※本記事は、岡本硝子株式会社 の有価証券報告書(第79期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 岡本硝子ってどんな会社?
特殊ガラスおよび薄膜技術を核とした産業用ガラス製品メーカーです。プロジェクター用部品や自動車用ガラスなどを展開しています。
■(1) 会社概要
1947年に岡本硝子として設立され、2004年にジャスダック証券取引所へ上場しました。1995年には台湾に子会社を設立し、2001年には現在の連結子会社である岡本光学科技股份有限公司を設立するなど海外展開を進めました。2021年にはJAPAN 3D DEVICESを完全子会社化しています。
同グループの従業員数は連結231名、単体151名です。筆頭株主は有限会社オー・ジー・シーで、第2位は岡本興産有限会社です。第3位には代表取締役会長兼CEOの岡本毅氏が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有限会社オー・ジー・シー | 18.62% |
| 岡本興産有限会社 | 4.16% |
| 岡本 毅 | 3.35% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役会長兼CEOは岡本毅氏です。社外取締役比率は約11%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 岡本 毅 | 代表取締役会長兼CEO | 1980年警察庁入庁。埼玉県警察本部刑事部長等を経て、1995年同社社長就任。2022年より現職。 |
| 堀 義弘 | 代表取締役社長兼COO | 1988年三菱商事入社。三菱商事建材等を経て、2022年同社入社。2024年6月より現職。 |
| 出口 雅晴 | 専務取締役 | 1985年日立製作所入社。日立マクセル執行役員等を経て、2022年同社入社。2024年6月より現職。 |
| 結城 修 | 常務取締役 | 1982年松下電器産業入社。パナソニックコネクト執行役員等を経て、2025年6月より現職。 |
| 堂下 和宏 | 取締役CTO | 1987年日本板硝子入社。名古屋市立大学を経て、2024年同社入社。2024年6月より現職。 |
社外取締役は、中井日出海(日の出特許&技術コンサルティング事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「光学事業」「照明事業」「機能性薄膜・ガラス事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 光学事業
プロジェクター用反射鏡、フライアイレンズ、デジタルシネマ用映写機の反射鏡などの製造および販売を行っています。プロジェクター内部に装着され、光の焦点を拡散させて画面の明るさを均一にする効果があるレンズなどを提供しています。
収益は、これらの光学部品の販売対価として顧客から得ています。運営は主に岡本硝子、連結子会社の新潟岡本硝子、岡本光学科技股份有限公司、蘇州岡本貿易有限公司が行っています。
■(2) 照明事業
自動車用ヘッドライト・フォグライト用カバーガラスや、一般用照明用ガラス製品などの製造および販売を行っています。
収益は、自動車部品メーカーや照明機器メーカーなどへの製品販売により得ています。運営は主に岡本光学科技股份有限公司、蘇州岡本貿易有限公司が行っています。
■(3) 機能性薄膜・ガラス事業
ガラス容器への加飾蒸着、高耐久性銀ミラー(Hi-Silver)、コックピット用液晶ディスプレイの表面ガラスへの蒸着、フリット(ガラス粉末)などの製造および販売を行っています。
収益は、化粧品メーカーや電子部品メーカーなどへの製品販売や加工対価として得ています。運営は主に岡本硝子、新潟岡本硝子、二光光学、岡本光学科技股份有限公司が行っています。
■(4) その他
デンタルミラーなどの医療向けガラス製品、洗濯機用ドアガラスなどの製造および販売を行っています。
収益は、医療機器メーカーや家電メーカーなどへの製品販売により得ています。運営は主に岡本光学科技股份有限公司が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は40億円台後半から50億円前後で推移しています。2021年3月期は大幅な赤字でしたが、その後黒字転換しました。2024年3月期は当期純損失を計上しましたが、2025年3月期は再び黒字化しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 44億円 | 51億円 | 49億円 | 46億円 | 47億円 |
| 経常利益 | -6.8億円 | 1.6億円 | 1.5億円 | 1.5億円 | 0.8億円 |
| 利益率(%) | -15.5% | 3.2% | 3.0% | 3.2% | 1.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -8.0億円 | -0.9億円 | 2.1億円 | 1.0億円 | 0.9億円 |
■(2) 損益計算書
増収に伴い、売上総利益、営業利益ともに増加しました。特に営業利益は倍増し、利益率も改善傾向にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 46億円 | 47億円 |
| 売上総利益 | 15億円 | 16億円 |
| 売上総利益率(%) | 31.8% | 33.6% |
| 営業利益 | 0.6億円 | 1.3億円 |
| 営業利益率(%) | 1.3% | 2.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が4.4億円(構成比31%)、支払手数料が1.4億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
光学事業が売上の約4割を占める主力事業であり、利益率も高い水準です。機能性薄膜・ガラス事業も増収増益となりましたが、照明事業は営業損失を計上しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 光学事業 | 20億円 | 20億円 | 3.3億円 | 3.8億円 | 19.0% |
| 照明事業 | 5.1億円 | 5.2億円 | -0.0億円 | -0.3億円 | -6.1% |
| 機能性薄膜・ガラス事業 | 13億円 | 14億円 | 0.5億円 | 0.9億円 | 6.9% |
| その他 | 8.2億円 | 7.7億円 | 1.7億円 | 1.8億円 | 23.5% |
| 調整額 | - | - | -4.8億円 | -5.0億円 | - |
| 連結(合計) | 46億円 | 47億円 | 0.6億円 | 1.3億円 | 2.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローがプラス、投資活動によるキャッシュ・フローがマイナス、財務活動によるキャッシュ・フローがプラスであるため、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態である「積極型」に該当します。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3.4億円 | 3.7億円 |
| 投資CF | -4.7億円 | -8.5億円 |
| 財務CF | 2.2億円 | 6.2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.1%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は20.8%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
特殊ガラスと薄膜で「光の時代」をリードし、顧客が感動する商品・サービスを提供し続けることを基本理念としています。また、常に地球と時代を見つめるダイナミックな経営を行い、社員一人ひとりの人生の充実と会社の発展を目指すことを経営理念として掲げています。
■(2) 企業文化
社員一人ひとりのことを考え、常に何事にもチャレンジしていく活気あふれる会社を目指しています。行動規範として「始まりは、いつも私から。それ、私がやります。Yes, I can.」を掲げ、主体的な行動を重視しています。また、環境に優しいガラスにより地球環境に貢献する姿勢も大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
2023年度から2025年度までの中期経営計画「GROWTH25」を策定し、事業ポートフォリオの革新を進めています。次期中期計画「GROWTH28」(2026年度~2028年度)では、連結グループでの売上高営業利益率10%を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
コアコンピタンスである硝材開発、精密成型、薄膜蒸着の3技術を再進化させ、モビリティ、ヘルスケア、環境などの成長ターゲット分野へ事業を拡大する戦略です。事業ポートフォリオの革新を断行し、機動力とコスト競争力を高めることで、次期中期計画での再成長につなげる方針です。
* フライアイレンズ:技術再進化による要求仕様への対応
* 車載:精密成型・薄膜蒸着技術による部品展開
* 放熱基板:2026年3月期の量産出荷に向けた準備
* 偏光子:データセンター向け需要増に対応する生産能力倍増
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「企業の成長は社員の成長」とし、全社員の能力発揮と自己成長の場を提供することを基本方針としています。スキルマップを用いた育成や社会人ドクター制度などの支援を行い、柔軟なものづくり人材を育成しています。また、ダイバーシティ&インクルージョンを推進し、多様な人材が活躍できる組織構築を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 47.8歳 | 18.3年 | 5,565,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 主要顧客への販売依存度
同社グループの業績は、セイコーエプソングループやSignify Electronics Technologyグループなどの主要顧客との取引状況に大きく影響を受けます。これら顧客への販売実績は総販売実績の一定割合を占めており、将来にわたり製品が採用され続ける保証はありません。取引関係の変化が業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 特定事業分野への依存
主要な報告セグメントである光学事業は、連結売上高の約43%を占めています。同事業はプロジェクター用反射鏡やフライアイレンズなどを扱っており、今後も中心的な事業として展開する方針ですが、経済情勢の変化や技術革新により市場規模が縮小した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 競合状況と技術革新
主力製品であるプロジェクター用反射鏡市場には競合が参入しています。同社は小型化や耐熱性向上などの技術開発を進めていますが、開発の成否や競合激化による価格下落が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。また、代替技術の台頭や市場ニーズの変化に対応できない場合もリスクとなります。



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