※本記事は、日本鋳造の有価証券報告書(第104期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本鋳造ってどんな会社?
日本鋳造は、独自の鋳造技術を活かし、素形材やエンジニアリング製品を提供する老舗メーカーです。
■(1) 会社概要
日本鋳造は1920年に横浜市で創立され、鋳造品の製造販売を開始した老舗企業です。1961年に東京証券取引所へ上場を果たしました。長年培った技術を背景に、2001年には橋梁用落橋防止装置分野へ本格参入しています。近年では、2025年に子会社であったダットを吸収合併し、経営資源の集約と効率化を進めています。
現在の従業員数は単体で285名です。筆頭株主は事業会社のJFEスチールであり、第2位は同じく事業会社の日立建機となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| JFEスチール | 36.17% |
| 日立建機 | 14.91% |
| 垂水邦明 | 1.39% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.0%です。代表取締役社長は佐竹義宏氏が務めており、社外取締役の比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 佐竹義宏 | 代表取締役社長 | 1987年4月川崎製鉄入社。JFEスチールにて各部長や監査役を歴任後、2024年4月に同社へ顧問として入社。同年6月代表取締役副社長を経て、2025年6月より現職。 |
| 池田憲英 | 取締役 | 1990年4月日本鋼管入社。JFEスチール等を経て2016年4月同社へ出向し経理部長。2020年4月移籍し、2023年6月より現職。 |
| 津崎健司 | 取締役 | 1985年4月日本鋼管入社。エヌケーケーシームレス鋼管の各部長を経て2023年3月同社入社。同年4月生産統括部長に就き、2025年6月より現職。 |
| 須藤聡 | 取締役エンジニアリング企画部長 | 1991年4月日本鋼管入社。JFEエンジニアリングの各部長を経て2024年4月同社へ出向。2025年4月移籍し、2026年6月より現職。 |
| 和田武司 | 取締役 | 1993年4月川崎製鉄入社。JFEスチールの各部長を歴任後、2026年4月同社へ顧問として入社し、同年6月より現職。 |
| 西村望 | 取締役企画部長 | 1992年4月川崎製鉄入社。JFEスチールの各部長を歴任後、2026年4月同社へ顧問として入社し、同年6月より現職。 |
社外取締役は、南二三吉(大阪大学名誉教授)、弥富洋子(新潟大学特任教授)、村瀬幸子(九段坂上法律事務所弁護士)、室賀弘行(日立建機統括部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「鋳造関連事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■(1) 素形材
鋳鋼品や鋳鉄品などの素形材製品を製造・販売しています。主な顧客は半導体製造装置メーカーや産業機械メーカーなどであり、AI関連の需要増加等に対応した高機能な製品を提供しています。
顧客である各産業のメーカーに対して、鋳鋼・鋳鉄の部品や素材を納入し、製品の販売代金を対価として受け取ります。開発から製造・販売までの事業運営は日本鋳造が主体となって行っています。
■(2) エンジニアリング
鋼構造品や景観製品を製造・販売しています。主な製品として、モノレール軌道向けや高速道路向けの橋梁用支承、伸縮装置、および物流倉庫向けの建築物用柱脚などを扱っています。
土木・建築分野の顧客向けに、耐震補強などの機能を持つエンジニアリング製品を納入し、その販売代金を収益源としています。製品の開発・製造から販売に至るまでの運営は日本鋳造が行っています。
■(3) その他
素形材やエンジニアリング以外の加工品などの製造・販売を行っています。顧客の多様なニーズに応えるため、周辺領域における製品やサービスを提供しています。
顧客に対する加工品の提供や付随するサービスの提供により対価を得ています。これらの事業運営も日本鋳造が主体となって担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
過去5期間の業績を見ると、売上高は120億円台から160億円規模まで拡大したのち、足元では減少傾向にあります。経常利益も大型案件の有無や事業環境の変化により変動がありますが、安定して黒字を維持しています。直近では合理化効果などにより、利益水準の改善が見受けられます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 121億円 | 148億円 | 160億円 | 143億円 | - |
| 経常利益 | 8億円 | 7億円 | 13億円 | 4億円 | - |
| 利益率(%) | 6.7% | 4.7% | 8.0% | 2.7% | - |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | 5億円 | 6億円 | 2億円 | 2億円 |
売上総利益は直近2期間で横ばい水準を維持していますが、営業利益は増加傾向にあります。これは合理化策の推進や販売価格の改定が着実に進捗したことで、利益体質の改善が図られた結果と言えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 143億円 | - |
| 売上総利益 | 19億円 | 19億円 |
| 売上総利益率(%) | 12.9% | - |
| 営業利益 | 3億円 | 4億円 |
| 営業利益率(%) | 2.3% | - |
販売費及び一般管理費のうち、雑費が5億円(構成比32%)、給料及び手当が4億円(同30%)を占めています。売上原価の当期総製造費用の内訳としては、経費が70億円(同70%)、労務費が16億円(同16%)となっています。
同社は鋳造関連事業の単一セグメントですが、主に素形材とエンジニアリングの領域で事業を展開しています。足元の売上構成を見ると、素形材が全体の過半を占め、次いでエンジニアリングが安定した売上基盤を形成しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 素形材 | - | 68億円 |
| エンジニアリング | - | 53億円 |
| その他 | - | 2億円 |
| 連結(合計) | - | 123億円 |
営業活動で得たキャッシュを投資と借入返済に充てる健全型のキャッシュ・フローが続いています。安定した本業の利益を元手に、将来に向けた投資と財務体質の強化をバランス良く進めています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 7億円 | 21億円 |
| 投資CF | -11億円 | -6億円 |
| 財務CF | -1億円 | -4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.0%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.2%であり、いずれも市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「自ら培った技術により、より高い価値・サービスを社会に提供し、貢献していきます。また、それを実行するために社員全員がプライドを持って努力し続けていきます。」を経営理念として掲げています。技術力を基盤に社会への価値提供と貢献を追求するとともに、全社員が誇りを持って業務に取り組むことを企業の存在意義としています。
■(2) 企業文化
同社は行動規範として、「うそをつかない」「手を抜かない」「まわりの人に配慮し思いやりの気持ちを持とう」「お互い協力しあって仕事しよう」「奉仕と感謝」を定めています。また社長方針には「安全」「一体感(One Team)」「ボトムアップ」「Bad News First」等を掲げ、誠実さと協調性を重んじる風通しの良い組織文化を構築しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、持続的な成長と収益性の向上を目指し、中長期的な経営目標として以下の数値を掲げています。また、サステナビリティに関する目標として、2030年度におけるCO2削減(2013年度比マイナス70%)を設定し、グリーン社会の実現に向けた取り組みも推進しています。
・ROS(売上高経常利益率):10%以上
・ROE(自己資本利益率):10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は事業の持続的発展に向けて、素形材事業では半導体製造装置向け鋳鋼品の大幅増産への対応や、新設した大型金属3Dプリンターを活用した生産性改善・品質管理の強化を推進します。エンジニアリング事業では、新設から保全分野への市場変化に対応し、収益性の高いオンリーワン商品の拡充と新規顧客の開拓を進めています。あわせて、SDGsへの取り組みや資本効率の向上にも注力する方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、多様な人材の確保と育成が中長期的な企業価値向上に繋がるとの考えから、女性、外国人、中途採用者などの適性ある人材の発掘と積極的な登用に努めています。また、技術力の向上や質の高い人材育成を全社の重要経営課題と位置づけ、マネジメント研修をはじめとする階層別研修の充実やリスキリング教育の実施、働きやすい職場環境の整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.7歳 | 13.9年 | 5,850,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.8% |
| 男性育児休業取得率 | 71.4% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 75.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 74.9% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 47.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性役員比率(23.0%)、女性社員の育児休業取得率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 需給環境の急激な変化と調達コストの高騰
中東等の情勢悪化に伴う原料・燃料・資材等の調達難や価格高騰が生じ、それを販売価格に転嫁できない場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。また、民間設備投資や公共関連事業の動向が主要顧客の経営環境を悪化させ、販売量の減少や販売価格の低下を招くリスクがあります。
■(2) カントリーリスクの顕在化
米国の関税政策に伴う貿易の不安定化や、中国との関係悪化による貿易制限、関税の上乗せ、輸出停止等が発生するリスクを抱えています。同社は懸念のある顧客への国内調達への転換提案や、日本国内生産への体制準備、調達先の分散化を図ることで影響の最小化に努めています。
■(3) 品質問題の発生による信頼性の低下
製品において重大な品質クレームや納期遅延などが発生した場合、顧客からの信頼が大きく低下し、市場シェアの大幅な縮小を招く可能性があります。これに対応するため、試験機更新によるデータ改ざんの防止や、重要資材の管理強化、不良品撲滅に向けた品質保証活動を徹底しています。
■(4) サイバーテロ等の情報管理リスク
コンピューターウイルスやサイバー攻撃などにより、同社が保有する重要情報や機密情報が漏えい、あるいは消失するリスクが存在します。システムの脆弱性の再点検やセキュリティ体制の強化、従業員向けの標的型メール訓練を実施し、情報漏えいの未然防止とシステムの安全性確保に取り組んでいます。



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