※本記事は、日本冶金工業株式会社 の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
日本冶金工業は、ステンレス鋼板及びその加工品事業を主軸とする企業グループです。ステンレス鋼、耐熱鋼、高ニッケル合金の板・帯、鍛鋼品、ステンレス建材、ステンレス鋼管、ステンレス加工品などの製造・加工・販売をグループ各社とともに展開しています。
単体従業員数は1,166名、連結従業員数は2,093名です。セグメントはステンレス鋼板及びその加工品事業の1つです。
主な国内グループ会社は、(連結子会社)ナストーア、ナス鋼帯、ナス物産、ナスエンジニアリング、ナステックなどです。
日本冶金工業は2025年5月15日にインド現地法人を設立し、2026年2月8日にはシンガポール現地法人の清算を結了しています。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
日本冶金工業は、ニッケル高合金・ステンレス市場のトップサプライヤーとして、新たな領域への挑戦と進化を続ける「レジリエントカンパニー」を目指しています。従業員の長期的なキャリア形成と能力開発を重視し、安定した環境で専門性を高めながら働くことができる会社です。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社は、従業員の定着を重視し、長期的なキャリア形成を支援する環境が整っている傾向があります。平均勤続年数や平均年齢から、従業員が長く働き続けることができる職場であることがうかがえます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 7,798,354円 |
| 平均勤続年数 | 20.6年 |
| 平均年齢 | 44.1歳 |
| 単体従業員数 | 1,166人 |
| 連結従業員数 | 2,093人 |
| 単体のグループ内比率 | 55.7% |
同社及び連結子会社は、確定給付型(給与や勤続年数に応じて給付額が決まる)と確定拠出型(会社が拠出した資金を従業員が運用する)の退職給付制度を採用しています。これらの制度は、国内及び海外の連結子会社を含むグループ全体に適用されています。
退職一時金制度があり、退職給付として給与と勤務期間、ポイント等に基づいた一時金が支給されます。一部の連結子会社では中小企業退職金共済制度を、海外連結子会社では政府の定める退職金基金制度に加入しています。
なお、確定給付制度における退職給付債務は77.7億円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
日本冶金工業グループは、「ニッケル高合金・ステンレス市場のトップサプライヤーとして、新領域へ挑戦し進化を続けるレジリエントカンパニー」を目指す姿として掲げ、人材戦略を推進しています。市場開拓・技術開発の中核となる人材と、生産力の基盤となる人材の確保を重要課題と位置付けています。
人材育成方針に基づき、多様な人材の採用、経験と知見を育むためのキャリア開発と教育研修に取り組んでいます。具体的には、職場OJTや階層別教育、定期的な研修、自己啓発支援、海外派遣や国内大学等で学ぶ機会を提供しています。
また、社内環境整備方針に基づき、従業員全員が安全かつ安心して健康的に働くことができる環境を整備しています。働き方改革の推進や職場環境の改善、安全活動の推進に加えて、OSHMS(労働安全衛生マネジメントシステム)による安全衛生レベルの向上や、自動化・省力化による職場環境の改善を進めています。
従業員の給与は、長期かつ安定的な就労と能力開発への意欲の維持向上を目的とし、評価制度に基づいて職域・職責・成果を考慮して決定されます。給与水準と賞与額は、同社の収益状況とその見通し、経済環境の動向を前提に、労使間の定期的なコミュニケーションを通じて決定されています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。当社は同じ職務系統及び職務において男女間賃金格差はありません。一方、当社の製造所は24時間体制の操業のため生産技術職においては4班3交替の勤務を行っており、これまでは生産技術職は深夜勤務等を伴うことから主として男性が担ってきたため、各種手当等の支給があることで一定の男女間賃金格差がある状況となっています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 0.6% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 68.8% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 70.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規労働者) | 74.8% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規労働者) | 59.5% |
任意開示指標
人的資本に関する指標は、提出会社のデータを示しています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 総合職社員の女性採用比率 | 8% |
| 重大な労働災害の発生件数 | 0件 |
| 有給休暇取得率 | 82% |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
日本冶金工業は、ステンレス鋼板及びその加工品事業を主軸とする企業グループです。特殊鋼の製造・加工・販売を通じて、多様な産業のニーズに応えています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、ステンレス鋼板及びその加工品事業の単一セグメントで事業を展開しています。ステンレス鋼、耐熱鋼、高ニッケル合金の板や帯、鍛鋼品、ステンレス建材、ステンレス鋼管、ステンレス加工品などを製造・加工・販売しています。
収益は、これらの製品の製造・加工・販売から得ています。特に、造船向けや半導体製造装置向けの需要が堅調に推移する一方で、建築資材向けは厳しい状況が続いています。高機能材分野では、AI投資拡大を背景とした半導体生産関連向けの需要増が見られますが、中国経済の停滞などの影響も受けています。
地域別の売上高を見ると、日本が最も大きく、次いでその他地域、中国が続いています。海外市場も同社グループの収益に貢献しています。
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの過去5期間の業績を見ると、売上高は変動しながらも直近2期は減少傾向にあります。経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益も、直近2期は減少しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,489億円 | 1,993億円 | 1,803億円 | 1,721億円 | 1,509億円 |
| 経常利益 | 128億円 | 277億円 | 191億円 | 162億円 | 96.6億円 |
| 経常利益率 | 8.6% | 13.9% | 10.6% | 9.4% | 6.4% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 84.7億円 | 197億円 | 136億円 | 116億円 | 72.2億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 561.25 | 1,316.79 | 933.64 | 819.46 | 519.86 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたりの売上高は、前期から減少しています。従業員1人あたりの営業利益も同様に前期から減少しており、生産性指標は前期に比べて低下している状況です。
| 指標 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 82.1百万円 | 72.1百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 8.1百万円 | 5.2百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
日本冶金工業グループの財務基盤は安定しており、事業活動で得た資金を適切に活用している状況がうかがえます。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの自己資本比率はプライム市場の製造業平均と比較して同水準にあり、安定した財務基盤を維持しています。ROE(自己資本利益率)は前期から減少しているものの、手元資金である現金及び預金は増加傾向にあります。これらの状況は、同社グループが安定した経営を継続し、従業員の雇用や給与の安定性にも寄与する基盤があることを示しています。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 966億円 | 1,013億円 |
| 自己資本比率 | 44.3% | 46.1% |
| ROE(自己資本利益率) | 12.5% | 7.3% |
| 現金及び預金 | 95.2億円 | 113億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループのキャッシュフローは、本業の稼ぎを示す営業活動によるキャッシュフローがプラスであり、投資活動によるキャッシュフローは支出超過となっています。その結果、自由に使える資金を示すフリーキャッシュフローはプラスで推移しています。これは、本業で安定的に資金を生み出しつつ、将来に向けた投資も行い、さらに余剰資金も確保できている状態を示しています。このような資金の流れは、同社グループが持続的な成長を目指しつつ、財務的な安定性も保っていることを表しており、入社後の雇用や給与の安定性にもつながる経営状況であると言えます。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 110.4億円 | 135.5億円 |
| 投資CF | △113.9億円 | △93.8億円 |
| 財務CF | △73.9億円 | △27.3億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | △3.5億円 | 41.6億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、ステンレス特殊鋼業界における供給過剰や需要・販売価格の変動といった市場環境のリスクを認識しています。また、高機能材の売上の約6割を海外市場に依存していることから、国際的な鉄鋼貿易を巡る保護主義の台頭や地政学的リスク、為替レートの変動も事業に影響を与える可能性があります。
③ 人材・組織に関するリスク
国内の労働人口減少に伴い、同社グループが必要とする人材の確保が困難になるリスクを認識しています。これは、長期的な事業活動や組織の健全な発展を阻害する可能性を秘めています。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
日本冶金工業は、創造と効率を追求し、社会の進歩と充実に貢献することを理念とする企業です。ニッケル高合金・ステンレス市場のトップサプライヤーとして、新たな領域への挑戦と進化を続ける「レジリエントカンパニー」を目指しています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
同社グループの事業経営は、創造と効率を両輪として優れた製品を提供し、社会に進歩と充実をもたらすことを理念としています。全ての面で国際的水準において優位に立ち、企業価値を高めることで株主を始めとする皆様の期待に応えることを基本方針としています。
同社グループは「中期経営計画2026-2028」において、「ニッケル高合金・ステンレス市場のトップサプライヤーとして、新領域へ挑戦し進化を続けるレジリエントカンパニー」を目指す姿として掲げています。持続可能な社会の構築を目指し、同社グループ自らの持続可能性を高める取り組みを進めています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社グループは、法令遵守、社会ルールの尊重、社会的良識を以て行動することを重視しています。変化に対しては知力を凝らし、進取の精神で挑戦することを求めています。目標達成に向けては、万難を排し、勇気を以て遂行する姿勢を大切にしています。
また、多様と異質を尊重し、協和の心を以て総合力を発揮することを行動指針としています。従業員一人ひとりが能力を十分に発揮し、やりがいをもって業務に取り組めるよう、安全で安心して働ける社内環境の整備にも取り組んでいます。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社グループは、世界的な地政学リスクの高まりによる経済の分断や混乱を経営環境の課題として認識しています。高機能材分野での需要低迷や競争激化、国内ステンレス一般材分野での需要減少や輸入材流入にも対処すべき課題として取り組んでいます。
これらの状況を踏まえ、同社グループは「中期経営計画2026-2028」に基づき、環境変化に対応し、持続可能な経営基盤を確立することを重点テーマとしています。具体的には、カーボンニュートラルの実現に向けた環境配慮、将来を見据えた人的資本計画の遂行、DX・AI活用による業務プロセス変革とIT基盤整備を推進しています。また、安全で安定したモノづくりの実現、持続可能なパートナーシップの構築、社会環境に適合したコーポレート基盤の進化も重要課題としています。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
日本冶金工業は、2025年6月26日に監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行しました。これにより、取締役会の監督機能強化と経営意思決定の迅速化を図り、社外取締役の選任を通じて透明性・客観性の確保に努めています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
日本冶金工業の株主構成を見ると、上位には信託銀行が信託口として名を連ねています。また、同社の協力会社による持株会も大株主の一つとして存在しています。特定の事業会社や創業家が支配的な影響力を持つというよりは、幅広い機関投資家や従業員関係者によって支えられている資本構成となっています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.20% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.92% |
| 日本冶金協力会社持株会 | 4.07% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は14名(男性12名・女性2名)で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長執行役員社長は浦田成己氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 浦田 成己 | 代表取締役社長執行役員社長 | 1984年4月同社入社。海外営業部長、営業本部副本部長兼海外営業部長、執行役員、常務執行役員、取締役常務執行役員営業本部長、取締役専務執行役員営業本部長を経て、2024年6月より同社代表取締役社長執行役員社長。 |
| 小林 伸互 | 代表取締役執行役員副社長 | 1983年4月同社入社。経理部長、執行役員経理部長、常務執行役員経理部長、取締役常務執行役員、取締役専務執行役員、代表取締役専務執行役員を経て、2024年4月より同社代表取締役執行役員副社長。 |
| 豊田 浩 | 取締役専務執行役員 | 1984年4月株式会社日本興業銀行入行。みずほコーポレート銀行企業調査部長、みずほ銀行執行役員営業第六部長、日本経営システム株式会社代表取締役社長を経て、2019年6月同社常任顧問、常務執行役員、取締役常務執行役員経営企画部長を経て、2024年4月より同社取締役専務執行役員。 |
| 山田 恒 | 取締役専務執行役員 | 1985年4月同社入社。川崎製造所生産管理室長、川崎製造所副所長兼製造部長、執行役員、常務執行役員川崎製造所長、取締役常務執行役員川崎製造所長を経て、2024年4月より同社取締役専務執行役員。 |
| 秋本 朗 | 取締役常務執行役員 | 1986年4月同社入社。新潟支店長、販売企画部長、東京支店長、執行役員東京支店長、執行役員営業本部副本部長を経て、2024年6月より同社取締役常務執行役員営業本部長。 |
| 久保田 尚志 | 取締役会長 | 1978年4月同社入社。経理部長、取締役経理部長、常務取締役、取締役常務執行役員、代表取締役専務執行役員営業本部長、代表取締役執行役員副社長営業本部長、代表取締役社長執行役員社長を経て、2024年6月より同社取締役会長。 |
社外取締役は、谷謙二氏(元三菱商事RtMジャパン代表取締役社長・大紀アルミニウム工業所社外取締役)、菅泰三氏(元IHI執行役員)、江藤尚美氏(元ゼンショーホールディングス取締役・日清オイリオグループ社外取締役)、小川麻理子氏(ドリームインキュベータフェロー)、岡田啓芳氏(元東洋証券専務取締役・日本パレットレンタル財務経理部シニアスペシャリスト)、星谷哲男氏(元ING Bank N.V.在日代表・焼肉坂井ホールディングス社外取締役・ホソカワミクロン社外取締役)、若松壮一氏(元日本精線常勤監査役)です。
同社は監査等委員会設置会社であり、取締役会の監督機能強化と経営意思決定の迅速化を図っています。社外取締役が多数選任されており、経営の透明性・客観性の確保に貢献しています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
日本冶金工業の役員報酬は、基準報酬、株式報酬、および役員賞与で構成されています。社外取締役および監査等委員である取締役の報酬は、経営の独立性と客観性を重視し、基準報酬のみとなっています。株式報酬は株主との価値共有を目的とした中長期インセンティブとして譲渡制限付株式が付与され、役員賞与は短期的なインセンティブとして連結営業利益を業績指標として決定されます。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 6名 | 2.9億円 | 47.5百万円 |
| 監査役(社外除く) | 2名 | 7百万円 | 3.5百万円 |
| 社外役員 | 9名 | 58百万円 | 6.4百万円 |
なお、人数は事業年度中に報酬の支給対象となった人数であり、期中に退任した役員を含みます。また、総額には期中に退任した監査役1名分の報酬が含まれています。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



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