※本記事は、日本鋳造株式会社 の有価証券報告書(第103期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本鋳造ってどんな会社?
JFEスチールグループに属し、鋳鋼・鋳鉄品の製造販売を行う素形材事業と、橋梁用部材などを手掛けるエンジニアリング事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1920年に浅野総一郎により創立され、1952年に現在の商号となりました。1961年に東京証券取引所市場第二部に上場し、長年にわたり鋳造品の製造販売を行っています。2012年には日立建機と資本業務提携を行い、関係を強化しました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在はスタンダード市場に上場しています。
連結従業員数は294名、単体では290名です。筆頭株主はJFEスチールで、第2位は資本業務提携先である日立建機です。JFEスチールは同社の議決権の36.17%を所有しており、重要な販売先かつ原材料の仕入先でもあります。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| JFEスチール株式会社 | 36.17% |
| 日立建機株式会社 | 14.91% |
| 都丸卓治 | 0.95% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役社長は佐竹義宏氏が務めています。取締役10名のうち社外取締役は4名で、社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 佐竹義宏 | 代表取締役社長 | 川崎製鉄入社。JFEスチール監査役を経て、2025年6月より現職。 |
| 田路秀男 | 取締役 | 住友ゴム工業入社。日本化成常務取締役を経て、2021年6月より現職。 |
| 橋本光行 | 取締役 | 日本鋼管入社。JFEエンジニアリング社会インフラ本部PPP推進部長を経て、2022年6月より現職。 |
| 古野好克 | 取締役企画管理部長 | 日本鋼管入社。同社企画管理部長を経て、2023年6月より現職。 |
| 池田憲英 | 取締役 | 日本鋼管入社。JFEプラリソース監査役を経て、2023年6月より現職。 |
| 津崎健司 | 取締役 | 日本鋼管入社。エヌケーケーシームレス鋼管国内営業部長を経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、南二三吉(大阪大学名誉教授)、小松和則(日立建機CPO)、弥富洋子(新潟大学大学院特任教授)、村瀬幸子(九段坂上法律事務所弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「鋳造関連事業」の単一セグメントですが、製品・サービスの内容により「素形材」「エンジニアリング」「その他」に区分して事業を展開しています。
■(1) 素形材事業
鋳鋼品および鋳鉄品の製造・販売を行っています。半導体製造装置向けや鉱山機械向け、エネルギー関連などの産業機械部品を主な製品としており、幅広い産業分野に素材を提供しています。
収益は、顧客への製品販売による対価を得ています。運営は主に日本鋳造が行っています。
■(2) エンジニアリング事業
鋼構造品や景観製品の製造・販売を行っています。橋梁用支承や建築用柱脚、モノレール軌道向け支承などが主力製品で、インフラ整備や建築分野に貢献しています。
収益は、建設会社や官公庁などからの製品受注および販売により得ています。運営は日本鋳造および子会社のダットが行っています。
■(3) その他事業
上記に含まれない加工品などを取り扱っています。
収益は、製品の加工や販売から得ています。運営は日本鋳造が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は140億円から160億円の範囲で推移していましたが、直近では減収となりました。利益面では、経常利益率が前期の約8%から2.7%へ低下するなど、収益性が悪化しています。当期純利益も前期比で大幅な減益となりました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 119億円 | 121億円 | 148億円 | 160億円 | 143億円 |
| 経常利益 | 6億円 | 8億円 | 7億円 | 13億円 | 4億円 |
| 利益率(%) | 4.9% | 6.7% | 4.7% | 8.0% | 2.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4億円 | 7億円 | 5億円 | 6億円 | 2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の減少に加え、売上総利益率が17.1%から14.2%へ低下しました。これにより、営業利益は前期の13億円から4億円へと大きく減少しています。営業利益率も8.0%から2.9%へ低下しており、コスト負担の影響が利益を圧迫している状況です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 160億円 | 143億円 |
| 売上総利益 | 27億円 | 20億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.1% | 14.2% |
| 営業利益 | 13億円 | 4億円 |
| 営業利益率(%) | 8.0% | 2.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び諸手当が6億円(構成比37%)、賞与引当金繰入額が1億円(同8%)を占めています。売上原価は売上高の86%を占めており、前年より原価率が上昇しています。
■(3) セグメント収益
素形材事業は、半導体製造装置向けが上期に低調だったことや鉱山機械向けの大幅な減少により、売上が減少しました。エンジニアリング事業は、モノレール軌道向け支承などが堅調でしたが、全体としては微減となりました。その他事業も減収となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 素形材 | 86億円 | 72億円 |
| エンジニアリング | 72億円 | 69億円 |
| その他 | 3億円 | 2億円 |
| 連結(合計) | 160億円 | 143億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、金融機関からの借り入れを主たる資金調達方法としています。
営業活動では、棚卸資産の減少や売上債権の回収により、事業活動からプラスのキャッシュ・フローを生み出しました。一方、投資活動では、老朽更新や設備投資を行ったため、多額の支出となりました。財務活動では、借入と返済、配当金の支払いなどにより、支出超過となりました。これらの結果、現金及び現金同等物の残高は減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 18億円 | 7億円 |
| 投資CF | -7億円 | -11億円 |
| 財務CF | -5億円 | -1億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、自ら培った技術により、より高い価値・サービスを社会に提供し、貢献していくことを経営理念としています。また、それを実行するために社員全員がプライドを持って努力し続けていくことを掲げています。
■(2) 企業文化
同社は、経営理念を実現するための行動規範として5つの項目を定めています。「うそをつかない」「手を抜かない」「まわりの人に配慮し思いやりの気持ちを持とう」「お互い協力しあって仕事しよう」「奉仕と感謝」という原則を共有し、日々の活動の拠り所としています。誠実さと協調性を重んじる文化です。
■(3) 経営計画・目標
同社は経営指標として、以下の数値を目標として掲げています。
* ROS(売上高経常利益率):10%以上
* ROE(自己資本利益率):10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
不透明な経済環境に対応し、持続的発展を目指すため、素形材事業とエンジニアリング事業それぞれで重点施策を推進しています。また、資本効率の向上や子会社の吸収合併による経営効率化にも取り組んでいます。
* 素形材事業:半導体製造装置・再生可能エネルギー分野への参入、ロボットやAI活用によるDX化推進、生産性改善。
* エンジニアリング事業:各種支承の拡販、耐震補強構造などのソリューションビジネス展開。
* 全社:基幹システムの刷新による業務効率化、SDGsへの取り組み。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、多様な人材の確保と育成が中長期的な企業価値向上につながると考え、女性・外国人・中途採用者の適性ある人材の発掘と積極的な登用を進めています。また、技術力の向上と質の高い人材育成を全社の重要経営課題と位置づけ、階層別研修の充実などに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.1歳 | 13.8年 | 5,956,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は、開示義務の対象外(常時雇用する労働者が300人以下)であるため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性役員比率(23%)、女性社員育児休業取得率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 情勢不安・需給環境の変化
世界的な情勢不安や労務費高騰などにより、原材料価格が高騰し、販売価格への転嫁が困難になるリスクがあります。また、主要顧客の経営環境の変化により、販売量の減少や価格低下が生じる可能性があります。これに対し、コスト削減や新商品開発による競争力強化で対応します。
■(2) 為替レートの変動
海外OEM品の調達価格上昇などのリスクがあります。外貨入金を支払いに充当することや円安への対応策を通じて、為替変動の影響を軽減する方針です。
■(3) カントリーリスク
米国の関税政策や米中貿易摩擦などによる貿易の不安定化が懸念されます。顧客への国内調達提案や国内生産体制の準備、調達先の調査などを通じてリスク低減を図ります。



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