日本製鋼所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本製鋼所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。産業機械事業と素形材・エンジニアリング事業を展開する総合メーカーです。当連結会計年度は、産業機械事業の売上が減少したものの、素形材・エンジニアリング事業が伸長しました。売上高は微減となりましたが、営業利益・経常利益・当期純利益はいずれも増益を達成しています。


※本記事は、株式会社日本製鋼所 の有価証券報告書(第99期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本製鋼所ってどんな会社?


創業100年を超える素材と機械の総合メーカー。「Material Revolution」を掲げ、産業機械と素形材・エンジニアリング事業を展開しています。

(1) 会社概要


1907年に北海道炭礦汽船と英国のアームストロング・ウイットウォース会社、ビッカース会社の共同出資により設立されました。1951年に東京証券取引所へ上場しています。その後、樹脂機械や成形機事業を拡大し、2020年には素形材・エンジニアリング事業を分社化して日本製鋼所M&Eを設立するなど、事業再編を進めています。

同グループは連結子会社32社、関連会社3社などで構成され、連結従業員数は5,283名、単体では1,982名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は日本カストディ銀行です。事業会社としては、第10位に取引関係のある三菱重工業が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 18.13%
日本カストディ銀行(信託口) 10.06%
NORTHERN TRUST CO.(AVFC) RE NON TREATY CLIENTS ACCOUNT 4.25%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性3名の計14名で構成され、女性役員比率は21.4%です。代表取締役社長は松尾敏夫氏です。社外取締役比率は35.7%です。

氏名 役職 主な経歴
松尾 敏夫 代表取締役社長 1984年同社入社。広島製作所長、常務執行役員成形機事業部長などを経て、2020年代表取締役副社長。2022年4月より現職。
菊地 宏樹 代表取締役副社長CFO、安全保障輸出管理管掌、経理部担当、経営企画室長、素形材・エンジニアリング事業担当 1985年三井銀行入行。2015年同社入社。総務部長、秘書室長を経て、2020年CFO、取締役執行役員。2024年4月より現職。
井上 茂樹 取締役専務執行役員CTO、全社品質担当、知的財産部担当、新事業推進本部担当、品質統括室長、イノベーションマネジメント本部長 1986年同社入社。広島製作所長、常務執行役員産業機械事業部長などを経て、2022年CTO。2024年4月より現職。
中西 英雄 取締役執行役員安全保障輸出管理担当、総務部長 1990年同社入社。室蘭製作所総務部長、人事教育部長を経て、2022年総務部長。2024年6月より現職。
柴田 基行 取締役 1986年同社入社。経理部長、日本製鋼所M&E取締役事業推進室長、同社執行役員人事教育部長などを経て、2025年4月より現職。


社外取締役は、中西義之(元DIC代表取締役社長)、三井久夫(元花王取締役常務執行役員)、河村潤子(元文部科学省高等教育局私学部長)、栗木康幸(元東京エレクトロンデバイス代表取締役社長)、水本伸子(元IHI取締役常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「産業機械事業」、「素形材・エンジニアリング事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 産業機械事業


樹脂製造・加工機械、プラスチック射出成形機、防衛関連機器、電子デバイス関連機器などを製造・販売しています。主な顧客は化学メーカー、自動車関連企業、官公庁など多岐にわたります。樹脂機械や成形機は世界的なシェアを持っています。

製品の販売や保守サービス等による対価を顧客から受け取る収益モデルです。運営は同社が製造・販売の主要部分を担当し、設計・製造の一部を日鋼テクノなどの子会社が分担しています。海外ではJapan Steel Works America, Inc.などが販売・サービスを担当しています。

(2) 素形材・エンジニアリング事業


発電用部材や原子力関連部材などの素形材製品、クラッド鋼板、各種プラントの設計・建設、風力発電機器の保守サービスなどを提供しています。エネルギー関連産業や重電メーカーなどが主な顧客です。

製品の販売や工事請負、保守サービス等による対価を顧客から受け取ります。運営は主に子会社の日本製鋼所M&Eが担当し、設計・製造・販売から保守までを一貫して行っています。一部の構内運搬等は日鋼運輸などが担当しています。

(3) その他事業


新製品の研究開発・製造・販売や、グループ会社の業務支援・管理サービス事業などを行っています。

製品販売やサービス提供による対価を収益源としています。同社のほか、ニッコー厚産などが事務・管理部門の補助事業を行っています。また、ファインクリスタルや室蘭銅合金などが事業多角化の一環として運営されています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2,000億円台で推移しており、直近では微減となっています。一方、経常利益は増加傾向にあり、利益率は改善が続いています。当期純利益も着実に積み上がっており、全体として収益性が向上している傾向が見られます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,980億円 2,138億円 2,387億円 2,525億円 2,486億円
経常利益 107億円 168億円 150億円 199億円 235億円
利益率(%) 5.4% 7.8% 6.3% 7.9% 9.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 98億円 92億円 120億円 97億円 110億円

(2) 損益計算書


売上高は微減となりましたが、売上原価の低減により売上総利益は増加し、利益率も改善しました。営業利益および営業利益率も前期と比較して向上しており、本業の収益力が高まっていることがうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,525億円 2,486億円
売上総利益 568億円 610億円
売上総利益率(%) 22.5% 24.5%
営業利益 180億円 228億円
営業利益率(%) 7.1% 9.2%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が116億円(構成比30%)、その他の販売間接費及び一般管理費が89億円(同23%)を占めています。売上原価については、原価等の詳細な内訳は記載されていません。

(3) セグメント収益


産業機械事業は売上高・利益ともに減少しましたが、素形材・エンジニアリング事業は原子力関連製品の増加等により増収増益となりました。素形材・エンジニアリング事業の利益率は大きく改善し、全社の増益を牽引しました。その他事業も増収増益となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
産業機械事業 2,084億円 1,990億円 204億円 176億円 8.8%
素形材・エンジニアリング事業 419億円 471億円 32億円 87億円 18.5%
その他事業 22億円 24億円 0.6億円 1億円 4.7%
調整額 - - -57億円 -36億円 -
連結(合計) 2,525億円 2,486億円 180億円 228億円 9.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、営業活動により創出されるキャッシュ・フローを内部的な資金の主な源泉としています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、事業活動を通じて得られる資金であり、同社の事業基盤の健全性を示しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資や有形固定資産の取得など、将来の成長に向けた投資活動の状況を表しています。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入や返済、株式の発行など、資金調達や返済に関する活動を示しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 217億円 -46億円
投資CF -68億円 -123億円
財務CF -49億円 -57億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「Purpose(パーパス)」として「Material Revolutionの力で世界を持続可能で豊かにする。」を掲げています。これを起点に、将来目指す姿である「Vision(ビジョン)」および独自の提供価値を生み出す「Value Creation Process」を定義し、これらを合わせた企業グループ理念体系「Our Philosophy」を制定しています。

(2) 企業文化


同社は組織風土改革活動を推進しており、「高い倫理観とチャレンジ精神」と、あらゆる業務・場面における「心理的安全性」の醸成・両立を目指しています。社員一人ひとりが自由に意見を出し合い、失敗を成長の糧と捉えてチャレンジを推奨する風土づくりに取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


2029年3月期を中間地点とする中期経営計画「JGP2028」を推進しています。2034年3月期には「売上高5,000億円規模の企業グループへの成長」とサステナビリティ目標の実現を目指しています。

* 売上高(2029年3月期):2,900億円
* 営業利益(2029年3月期):245億円
* 営業利益率(2029年3月期):8.4%

(4) 成長戦略と重点施策


「JGP2028」では、現有事業の持続的価値向上、新規事業の創出・育成、人への投資等の無形資産投資の拡充、コーポレートガバナンスの強化を基本方針としています。産業機械事業では防衛関連機器やプラスチック加工機械の需要を見込み、素形材・エンジニアリング事業では発電機器向け製品の安定需要を見込んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人的資本の強化とDEI & B」を重要課題に掲げ、「個の自己実現」と「組織の持続的成長」が相互循環する企業像を目指しています。事業戦略にマッチした多様な人材の獲得、ポータブルスキルとテクニカルスキルの開発、組織マネジメント力の強化に加え、チャレンジが推奨される組織風土改革やエンゲージメント向上に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 38.8歳 12.5年 6,938,000円


※平均年間給与には、賞与及び基準外賃金等を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性従業員の割合 2.5%
男性従業員の育児休業等取得率 90.0%
従業員の男女の賃金の差異(全従業員) 75.5%
従業員の男女の賃金の差異(正規雇用従業員) 77.2%
従業員の男女の賃金の差異(パート、有期従業員等) 53.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、総合職新卒女性採用比率(22.4%)、障がい者雇用率(2.61%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 設備の減損に係るリスク


既存事業の競争力強化や新規事業等のため設備投資を行っています。これらの固定資産について、将来キャッシュ・フローによる回収が見込めない場合、減損損失が発生し、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。投資計画は取締役会等で審議し、実施後も業績乖離を確認して対策を講じています。

(2) 為替レートの変動リスク


製品の輸出比率が約50%であり、受注から売上まで長期間を要するため、為替動向により損益が変動する可能性があります。また、原材料の輸入等も行っています。米ドルやユーロ等の主要通貨については、社内規程に基づき為替予約等のヘッジ取引を行うことで影響を最小限に抑える対策をとっています。

(3) 企業買収・他社提携等に係るリスク


新規事業や新製品開発のため、他社の買収や業務提携、合弁会社設立等を行っています。これらの戦略的提携において期待した成果が得られない場合、事業活動や業績に影響を及ぼす可能性があります。投資にあたっては、M&A・アライアンス協議会や取締役会等で投資効果やリスクを審議して決定しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。