※本記事は、日本興業株式会社 の有価証券報告書(第70期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本興業ってどんな会社?
社会インフラや景観整備に使われるコンクリート製品を製造するメーカーです。独自技術と製品開発力に強みを持ちます。
■(1) 会社概要
1956年に香川ブロック工業として設立され、空洞コンクリートブロックの製造を開始しました。1969年に現社名である日本興業へ商号を変更し、事業を拡大します。1993年に店頭売買銘柄として登録し、2004年にはジャスダック証券取引所へ上場を果たしました。近年では2023年に葉月工業を連結子会社化し、九州地区での事業展開や法面保護工事業への進出など、業容の拡大を進めています。
連結従業員数は411名、単体では311名です。筆頭株主は業務資本提携先である積水樹脂(持株比率23.76%)であり、次いで取引先持株会であるニッコー共栄会、従業員持株会であるニッコー持株会が名を連ねています。強固な提携関係と社内・取引先による安定した株主構成が特徴です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 積水樹脂 | 23.76% |
| ニッコー共栄会 | 10.55% |
| ニッコー持株会 | 4.80% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名、計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役会長は多田綾夫氏、代表取締役社長社長執行役員は山口芳美氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 多田 綾夫 | 代表取締役会長 | 1968年入社。取締役常務執行役員、代表取締役社長を経て2024年6月より現職。 |
| 山口 芳美 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1983年入社。総務人事部長、管理部門管掌、常務執行役員等を経て2024年6月より現職。 |
| 乗松 伴成 | 取締役常務執行役員事業本部長 | 1990年入社。土木・景観事業本部長等を経て2024年6月より現職。 |
| 久保 淳 | 取締役執行役員管理部門管掌 | 1989年入社。経理財務部長兼経営管理部長等を経て2025年5月より現職。 |
| 一條 岳 | 取締役執行役員市場開拓部長 | 1980年オオバ入社。同社上席執行役員等を経て日本興業入社。2024年4月より現職。 |
| 山田 雅宏 | 取締役執行役員エクステリア事業部 事業部長開発部門管掌 | 1991年入社。開発部長、執行役員等を経て2025年1月より現職。 |
| 金子 弘朗 | 取締役執行役員東日本支店長 | 1986年入社。近畿・中部支店長、営業推進部長等を経て2024年10月より現職。 |
社外取締役は、杉山直(元大林組代表取締役副社長)、菊池友幸(積水樹脂取締役兼常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「土木資材事業」「景観資材事業」「エクステリア事業」の3つの報告セグメントを展開しています。
■(1) 土木資材事業
公共事業向けのボックスカルバート、ヒューム管、擁壁、水路用製品などを提供しています。国土強靭化や防災・減災に対応する製品が主力であり、官公庁や建設会社が主な顧客です。また、法面保護工事も行っています。
製品販売による収益が主軸ですが、工事請負による収益も含まれます。運営は主に日本興業が行っており、子会社の葉月工業が法面保護工事業を担当しています。
■(2) 景観資材事業
公園や駅前広場などのパブリックスペース向けに、コンクリート舗装材や擬木、擬石、ファニチュアなどを提供しています。都市景観の向上やバリアフリー化に貢献する製品群を展開しています。
製品販売による収益が中心です。製造・販売は日本興業が行っています。
■(3) エクステリア事業
民間住宅向けに、立水栓などのガーデン製品や積みブロックなどの外構製品を提供しています。デザイン性や機能性を重視した製品を、ハウスメーカーや個人住宅向けに展開しています。
製品販売による収益を得ています。製造は日本興業が行い、販売の一部を子会社のニッコーエクステリアが担っています。また、子会社のサンキャリーが製品の運送手配や出荷業務を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあります。特に直近2期は130億円を超え、利益面でも経常利益率が改善傾向にあります。当期は売上高147億円、経常利益6.4億円となり、過去5年間で最も高い水準を記録しました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 122億円 | 118億円 | 113億円 | 137億円 | 147億円 |
| 経常利益 | 4.8億円 | 4.2億円 | 3.2億円 | 4.6億円 | 6.4億円 |
| 利益率(%) | 3.9% | 3.6% | 2.9% | 3.4% | 4.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3.3億円 | 2.7億円 | 2.0億円 | 3.0億円 | 3.9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益も増加しています。売上総利益率は20%台を維持しており、営業利益率も前期の3.0%から4.0%へと改善しました。原材料価格高騰の影響がある中で、販売価格への転嫁やコスト管理が進んでいることが窺えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 137億円 | 147億円 |
| 売上総利益 | 28億円 | 30億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.2% | 20.7% |
| 営業利益 | 4.1億円 | 5.9億円 |
| 営業利益率(%) | 3.0% | 4.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給与が9億円(構成比37%)、法定福利費が2億円(同8%)を占めています。人件費が主要なコスト要因となっています。
■(3) セグメント収益
土木資材事業は大型物件や防災関連製品が堅調で増収増益となり、全社利益を牽引しています。景観資材事業も大型再開発案件等の寄与で大幅な増収増益を達成しました。一方、エクステリア事業は住宅市場の影響を受け減収減益となりましたが、黒字は維持しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 土木資材事業 | 96億円 | 103億円 | 4.2億円 | 4.9億円 | 4.7% |
| 景観資材事業 | 31億円 | 36億円 | -0.4億円 | 1.1億円 | 3.0% |
| エクステリア事業 | 10億円 | 9.0億円 | 0.3億円 | 0.0億円 | 0.4% |
| 連結(合計) | 137億円 | 147億円 | 4.1億円 | 5.9億円 | 4.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、事業運営に必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。営業活動によるキャッシュ・フローは、主に土木資材事業の増収や高付加価値製品の拡販効果、販売価格の適正化の進捗などにより、前連結会計年度に比べ減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、主に生産設備の更新や新規事業領域の拡大に向けた投資などにより変動しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、資金調達や株主還元策の実施などにより変動しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 13億円 | 6.7億円 |
| 投資CF | -4.3億円 | -3.1億円 |
| 財務CF | -8.2億円 | -3.4億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、プレキャストコンクリート製品の製造・販売を通じて「美しく豊かな環境づくりに貢献する」ことを経営理念として掲げています。都市環境、住環境、自然環境に寄与する優れた独自製品を社会に送り出すことで、サステナブルな社会への貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
「最高の品質を追究します」「最高のサービスを提供します」「創意と工夫で挑戦します」をモットーとしています。顧客のニーズに応える高品質な製品とサービスを提供し続けるとともに、独自の技術や工夫によって新たな価値創造に挑戦する姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「Nikko Revolution Towards 2033」を掲げ、2033年に向けた長期的な視点で経営を行っています。資本コストと株価を意識した経営を推進し、以下の数値目標を設定しています。
* 配当性向:35%
* 総還元性向:50%
■(4) 成長戦略と重点施策
プレキャストコンクリートのメリット訴求によるシェア拡大と、オリジナル技術を用いた高付加価値製品の開発・拡販に注力しています。また、関東地区での販売拡大や、子会社を起点とした九州地区での展開など、エリア戦略も推進しています。
* サステナビリティ推進:脱炭素製品の開発・販売、再生可能エネルギー採用、ブルーカーボンへの取組み。
* 人的資本の活性化:教育・研修の充実、健康経営、エンゲージメント向上によるウェルビーイングの実現。
* 生産性向上:設備更新による効率化、コスト低減。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人的資本の活性化がグループ全体の持続的成長に不可欠であると認識しています。社員一人ひとりの成長を組織の成長と結びつけることでエンゲージメントを向上させ、教育・研修の充実や健康経営への取り組み強化を通じて、グループ全体のウェルビーイング実現を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.7歳 | 11.5年 | 5,047,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.7% |
| 男性育児休業取得率 | 57.1% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 77.0% |
| 男女賃金差異(正規) | 82.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 51.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、営業職の女性従業員数(12名)、有給休暇取得率(70.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原材料・エネルギー・配送コストの高騰
製品の主要原材料であるセメントや骨材、鉄筋などの価格、および製造用燃料や配送コストが想定以上に高騰した場合、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、生産効率の向上や販売価格の適正化、配送効率の改善などに努めています。
■(2) 公共投資の動向
土木資材事業および景観資材事業は公共事業への依存度が高いため、公共投資の削減や工事発注の遅延が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。民間需要の開拓や、防災・減災、維持補修などの重点分野への提案強化により、影響の軽減を図っています。
■(3) 人材の確保
事業運営に必要な人材を適切な時期に確保できない場合、事業活動に支障をきたす可能性があります。多様な人材の確保・育成や、働きやすい環境づくりを通じて、安定的な人員体制の維持に努めています。



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