※本記事は、松風の有価証券報告書(第154期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 松風ってどんな会社?
松風は歯科材料や機器の総合メーカーとして、国内外の歯科医療を支え、ネイル用品などの事業も展開しています。
■(1) 会社概要
松風は1922年に人工歯の製造を開始して創立されました。1989年に上場を果たし、2012年には東証一部に指定されています。その後も海外現地法人の設立や企業買収によりグローバル展開を加速させ、2020年には三井化学やサンメディカルとの資本業務提携を行うなど、事業基盤の強化を推進しています。
現在の従業員数は連結で1,462名、単体で536名体制となっています。筆頭株主は資本業務提携先である三井化学で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は金融機関の京都銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三井化学 | 20.11% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.88% |
| 京都銀行 | 4.00% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性4名の計13名で構成され、女性役員比率は30.8%です。代表取締役社長は髙見哲夫氏が務めています。取締役9名のうち4名が社外取締役であり、社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 髙見哲夫 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1983年入社。2012年営業部長、2018年執行役員営業部長兼東京支社長、2020年取締役常務執行役員営業担当などを経て、2022年より現職。 |
| 根來紀行 | 代表取締役会長 | 1981年入社。2003年取締役研究開発部長、2009年社長、2015年代表取締役社長社長執行役員を経て、2022年より現職。 |
| 梅田隆宏 | 代表取締役 専務執行役員財務・情報システム・ネイル事業担当 | 2013年京都銀行福知山支店長、2015年同社入社。2023年取締役専務執行役員などを経て、2026年より現職。 |
| 山嵜文孝 | 取締役 専務執行役員総合企画担当 | 1981年入社。2008年総合企画部長、2013年取締役総合企画担当などを経て、2024年より現職。 |
| 薗井秀次 | 取締役 常務執行役員生産担当 | 1995年入社。2018年Merz Dental GmbH Executive Director、2022年執行役員生産部長などを経て、2024年より現職。 |
社外取締役は、鈴木基市(元三井化学専務取締役)、西村大三(西村公認会計士事務所開設)、矢口順子(ミンカブ・ジ・インフォノイド取締役)、松江香織(三井化学常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「デンタル関連事業」「ネイル関連事業」および「その他の事業」を展開しています。
■デンタル関連事業
歯科治療や歯科技工物製作で使用される人工歯、研削研磨材、セメント、CAD/CAM材料などの歯科材料や機器の製造・販売を行っています。国内外の歯科医院や歯科技工所、関連ディーラーなどを主要な顧客として、幅広い製品ラインナップで歯科医療を支えています。
製品の販売による収益を主な収益源としています。運営は同社が行うほか、製造は子会社の滋賀松風や松風プロダクツ京都、販売は松風バイオフィックスや各国の海外販売子会社が担い、グループ全体で国内外の市場に製品を供給しています。
■ネイル関連事業
プロネイリストや一般消費者向けに、ジェルネイルシステムやアクリルネイルシステムなどのネイル関連用品・機器の製造や輸出入、販売を行っています。サロンワークで活用される高品質なジェルや、自宅で楽しめる一般向けのネイル製品まで、多様なニーズに応える製品を提供しています。
ネイル関連製品の販売による収益が主な収益源です。運営は主に子会社のネイルラボが担っており、海外では米国や台湾の販売子会社を通じて製品を展開し、国内外の市場に向けてネイル製品のプロモーションと販売活動を推進しています。
■その他の事業
自動車関連業界などを主要なターゲットとして、硬質セラミック用や軟質プラスチック用ゴム製研磨材などの工業用研磨材の製造・販売を行っています。電動化・知能化への対応が進む自動車業界や金型関連分野の需要に向けて、市場ニーズに応える研削・切削材料を提供しています。
工業用研磨材の製品販売を通じて収益を得ています。運営や製造は主に子会社の松風プロダクツ京都が担当しており、納期遅延の防止や受注対応力の強化に取り組みながら、多様な業界に向けて製品の安定供給を図っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間を通じて、売上高は右肩上がりで成長を続けており、約1.4倍に拡大しています。利益面でも経常利益と当期純利益が毎期増加しており、利益率も13%台から14%台へと安定して高い水準を維持しています。国内外での事業基盤強化が着実な業績拡大に結びついています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 281億円 | 317億円 | 351億円 | 387億円 | 400億円 |
| 経常利益 | 37億円 | 42億円 | 51億円 | 55億円 | 59億円 |
| 利益率(%) | 13.0% | 13.4% | 14.6% | 14.3% | 14.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 17億円 | 29億円 | 35億円 | 40億円 | 54億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期から着実に増加し、売上総利益も拡大していますが、売上総利益率は約59%と横ばいで推移しています。一方で、成長に向けた投資や費用の増加により、営業利益は前期比で微減となり、営業利益率も14%弱から13%強へとやや低下しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 387億円 | 400億円 |
| 売上総利益 | 230億円 | 237億円 |
| 売上総利益率(%) | 59.4% | 59.4% |
| 営業利益 | 54億円 | 52億円 |
| 営業利益率(%) | 13.9% | 13.1% |
販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び給料手当が60億円(構成比32%)、研究開発費が22億円(同12%)、手数料が19億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のデンタル関連事業は、国内外でCAD/CAM関連製品や修復材料の販売が堅調に推移し、増収を牽引しました。ネイル関連事業は国内市場の成熟化や海外の環境変化の影響で横ばいとなり、その他の事業も安定して推移しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| デンタル関連事業 | 364億円 | 377億円 |
| ネイル関連事業 | 22億円 | 22億円 |
| その他の事業 | 1億円 | 1億円 |
| 連結(合計) | 387億円 | 400億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 34億円 | 34億円 |
| 投資CF | -9億円 | -21億円 |
| 財務CF | -18億円 | -20億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.7%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も84.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「創造的な企業活動を通じて世界の歯科医療に貢献する」を経営理念に掲げています。社会や市場のニーズを的確に捉え、安全安心で高品質な製品やサービスを提供することで、世界中の人々のQOL(生活の質)向上に寄与することを目指しています。
■(2) 企業文化
行動指針として「企業活動のあらゆる局面で、質を重視しつつ量的な成長・拡大をはかる」こと、そして「あらゆる変化を先取りし、積極的に挑戦する」ことを重視しています。多様性を尊重し、従業員一人ひとりが能力を最大限に発揮できる働きがいのある組織文化の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
2040年を見据えた長期ビジョン「Vision10」では、歯科業界のグローバルトップ10入りを目指しています。また、2028年3月期を最終年度とする第五次中期経営計画「500億円構想」の達成を目標に掲げています。
* グループ売上高500億円(国内170億円、海外330億円)
* 営業利益75億円
* 営業利益率15%
* 2040年長期目標:売上高2,500億円、営業利益500億円
■(4) 成長戦略と重点施策
保存修復材料分野の基盤を強化しつつ、デジタル歯科や予防、矯正といった成長分野において海外展開を軸に成長を加速させる戦略を描いています。新製品の開発・投入や販売網の整備、生産拠点の再配置、M&Aの推進などに注力し、将来の成長が見込まれる新規領域の開拓も進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人材こそが新たな価値を生み出す源泉」との考えのもと、グローバル人材やDX専門人材、次世代経営人材などの重点人材の育成と確保を進めています。また、多様性の尊重やワークライフバランスの実現に向けた環境整備を行い、社員のエンゲージメントと働きがいを高める方針を掲げています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.7歳 | 16.2年 | 8,113,619円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.9% |
| 男性育児休業取得率 | 79.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 53.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 79.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 87.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員の採用比率目標(30%)、管理職における転職経験者の比率(22.5%)、女性の育児休業取得率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) サイバーセキュリティ・情報漏洩リスク
外部からのサイバー攻撃や内部不正アクセスなどにより、情報セキュリティ事故や機密情報の漏洩が発生した場合、事業継続や社会的信用の維持に支障をきたし、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 製造物責任リスク
歯科器材の研究開発や製造販売において潜在的な製造物責任を負っており、万が一製品の欠陥により使用者に健康被害や財産損害を与えた場合、損害賠償や訴訟を通じて業績や財政状態に悪影響が及ぶリスクがあります。
■(3) 医療費抑制政策リスク
各国の医療費抑制政策の動向により、顧客である医療機関から製品価格の引き下げ要求が強まる、あるいは需要そのものが減少した場合、同社グループの収益性や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 海外事業環境変化リスク
事業のグローバル展開を進める中で、海外各国の政治・経済情勢や為替変動、医療保険制度や法規制の変更等により事業活動や販売戦略が予期せぬ影響を受け、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。



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