ニッカトー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ニッカトー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する、セラミックス製品の製造販売および工業用計測機器等の仕入販売を行う企業です。直近の業績は、主力であるセラミックス事業において電子部品業界の市況低迷等が影響し、減収減益となっています。


※本記事は、株式会社ニッカトー の有価証券報告書(第155期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ニッカトーってどんな会社?


理化学用陶磁器やファインセラミックス製品の製造販売、および加熱装置等の仕入販売を行う老舗企業です。

(1) 会社概要


1913年に西村化学陶業試験場として創設され、1921年に前身となる西村工業が設立されました。1991年にニッカトーへ商号変更し、2004年にジャスダックへ上場しました。2007年には東証二部へ上場し、2008年に東証一部銘柄に指定されています。2023年に東証スタンダード市場へ移行しました。

同社の従業員数は連結・単体ともに288名です。筆頭株主は取引先持株会で、第2位は同社の主要仕入先である化学メーカー、第3位は主要な販売先かつ仕入先である計測制御機器メーカーとなっており、取引関係のある企業や団体が上位を占めています。

氏名 持株比率
ニッカトー取引先持株会 7.20%
東ソー 5.00%
チノー 4.70%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は大西宏司氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
大西 宏司 代表取締役社長 1981年同社入社。研究開発部長、生産本部長などを経て、2018年6月より現職。
濱田 悦男 常務取締役常務執行役員経営管理部長 1987年第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。支店長を経て2016年同社入社。経理部長などを歴任し、2024年4月より現職。
土井 祐二 取締役(監査等委員) 1980年朝日生命保険相互会社入社。支社長を経て2012年同社入社。総務部長などを務め、2023年6月より現職。


社外取締役は、田邉絵理子(弁護士)、西村元昭(弁護士)、臼間真次(税理士法人ゆびすい社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「セラミックス事業」および「エンジニアリング事業」を展開しています。

セラミックス事業


電子部品、食品、薬品、塗料等のメーカーにおける生産工程で使用されるセラミックス製の道具類、備品、機械部品等の消耗品を製造・販売しています。主な製品には、磁気ヘッド用フェライト育成炉等に使われる機能性セラミックスや、電子部品原料の粉砕用ボールなどの耐摩耗セラミックスがあります。

収益は、これらの製品を顧客に販売することで得ています。国内向け販売は主に出荷時点で収益を認識し、輸出については船積み時点で認識しています。運営は主にニッカトー(同社)が行っています。

エンジニアリング事業


製造工場は持たず、加熱装置や計測機器等を商品として仕入し、販売しています。主な取扱商品には、超伝導用テープ線材や半導体部品等の生産炉として使用される各種電気炉や、温度計測・制御のためのセンサ、計測機器などがあります。

収益は、商品を顧客に販売することで得ています。商品は顧客への引渡し時点または検収時点で収益を認識しています。運営は主にニッカトー(同社)が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近の業績を見ると、売上高は100億円前後で推移していますが、利益面では減少傾向にあります。特に直近期では、電子部品業界の市況低迷や原燃料価格の上昇等が影響し、利益率が低下しました。当期純利益も減少しており、全体として厳しい事業環境が反映された推移となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 87億円 100億円 107億円 102億円 101億円
経常利益 4.4億円 10億円 12億円 10億円 7.2億円
利益率(%) 5.1% 10.3% 11.0% 9.7% 7.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.7億円 6.7億円 8.4億円 7.0億円 5.0億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高は微減となりましたが、売上原価率の上昇により売上総利益が減少しました。販管費はほぼ横ばいで推移したものの、粗利の減少幅が大きく、結果として営業利益率は低下しています。コスト増が利益を圧迫する構造となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 102億円 101億円
売上総利益 23億円 20億円
売上総利益率(%) 22.7% 20.1%
営業利益 9.2億円 6.4億円
営業利益率(%) 9.0% 6.3%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が4.6億円(構成比33.5%)、賞与引当金繰入額が1.2億円(同8.4%)を占めています。また、売上原価には減価償却費が含まれており、経費の中で大きな割合を占めています。

(3) セグメント収益


主力のセラミックス事業は、電子部品業界向けの売上が低調だったことに加え、在庫評価損の計上やコスト増により減益となりました。エンジニアリング事業も減収となりましたが、自動車・重機関連等の設備投資は堅調でした。両事業ともに減益となり、全体として利益水準が低下しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
セラミックス事業 75億円 74億円 7.2億円 4.5億円 6.1%
エンジニアリング事業 27億円 27億円 2.0億円 1.9億円 7.1%
連結(合計) 102億円 101億円 9.2億円 6.4億円 6.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ資金(営業CFプラス)を使って設備投資を行い(投資CFマイナス)、借入金の返済や配当支払いを行っている(財務CFマイナス)ことから、「健全型」のキャッシュ・フロー状態と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 7.9億円 17億円
投資CF -4.0億円 -9.3億円
財務CF -5.1億円 -4.9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.8%でスタンダード市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.6%でスタンダード市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「創造性に富んだ信頼される製品の提供を通じて科学技術と産業の発展に寄与し企業の成長と発展を期し、親しまれる経営で社会に貢献する」という企業理念を掲げています。創業以来、理化学用陶磁器やファインセラミックス製品の提供を通じて日本の工業発展に寄与し、持続的な成長と持続可能な社会の実現を目指しています。

(2) 企業文化


100年以上にわたり培ってきた「ものづくり」に対する真摯な姿勢と、「社会に貢献する」高い意識を強みとしています。また、全役職員がやるべきことをやってみるという姿勢を重視し、「まずやってみる、未来のために。」というスローガンを掲げ、各部門で「やってみる」ことを明確にし、実行しきる文化の醸成を図っています。

(3) 経営計画・目標


新中期経営計画「CONNECT30」において、「稼ぐ力」「新たな投資」「持続的な成長」による企業価値向上を目指しています。2030年に向けた数値目標として、以下を掲げています。
* セラミックス事業単体売上高:100億円
* エンジニアリング部売上高:30億円
* 営業利益率:15%

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画「CONNECT30」に基づき、地政学リスクや市場環境の不透明感がある中でも、セラミックス事業とエンジニアリング事業のシナジーを発揮し、顧客ニーズに応えていく方針です。スローガン「まずやってみる、未来のために。」のもと、戦略的な将来への投資を積極的に実施し、企業価値向上と持続的な成長、および株価改善につなげることを目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


多様な知と知の組み合わせが持続的な成長を実現するとの考えのもと、従業員一人ひとりが自律し、働きがいを感じ、主体的に業務に取り組むことができる環境整備に努めています。高度な専門性を有する人材を確保するため、新卒採用や経験者の通年採用を積極的に展開するとともに、公平・公正な評価や処遇制度の充実によりエンゲージメントを高めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.2歳 18.8年 5,496,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.5%
男性育児休業取得率 40.0%
男女賃金差異(全労働者) 73.4%
男女賃金差異(正規) 89.9%
男女賃金差異(非正規) 62.1%


※男性育児休業取得率は正規雇用労働者の数値です。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) セラミックス分野への依存


事業の約7割がセラミックス製品の製造販売であり、かつ製品がセラミックス100%で形成されているため、セラミックスに代替される新素材が登場した場合には、同社の業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(2) 電子部品業界向けの売上構成比率


セラミックス事業、エンジニアリング事業ともにIT分野関連の電子部品向けの売上構成比率が高くなっており、セラミックス事業で約5割、エンジニアリング事業で約2割を占めています。そのため、電子部品業界の景気動向が悪化した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 特定仕入先への依存


セラミックス事業における原料仕入金額の約7割、特に主要原料であるジルコニアの仕入の大部分を東ソーに依存しています。同社とは良好な関係にありますが、何らかの理由により同社からの原材料仕入ができなくなった場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) ジルコニア原料に関するリスク


ジルコニアに代わる高品質で安価な原料が出現し、かつ同社が入手できない場合や、製品需要の拡大や供給量減少によりジルコニアの仕入価格が大幅に値上がりした場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。