※本記事は、合同製鐵の有価証券報告書(第120期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 合同製鐵ってどんな会社?
合同製鐵は、鉄鋼製品の製造販売と鉄鋼リサイクルを担う鉄鋼事業を中心に、農業資材事業も展開しています。
■(1) 会社概要
1937年に大阪製鋼として設立され、1977年に大谷重工業と合併し合同製鐵に商号を変更しました。2007年には新日本製鐵(現日本製鉄)の持分法適用会社となりました。近年は、2019年の朝日工業の子会社化など積極的なM&Aを通じて製造拠点を拡充し、事業基盤の強化を進めています。
現在の従業員数は連結で2,168名、単体で772名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は事業会社の日本製鉄で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位には合鐵取引先持株会が名を連ねており、取引先との関係性がうかがえる資本構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本製鉄 | 17.60% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.50% |
| 合鐵取引先持株会 | 4.90% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は美濃部慎次氏が務めています。社外取締役比率は42.9%(取締役7名中3名)です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 美濃部慎次 | 代表取締役社長 | 日本製鉄常務執行役員等を経て、2023年日鉄建材代表取締役社長。2025年合同製鐵参与を経て同年6月より現職。 |
| 瀬戸口昭人 | 専務取締役執行役員 | 1983年入社。姫路製造所長構造用鋼事業担当などを経て、2022年6月より現職。 |
| 西仲桂 | 常務取締役執行役員 | 1984年入社。姫路製造所総務部長、経営企画部長兼経理部長などを経て、2021年4月より現職。 |
| 藤田倫之 | 常務取締役執行役員 | 日本製鉄和歌山製鐵所労働・購買部長などを経て、合同製鐵線材販売部長に就任し、2022年6月より現職。 |
社外取締役は、土屋光章氏(元みずほ総合研究所社長)、松田紀子氏(元国土交通大学校長)、増岡研介氏(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、鉄鋼事業および農業資材事業と、その他の事業を展開しています。
■鉄鋼事業
線材、各種大形・中形形鋼、構造用棒鋼、鉄筋用棒鋼などの多様な条鋼類の製造および販売を行っています。また、棒鋼や線材の加工製品、ねじ節鉄筋の製造販売や、機械、製鋼原料等の販売も手掛けており、省資源や省エネルギーにも貢献しています。
顧客である商社や建材業者などから鋼材や加工製品の販売代金を受け取る収益モデルです。運営は同社のほか、朝日工業、三星金属工業、トーカイ、合鐵産業などの各種連結子会社が担っています。
■農業資材事業
種子と牧草というスペシャリティを持った肥料メーカーとして、未利用資源を活用した有機質肥料や化成肥料などの製造および販売を行っています。
農業関係者などから有機質肥料や化成肥料等の販売代金を受け取ります。複数工場の一体運営による生産効率化でコストダウンを図っており、事業の運営は主に連結子会社である朝日アグリアが担当しています。
■その他事業
報告セグメントに含まれない事業として、砕石・砕砂の製造販売や、グループ会社の各種業務請負などを行っています。
顧客から砕石等の販売代金や業務請負による対価を受け取ります。主に連結子会社の上武や朝日ビジネスサポートが運営を担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、前半は大きく収益を伸ばしたものの、直近2期間は連続して減収減益となる傾向がみられます。特に直近では、国内の鋼材需要の低迷による販売数量の減少や販売価格の下落に加え、足元での鉄スクラップ価格の高止まりやエネルギーコストの上昇が利益を圧迫する要因となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2042億円 | 2354億円 | 2229億円 | 2052億円 | 1918億円 |
| 経常利益 | -13億円 | 159億円 | 203億円 | 154億円 | 111億円 |
| 利益率(%) | -0.6% | 6.7% | 9.1% | 7.5% | 5.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1億円 | 65億円 | 97億円 | 69億円 | 49億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期の損益構造を見ると、売上高の減少に伴い売上総利益も縮小しています。一方で販売費及び一般管理費は微増しており、これが営業利益率の低下につながっていることがわかります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2052億円 | 1918億円 |
| 売上総利益 | 362億円 | 328億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.7% | 17.1% |
| 営業利益 | 137億円 | 98億円 |
| 営業利益率(%) | 6.7% | 5.1% |
販売費及び一般管理費のうち、販売品運賃及び荷役等諸掛が100億円(構成比44%)、給料手当及び賞与が38億円(同17%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の状況を見ると、主力の鉄鋼事業は需要低迷による販売数量の減少や価格下落の影響を受けて減収となっています。一方、農業資材事業は売上高が堅調に推移し、微増収を確保しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 鉄鋼事業 | 1885億円 | 1743億円 |
| 農業資材事業 | 122億円 | 127億円 |
| その他 | 45億円 | 47億円 |
| 連結(合計) | 2052億円 | 1918億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
キャッシュ・フローの状況を見ると、営業活動で安定して資金を獲得し、その資金で投資や借入金の返済などの財務活動を賄う「健全型」の傾向を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 191億円 | 214億円 |
| 投資CF | -57億円 | -96億円 |
| 財務CF | -94億円 | -137億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
『持てる資源を最大限に活かし製造実力の向上で、ゆるぎないコスト競争力の確立、新たな商品価値の創造 資源循環の担い手としての企業価値の一層の向上を目指す』をスローガンとしています。鉄鋼事業では良質な製品の安定供給と鉄鋼リサイクルを通じた省資源への貢献、農業資材事業では社会への貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
「Proactive×Challenge」を行動方針として掲げ、縮減していく鋼材市場や生産年齢人口の減少といった厳しい外部環境を前提に、中期課題に対して積極的に挑戦する姿勢を重視しています。また、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進や、会社と社員の絆を深める取り組みを積極的に展開する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
「合同製鐵グループ中期ビジョン2030」において、持続的な成長と企業価値向上に向けた具体的な数値目標を掲げています。
* 売上高:2,250億円
* 経常利益:160億円
* ROS:7%
* ROE:7%(中長期では8%以上を目指す)
* D/Eレシオ:0.4以下
■(4) 成長戦略と重点施策
成長投資の実現に向けて、線材や構造用鋼の高品質化、鉄筋棒鋼拠点の運営促進による収益改善を進め、農業資材分野では有機肥料の活用拡大やM&Aを継続的に検討します。また、サステナビリティの推進として非化石電力鋼材「GODO Green」の製造販売や省エネ設備投資を実行し、カーボンニュートラル社会の実現を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材育成方針として、変化の激しい市場環境に対応し、迅速かつ的確に事業創造できる組織力の構築に向け、女性や外国人、キャリア採用者など多様な人材の採用・起用を継続します。それぞれの特性を活かせる職場環境の整備や教育を進めることで、多様な意見を取り込み持続的成長に繋げます。また、社員の安全・健康を重要課題と位置づけています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.6歳 | 18.4年 | 7,780,705円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.3% |
| 男性育児休業取得率 | 83.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 72.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 72.7% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 73.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員の在籍割合(7.9%)、管理職に占める中途採用者割合(15.9%)、年次有給休暇取得率(83.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 鋼材需要の減少と競争激化
国内の公共事業や民間建設需要が長期的視点で大きく伸長することは考えにくく、需要減少に伴い他社との販売競争が激化して業績に影響を及ぼすリスクがあります。これに対し、需要に見合った生産の実行や、生産余力を活用した鋼材輸出に注力することで収益基盤の強化を図っています。
■(2) 電力および主要資材のコスト上昇
カーボンニュートラルの推進や燃料需給の逼迫を背景とした電力料金の上昇や、電気炉製造の主要資材である電極等の需給逼迫による価格上昇のリスクがあります。製造時の使用電力を軽減する省エネ投資の実施や、複数の資材調達先を確保することで影響の低減に努めています。
■(3) サイバー攻撃等によるシステム障害
事業活動が情報システムに大きく依存しているため、ウイルス感染等のサイバー攻撃によりシステム停止や機密情報の漏洩が発生した場合、生産や業務の停止、社会的信用の低下を招くリスクがあります。セキュリティの強化に加え、業務ルールの徹底や社員教育等の対策を推進しています。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。