※本記事は、株式会社ニッカトーの有価証券報告書(第156期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月15日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ニッカトーってどんな会社?
同社は独自のセラミックス技術を強みに、産業の根幹を支える製品や設備を提供する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1913年に西村化学陶業試験場として創設され、1921年に西村工業として創立しました。1982年には高強度・高靭性ジルコニアセラミックス「YTZ」の販売を開始し、1991年にニッカトーへ商号を変更しました。その後、2004年にジャスダックへ株式を上場するなど事業規模を拡大しています。
現在の従業員数は単体で279名です。筆頭株主は取引先で構成されるニッカトー取引先持株会であり、第2位は原材料の主要仕入先である東ソー、第3位は商品の仕入先であるチノーとなっています。長年培ってきた技術力と取引先との強固な信頼関係を基盤に、安定した事業運営を行っています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ニッカトー取引先持株会 | 7.30% |
| 東ソー | 5.00% |
| チノー | 4.70% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は大西宏司氏が務めており、取締役の社外取締役比率は42.9%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大西宏司 | 代表取締役社長 | 1981年同社入社。研究開発部長、生産本部長などを経て、2018年より現職。 |
| 濱田悦男 | 常務取締役常務執行役員経営管理部長 | 1987年第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。2016年同社入社。経理部長などを経て、2024年より現職。 |
| 大久保嘉太郎 | 取締役総務部長 | 1991年第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。みずほ銀行業務監査部副部長などを経て、2025年より現職。 |
| 土井祐二 | 取締役(監査等委員) | 1980年朝日生命保険入社。2012年同社入社。総務部長などを経て、2023年より現職。 |
社外取締役は、田邉絵理子氏(中之島中央法律事務所パートナー弁護士)、臼間真次氏(税理士法人ゆびすい社員)、田渕謙二氏(田渕・西野法律事務所開設)です。
2. 事業内容
同社は「セラミックス事業」および「エンジニアリング事業」を展開しています。
■(1) セラミックス事業
セラミックス事業では、電子部品、食品、薬品、塗料などの各メーカーにおける生産工程で使用されるセラミックス製品を製造・販売しています。主に機能性セラミックス、耐摩耗セラミックス、耐熱セラミックスなどの消耗品を提供しています。
顧客である各メーカーへ製品を販売し、その対価を得る収益モデルです。製品は自社の堺工場および東山工場で製造されており、事業の運営は同社が主体となって行っています。
■(2) エンジニアリング事業
エンジニアリング事業では、自社工場を持たず、加熱装置や計測機器などを商品として仕入れて販売しています。主に超伝導用テープ線材、IT関連用部材、半導体部品などの生産炉として使用される装置や温度センサなどを取り扱っています。
設備投資を行う顧客企業に対し、仕入れた商品を販売することで収益を得るモデルです。両事業のシナジーを活かした提案も行っており、運営は同社が主体となって行っています。
3. 業績・財務状況
同社の業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高が100億円から113億円のレンジで推移し、底堅い事業基盤を示しています。一時的な利益の落ち込みが見られた時期もありましたが、直近では電子部品業界の市況回復や設備投資の好調により、売上高・利益ともに過去最高水準へと大きく成長しています。
| 項目 | 152期 | 153期 | 154期 | 155期 | 156期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 100億円 | 107億円 | 102億円 | 101億円 | 113億円 |
| 経常利益 | 10億円 | 12億円 | 10億円 | 7億円 | 11億円 |
| 利益率(%) | 10.3% | 11.0% | 9.7% | 7.1% | 10.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | 8億円 | 7億円 | 5億円 | 8億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の成長に伴い、売上総利益および営業利益ともに大きく伸長しています。工場の稼働率向上により売上原価率が改善した結果、売上総利益率は20%台前半で推移し、営業利益率も前年から大きく上昇して高い収益性を確保しています。
| 項目 | 155期 | 156期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 101億円 | 113億円 |
| 売上総利益 | 20億円 | 26億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.1% | 22.7% |
| 営業利益 | 6億円 | 11億円 |
| 営業利益率(%) | 6.3% | 9.4% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が5億円(構成比31%)、賞与引当金繰入額が2億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のセラミックス事業は、電子部品業界の市況が回復傾向にあったことから堅調に推移し増収となりました。また、エンジニアリング事業においても、自動車・重機関係などを中心に設備投資が好調に推移したことで売上を伸ばしており、両セグメントともに成長を遂げています。
| 区分 | 売上(155期) | 売上(156期) |
|---|---|---|
| セラミックス事業 | 74億円 | 82億円 |
| エンジニアリング事業 | 27億円 | 31億円 |
| 連結(合計) | 101億円 | 113億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 155期 | 156期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 17億円 | 17億円 |
| 投資CF | -9億円 | -7億円 |
| 財務CF | -5億円 | -5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「創造性に富んだ信頼される製品の提供を通じて科学技術と産業の発展に寄与し企業の成長と発展を期し、親しまれる経営で社会に貢献する」という企業理念を掲げています。1913年の創業以来、理化学用陶磁器やファインセラミックス製品の提供を通じて日本の工業発展に寄与しており、持続可能な社会の実現に向けた貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
100年以上にわたり培ってきた「ものづくり」に対する真摯な姿勢と、「社会に貢献する」という高い意識が同社の強みであり、重要な価値観となっています。全役職員が重視するスローガンとして「まずやってみる、未来のために。」を掲げており、新たな取り組みへの挑戦や行動を尊重する姿勢を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、様々なステークホルダーから信頼される企業「Reliable Company」を目指し、中長期的な企業価値向上に向けた目標を設定しています。目標とする経営指標として以下を掲げています。
・ROE:8%以上
・EPS(1株当たり当期純利益):65円
・セラミックス事業単体売上高(2030年に向け):100億円
・エンジニアリング事業売上高(2030年に向け):30億円
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画「CONNECT30」において、「稼ぎ続ける力」「新たな投資」「持続的な成長」を軸とした企業価値の向上を推進しています。社会課題であるカーボンニュートラルや人的資本経営に積極的に取り組むほか、戦略的な将来への投資を実施し、主力事業の競争力強化と持続的な成長への礎を築き上げる方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
中期経営計画における重点戦略を達成するため、会社として最も重要視するべきものは「人財」であると定義しています。挑戦や変化を大事にする組織風土・価値観の醸成を目指した人事制度を構築・運用し、職務や役割に応じた公平な処遇を実現するとともに、従業員一人ひとりが成長し誇りを持って働ける環境の構築に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 156期 | 41.0歳 | 18.8年 | 5,746,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.1% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 68.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 82.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 66.0% |
※男性育児休業取得率については、算定の基となる対象人員が少ない(正規雇用労働者3名)ため、具体的な数値は記載されていません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) セラミックス分野への依存リスク
事業の大部分がセラミックス製品の製造販売であり、セラミックス100%で形成される製品に依存しています。そのため、将来的にセラミックスに代替される新たな新素材が登場して市場に普及した場合、同社の業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 電子部品業界の市況変動リスク
両事業において、IT分野関連の電子部品向け売上構成比率が上昇傾向にあり、セラミックス事業で55.4%、エンジニアリング事業で21.0%を占めています。そのため、スマートフォンの普及や自動車のEV化に伴う電子部品業界の景気動向が悪化した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 特定仕入先への依存リスク
セラミックス事業の原料仕入金額のうち、74.2%を東ソーから仕入れています。原料の安定性や海外販売の連携から良好な取引関係が継続していますが、何らかの理由により同社からの原材料仕入れができなくなった場合や、原材料価格が大きく変動した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 人材育成と採用に関する競争リスク
顧客の技術の高度化や技術革新が加速する中、多様な技術に対応するための優れた専門性を有した人材の必要性が高まっています。少子高齢化や労働人口の減少により人材獲得競争が激化しており、求める人材の確保や定着・育成が計画通りに進まない場合、将来の成長に影響を及ぼす可能性があります。



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