クニミネ工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クニミネ工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クニミネ工業は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、ベントナイト原鉱石の採掘から製造、販売までを一貫して手がける無機鉱物メーカーです。主力は素形材用や環境建設用、ペット用トイレ砂等のベントナイト事業で、アグリ事業等も展開しています。直近の業績は増収増益と好調に推移しています。


※本記事は、クニミネ工業の有価証券報告書(第92期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. クニミネ工業ってどんな会社?


クニミネ工業は、地下資源であるベントナイトの採掘から加工・販売までを一貫して手がける専門メーカーです。

(1) 会社概要


1943年に國峯鉱業として設立され、1949年の月布川鉱業吸収合併によりベントナイト事業を開始しました。1963年には農薬製剤の加工を開始し、1978年に現在のクニミネ工業に社名を変更しました。2004年にジャスダックへ上場し、現在は東京証券取引所スタンダード市場に上場しています。

従業員数は連結277名、単体228名です。筆頭株主はクニミネエンタープライズで約40%を保有しており、第2位は取引先持株会、第3位は事業会社である日本化薬となっています。

氏名 持株比率
クニミネエンタープライズ 40.31%
クニミネ工業取引先持株会 6.41%
日本化薬 2.73%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は友山貴之氏が務めています。社外取締役比率は約36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
友山貴之 代表取締役社長 1996年同社入社。総務部長、アグリ事業部長、タイ現地法人代表取締役社長、クレイサイエンス事業本部長等を経て、2026年より現職。
玉木悟史 常務取締役資源探査部長兼アグリ事業部長 2003年同社入社。アグリ事業部長、化成品事業部長、アグリ事業本部長兼研究開発部長等を経て、2026年より現職。
黒田克弘 常務取締役クレイサイエンス事業部長 ニチメン(現双日)やソーダニッカ執行役員等を経て、2025年同社入社。クレイサイエンス事業本部長等を経て、2026年より現職。
塗師尾努 常務取締役ベントナイト事業部長 日商岩井(現双日)金属・資源・リサイクル本部本部長補佐等を経て、2026年同社入社。ベントナイト事業本部副本部長を経て、同年より現職。
髙田裕二 取締役経営戦略部長 ニチメン(現双日)や双日ケミカルの事業部長等を経て、2024年同社入社。同年より経営戦略部長、2025年より海外事業推進部管掌を務める。
國峯宏美 取締役 2004年クニミネエンタープライズに入社し取締役に就任。2009年に同社代表取締役社長を務め、2026年より同社取締役に就任。
滝田博 取締役(常勤監査等委員) 小糸製作所やコクヨ、カウネットのリスクマネジメント部長等を経て、2026年同社入社。同年より監査等委員として取締役に就任。


社外取締役は、鷲巣信太郎(元富士フイルム研究部長等)、堀越孝(銀座シティ法律事務所所長)、赤石健(公認会計士赤石健事務所所長)、原田崇史(阿部・井窪・片山法律事務所弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ベントナイト事業」、「クレイサイエンス事業」、「アグリ事業」を展開しています。

(1) ベントナイト事業


鋳物用、土木建築用、ペット用トイレ砂等のベントナイト製品の製造および販売を行っています。また、調泥剤の仕入販売も手がけ、国内外の幅広い産業や一般消費者に対して製品を供給しています。

製品の販売対価が主な収益源です。事業の運営は、クニミネ工業を中心に、原鉱石の採掘を行うクニマイン、川崎鉱業、関ベン鉱業、物流を担うクニミネマーケティング、タイでの販売を担う現地法人の複数社で行っています。

(2) クレイサイエンス事業


精製ベントナイト、環境保全処理剤、環境改良剤、飼料添加物などの高付加価値製品の製造および販売を行っています。先端機能材料や化粧品原料など、多様な産業分野向けに製品を提供しています。

製品の販売対価が主な収益源です。事業の運営は主にクニミネ工業が行っており、長年培った技術を応用して新規用途開発や産学官連携による研究を推進し、付加価値の高い製品の国内外への展開を図っています。

(3) アグリ事業


農薬加工、農薬基剤および農薬加工用原材料、農業資材等の製造、加工、販売を行っています。主に委託元の企業から農薬原体を預かり、加工して引き渡す受託生産を中心に事業を展開しています。

受託加工による加工賃や製品の販売対価が主な収益源です。事業の運営は主にクニミネ工業が行っており、種子コーティング等の新規受託領域の拡大や製剤技術の高度化により収益基盤の強化を図っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績は、売上高が概ね150億円台で推移していましたが、直近では価格改定や販売活動の強化により171億円へと大きく成長しています。経常利益率も9〜13%台と安定した水準を維持し、着実な利益成長を遂げています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 153億円 153億円 157億円 157億円 171億円
経常利益 19億円 14億円 16億円 16億円 20億円
利益率(%) 12.5% 9.0% 10.5% 10.1% 11.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 12億円 10億円 11億円 11億円 13億円

(2) 損益計算書


価格改定の効果に加え、一部事業での需要回復が寄与し、売上高および各段階利益ともに前期を上回りました。原価低減の取り組みも奏功し、売上総利益率は改善傾向にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 157億円 171億円
売上総利益 45億円 50億円
売上総利益率(%) 28.4% 29.3%
営業利益 13億円 16億円
営業利益率(%) 8.2% 9.4%


販売費及び一般管理費のうち、発送運賃が12億円(構成比34%)、給料及び手当が5億円(同13%)を占めています。売上原価は121億円で、売上高に対する原価率は71%となっています。

(3) セグメント収益


ベントナイト事業とアグリ事業が価格改定や需要の取り込みにより大幅な増収を達成し、全体の業績を牽引しました。一方、クレイサイエンス事業は輸出向け需要の減少等によりわずかながら減収となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
ベントナイト事業 111億円 118億円
クレイサイエンス事業 18億円 18億円
アグリ事業 28億円 34億円
連結(合計) 157億円 171億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状態と言えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 10億円 43億円
投資CF -8億円 -26億円
財務CF -9億円 -5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は83.0%で市場平均を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


クニミネ工業は、「人類共通の財産である地下資源の有効活用」に創業以来一貫して取り組むことを基本方針としています。地下資源が持つ可能性を追求し、「経世済民」の経営理念のもと、長年培った品質と技術を研鑽しながら、企業価値の一層の向上と社会への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、自然環境への負荷が少なく生命体と環境にやさしい無機鉱物を扱う企業として、社会課題の解決や新たな産業の支援・創出を重視しています。社員一人ひとりがチャレンジ精神を持ち、独自の視点や発想を生み出しながら、多様性を尊重してイノベーションに向けて連携する風土を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同社は、迅速な意思決定と新規分野の収益早期化を図るため、3ヵ年中期経営計画を策定しています。中長期的には資本コストを安定的に上回る資本効率の実現を目指し、高収益事業構造の構築を進めています。

・売上高:200億円
・営業利益:26億円
・ROE:8.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、脱炭素や国土強靱化関連の成長分野への注力を軸に、新規事業領域の拡大や海外市場の開拓を進めています。生産販売の省人化やDX推進、新鉱区開発による原鉱の安定確保などを通じて経営基盤を強化し、付加価値の創出による持続的な収益確保を図る戦略です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、イノベーションに向けて挑戦し続ける人材の育成を重視しています。社員の自律性と自主性を重んじ、役割や発揮能力に応じた透明性の高い処遇を行うことで主体的な成長を促すとともに、多様な経験と教育機会を提供し、幅広い領域で活躍できる人材基盤の強化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.0歳 12.2年 5,610,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、キャリア支援制度利用数(16件)、e-ラーニング利用数(33回/月)、エンゲージメントサーベイ”自己成長への支援”スコア(67点)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場競合と販売価格の変動


同社の主要事業であるベントナイト事業、クレイサイエンス事業、アグリ事業は、いずれも厳しい市場競争にさらされています。新技術や新製品の開発状況、あるいは競合他社との価格低減競争などにより、経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 採掘原鉱および輸入原料の確保


同社グループは鉱山会社を通じて原鉱の採掘を行っており、継続的な探鉱で埋蔵量の確保に努めています。しかし、災害や事故による採掘停止、品質低下や原鉱の枯渇、さらには輸入原鉱における国際情勢の変化などにより原料調達が困難となった場合、事業に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) エネルギーや原材料の価格変動


製造工程において重油や電力などのエネルギーを多用しているほか、多様な原材料を外部から調達しています。原油価格や為替相場の変動、その他の外部要因によってエネルギーや原材料の仕入価格が高騰した場合、コスト負担が増大し、同社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。