ヤマックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヤマックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。九州を地盤に、道路や防災関連の土木用および建築用コンクリート製品の製造・販売を行うメーカーです。直近の決算では、建築用製品における大型物件の受注増や価格転嫁の進展により、売上高・各段階利益ともに過去最高を更新する増収増益となりました。


※本記事は、株式会社ヤマックス の有価証券報告書(第62期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ヤマックスってどんな会社?


土木・建築用コンクリート二次製品を主力とし、九州から関東・東北まで事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1963年に長崎県で設立され、コンクリート二次製品の事業を開始しました。1991年にはグループ4社を吸収合併して現社名に変更し、1995年に株式を店頭登録しています。2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、2012年には東北地方への展開のため子会社株式を取得しました。2013年の東証と大証の統合を経て、現在は東京証券取引所スタンダード市場に上場しています。

従業員数は連結607名、単体536名です。大株主については、筆頭株主は代表取締役会長の茂森潔氏で、第2位は福岡県飯塚市に拠点を置く事業会社の麻生、第3位は代表取締役社長の茂森拓氏です。

氏名 持株比率
茂森 潔 7.58%
麻生 6.84%
茂森 拓 4.09%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は茂森拓氏が務めています。社外取締役比率は9.1%です。

氏名 役職 主な経歴
茂森 拓 取締役社長代表取締役西日本事業本部長 1995年入社。営業本部長、管理本部長などを経て2014年より現職。東北ヤマックス社長も兼任。
茂森 潔 取締役会長代表取締役 1963年入社。専務、社長を経て2014年より現職。東北ヤマックス会長も兼任。
森 將彦 取締役副社長事業本部統括 建設省四国地方整備局入省、九州建設技術管理協会を経て2013年入社。2016年より現職。
渡辺 宏之 常務取締役管理本部長兼海外事業推進室長 1990年入社。管理本部副本部長、経営企画室長などを経て2024年より現職。
浦崎 啓介 取締役東日本事業本部長兼西日本事業本部九州建築事業部長兼福岡支店長 1985年入社。福岡支店長、執行役員などを経て2021年取締役就任。2022年より現職。
木山 伸悟 取締役西日本事業本部生産統括本部長 1989年入社。長洲工場長、執行役員などを経て2024年より現職。
森田 芳文 取締役西日本事業本部営業統括本部長兼総合企画室長 2010年入社。営業所長、執行役員総合企画室長などを経て2024年より現職。
津留 清 取締役 1980年熊本県弁護士会登録。2003年法律事務所開設。2019年より現職。


社外取締役は、津留清(津留山村法律事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「土木用セメント製品」「建築用セメント製品」および「その他」事業を展開しています。

(1) 土木用セメント製品事業


道路用製品や景観用製品など、土木工事に使用されるコンクリート二次製品の製造・販売、および関連する商品・資材の販売や施工を行っています。主な顧客は官公庁や建設会社などで、インフラ整備や防災・減災対策などの公共事業に関連する需要が中心です。

収益は、製品の販売代金や施工に伴う対価として顧客から受け取ります。運営は、同社およびすべての連結子会社(東北ヤマックス、福岡ヤマックス、HOCヤマックス)が行っています。

(2) 建築用セメント製品事業


PCa(プレキャストコンクリート)を用いた床・梁・柱・バルコニーや、戸建て住宅用のPCa壁・床などの製造・販売、および関連する商品・資材の販売や施工を行っています。建設現場での人手不足に対応する工法として、民間建設工事などでの需要に対応しています。

収益は、製造請負契約に基づく製品の販売代金や施工対価として顧客から受け取ります。運営は、同社および東北ヤマックスが行っています。

(3) その他の事業


木造住宅等の施工販売、不動産の販売、宅地開発などの不動産関連事業を行っています。住宅購入者や不動産投資家などを顧客とし、住環境の提供を行っています。

収益は、住宅や不動産の引き渡し時に顧客から受け取る販売代金が主となります。運営は、同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は158億円から235億円へと拡大傾向にあります。特に直近2期は増収が顕著で、利益面でも経常利益率が3.4%から11.6%へと大きく改善しています。直近の2025年3月期は売上高235億円、経常利益27億円、当期純利益20億円といずれも高い水準を達成し、成長基調が継続しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 186億円 158億円 180億円 208億円 235億円
経常利益 7億円 5億円 8億円 18億円 27億円
利益率(%) 3.5% 3.4% 4.6% 8.8% 11.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 4億円 5億円 13億円 20億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益が拡大しています。売上総利益率は25.2%から28.0%へ上昇し、営業利益率も8.8%から11.7%へと改善しました。増収効果に加え、利益率の向上が全体の収益性を押し上げています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 208億円 235億円
売上総利益 53億円 66億円
売上総利益率(%) 25.2% 28.0%
営業利益 18億円 27億円
営業利益率(%) 8.8% 11.7%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が10億円(構成比26%)、運賃が10億円(同25%)を占めています。売上原価については、材料費や外注費などが主な構成要素となります。

(3) セグメント収益


各セグメントの状況を見ると、主力の土木用セメント製品は売上が横ばいながら利益率が改善しました。一方、建築用セメント製品は売上が約1.7倍に急増し、利益も大幅に伸長しました。これは大型物件の寄与や価格転嫁が進んだことによるものです。その他の事業も増収となり、黒字転換しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
土木用セメント製品 163億円 161億円 27億円 30億円 18.9%
建築用セメント製品 37億円 63億円 0.6億円 7億円 11.3%
その他 8億円 10億円 -0.0億円 0.2億円 2.1%
調整額 -0.3億円 -0.0億円 -10億円 -10億円 -
連結(合計) 208億円 235億円 18億円 27億円 11.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローはプラスを維持し、投資活動と財務活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなっています。これは本業で稼いだ現金を投資や借入返済、配当支払いに充てていることを示しており、健全型のキャッシュ・フローと言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 13億円 13億円
投資CF -4億円 -5億円
財務CF -2億円 -6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は25.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は48.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人と環境の最適な調和を提唱し、豊かな社会の発展に貢献します」との経営理念を掲げています。収益の確保を最優先とした事業展開を基本とし、市況に応じた販売体制の確立や業務効率向上による企業体質改善に加え、提案・設計営業の強化や製品のプレキャスト化推進による販売力強化とシェア拡大を目指しています。

(2) 企業文化


社会資本整備や国土強靭化に向けた防災・減災対策、インフラ老朽化対策などに対し、地方自治体の動向を注視しながら取り組む姿勢を持っています。また、自然災害発生時には被災地へのコンクリート二次製品の安定供給を責務と捉え、グループ総力を結集して対応するほか、ESGを重視した経営やサステナビリティへの取り組みも推進しています。

(3) 経営計画・目標


持続的な事業拡大による企業価値向上を目標とし、財務の安全性と株主還元のバランスをとりながら十分な財務基盤を確保することを資本政策の基本方針としています。具体的な経営指標としては、資本効率を重視した経営により、ROE(自己資本利益率)10%以上を目標として掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


建設業界の人手不足に対応するプレキャスト工法の需要増を見据え、営業・製品供給体制を強化します。特に防衛省関連事業への対応として「防衛チーム」を組織化し、全社的に注力する方針です。また、原材料価格等の上昇に対しては、利益率改善や販売価格への転嫁を進めます。土木分野では大型構造物のプレキャスト化推進や南九州営業部の新設によるエリア拡大、建築分野では品質向上と生産性向上によるコスト競争力強化を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


30代・40代の中堅層が少ないことを課題と捉え、長期的な技術力の底上げを目指して社員の資格取得を支援しています。具体的には、費用の会社負担や手当支給、教育指導の場を提供しています。また、健康診断を活用した保健指導やストレスチェック制度の導入、「三大疾病サポート保険」への加入など、従業員の健康サポートやメンタルヘルス対策にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.6歳 15.2年 5,774,200円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 7.7%
男女賃金差異(全労働者) 84.8%
男女賃金差異(正規) 81.4%
男女賃金差異(非正規) 101.2%


※女性管理職比率については、女性活躍推進法の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 公共事業投資への依存


土木用セメント製品事業は、国土交通省や地方自治体による公共事業投資の動向に強く影響を受けます。予算執行や発注状況の変化により、同事業の製品需要が変動し、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、公共事業の発注時期に関連して、売上が下半期に偏る季節的変動の傾向があります。

(2) 原材料価格の変動


製品の主要原材料であるセメントや鉄筋などの価格が高騰した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。調達担当部門による情報収集や集中購買により有利調達に努めていますが、市況変動の影響を完全に回避することは困難です。

(3) 金利変動の影響


運転資金や設備資金を金融機関からの借入により調達しており、短期資金の多くは変動金利となっています。有利子負債の圧縮に努めていますが、急激な金利上昇が発生した場合、支払利息の増加により経営成績が影響を受ける可能性があります。

(4) 自然災害の影響


製造工場が台風や地震などの自然災害により被災した場合、製品や原材料に損害が生じたり、生産・物流活動が遅延・停止したりする可能性があります。こうした事態が長期化した場合には、業績や財務状況に悪影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。