画担当 | 1981年同社入社。総合企画部長、取締役総合企画担当、取締役常務執行役員などを経て、2024年6月より現職。 |
| 梅田 隆宏 | 取締役 専務執行役員財務・総務・ネイル事業担当 | 2013年京都銀行福知山支店長。2015年同社入社。財務部長、常務執行役員財務担当などを経て、2023年6月より現職。 |
| 薗井 秀次 | 取締役 常務執行役員生産担当 | 1995年同社入社。ドイツ子会社Executive Director、生産部担当部長、執行役員生産部長などを経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、鈴木基市(元三井化学専務取締役)、西村大三(公認会計士・税理士)、神本満男(公認会計士・税理士)、林田博巳(三井化学常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「デンタル関連事業」、「ネイル関連事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) デンタル関連事業
歯科治療や歯科技工物製作で使用される人工歯、研削材、金属、化工品、セメント、機械器具などの歯科材料・機器を製造・販売しています。主な顧客は歯科医療従事者や歯科技工所等であり、国内外の市場に向けて製品を提供しています。
収益は、製品の販売対価として顧客から受け取ります。運営は、国内では同社、株式会社滋賀松風、株式会社松風プロダクツ京都等が製造を行い、同社や松風バイオフィックス株式会社等が販売を行っています。海外では米国、ドイツ、中国等の現地法人が製造・販売を担っています。
■(2) ネイル関連事業
ネイルサロンや一般消費者向けに、ネイルケア用品や関連機器、ジェルネイル製品等を製造・販売しています。プロネイリスト向けの製品から一般向けの製品まで幅広く取り扱っており、国内外で事業を展開しています。
収益は、製品の販売により顧客から対価を受け取ります。運営は、製造を株式会社滋賀松風や株式会社ネイルラボ等が担い、販売は株式会社ネイルラボや米国、台湾の現地法人が行っています。
■(3) その他の事業
工業用研磨材等の製造・販売を行っています。歯科材料技術を応用した研磨材等を産業向けに提供しています。
収益は、製品の販売対価として顧客から受け取ります。運営は主に株式会社松風プロダクツ京都が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は5期連続で増加しており、直近の2025年3月期には387億円に達しました。利益面でも拡大傾向が続いており、当期純利益は2021年3月期の10億円から2025年3月期には40億円へと大きく成長しています。利益率も上昇基調にあります。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 247億円 | 281億円 | 317億円 | 351億円 | 387億円 |
| 経常利益 | 25億円 | 37億円 | 42億円 | 51億円 | 55億円 |
| 利益率(%) | 10.2% | 13.0% | 13.4% | 14.6% | 14.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 10億円 | 17億円 | 29億円 | 35億円 | 40億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益も増加していますが、売上総利益率は59%台で安定的に推移しています。営業利益率も約14%前後を維持しており、収益性の高い事業構造が見て取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 351億円 | 387億円 |
| 売上総利益 | 210億円 | 230億円 |
| 売上総利益率(%) | 59.8% | 59.4% |
| 営業利益 | 47億円 | 54億円 |
| 営業利益率(%) | 13.4% | 13.9% |
販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び給料手当が57億円(構成比32%)、研究開発費が20億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のデンタル関連事業が売上・利益ともに増加し、全体を牽引しました。一方、ネイル関連事業は減収となり、営業損失を計上しています。その他の事業は小規模ながら増収増益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| デンタル関連事業 | 326億円 | 364億円 | 47億円 | 54億円 | 15.0% |
| ネイル関連事業 | 24億円 | 22億円 | 0.1億円 | -0.7億円 | -2.9% |
| その他の事業 | 0.8億円 | 1.0億円 | 0.1億円 | 0.1億円 | 14.4% |
| 調整額 | -0.1億円 | -0.0億円 | 0.1億円 | 0.1億円 | - |
| 連結(合計) | 351億円 | 387億円 | 47億円 | 54億円 | 13.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローの状況は、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業を示す「健全型」です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 31億円 | 34億円 |
| 投資CF | -13億円 | -9億円 |
| 財務CF | -21億円 | -18億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は85.2%で市場平均を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「創造的な企業活動を通じて世界の歯科医療に貢献する」ことを経営理念として掲げています。顧客に満足される商品および製品を提供し、株主からの信頼と期待に応えることを経営の基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は、「企業活動のあらゆる局面で、質を重視しつつ量的な成長・拡大をはかる」こと、および「あらゆる変化を先取りし、積極的に挑戦する」ことを行動指針としています。これらの指針を通じて、創造的な活動を推進する文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は長期ビジョン「500億円構想」を掲げ、グループ売上高500億円(国内170億円、海外330億円)、営業利益75億円(営業利益率15%)の達成を目指しています。現在はその達成に向けた第五次中期経営計画(2024年4月〜2028年3月)に取り組んでいます。
* 2028年3月期:連結売上高501億円
* 2028年3月期:連結営業利益75億円
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「500億円構想」の達成に向け、経営資源を大きく海外にシフトし、海外事業の拡大を成長の軸としています。具体的には、地域ニーズに合った新製品の開発・投入、販売網の整備、国内外の学術ネットワーク構築、生産拠点の再配置と海外生産の拡大、M&Aの推進などを重点課題としています。また、三井化学株式会社やサンメディカル株式会社との業務提携、サステナビリティ経営の推進にも取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人材こそが新たな価値を生み出す源泉」「個々の役割の総和が会社の価値」という考えのもと、多様性を尊重し、各人に学びと成長の機会を提供することを方針としています。女性社員の採用比率目標(30%以上)の設定やキャリア教育、仕事とライフイベントの両立支援、外国人材の採用・育成、専門性を持つ中途採用の積極化などにより、活き活きと働ける組織文化の醸成と中核人材の育成を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.1歳 | 16.4年 | 8,105,528円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含め、株式報酬費用を除いております。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.9% |
| 男性育児休業取得率 | 60.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 56.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 79.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 83.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員の採用比率(37%)、育児休業取得率(女性)(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 製造販売業等の許可等に関するリスク
同社グループの製品は医薬品医療機器等法の規制を受け、製造販売業許可等が必要です。許可要件の欠格や法令違反により許可が取り消された場合、事業継続に重大な影響を及ぼす可能性があります。許可等の継続は最重要課題として認識されています。
■(2) 品質及び安全性に関するリスク
製品の使用により保健衛生上の危害が発生した場合、自主回収や販売停止等の措置が必要となります。これにより製品の信用が損なわれ、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は品質マネジメントシステムを運用していますが、リスクを完全に排除することは困難です。
■(3) 製造物責任に関するリスク
製品に関する製造物責任の追及を受ける可能性があります。製造物責任保険に加入していますが、賠償額が補償範囲を超える場合、財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 法規制又は訴訟に関するリスク
事業は国内外の様々な法規制の適用を受けます。意図せぬ法令違反や訴訟提起が生じた場合、財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。コンプライアンス経営に努めていますが、リスクを完全に排除できるわけではありません。



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