※本記事は、北越メタル株式会社の有価証券報告書(第110期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 北越メタルってどんな会社?
鉄鋼製品の製造加工および販売を主力とし、鉄リサイクルによる事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1942年に前身の化学工業部門を継承し北越電化工業として設立され、1949年に上場しました。1964年の3社合併を経て現在の北越メタルへ改称し、2000年に東京証券取引所第二部に上場しています。近年では2020年にコーテックス等を連結子会社化し、加工品事業の拡大を進めています。
現在の従業員数は連結で483名、単体で387名です。筆頭株主は事業会社のトピー工業で、第2位も事業会社の伊藤忠メタルズ、第3位は金融機関の第四北越銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| トピー工業 | 33.69% |
| 伊藤忠メタルズ | 8.87% |
| 第四北越銀行 | 4.81% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は加納愛仁氏が務めています。取締役における社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 加納愛仁 | 代表取締役社長 | 1989年トピー工業入社。同社スチール事業部豊橋製造所長などを歴任。2025年専務執行役員を経て同年6月より現職。 |
| 竹内征規 | 常務取締役 | 1988年トピー工業入社。同社豊橋製造所製造所長などを経て、2022年北越メタル取締役に就任。2026年4月より現職。 |
| 南波義幸 | 取締役 | 1991年同社入社。経営企画部長や営業本部長を歴任し、イノヴァス代表取締役社長に就任。2026年4月より現職。 |
社外取締役は、森田稔(伊藤忠商事非鉄・リサイクル部長)、渡邊美栄子(元スノーピーク代表取締役専務)、渡部大史(遠藤製作所代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「鉄鋼」および「その他」事業を展開しています。
■鉄鋼事業
棒鋼、線材、形鋼などの土木・建築向け鉄鋼素材から、ロックボルトやターンバックルなどの加工製品までを一貫体制で製造・販売しています。鉄スクラップを主原料とした電気炉メーカーとして、建設現場の省人化ニーズに対応する付加価値の高い製品を市場に供給しています。
収益の柱は、建設会社や商社等への各種鉄鋼製品の販売による代金です。主に伊藤忠丸紅住商テクノスチールや阪和興業等の商社を通じて販売を行っています。事業の運営は同社を中心に行うほか、製品の加工や販売については子会社のコーテックスが担い、運搬についてはメタルトランスポートが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は2024年3月期まで増加傾向にありましたが、その後は鋼材需要の低迷により減少に転じています。利益面では主原料価格の高騰や製品販売数量の減少により採算が悪化し、2026年3月期は経常損失を計上する厳しい状況となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 274億円 | 310億円 | 318億円 | 287億円 | 236億円 |
| 経常利益 | -7億円 | 11億円 | 7億円 | 8億円 | -2億円 |
| 利益率(%) | -2.6% | 3.6% | 2.1% | 2.8% | -0.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -9億円 | 10億円 | 5億円 | 6億円 | -3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の減少に伴い、売上総利益も前年から大きく縮小しています。製造コストの上昇と販売数量の減少が響き、営業利益は赤字に転落しました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 287億円 | 236億円 |
| 売上総利益 | 38億円 | 27億円 |
| 売上総利益率(%) | 13.4% | 11.4% |
| 営業利益 | 7億円 | -3億円 |
| 営業利益率(%) | 2.3% | -1.3% |
販売費及び一般管理費のうち、運賃が17億円(構成比56%)、給料が4億円(同13%)を占めています。また、売上原価(当期製造費用)においては、原料費が131億円(構成比68%)、経費が41億円(同21%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社グループは鉄鋼事業の単一セグメントです。建設向け鋼材需要の低迷により販売数量が減少したため、減収となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 鉄鋼 | 287億円 | 236億円 |
| 連結(合計) | 287億円 | 236億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全な状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 16億円 | 17億円 |
| 投資CF | -10億円 | -10億円 |
| 財務CF | -11億円 | -6億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-1.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「事業の存続と発展を通じて、広く社会の公器としての責務を果たし、持続可能な循環社会の実現に貢献する」ことを経営理念として掲げています。電気炉メーカーとして、地域の発展とともに企業の発展があるという想いのもと、地域循環型で低炭素な社会の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
社員との絆を大切にすることこそが成長の源泉であると認識し、社員一人ひとりが最大限パフォーマンスを発揮できる環境の整備に注力しています。失敗を恐れずに挑戦し続ける社風の醸成につながる人材マネジメントを志向し、持続的な成長と発展に向けた組織づくりを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2025年度から2027年度までの3年間を対象とした「中期経営計画2027」において、将来に向けて持続的成長を実現することで総合的な企業価値を高めることを目指しています。また、2030年に向けた環境目標も設定しています。
* CO2排出量を2013年度比で46%削減(2030年目標)
■(4) 成長戦略と重点施策
素材事業においてはパートナーとの連携強化や操業改善によるコスト競争力向上に取り組みます。加工品事業では、建設現場の省人化ニーズに対応するプレキャスト工場向け製品の拡販やインフラメンテナンス需要の取り込みを進めます。また、需要変動に応じた柔軟な生産体制の構築による固定費のコントロールや、新製品・新事業の開発を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
働く人の多様性を尊重し、全ての構成員が能力を十分に発揮して活き活きと働ける環境づくりを重視しています。自ら学ぶ「自律型人材」を育成するための自己啓発支援や、1on1ミーティングを通じたキャリア形成の支援を実施しています。また、健康経営を経営の重要課題と捉え、社員の健康保持と増進に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.1歳 | 16.2年 | 5,821,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.7% |
| 男性育児休業取得率 | 33.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 85.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 88.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 43.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、1on1ミーティングの実施率(100.0%)、障がい者雇用率(2.0%)、健康診断の有所見者再受診率(55.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 鉄鋼市場の環境変化
鉄スクラップを主原料とする普通鋼電炉業界は景気変動の影響を受けやすく、公共投資や民間設備投資、住宅建築等の鋼材需要の変動が業績に直結します。また、鉄スクラップやエネルギー等の原料価格が国際的な経済状況により大幅に変動した場合、製品価格への転嫁が十分に進まないと収益性が悪化するリスクがあります。
■(2) 電力供給と電力料金の変動
電気炉を活用して鉄鋼製品を生産するため、事業活動において大量の電力を消費します。設備の改造やエネルギー効率の高度化を図っているものの、電力需要の逼迫による供給制約が生じる可能性があります。加えて、為替や地政学リスクにより電力料金が大幅に高騰した場合、製造コストが上昇するリスクがあります。
■(3) 法的規制や環境保全への対応
事業活動においてさまざまな法規制の適用を受けており、法令順守の強化に努めています。しかし、将来的な環境規制の強化や新たな法令の導入が行われた場合、事業活動に制約が生じたり、対応のための追加コストが発生したりすることで、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 災害や事故による操業停止
生産拠点において、大規模な地震や台風等の自然災害に見舞われたり、重大な設備事故や人的被害が発生したりするリスクがあります。未然防止対策や設備の事前点検を実施しているものの、予期せぬ災害により工場の操業停止や設備の損壊が生じた場合、製品供給の遅延や復旧費用の発生につながる恐れがあります。



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