※本記事は、クニミネ工業株式会社 の有価証券報告書(第91期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. クニミネ工業ってどんな会社?
ベントナイトのパイオニアとして、素形材や土木建築、ペット用品など幅広い分野に製品を提供する企業です。
■(1) 会社概要
1943年に國峯鉱業として設立され、1949年よりベントナイト鉱石の採掘および製品製造を開始しました。1963年には農薬製剤の加工を開始し、事業を拡大。1973年には精製ベントナイトの商品化に成功しました。2004年にジャスダック証券取引所へ株式を上場し、2018年には東京証券取引所市場第一部へ指定替えを果たしました。
連結従業員数は299名、単体では240名体制です。筆頭株主はクニミネエンタープライズで、第2位は取引先持株会、第3位は火薬・化学品メーカーの日本化薬となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| クニミネエンタープライズ | 40.31% |
| クニミネ工業取引先持株会 | 6.24% |
| 日本化薬 | 3.43% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は國峯保彦氏が務めています。社外取締役比率は約36.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 國峯 保彦 | 取締役社長(代表取締役) | 1969年同社入社。取締役副社長を経て1981年代表取締役社長に就任。2021年より取締役会長を務め、2024年6月より現職。 |
| 木村 敏男 | 専務取締役ベントナイト事業本部長 | 1975年同社入社。営業部次長、ベントナイト事業部長、常務取締役等を歴任。2021年専務取締役に就任し、2024年6月より現職。 |
| 友山 貴之 | 専務取締役人事部長兼管理部長 | 1996年同社入社。総務部長、アグリ事業部長、KUNIMINE(THAILAND)CO.,LTD.社長等を歴任。2024年専務取締役に就任し、2025年6月より現職。 |
| 玉木 悟史 | 常務取締役アグリ事業本部長兼研究開発部長 | 2003年同社入社。アグリ事業部長、化成品事業部長、クレイサイエンス事業本部長等を歴任。2022年常務取締役に就任し、2024年6月より現職。 |
| 髙田 裕二 | 取締役経営戦略部長 | 1985年ニチメン(現双日)入社。双日ケミカル有機化学品部長、双日化学本部本部長補佐等を歴任。2024年6月同社入社、取締役就任。現職。 |
| 黒田 克弘 | 取締役クレイサイエンス事業本部長 | 1983年ニチメン(現双日)入社。双日化学品本部部長、ソーダニッカ執行役員等を歴任。2025年4月同社入社。2025年6月取締役就任。現職。 |
| 大谷 洋之 | 取締役(常勤監査等委員) | 1977年同社入社。小名浜工場長、生産部長、いわき研究所長等を歴任。2024年6月より現職。 |
社外取締役は、鷲巣信太郎(元富士フイルム技術戦略部統括マネージャー)、堀越孝(銀座シティ法律事務所所長)、赤石健(公認会計士赤石健事務所所長)、原田崇史(阿部・井窪・片山法律事務所弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ベントナイト事業」「クレイサイエンス事業」「アグリ事業」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。
■ベントナイト事業
自動車エンジン等の鋳型結合剤(素形材用)、土木建築工事における遮水壁や安定液(環境建設用)、ペット用トイレ砂等の製造販売を行っています。また、調泥剤の仕入販売も手掛けています。
製品販売の対価を収益源としています。原鉱石の採掘はクニマイン株式会社、川崎鉱業株式会社、関ベン鉱業株式会社が行い、製造販売は同社およびKUNIMINE(THAILAND)CO.,LTD.が行っています。ペット用トイレ砂の仕入販売はクニミネマーケティング株式会社が担当しています。
■クレイサイエンス事業
高純度に精製されたベントナイトや、環境保全処理剤、環境改良剤、飼料添加物等の製造販売を行っています。化粧品や医薬品、一般工業用途など、高付加価値な分野へ製品を提供しています。
製品販売による対価を収益源としています。運営は主に同社が行っています。
■アグリ事業
農薬メーカーからの受託による農薬製品の製造加工、および農薬基剤、農薬加工用原材料、農業資材等の製造販売を行っています。また、運送取扱い業務も行っています。
農薬加工の受託加工料および製品販売の対価を収益源としています。運営は主に同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は緩やかな増加傾向にありますが、利益面では変動が見られます。当期は売上高が微増となりましたが、為替差損の影響等により経常利益は減少しました。一方、投資有価証券売却益の計上により当期純利益は増加しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 146億円 | 153億円 | 153億円 | 157億円 | 157億円 |
| 経常利益 | 24億円 | 19億円 | 14億円 | 16億円 | 16億円 |
| 利益率(%) | 16.5% | 12.5% | 9.0% | 10.5% | 10.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 15億円 | 12億円 | 10億円 | 11億円 | 10億円 |
■(2) 損益計算書
前期と比較して、売上高および売上総利益はほぼ横ばいで推移しました。販売費及び一般管理費が若干減少したことで営業利益率は改善しましたが、営業外収支の悪化により経常利益率は低下しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 157億円 | 157億円 |
| 売上総利益 | 45億円 | 45億円 |
| 売上総利益率(%) | 28.4% | 28.4% |
| 営業利益 | 12億円 | 13億円 |
| 営業利益率(%) | 7.9% | 8.2% |
販売費及び一般管理費のうち、発送運賃が11億円(構成比36%)、給料及び手当が4億円(同14%)を占めています。売上原価においては、材料費等の製造費用が含まれています。
■(3) セグメント収益
ベントナイト事業は主要得意先の減産影響等で減収減益となりましたが、クレイサイエンス事業は価格改定効果等で大幅な増益となりました。アグリ事業も好調に推移し増収増益を達成しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ベントナイト事業 | 113億円 | 111億円 | 14億円 | 11億円 | 9.7% |
| クレイサイエンス事業 | 16億円 | 18億円 | 0.4億円 | 2億円 | 10.1% |
| アグリ事業 | 27億円 | 28億円 | 4億円 | 6億円 | 19.7% |
| 調整額 | -2億円 | -2億円 | -6億円 | -5億円 | - |
| 連結(合計) | 157億円 | 157億円 | 12億円 | 13億円 | 8.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
クニミネ工業は、アグリ事業における種子コーティング剤や除草剤の好調、およびベントナイト販売の価格改定が収益を押し上げました。営業活動による資金は、棚卸資産の増加や法人税等の支払いがあったものの、税金等調整前当期純利益や減価償却費の増加により、一定の資金を生み出しました。投資活動では、有形固定資産や無形固定資産の取得による支出があったものの、投資有価証券の売却収入がそれを一部補いました。財務活動では、自己株式の取得や配当金の支払いにより、資金が使用されました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 19億円 | 10億円 |
| 投資CF | -10億円 | -8億円 |
| 財務CF | -7億円 | -9億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同グループは、創業以来一貫して「地下資源の有効活用」に取り組んできました。『経世済民』の経営理念のもと、長年培ってきた「品質と技術」をさらに研鑽し、多様化するニーズに積極果敢に挑戦することで、企業価値の向上と社会への貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
同グループは、グループ各社が一丸となって多様化するニーズに挑戦する姿勢を重視しています。また、貴重な地下資源であるベントナイトを「科学し、未来のニーズを創造する」ことで社会課題の解決や新たな産業の創出に取り組む姿勢を持っています。
■(3) 経営計画・目標
2023年度を初年度とする3ヵ年中期経営計画を策定していましたが、外部環境の変化を踏まえ、最終年度である2025年度の目標を見直しました。将来的には株主資本コスト(5~6%)を安定的に上回るROEの実現を目指しています。
* 連結売上高169億円
* 連結営業利益16億円
* ROE5.7%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「脱炭素・国土強靭化・静脈産業への取組み」として地熱発電や放射性廃棄物処理事業等に注力し、「新規事業領域拡大」では種子コーティングやガスバリア材料の開発を進めます。また、「海外市場展開」としてアセアン市場の開拓や海外鉱の利用を推進し、「企業体質強化」としてESG経営やDX、新鉱区開発に取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続可能な社会の創造とグループの成長のため、絶えざるイノベーションに向け挑戦し続ける人材の育成を目指しています。社員が成長を実感できる教育機会の提供や、多様な経験を通じた人員配置を行い、自主性を尊重しチャレンジが称賛される組織風土の醸成を推進します。また、多様性を尊重した社内環境整備にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.2歳 | 12.0年 | 5,318,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、キャリア支援制度利用数(52件)、e-ラーニング利用数(46回/月)、エンゲージメントサーベイ”自己成長への支援”スコア(64点)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原料の確保について
同グループは3社の鉱山会社を有し原鉱採掘を行っていますが、災害や事故、品質低下等により採掘が困難になる可能性があります。また、一部海外からの輸入原鉱についても、国際情勢の変化等により輸入が困難になるリスクがあり、これらが発生した場合は業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 販売価格の変動と競合
主要事業であるベントナイト事業等は厳しい市場競争にさらされています。競合他社との価格競争や新技術・新製品の開発競争により、販売価格の低下やシェアの変動が生じ、経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
■(3) 環境規制への対応
事業活動においてCO2排出削減等に努めていますが、新たな環境規制が導入された場合、ベントナイト事業を中心に事業活動が制約を受けたり、対応コストが増加する可能性があります。これは業績に悪影響を及ぼす要因となり得ます。
■(4) 法的規制について
事業活動には採石法や農薬取締法等の法的規制が適用されます。これらの法令の改正や解釈変更、あるいは万一の法令違反による業務停止等の処分があった場合、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。



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