アジアパイルホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アジアパイルホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の基礎工事専業大手です。コンクリート杭の製造・施工を主力に、鋼管杭や場所打ち杭も手掛ける総合基礎建設業を展開しています。2025年3月期は、国内での受注競争激化や海外事業の再編等の影響により、売上高は1,008億円で前期比減収、経常利益は39億円で同減益となりました。


※本記事は、アジアパイルホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第20期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アジアパイルホールディングスってどんな会社?


基礎工事関連事業を営む企業グループの持株会社です。国内に加え、ベトナムなどアセアン地域でも事業を展開しています。

(1) 会社概要


2005年にジオトップと大同コンクリート工業の共同株式移転により設立され、2015年に持株会社体制へ移行して現社名となりました。国内での強固な事業基盤に加え、2010年代以降はベトナムやミャンマーの現地企業と資本・業務提携を行い、アセアン地域へ積極的に進出しています。

従業員数は連結で2,523名、持株会社単体では12名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位はセメント業界大手の太平洋セメントです。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.18%
太平洋セメント 6.58%
日本カストディ銀行(信託口) 4.19%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.1%です。代表取締役社長最高執行役員は黒瀬修介氏です。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
黒瀬 修介 代表取締役社長最高執行役員管理担当兼 内部統制担当 三井住友銀行常務執行役員、日本総合研究所副社長等を経て、2022年より現職。
黒瀬 晃 代表取締役会長 三井住友銀行執行役員等を経て、2005年同社副社長。社長を経て2022年より現職。
大越 正彦 取締役執行役員国内事業推進副担当 ヨーコン常務取締役等を経て、2010年同社取締役。2021年より現職。
奥山 和則 取締役執行役員国際事業推進・支援担当 三井住友銀行常務執行役員、三井住友カード代表取締役専務等を経て、2021年より現職。
武藤 博之 取締役執行役員国内事業推進担当 ジャパンパイル専務取締役等を経て、2024年より現職。
Phan Khac Long 取締役 Phan Vu Investment Corporationチェアマン等を務め、2014年より現職。
渡邊 顯 取締役 弁護士。大同コンクリート工業監査役等を経て、2006年より現職。


社外取締役は、上前修(元出光興産常務取締役)、樺澤敏弘(元JFE商事副社長)、上田耕平(元ジャパンエレベーターサービスHD取締役社長COO)、大谷和子(日本総合研究所執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内事業」「海外事業」の2つの報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

(1) 国内事業


コンクリート杭、鋼管杭、場所打ち杭などの基礎工事全般における製造・施工・販売を行っています。ゼネコンや商社、代理店等から工事を請け負うほか、同業他社との間でOEM製品の受委託も行います。

主な収益は、基礎工事の請負代金や杭製品の販売代金です。運営は主に中核事業会社であるジャパンパイルが行い、その子会社であるジャパンパイル基礎工業などが施工や販売を担っています。

(2) 海外事業


ベトナムおよびミャンマーにおいて、コンクリート杭の製造・施工・販売を行っています。現地の施主等から基礎工事を請け負い、製造子会社がコンクリート杭を供給する体制を構築しています。

収益は、現地での基礎工事請負やコンクリート杭の販売によって得ています。ベトナムではPhan Vu Investment Corporationとその子会社群が、ミャンマーではVJP Co., Ltd.が事業を展開しています。

(3) その他


報告セグメントに含まれない事業として、コンクリート杭の継手金具やコンクリート二次製品付属金物の製造・販売を行っています。

これらの製品の販売代金が収益源となります。運営は主にシントク工業が行っており、ジャパンパイルや同業他社に対して製品を供給しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの業績を見ると、売上高は1,000億円前後で推移しています。2023年3月期と2024年3月期には利益水準が大きく回復しましたが、直近の2025年3月期は減収減益となりました。利益率は変動があり、建設需要や原材料価格の影響を受けている様子がうかがえます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 872億円 932億円 1,102億円 1,032億円 1,008億円
経常利益 31億円 22億円 58億円 62億円 39億円
利益率(%) 3.5% 2.3% 5.3% 6.1% 3.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 24億円 15億円 41億円 38億円 23億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較します。売上高は微減となり、売上総利益および営業利益は減少しました。特に営業利益率は低下しており、収益性の低下が見られます。コスト面での負担増などが利益を圧迫している可能性があります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,032億円 1,008億円
売上総利益 173億円 154億円
売上総利益率(%) 16.8% 15.3%
営業利益 70億円 43億円
営業利益率(%) 6.8% 4.3%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当等が49億円(構成比44%)、貸倒引当金繰入額が10億円(同9%)を占めています。売上原価は売上高の85%程度を占めています。

(3) セグメント収益


国内事業は、大径・大規模工事へのシフトを進めたものの、競争激化等により減収減益となりました。海外事業は増収となったものの、ベトナム市場の競争激化やミャンマー事業の撤退方針決定などに伴い、営業損失を計上しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
国内事業 869億円 829億円 61億円 48億円 5.8%
海外事業 163億円 179億円 9億円 -5億円 -2.9%
連結(合計) 1,032億円 1,008億円 70億円 43億円 4.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 42億円 47億円
投資CF -39億円 -24億円
財務CF -40億円 11億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「世界に通じる基礎を造る」「進歩の原点は現場にあり」「仕事を天職として社会に尽くす」を企業理念として掲げています。総合基礎建設業として社会に貢献することを目指し、日本国内市場からアセアン市場へと事業を拡大し、両市場を一体化して基礎建設事業を推進する方針です。

(2) 企業文化


同社は、進歩の原点が現場にあるという考えのもと、現場主義を重視する文化を持っています。また、仕事を天職として社会に尽くすという理念に基づき、高い専門性を持ったプロフェッショナルとして社会課題の解決に取り組む姿勢を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、品質の向上と効率化により経営基盤の確立を図るための指標として、営業利益とROEを重視しています。中期経営計画(2024年4月~2029年3月)「新5か年計画」において、「基礎建設業界を代表し、高い専門性を有するリーディングカンパニー」を目指す姿として掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


ビジネス変革による効率化を進め、創出した余力で既存事業の競争力強化や新分野開拓を行う体制を整備する戦略です。国内では技術革新を進め、海外ではグループ全体の技術力向上による市場開拓を目指します。また、サステナビリティ戦略としてESGへの取組を推進し、持続的な成長基盤を構築します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


長期的視野に立ったグループの人材育成と増強を最重点施策としています。建築基礎設計士や基礎施工士などの公的資格取得支援や社内教育プログラムを整備し、専門性の高い人材を育成しています。また、性別・国籍・年齢等にかかわらず、誰にとっても働きやすい多様性のある職場づくりに努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 49.9歳 17.9年 8,264,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 55.6%
男女賃金差異(全労働者) 71.4%
男女賃金差異(正規) 71.6%
男女賃金差異(非正規) 65.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、建築基礎設計士(54名)、基礎施工士(269名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) グループ再編等の不確実性


同社はアセアン地域での競争力強化のため、現地企業との提携や買収、持株会社体制への移行などを進めています。しかし、これらのグループ拡大策が当初期待した効果を生まない可能性があり、その場合、経営成績に影響を与える可能性があります。

(2) 原材料等の市況変動


主力製品であるコンクリートパイルの原材料(セメント、PC鋼棒等)の価格は市況により変動します。仕入価格の抑制や販売価格への転嫁に努めていますが、急激な価格高騰などが生じた場合、製造・工事原価が上昇し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 業界の寡占化と価格競争


コンクリートパイル業界では、開発費負担の増大等により大手企業による再編と寡占化が進みつつあります。同社は主導的な役割を目指していますが、寡占化の進展に伴い想定以上の価格競争が激化した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。