#合同製鐵転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、合同製鐵株式会社 の有価証券報告書(第119期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 合同製鐵ってどんな会社?
鉄鋼製品の製造販売を行う電炉メーカーであり、資源リサイクルの役割も担う企業です。農業資材事業も展開しています。
■(1) 会社概要
同社は1937年に大阪製鋼として設立され、1961年に東京・名古屋各証券取引所に上場しました。1977年に大谷重工業を合併し現商号となり、その後も複数の合併を経て製造拠点を再編しました。2019年には朝日工業を子会社化し、鉄鋼および農業資材事業の基盤を強化しています。
連結従業員数は2,101名、単体では755名です。筆頭株主は同社と鋼片の相互販売等の取引関係にある事業会社の日本製鉄で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には取引先持株会が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本製鉄 | 17.60% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.10% |
| 合鐵取引先持株会 | 4.60% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は美濃部 慎次氏です。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 美濃部 慎次 | 代表取締役社長 | 日本製鉄にて鋼管事業部長等を歴任後、日鉄建材代表取締役社長を経て、2025年6月より現職。 |
| 瀬戸口 昭人 | 専務取締役執行役員 | 1983年入社。姫路製造所長等を経て、2022年より技術総括部長として購買、技術・製造等を管掌。 |
| 西仲 桂 | 常務取締役執行役員 | 1984年入社。総務部長、経営企画部長等を歴任し、現在は経営企画、総務、経理を管掌。 |
| 藤田 倫之 | 常務取締役執行役員 | 日本製鉄入社後、各製鉄所総務部長等を経て同社入社。線材販売部長等を歴任し、現在は営業を管掌。 |
| 内田 裕之 | 取締役相談役 | 日本製鉄常務執行役員等を経て、2020年に同社代表取締役社長に就任。2025年6月より現職。 |
社外取締役は、土屋 光章(元みずほ総合研究所社長)、松田 紀子(元国土交通省国土交通大学校長)、増岡 研介(増岡総合法律事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「鉄鋼事業」「農業資材事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 鉄鋼事業
線材、各種大形・中形形鋼、軌条、構造用棒鋼、鉄筋用棒鋼などの鉄鋼製品や、その加工製品の製造および販売を行っています。建設・土木業界や製造業などが主な顧客であり、電炉メーカーとして鉄鋼リサイクルシステムの一翼も担っています。
収益は主に顧客への製品販売代金から得ています。運営は、合同製鐵に加え、連結子会社の朝日工業、三星金属工業、株式会社トーカイなどが行っています。また、販売面では商社を経由するほか、一部は子会社の合鐵産業などが担っています。
■(2) 農業資材事業
有機質肥料や化成肥料等の製造および販売を行っています。種子と牧草というスペシャリティを持った肥料メーカーとして、未利用資源を活用した原料開発や高付加価値商品の提供を通じて社会に貢献しています。
収益は製品の販売による対価です。運営は主に連結子会社の朝日アグリアが行っており、有機質肥料への経営資源シフトや生産効率化によるコストダウンを推進しています。
■(3) その他
報告セグメントに含まれない事業として、砕石・砕砂の製造販売などを行っています。運営は、連結子会社の株式会社上武などが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は2022年3月期以降2,000億円台で推移していますが、当期は販売数量の減少等により減収となりました。利益面では、2022年3月期に損失を計上した後、翌期に黒字回復し、高い利益水準を維持していますが、当期はコスト増等の影響で減益となりました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,528億円 | 2,042億円 | 2,354億円 | 2,229億円 | 2,052億円 |
| 経常利益 | 75億円 | -13億円 | 159億円 | 203億円 | 154億円 |
| 利益率(%) | 4.9% | -0.6% | 6.7% | 9.1% | 7.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 39億円 | 1億円 | 65億円 | 97億円 | 69億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は減少しましたが、売上原価も減少しており、一定の売上総利益を確保しています。販売費及び一般管理費は若干増加しました。営業利益率は低下しましたが、依然として安定した収益性を維持しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,229億円 | 2,052億円 |
| 売上総利益 | 394億円 | 362億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.7% | 17.7% |
| 営業利益 | 179億円 | 137億円 |
| 営業利益率(%) | 8.0% | 6.7% |
販売費及び一般管理費のうち、販売品運賃及び荷役等諸掛が99億円(構成比44%)、給料手当及び賞与が36億円(同16%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の鉄鋼事業は、販売価格の維持に努めたものの数量減少により減収となり、コスト増の影響で減益となりました。農業資材事業も減収となり、経常損失を計上しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 鉄鋼事業 | 2,066億円 | 1,885億円 | 203億円 | 153億円 | 8.1% |
| 農業資材事業 | 123億円 | 122億円 | -4億円 | -2億円 | -1.8% |
| その他 | 40億円 | 45億円 | 4億円 | 5億円 | 10.3% |
| 調整額 | -3億円 | -3億円 | -0億円 | -1億円 | - |
| 連結(合計) | 2,229億円 | 2,052億円 | 203億円 | 154億円 | 7.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社グループは、運転資金を短期借入金で、設備投資資金を長期借入や社債発行で調達する方針です。
営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権や仕入債務の減少等により、大幅な収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得による支出により、収入を上回る支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済等により、支出となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 178億円 | 191億円 |
| 投資CF | -49億円 | -57億円 |
| 財務CF | -105億円 | -94億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、『持てる資源を最大限に活かし製造実力の向上で、ゆるぎないコスト競争力の確立、新たな商品価値の創造 資源循環の担い手としての企業価値の一層の向上を目指す』をスローガンに掲げています。鉄鋼製品の安定供給による社会貢献と、電炉メーカーとしてのリサイクル機能の発揮を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、売上高利益率・資産効率・資本効率を重視し、継続的な企業成長に努める姿勢を持っています。また、鉄鋼事業では良質な製品の安定供給と省資源・省エネルギーへの貢献、農業資材事業ではスペシャリティを持ったメーカーとしての発展を重視する価値観を共有しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、「合同製鐵グループ中期ビジョン2025」を策定し、2025年度を最終年度とする新たな経営目標を設定しています。
* 売上高:2,250億円
* 経常利益:160億円
* ROS(売上高経常利益率):7.0%
* ROE:8%以上
* D/Eレシオ:0.5以下
■(4) 成長戦略と重点施策
グループ各社との連携を強化し、製造・販売におけるシナジー効果を追求しています。特に朝日工業、三星金属工業、株式会社トーカイとの一体運営を進め、最適生産体制の構築や高機能商品の拡販に努めます。また、省エネルギー投資やカーボンニュートラルへの対応、DX推進、人的資本への投資にも注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
多様な人材の採用・起用と、それぞれの能力を最大限活かせる職場環境の整備を進めています。女性や外国人、キャリア採用者など多様な人材から新たな着想を取り込み、持続的成長に繋げる方針です。また、社員の安全・健康を重要課題とし、管理体制の構築やルール遵守に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.6歳 | 18.0年 | 7,624,367円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 68.4% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 76.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 74.5% |
| 男女賃金差異(非正規) | 109.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員の在籍割合(7.3%)、外国人社員の在籍割合(0.3%)、管理職に占める中途採用者割合(16.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場環境等について
国内建設需要の減少に伴う販売競争の激化や、主原料である鉄スクラップ価格の短期的かつ大幅な変動、海外市場からの輸出増加による需給バランスの悪化などが、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、需要見合いの生産や輸出への注力、最適な在庫水準の維持などで対応しています。
■(2) 電力供給及び主要資材の調達
電力価格の引き上げや、電極・耐火物・合金鉄などの主要資材の需給逼迫・価格上昇が業績に影響を与える可能性があります。同社は省エネルギー投資や再生可能エネルギーの活用を進めるとともに、複数の調達先確保や適切な在庫維持に努めています。
■(3) 特有の法的規制・取引慣行等
環境規制など、将来における法律、規則、政策等の変更や強化・導入により事業活動が制約を受け、業績に影響を及ぼす可能性があります。業界団体を通じた情報収集や、グループ全体でのリスク管理体制の強化により、影響を最小限に留めるよう努めています。
■(4) 人材確保・育成
少子化や労働者人口の減少による人手不足の中で、有能な人材の確保や育成が計画通りに進まない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。女性や外国人、中途採用者など多様な人材の活用、働きやすい職場づくり、省力化投資などを進めています。



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