※本記事は、株式会社ヨシコン の有価証券報告書(第57期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ヨシコンってどんな会社?
静岡県を拠点に、マンション分譲や不動産開発、建材販売などを展開する総合街づくり企業です。
■(1) 会社概要
1949年に個人創業し、1969年に吉田コンクリート工業として設立されました。1986年に現社名へ変更し、2004年にジャスダック証券取引所へ上場しました。祖業のコンクリート製品製造から不動産事業へと主軸を移し、2018年には東海道リート・マネジメントを設立して不動産ファンド事業にも参画するなど、業容を拡大しています。2022年の市場区分見直しにより、現在はスタンダード市場に上場しています。
2025年3月31日時点の従業員数は連結57名、単体40名と少数精鋭の体制です。筆頭株主は創業者一族の資産管理会社であるワイズで35.61%を保有しています。第2位は取引先でもある事業会社の太平洋セメント(4.55%)、第3位は資産管理を行うINTERACTIVE BROKERS LLC(4.15%)となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ワイズ | 35.61% |
| 太平洋セメント | 4.55% |
| INTERACTIVE BROKERS LLC | 4.15% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は吉田尚洋氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 吉田 立志 | 代表取締役会長 | 1975年同社入社。1996年代表取締役専務、2000年代表取締役副社長を経て2005年代表取締役社長に就任。2019年4月より現職。 |
| 吉田 尚洋 | 代表取締役社長 | 1999年同社入社。不動産開発事業本部副本部長、常務取締役管理本部長、代表取締役副社長などを歴任し、2019年4月より現職。 |
| 有岡 大成 | 取締役専務執行役員不動産開発事業部長兼開発二部長 | 2001年同社入社。不動産開発事業本部不動産開発部長、執行役員などを経て2021年6月取締役に就任。2025年3月より現職。 |
| 菊池 茂夫 | 取締役常務執行役員企画開発部長兼社長室長 | 1992年富士銀行(現みずほ銀行)入行。同行静岡支店・清水支店長、名古屋法人第二部長などを経て2024年5月同社入社。2025年3月より現職。 |
| 鵜飼 誠司 | 取締役経営管理部長 | 1988年協和銀行(現りそな銀行)入行。トヨタファイナンスを経て2018年同社入社。経営管理部長、執行役員を経て2024年6月より現職。 |
社外取締役は、赤堀一通(静岡県土地家屋調査士会長)、早川清人(静岡県司法書士会名誉会長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「レジデンス事業」「不動産開発事業」「賃貸・管理等事業」「マテリアル事業」および「その他」事業を展開しています。
■レジデンス事業
マンションの分譲および一棟売りマンションや戸建住宅など、住居系不動産の販売を行っています。少子高齢化などの社会変化に対応した新規分譲マンションの提供や、中長期的な視点での事業用地取得、自社開発に注力しています。
主な収益源は、一般消費者やマンションデベロッパー等への不動産販売代金です。運営は主にヨシコンが行っています。
■不動産開発事業
総合デベロッパーとして企画から土地開発を手掛け、宅地分譲や商工業・物流施設の誘致開発などを行っています。また、不動産証券化事業として、上場不動産投資法人向けの収益不動産の開発・獲得・供給も進めています。
主な収益源は、一般消費者、同業他社、異業種法人等への不動産販売代金です。運営は主にヨシコンが行っています。
■賃貸・管理等事業
不動産の賃貸借、管理、仲介、設計監理、工事請負を行っています。マンションや商業施設、駐車場の賃貸や管理に加え、設計工事部門では顧客ニーズに対応した設計提案を行っています。
主な収益源は、不動産オーナーや管理組合からの管理委託料、賃借人からの賃料、異業種法人等からの工事請負代金などです。運営はヨシコン、ワイシーシー、YCF、東海道リート・マネジメント、YCKが行っています。
■マテリアル事業
コンクリート二次製品や生コンクリート、土木・建築用資材の販売を行っています。ファブレスな業態で企画開発製品の販売拡大を進めています。
主な収益源は、ゼネコン等の工事業者からの商品代金です。運営は主にヨシコンが行っています。
■その他
衣料品販売業や保険代理店業等の事業を行っています。
主な収益源は、顧客からの商品代金や保険手数料などです。運営はワイシーシー、YCF、YCAが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの5期間を見ると、売上高は一時的な減少があったものの、直近では増加傾向にあります。特に2025年3月期は売上高、経常利益ともに過去最高水準に達しました。利益率も高い水準で推移しており、収益性が向上しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 211億円 | 201億円 | 147億円 | 239億円 | 275億円 |
| 経常利益 | 24億円 | 26億円 | 17億円 | 33億円 | 47億円 |
| 利益率(%) | 11.5% | 13.1% | 11.7% | 13.8% | 17.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 15億円 | 16億円 | 12億円 | 21億円 | 30億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益が大きく伸長しています。売上原価率は低下傾向にあり、利益率の改善に寄与しています。販管費も増加していますが、増収効果により営業利益率は前期間を上回る水準となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 239億円 | 275億円 |
| 売上総利益 | 53億円 | 79億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.4% | 28.6% |
| 営業利益 | 30億円 | 47億円 |
| 営業利益率(%) | 12.7% | 17.0% |
販売費及び一般管理費のうち、租税公課が7億円(構成比23%)、給料が5億円(同14%)、役員報酬が4億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
不動産開発事業が売上の過半を占めていますが、当期はレジデンス事業が大幅な増収増益となり、全体の成長を牽引しました。賃貸・管理等事業も利益率が高く、安定収益に貢献しています。マテリアル事業は規模が縮小傾向にあります。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| レジデンス事業 | 28億円 | 80億円 | 1億円 | 17億円 | 20.9% |
| 不動産開発事業 | 159億円 | 153億円 | 32億円 | 32億円 | 20.6% |
| 賃貸・管理等事業 | 44億円 | 35億円 | 5億円 | 8億円 | 22.9% |
| マテリアル事業 | 9億円 | 6億円 | 0.6億円 | -0.0億円 | -0.7% |
| その他 | 0.5億円 | 0.4億円 | 0.4億円 | 0.3億円 | 74.8% |
| 調整額 | -17億円 | -29億円 | -9億円 | -10億円 | - |
| 連結(合計) | 239億円 | 275億円 | 30億円 | 47億円 | 17.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
**健全型**:営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -20億円 | 28億円 |
| 投資CF | 6億円 | -8億円 |
| 財務CF | 8億円 | -2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「総合街づくり企業」を目指し、基本方針として「無限の可能性を探求し、関連ある人々に幸せと利益を提供し、併せてその職業を通じ地域社会に貢献すること」を掲げています。人と住環境の豊かな未来に向けて商品とサービスを提供することを企業の存在意義としています。
■(2) 企業文化
全社員が共有すべき行動指針として「心・技・体」を掲げています。「心」は財務基盤の堅持と高度な人材教育による持続可能な企業経営、「技」はイノベーションによる新事業創造と未来開拓、「体」は事業の選択と集中および利益効率最大化による豊かさの実現を意味しています。また、経営方針として「常に業界のパイオニアたること」「常に相手の身になって対処すること」などを定めています。
■(3) 経営計画・目標
強固な財務基盤の確立のために、経営指標として「自己資本比率50%以上の維持・確保」を目指しています。具体的な数値目標としては、この財務安全性の指標を重視しつつ、事業の拡大を図る方針です。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後は、地元密着型の不動産仕入れと実需ニーズに基づく企画を徹底し、販売用不動産の回転率を高めることで不透明な経営環境に対応します。また、社員の視野拡大とパートナー企業との協業により、より大きな事業へ挑戦します。セグメント別には、レジデンス事業での営業エリア拡大や、不動産開発事業での物流施設誘致および不動産証券化事業への取り組み強化を進めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人が財産」という考えのもと、多様な人材の確保と育成が中長期的な企業価値向上につながると考え、中途採用者を積極的に採用しています。資格や経験を総合的に判断して管理職への登用を行っており、今後は女性管理職比率の向上や、国籍・性別にとらわれない能力・成果に応じた人事評価を推進する方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 35.7歳 | 9.0年 | 6,513,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.6% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規) | - |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
※男性育児休業取得率および労働者の男女の賃金の差異については、同社および連結子会社は従業員数が公表義務の対象ではないため(連結57名)、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 引渡時期による業績変動
主要事業である分譲マンションや分譲宅地などの販売において、売上は物件の引渡時(または工事完成時)に計上されます。これらは一度に多額の代金を受領するケースが多いため、引渡時期や工事完成時期のズレによって、四半期や年度ごとの業績に変動が生じる可能性があります。
■(2) 大地震発生時の影響
静岡県内において南海トラフ地震等の発生が予想されており、実際に発生した場合には建設中建物や所有不動産への被害、就業中の人身への損傷などが懸念されます。これらは同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、所有不動産の耐震補強や保険加入、避難安全教育などの対策を講じています。
■(3) 不動産市況の変動
同社が属する不動産業界は、景気、金利、雇用・賃金、税制などの動向に強く影響を受けます。景気悪化による購買意欲の減退や企業の設備投資意欲の低下が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、建設現場の人手不足等による建築費の高騰もリスク要因となります。



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