楽天グループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

楽天グループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

楽天グループは東京証券取引所プライム市場に上場し、インターネットサービス、フィンテック、モバイルを主軸に展開する企業です。直近の業績では、各事業の成長により売上収益は過去最高を更新して増収となったものの、モバイル事業における継続的な設備投資等の影響で親会社の所有者に帰属する当期利益は赤字が続いています。


※本記事は、楽天グループの有価証券報告書(第29期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はIFRSです。

1. 楽天グループってどんな会社?


インターネットサービス、フィンテック、モバイルの3本柱で独自の経済圏を構築するグローバルイノベーション企業です。

(1) 会社概要


1997年に設立され、同年5月にインターネット・ショッピングモール「楽天市場」のサービスを開始しました。2000年に店頭登録を行い、2004年にはクレジットカード事業を子会社化して金融領域へ本格参入しました。2019年に携帯キャリアサービスを開始し、2021年に現在の楽天グループへと社名変更しています。

現在の従業員数は連結で29,419名、単体で9,989名体制となっています。大株主については、筆頭株主が資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は資産管理会社とみられる合同会社クリムゾングループ、第3位には創業者の三木谷浩史氏が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.84%
合同会社クリムゾングループ 10.43%
三木谷浩史 8.14%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役会長兼社長最高執行役員は三木谷浩史氏が務めています。社外取締役比率は38.5%です。

氏名 役職 主な経歴
三木谷浩史 代表取締役会長兼社長最高執行役員 日本興業銀行等を経てクリムゾングループを設立。1997年に同社を設立し代表取締役社長に就任。2001年より現職。
百野研太郎 代表取締役副社長執行役員 トヨタ自動車を経て2007年に同社執行役員に就任。常務執行役員CSO、COO等を経て2022年より現職。
廣瀬研二 取締役副社長執行役員 三和銀行を経て2005年に楽天証券に入社。同社金融事業室長、常務執行役員CCO等を経て2023年より現職。
河野奈保 取締役副社長執行役員 2003年に同社入社。執行役員、常務執行役員CMO、楽天モバイル常務執行役員CMO等を経て2026年より現職。


社外取締役は、安藤隆春氏(元警察庁長官)、Sarah J. M. Whitley氏(Baillie Gifford & Co. Partner)、Tsedal Neeley氏(ハーバード大学教授)、Charles B. Baxter氏(元eTranslate, Inc. CEO)、羽深成樹氏(元内閣府審議官)です。

2. 事業内容


同社グループは、「インターネットサービス」、「フィンテック」、「モバイル」の各事業を展開しています。

(1) インターネットサービス


インターネット・ショッピングモール「楽天市場」や総合旅行サイト「楽天トラベル」などの各種ECサイト、デジタルコンテンツの配信、メッセージングアプリなどのサービスを提供しています。国内の消費者からグローバルなユーザーまで幅広い顧客基盤を有しています。

主な収益源は、出店者や旅行関連事業者から受け取るシステム利用料や販売手数料、広告掲載料などです。直販型のサービスでは商品販売の代金が収益となります。事業の運営は、主に同社およびRakuten Kobo Inc.、Viber Media S.a.r.l.などの子会社が行っています。

(2) フィンテック


クレジットカード決済、インターネット銀行、オンライン証券、生命保険・損害保険、スマートフォン決済アプリなどの総合的な金融サービスを提供しています。個人および法人の顧客に対し、キャッシュレス決済や資産形成をサポートしています。

主な収益源は、加盟店からの決済手数料、カード利用者からの分割・リボ払い手数料、銀行の資金運用益、証券取引の委託手数料などです。事業の運営は、楽天カード、楽天銀行、楽天証券、楽天ペイメントなどの子会社が行っています。

(3) モバイル


携帯キャリアとしての移動通信サービス、光ブロードバンド回線、電力供給サービスのほか、独自開発の仮想化モバイルネットワーク技術を活用した通信プラットフォームの提供をグローバルに行っています。

主な収益源は、契約者からの通信データ利用料やオプション料金、法人顧客からの通信インフラプラットフォームの導入・保守運用に関するシステム利用料などです。事業の運営は、主に楽天モバイルやRakuten Symphony Singapore Pte. Ltd.が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、各事業の成長を背景に売上収益は毎期順調に拡大を続け、直近では過去最高を更新しています。一方で利益面については、モバイル事業のエリア拡大に伴う基地局整備等の先行投資負担が重く、税引前利益および親会社の所有者に帰属する当期利益ともに赤字が続く厳しい状況となっています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 16,818億円 19,209億円 20,713億円 22,792億円 24,966億円
税引前利益 -2,126億円 -4,156億円 -2,177億円 163億円 -296億円
利益率(%) -12.6% -21.6% -10.5% 0.7% -1.2%
当期利益(親会社所有者帰属) -1,338億円 -3,772億円 -3,395億円 -1,624億円 -1,779億円

(2) 損益計算書


売上収益は前期比で増加し、それに伴い売上総利益も拡大しています。しかしながら、営業利益は前期に計上された一時的な評価益の剥落や、一部事業における減損損失の計上などの影響により、前期比で大幅な減益となっています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 22,792億円 24,966億円
売上総利益 6,453億円 7,012億円
売上総利益率(%) 28.3% 28.1%
営業利益 530億円 144億円
営業利益率(%) 2.3% 0.6%


販売費及び一般管理費のうち、委託費及び外注費が1,991億円(構成比32%)、ポイント費用が1,131億円(同18%)、人件費が1,025億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


インターネットサービスはECの成長等により増収増益となりました。フィンテックはカードや銀行などの主要サービスが好調で増収増益を牽引しています。モバイルは契約回線数の増加により増収となり、コストの最適化が進んだことで赤字幅が縮小しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
インターネットサービス 12,821億円 13,697億円 851億円 889億円 6.5%
フィンテック 8,204億円 9,759億円 1,534億円 1,999億円 20.5%
モバイル 4,407億円 4,828億円 -2,089億円 -1,618億円 -33.5%
連結(合計) 22,792億円 24,966億円 70億円 1,063億円 4.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う積極型の状態です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 11,909億円 4,241億円
投資CF -9,217億円 -7,798億円
財務CF 7,575億円 141億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-18.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は32.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


イノベーションを通じて、人々と社会に力を与えること(エンパワーメント)を経営の基本理念としています。ユーザーおよび取引先企業へ満足度の高いサービスを提供するとともに、多くの人々の成長を後押しすることで、社会を変革し豊かにしていくことに寄与し、グローバルイノベーションカンパニーであり続けることを目指しています。

(2) 企業文化


全ての従業員が理解し実行する価値観・行動指針として「楽天主義」を掲げています。従業員一人ひとりの違いに配慮し、誰もが能力を最大限に発揮できる環境づくりに努めるとともに、従業員が挑戦を通じて成長できる文化を醸成しています。社内公用語を英語とし、世界中の優秀な人材の採用・登用を進めています。

(3) 経営計画・目標


グループ全体の目標として、「VISION 2030」という経営ビジョンを掲げています。具体的な経営指標としては、全社および各事業の売上収益、Non-GAAP営業利益、流通総額、会員数、クロスユース率などのKPIを重視し、成長性や収益性を向上させることを目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社が保有するメンバーシップ、データ、ブランドを核とする「楽天エコシステム」において、国内外の会員が複数のサービスを回遊的・継続的に利用できる環境を整備し、会員一人当たりの生涯価値の最大化と顧客獲得コストの最小化を図ります。また、AIなどの先進的技術を活用したサービスの開発・展開や、モバイル事業の高品質なネットワーク環境の提供と損益改善に注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「勝てる人材、勝てるチームを作る」という人事の基本目標を掲げ、「採用」「育成」「定着」の3つの柱を軸とした組織基盤の構築を進めています。グローバルで多様な人材の確保、体系的な人材育成の強化、公正な評価制度や柔軟なワークスタイルを通じたエンゲージメント向上に取り組み、継続的なイノベーション創出力の強化につなげています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 36.0歳 6.3年 8,508,495円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 33.5%
男性育児休業取得率 73.3%
男女賃金差異(全労働者) 78.0%
男女賃金差異(正規労働者) 81.6%
男女賃金差異(非正規労働者) 58.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメント度(80pt)、コミュニケーション充実度(96pt)、ウェルビーイング度(55pt)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) マクロ経済環境に関するリスク


国内外において多岐にわたる事業展開をしており、業績は国内の景気動向だけでなく、海外諸国の経済動向、社会情勢、地政学的リスクなどに影響を受けます。規制動向の変化等により、事業活動に支障が生じる可能性があります。

(2) 情報セキュリティに関するリスク


ユーザーの個人情報や情報システムからなる資産を保有しているため、外部からのサイバー攻撃や内部の不備による情報漏洩が発生した場合、同社の社会的信用が毀損され、損害賠償や行政処分を受ける可能性があります。

(3) AIの利用に関するリスク


サービス全般においてAIの利用を積極的に促進していることに伴い、個人情報漏洩、知的財産権侵害、誤情報の流布などのリスクが増大しています。AI倫理憲章の策定やガバナンス体制の構築によりリスク軽減に努めています。

(4) サプライチェーンに関するリスク


製品の調達・供給において、自然災害や地政学的リスク等により生産・物流が停滞した場合、売上機会の損失につながる可能性があります。業務委託先での法令違反等が発生した場合にも、同社の企業イメージに悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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