※本記事は、岡本硝子の有価証券報告書(第80期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 岡本硝子ってどんな会社?
特殊ガラスと薄膜技術を活かし、光学機器や照明、機能性薄膜・ガラス製品を製造するメーカーです。
■(1) 会社概要
1947年に東京都江東区で設立され、着色・硬質ガラスの成型技術を基盤に事業を開始しました。1984年に真空蒸着機を導入し、ガラスと薄膜の技術融合を実現しています。2004年にジャスダック市場に上場し、現在は東京証券取引所スタンダード市場に属しています。近年は中国や台湾の海外子会社に加え、製造子会社の買収等も進め生産体制を拡充しています。
現在の従業員数は連結で232名、単体で153名体制で事業を運営しています。大株主については、筆頭株主が事業会社である有限会社オー・ジー・シーであり、第2位も関連する事業会社の岡本興産有限会社です。第3位には創業家出身で現代表取締役会長の岡本毅氏が名を連ねており、安定した所有基盤のもとで経営が行われています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有限会社オー・ジー・シー | 14.90% |
| 岡本興産有限会社 | 2.92% |
| 岡本 毅 | 2.68% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役会長兼CEOは岡本毅氏が務めています。社外取締役比率は11.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 岡本毅 | 代表取締役会長兼CEO | 警察庁、外務省領事、埼玉県警察本部刑事部長等を経て同社社長に就任。関連会社の董事長等を歴任し、2022年より現職。 |
| 堀義弘 | 代表取締役社長兼COO | 三菱商事にて木材建材本部副本部長や関連会社社長等を歴任。2022年に同社へ入社し執行役員COOを経て、2024年より現職。 |
| 出口雅晴 | 専務取締役兼CSO | 日立製作所プロジェクター本部本部長やマクセルホールディングス執行役員等を歴任し、2022年に同社へ入社。2026年より現職。 |
| 結城修 | 常務取締役兼CMFO | パナソニックにてコネクティッドソリューションズ社常務や関連会社工場長等を歴任。2026年より現職。 |
| 堂下和宏 | 取締役CTO | 日本板硝子にてファンクショナルプロダクツ事業部主幹技師等を務め、名古屋市立大学URAを経て、2026年より現職。 |
社外取締役は、中井日出海(弁理士・日の出特許&技術コンサルティング事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「光学事業」「照明事業」「機能性薄膜・ガラス事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 光学事業
プロジェクター用反射鏡や、光の焦点を拡散させて画面の明るさを均一にするフライアイレンズ、デジタルシネマ用映写機の反射鏡などの製造および販売を行っています。主にプロジェクターメーカー等の顧客に光学部品として供給しています。
収益は、製品の販売代金として顧客から受け取っています。事業の運営は同社のほか、新潟岡本硝子などの国内製造子会社や、岡本光学科技股份有限公司および蘇州岡本貿易有限公司といった海外拠点等で幅広く行われています。
■(2) 照明事業
自動車用ヘッドライトおよびフォグライト用のカバーガラスや、一般用照明向けガラス製品などの製造および販売を行っています。自動車部品メーカーや照明器具メーカーを主要顧客とし、様々な用途に応じた製品を提供しています。
収益は、照明用ガラス製品の販売による代金として得ています。運営は同社と岡本光学科技股份有限公司、蘇州岡本貿易有限公司の複数社で行われており、各拠点が連携して生産や販売網を構築しています。
■(3) 機能性薄膜・ガラス事業
ガラス偏光子やガラス容器への加飾蒸着、高耐久性銀ミラーのほか、コックピット用液晶ディスプレイの表面ガラスへの蒸着、フリット(ガラス粉末)などの製造および販売を行っています。光通信や半導体周辺部品など幅広い産業に向けた素材を供給しています。
収益は、これらの特殊ガラス製品および薄膜製品の販売代金として顧客から受け取っています。運営は同社のほか、新潟岡本硝子、二光光学、岡本光学科技股份有限公司など国内外の子会社が担っています。
■(4) その他
デンタルミラーなどの医療向けガラス製品や洗濯機用ドアガラスといった、上記3セグメントに含まれない特殊ガラス製品の製造および販売を行っています。また、一般消費者向けのガラスプロダクトブランドの展開も推進しています。
収益は、関連する製品の販売代金から得ています。この事業の運営は主に同社および台湾の岡本光学科技股份有限公司などが中心となっており、ニッチな領域におけるガラスの需要に応えています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高が45億円から50億円の範囲で推移し、比較的安定しています。一方、利益面はプロジェクター市場の需要変化や先行投資の負担により変動が大きく、直近の2026年3月期は営業損失を計上し最終赤字となりました。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 50.7億円 | 48.9億円 | 45.8億円 | 46.9億円 | 47.3億円 |
| 経常利益 | 1.6億円 | 1.5億円 | 1.5億円 | 0.8億円 | -0.8億円 |
| 利益率(%) | 3.2% | 3.0% | 3.2% | 1.8% | -1.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.3億円 | 2.5億円 | -3.9億円 | 2.1億円 | -1.9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前年と同水準を維持したものの、売上原価の増加等により売上総利益が減少しました。販管費も増加したため、営業利益は赤字へと転落し、収益性の低下がみられます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 46.9億円 | 47.3億円 |
| 売上総利益 | 15.7億円 | 14.5億円 |
| 売上総利益率(%) | 33.6% | 30.7% |
| 営業利益 | 1.3億円 | -0.8億円 |
| 営業利益率(%) | 2.7% | -1.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3.8億円(構成比25%)、支払手数料が1.5億円(同10%)、研究開発費が1.3億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の光学事業は売上を伸ばしたものの減価償却費の増加等により減益となりました。一方、その他事業は海洋・特機関連の好調により増益となり、事業構造の転換が図られています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 光学事業 | 20.2億円 | 20.6億円 | 3.8億円 | 2.1億円 | 10.3% |
| 照明事業 | 5.2億円 | 4.4億円 | -0.3億円 | 0.1億円 | 1.2% |
| 機能性薄膜・ガラス事業 | 13.7億円 | 13.4億円 | 0.9億円 | - | 0.2% |
| その他 | 7.7億円 | 8.9億円 | 1.8億円 | 2.2億円 | 24.9% |
| 調整額 | - | - | -5.0億円 | -5.2億円 | - |
| 連結(合計) | 46.9億円 | 47.3億円 | 1.3億円 | -0.8億円 | -1.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3.7億円 | 3.4億円 |
| 投資CF | -8.5億円 | -2.5億円 |
| 財務CF | 6.2億円 | 2.4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-6.7%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は30.1%であり、いずれもスタンダード市場の平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「特殊ガラスと薄膜で『光の時代』をリードしお客様が感動する商品・サービスを提供し続けます」を基本理念に掲げています。また、「常に地球と時代をみつめるダイナミックな経営を行い、社員一人ひとりの人生の充実と会社の発展を目指す」という経営理念のもと、地球環境に配慮した社会への貢献を志向しています。
■(2) 企業文化
同社は、大企業では難しい小回りの良さを生かし、既成概念にとらわれずに市場創造を目指す企業文化を有しています。「始まりは、いつも私から。それ、私がやります。Yes, I can.」という行動規範を定め、社員一人ひとりが常に何事にもチャレンジしていく活気あふれる組織づくりを理想として掲げています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、AIデータセンター市場の急拡大に伴う需要に対応し、成長分野への事業ポートフォリオ転換を加速させるため、2029年3月期までの中期経営計画「GROWTH28」を策定しています。
* 2029年3月期 売上高:100億円
* 2029年3月期 売上高営業利益率:10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
生成AIデータセンター等に向けた素材メーカーへの構造転換を図るため、放熱基板やガラス偏光子の生産能力増強によるサプライチェーンの中核獲得を目指しています。また、レアアース採掘向け超高圧耐圧ガラス球などの海洋事業向け製品の拡充を進めるとともに、既存のプロジェクター・照明市場への新デバイス投入による競争力強化にも取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「企業の成長は社員の成長である」という基本方針のもと、技術・技能伝承と適正配置、DX・生産性向上、次世代リーダー育成、エンゲージメント向上を柱とした人材戦略を推進しています。ものづくりの知識向上と人材の流動化を進め、社員が自己成長に挑戦し多様な人材が活躍し続けられる組織環境の構築を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 48.6歳 | 19.0年 | 5,789,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.6% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 81.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 85.6% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 77.8% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 主要顧客への販売依存度
同社の業績は、特定の主要顧客との取引状況の影響を受けます。現在、良好な取引関係を維持していると考えているものの、将来にわたり製品が継続して採用される保証はなく、主要顧客の動向によっては同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 競合状況の激化
主力のプロジェクター用反射鏡市場において他社の参入による競合が発生しています。競争力強化のため小型化や耐熱性向上の技術開発を進めていますが、優位性の低下や価格競争の激化により、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 特定事業分野への依存
同社の主要な報告セグメントは光学事業であり、売上高の大きな割合を占めています。今後も同事業を中心に展開する方針ですが、経済情勢の変化や技術革新により関連製品の市場規模が縮小した場合、業績に影響を及ぼすリスクがあります。



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