ヤマウホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヤマウホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場し、九州を地盤にコンクリート製品の製造・販売や水門・堰の製造・施工などを展開しています。2025年3月期は、公共投資が防災・減災対策へシフトする中、大型案件の出荷増等により売上高・利益ともに過去最高を更新し、大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、ヤマウホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第68期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ヤマウホールディングスってどんな会社?


九州を地盤に、コンクリート製品や水門などのインフラ整備関連事業を多角的に展開する持株会社です。

(1) 会社概要


同社のルーツは1968年に組織変更されたヤマウセメント製品工業に遡ります。九州各地に工場を新設し事業を拡大させ、2004年にジャスダック証券取引所へ上場しました。2021年4月に持株会社体制へ移行し、現在の商号に変更しています。2022年4月の市場区分見直しに伴い、東証スタンダード市場へ移行しました。

2025年3月31日現在、グループ全体で806名の従業員が在籍しています(同社は純粋持株会社のため単体の従業員は0名)。大株主には、福岡商事、麻生、トクヤマといった地元の有力企業やセメント・化学関連企業が名を連ねており、取引関係等を通じた安定的な株主構成となっています。

氏名 持株比率
福岡商事 14.38%
麻生 6.54%
トクヤマ 6.54%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は有田徹也氏が務めています。なお、社外取締役の比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
有田 徹也 代表取締役社長 福岡銀行入行後、北九州本部取締役常務執行役員本部長などを経て、2019年ヤマウホールディングス入社。取締役副社長を経て2021年4月より現職。ヤマウ代表取締役社長を兼務。
德安 正範 取締役 1977年同社入社。常務執行役員、専務取締役、営業顧問などを歴任。開成工業代表取締役社長を経て、2023年6月より現職。開成工業取締役会長を兼務。
倉智 清敬 取締役経営管理部長 福岡銀行入行後、人事部人事開発室長などを経て、2018年同社入社。常務執行役員管理本部長などを経て、2024年6月より現職。ヤマウ常務取締役等を兼務。
一瀬 泰之 取締役(常勤監査等委員) 1982年同社入社。総合企画部長、管理本部副本部長、ヤマウトラスト代表取締役社長などを歴任。2024年6月より現職。


社外取締役は、宮田年耕(元首都高速道路代表取締役社長)、太田一郎(元野村総合研究所パートナー)、櫻井文夫(元福岡銀行取締役副頭取)、南谷朝子(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「コンクリート製品製造・販売事業」などの7つの報告セグメントを展開しています。

(1) コンクリート製品製造・販売事業


土木製品(擁壁類、水路類、防災・減災類など)、景観製品(舗装材など)、レジンコンクリート製品の製造・販売を行っています。主な顧客は官公庁や建設会社であり、インフラ整備に欠かせない製品を提供しています。

収益は製品の販売代金です。運営は主に株式会社ヤマウ、大分フジ、熊本ヤマウが行っています。

(2) 水門・堰の製造及び施工並びに保守事業


水門、除塵機、水管橋などの鋼構造物の製造、施工、およびそれらの保守点検を行っています。河川や水路の管理に必要な設備を提供し、治水や利水に貢献しています。

収益は、製品の製造・施工請負代金および保守点検費用です。運営は主に開成工業が行っています。

(3) 地質調査・コンサルタント業務及び土木工事事業


地質調査、地すべり対策工事、測量・設計業務などを行っています。防災・減災対策やインフラ整備の事前調査など、専門的な技術サービスを提供しています。

収益は、調査・測量・設計業務の委託料および工事請負代金です。運営は主に大栄開発が行っています。

(4) 橋梁・高架道路用伸縮装置の製造・販売・設置工事事業


橋梁や高架道路に使用される伸縮装置の製造・販売および設置工事を行っています。道路インフラの維持補修や新設工事において重要な役割を果たしています。

収益は、製品の販売代金および設置工事の請負代金です。運営は主に中外道路が行っています。

(5) コンクリート構造物の点検・調査、補修工事事業


橋梁やトンネルなどのコンクリート構造物の点検・調査、補修・補強設計業務の請負を行っています。老朽化したインフラの長寿命化対策に対応しています。

収益は、点検・調査・補修工事等の請負代金です。運営は主に株式会社ヤマウ、メックが行っています。

(6) 情報機器の販売及び保守事業


金融機関向けの業務処理支援機器、貨幣処理機およびその周辺機器の販売ならびに保守を行っています。金融機関の業務効率化を支援する製品・サービスです。

収益は、機器の販売代金および保守サービス料です。運営は主に光洋システム機器が行っています。

(7) 不動産事業


同社グループが保有する不動産の賃貸を行っています。

収益は、テナントからの賃貸料です。運営は主にヤマウホールディングス(同社)が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの5期間を見ると、売上高は一時減少したものの、直近では増加傾向にあり、2025年3月期には228億円に達しました。利益面では、経常利益・当期利益ともに堅調に推移しており、特に2025年3月期は大幅な増益となり、利益率も16.1%と高い水準を記録しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 267億円 195億円 185億円 197億円 228億円
経常利益 19億円 23億円 21億円 26億円 37億円
利益率(%) 7.0% 12.0% 11.4% 13.4% 16.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 6億円 10億円 11億円 12億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は197億円から228億円へと約15.7%増加しました。売上総利益も増加し、利益率が向上しています。営業利益は26億円から36億円へと大きく伸長し、営業利益率も13.1%から15.6%へと改善しており、収益性が高まっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 197億円 228億円
売上総利益 77億円 90億円
売上総利益率(%) 38.9% 39.5%
営業利益 26億円 36億円
営業利益率(%) 13.1% 15.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料が17億円(構成比32%)、運賃が8億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のコンクリート製品製造・販売事業が大型案件の出荷増や価格転嫁により大幅な増収増益となり、全体を牽引しました。水門事業も受注が堅調で増収増益でした。一方、地質調査や橋梁関連事業は反動減などにより減収減益となりました。全体として、主力事業の好調が業績拡大に大きく寄与しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
コンクリート製品製造・販売事業 94億円 126億円 14億円 25億円 20.0%
水門・堰の製造及び施工並びに保守事業 37億円 44億円 4億円 6億円 12.5%
地質調査・コンサルタント業務及び土木工事事業 22億円 19億円 3億円 1億円 5.8%
橋梁・高架道路用伸縮装置の製造・販売・設置工事事業 32億円 29億円 2億円 1億円 4.3%
コンクリート構造物の点検・調査、補修工事事業 10億円 8億円 2億円 1億円 13.2%
情報機器の販売及び保守事業 2億円 2億円 0.4億円 0.4億円 20.4%
不動産事業 0.7億円 0.7億円 2億円 1億円 169.2%
調整額 -億円 -億円 -0.0億円 -0.0億円 -
連結(合計) 197億円 228億円 26億円 36億円 15.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ヤマウホールディングスグループは、事業運営に必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、主にコンクリート製品や橋梁用伸縮装置の製造・販売等から生み出されています。投資活動によるキャッシュ・フローは、将来の成長に向けた研究開発活動等に充てられています。財務活動によるキャッシュ・フローは、金融機関からの借入等により資金調達を行っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 31億円 22億円
投資CF -6億円 -6億円
財務CF -13億円 -11億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「インフラ整備の総合ソリューションパートナーとして、サステナブルで安心・安全な社会の実現に貢献する」ことをパーパス(存在意義)として掲げています。顧客第一を基本方針とし、市場ニーズにマッチした優れた商品を提供することで、グループの発展と株主・社員の満足を実現することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、経営理念及び行動基準を定めた「ヤマウフィロソフィー」に基づき企業活動を行っています。法令遵守や社会倫理の遵守を定めたコンプライアンスマニュアルを徹底し、公正・透明かつ健全な経営を推進する文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、2035年を目標年度とする長期ビジョン「ヤマウグループ長期VISION2035」を策定しています。その第1ステージとなる中期経営計画(2024年4月~2027年3月)では、2027年3月期の数値目標として以下を掲げています。

* 連結売上高:220億円
* 連結営業利益:27億円(営業利益率12.5%)
* ROIC:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「中期経営計画 Plan C³」では、「変革と創造への挑戦」をテーマに、グループの構造改革と成長戦略を推進しています。具体的には、人的資本経営の推進による構造改革、既存事業の収益力強化、および重点注力分野の深耕による新たな成長機会の獲得に取り組んでいます。また、グループガバナンスの強化とコンプライアンス意識の向上にも努め、持続的な企業価値向上を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、多様性を考慮した人材の確保と育成に注力しています。グループ全体での職能別研修を計画的に実施し、人材育成を図っています。また、週休二日制の導入などによる長時間労働の削減といった働き方改革を推進し、従業員が働きやすい環境整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均データがないため比較できません。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 -歳 -年 -(円/千円/万円)


※同社は純粋持株会社であり、事業は子会社社員が遂行しているため、提出会社の従業員データはありません。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.2%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全) 78.4%
男女賃金差異(正規) 75.0%
男女賃金差異(非正規) 74.8%


※上記数値は、中核子会社である株式会社ヤマウのデータです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 公共事業依存のリスク


同社グループの売上高は公共事業への依存度が高いため、国や地方自治体の建設投資予算や重点施策の変更が業績に影響を与える可能性があります。これに対し、将来の需要動向を注視し経営資源を適切に配分するとともに、民間分野への参入を進めています。

(2) 季節的変動のリスク


公共事業関連の売上が多いため、業績が下半期に偏る季節的変動の傾向があります。この変動が大きくなると上半期の業績に影響する可能性があります。対策として、民間分野への参入等を通じて事業領域を広げ、業績の平準化を図っています。

(3) 資材価格の変動リスク


エネルギーや原材料価格の変動は外的要因を受けやすく、これらが高騰した場合は収益を圧迫するリスクがあります。購買部門と製造部門が連携して適正価格での調達を目指すほか、早期の価格転嫁を行うことで影響を最小限に抑えるよう努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。