日本製鋼所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本製鋼所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する日本製鋼所は、樹脂製造・加工機械などの産業機械事業と発電用部材などの素形材・エンジニアリング事業を展開する企業です。直近の業績トレンドは、産業機械事業の売上増が全体を牽引したことで、当期は売上高2,749億円、経常利益261億円となり、増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社日本製鋼所の有価証券報告書(第100期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本製鋼所ってどんな会社?


樹脂製造・加工機械を中心とする産業機械事業や素形材・エンジニアリング事業を展開する企業の特徴を解説します。

(1) 会社概要


1907年11月に北海道炭礦汽船と英国企業2社の共同出資によって設立され、1950年12月に現在の日本製鋼所が設立されました。1951年6月に株式上場を果たし、2006年11月には三菱重工業から押出成形機事業を譲り受けています。2020年4月には素形材・エンジニアリング事業の組織再編を実施しました。

従業員数は連結で5,419名、単体で2,028名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も同様に日本カストディ銀行(信託口)となっています。第3位には事業会社である大樹生命保険が名を連ねており、安定した株主構成が構築されています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 16.73%
日本カストディ銀行(信託口) 9.73%
大樹生命保険 3.84%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性3名の計14名で構成され、女性役員比率は21.4%です。代表取締役社長は松尾敏夫氏が務めています。取締役10名のうち5名が社外取締役であり、社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
松尾敏夫 代表取締役社長 1984年4月同社入社。広島製作所長、成形機事業部長などを経て、2020年4月に代表取締役副社長に就任。2022年4月より現職。
菊地宏樹 代表取締役副社長CFO、安全保障輸出管理管掌、経理部担当、経営企画室長 1985年4月三井銀行(現三井住友銀行)入行。2015年4月同社入社後、秘書室長、経営企画室長などを経て、2024年4月より現職。
井上茂樹 取締役専務執行役員CTO、全社品質担当、知的財産部担当、フォトニクス事業室担当、イノベーションマネジメント本部長 1986年4月同社入社。広島製作所長、産業機械事業部長などを経て2022年4月にCTO就任。2024年4月より現職。
馬本誠司 取締役専務執行役員CISO、情報システム室・DX推進室担当、事業開発室長 1986年4月同社入社。樹脂機械事業部長などを経て2024年4月に専務執行役員就任。2025年4月にCISOに就き、同年6月より現職。
中西英雄 取締役執行役員安全保障輸出管理担当、総務部担当、グローバル戦略本部グローバル業務管理部長 1990年4月同社入社。人事教育部長、総務部長などを経て、2024年6月に取締役執行役員就任。2025年4月より現職。


社外取締役は、中西義之(元DIC社長)、三井久夫(元花王常務執行役員)、河村潤子(元日本芸術文化振興会理事長)、栗木康幸(元東京エレクトロンデバイス社長)、水本伸子(元IHI常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「産業機械事業」、「素形材・エンジニアリング事業」および「その他」事業を展開しています。

産業機械事業


樹脂製造・加工機械、プラスチック射出成形機やマグネシウム合金射出成形機などの成形機、防衛関連機器などの製造・販売・保守サービスを提供しています。高い技術力を通じて低炭素社会や資源循環に貢献し、幅広い産業分野の顧客ニーズに応えています。

主に顧客への製品販売と保守サービスから収益を得ています。事業の運営は日本製鋼所が製造・販売の主要部分を担当し、日鋼設計や日鋼テクノなどの子会社が設計や製造の一部を分担しています。国内や海外での販売・保守は日鋼YPK商事などの子会社が担っています。

素形材・エンジニアリング事業


発電用部材や原子力関連部材などの一般鋳鍛鋼製品、クラッド鋼板などの機能性材料の製造・販売のほか、鋼構造物の製造や各種プラントの設計・建設を提供しています。また、風力発電機器の保守サービスなども行っています。

顧客に対する製品の販売や保守点検、補修サービスから収益を得ています。日本製鋼所M&Eが設計・製造・販売・保守サービスの主要な役割を担い、構内運搬などは日鋼運輸などの子会社が担当し、グループ全体で連携して事業を推進しています。

その他事業


新製品の研究開発、製造、販売のほか、グループ内の業務支援や管理サービスなどを提供しています。人工水晶や窒化ガリウム基板の開発など、将来に向けた新分野の開拓も推進しています。

主にグループ内の事務や管理業務の補助などから収益を得ています。ニッコー厚産や日鋼室蘭サービスなどが警備、印刷、社宅管理といった補助事業を行い、事業活動を後方から支えています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、産業機械事業の受注増や安定した需要を背景に、売上高は概ね拡大傾向にあります。利益面でも収益性の改善が進み、利益率および当期利益ともに着実な成長を遂げており、堅調な業績拡大が確認できます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2,138億円 2,387億円 2,525億円 2,486億円 2,749億円
経常利益 168億円 150億円 199億円 235億円 261億円
利益率(%) 7.8% 6.3% 7.9% 9.5% 9.5%
当期利益 92億円 120億円 97億円 110億円 156億円

(2) 損益計算書


売上高の拡大に伴い売上総利益が増加し、安定した営業利益率を維持しています。主力事業における底堅い需要と製品の高付加価値化が、着実な収益の土台となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2,486億円 2,749億円
売上総利益 610億円 643億円
売上総利益率(%) 24.5% 23.4%
営業利益 228億円 253億円
営業利益率(%) 9.2% 9.2%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び賞与が49億円(構成比13%)、研究開発費が44億円(同11%)、運賃及び荷造費が34億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別に見ると、産業機械事業は豊富な受注残を背景に売上が大きく増加し全体を牽引しています。素形材・エンジニアリング事業は前期から微減となったものの、高効率火力発電や原子力発電向けの需要は旺盛な状態が続いています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
産業機械事業 1,990億円 2,262億円
素形材・エンジニアリング事業 471億円 458億円
その他 24億円 28億円
連結(合計) 2,486億円 2,749億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業のキャッシュ・フローはマイナスですが、借入などの財務活動で資金を調達し、将来の成長に向けた積極的な設備投資を継続している局面です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -46億円 -169億円
投資CF -123億円 -171億円
財務CF -57億円 361億円


企業の収益力を測るROEは9.5%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も49.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「『Material Revolution』の力で世界を持続可能で豊かにする。」というPurpose(パーパス)を掲げています。社会課題を解決する産業機械と新素材の開発や実装を通じてすべてのステークホルダーに貢献し、社会価値の創出と持続的な企業価値の向上を同時に実現することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は組織風土改革活動を通じて、高い倫理観とチャレンジ精神に加え、あらゆる業務や場面における心理的安全性の醸成を重視しています。社員一人ひとりが自由に意見を出し合い、失敗を成長の糧と捉えて支援する、挑戦が推奨される風通しのよい組織風土を築いています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2025年3月期を初年度とする5カ年の中期経営計画「JGP2028」を推進しています。最終年度に向けて、マテリアリティの解決と持続的な企業価値向上を両立させるための財務目標を設定しています。

* 2029年3月期:売上高3,800億円
* 2029年3月期:営業利益370億円
* 2029年3月期:営業利益率9.7%
* 2029年3月期:ROE10~11%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、プラスチック資源循環社会の実現、低炭素社会への貢献、超スマート社会への貢献を重点領域として位置付けています。さらに、現有事業の持続的価値向上や新規事業の創出・育成に向けて、海外拠点のガバナンス強化や研究開発活動を推進するとともに、人への投資を中心とする無形資産投資の拡充にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は多様な個の自律的成長と組織の成果の最大化を促進し、持続的な企業価値の向上を実現するための人的資本戦略を推進しています。事業戦略にマッチした人材獲得や個人のスキル開発に加え、多様な人材が活躍できる職場環境の整備とエンゲージメント向上を図ることで、イノベーションの土壌を構築しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 38.8歳 12.6年 7,137,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全従業員) 77.2%
男女賃金差異(正規雇用) 77.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 65.4%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.57%)、総合職新卒女性採用比率(14.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 設備の減損に係るリスク


既存事業の競争力強化や新規事業開拓のために積極的な設備投資を行っています。しかし、投資後の事業環境の変化により十分な将来キャッシュ・フローが見込めず減損損失を計上した場合、同社の財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 為替レートの変動リスク


同社グループは輸出比率が約50%に達し、製品の受注から売上までに長期間を要する構造となっています。為替相場の変動によって売上時点の損益が当初の予想と異なる場合や、海外競合企業との相対的な競争力が変動した場合、業績に影響が及ぶリスクがあります。

(3) 企業買収・他社提携等に係るリスク


新規事業や新製品の開拓に向けて、他社の買収や業務提携、共同開発などを進めています。これらの戦略的提携において期待したシナジー効果や事業成果が十分に得られない場合、同社の事業展開や財政状態、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 自然災害等による影響


地震や風水害、火災などの各種災害により物的・人的被害が発生した場合、または社会インフラの機能が低下した場合、製造拠点の操業停止やサプライチェーンの寸断などが生じる可能性があります。その結果、生産活動に支障をきたし、業績に影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。