北越メタル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

北越メタル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

北越メタルは東京証券取引所スタンダード市場に上場する鉄鋼メーカーです。トピー工業グループの中核企業として、棒鋼や線材、形鋼などの鉄鋼製品の製造・販売を行っています。直近の決算では、鋼材需要の減少により減収となったものの、メタルスプレッドの改善等により増益を達成しました。


※本記事は、北越メタル株式会社 の有価証券報告書(第109期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 北越メタルってどんな会社?


トピー工業グループに属する電炉メーカーです。鉄鋼素材から土木・建築向け加工製品までの一貫体制を強みとしています。

(1) 会社概要


同社は1942年に北越電化工業として設立され、1949年に新潟証券取引所に上場しました。1957年にトピー工業(当時:東都製鋼)の系列下に入り、1964年の3社合併を経て現社名となりました。2000年には東京証券取引所市場第二部に上場し、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しています。

同グループの従業員数は連結で492名、単体で393名です。大株主構成を見ると、筆頭株主は親会社である大手鉄鋼メーカーのトピー工業(33.69%)です。第2位は大手総合商社グループの伊藤忠メタルズ、第3位は地元新潟を地盤とする地方銀行の第四北越銀行となっています。

氏名 持株比率
トピー工業 33.69%
伊藤忠メタルズ 8.87%
第四北越銀行 4.81%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は加納愛仁氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
加納 愛 仁 代表取締役社長 トピー工業にて技術部長、執行役員、常務執行役員などを歴任。2025年4月より同社専務執行役員を経て現職。
竹内 征 規 常務取締役 トピー工業にて豊橋製造所長などを経て、2022年より同社取締役。現在は安全・技術・品質等を管掌。
南波 義 幸 取締役 1991年同社入社。経営企画部長、営業本部長などを歴任。現在は営業に関する事項を管掌。


社外取締役は、森田稔(伊藤忠商事非鉄・リサイクル部長)、渡邊美栄子(ハードオフコーポレーション社外取締役)、渡部大史(遠藤製作所代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「鉄鋼」事業を展開しています。

鉄鋼事業


同社グループは、電炉メーカーとして鉄鋼製品の製造・販売を行っています。主要製品には、棒鋼、線材、形鋼などの素材製品に加え、UHYフープ、ロックボルト、ターンバックルなどの土木・建築用加工製品があります。主要な販売先は建設業界向けの商社であり、伊藤忠丸紅住商テクノスチールなどが大口顧客となっています。

主な収益源は、これらの製品販売による対価です。運営は主に北越メタルが行っており、連結子会社のコーテックスおよびコーテックス工業が製品の加工・販売を、メタルトランスポートが製品等の運送を担っています。これにより、素材から加工品までの一貫体制を構築しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は300億円前後で推移しています。2023年3月期には経常赤字となりましたが、その後は回復傾向にあります。直近の2025年3月期は、建設工事の停滞等により減収となりましたが、売買スプレッドの改善により経常利益、当期純利益ともに増益を確保し、黒字を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 218億円 274億円 310億円 318億円 287億円
経常利益 6億円 -7億円 11億円 7億円 8億円
利益率(%) 2.8% -2.6% 3.6% 2.1% 2.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 -9億円 11億円 3億円 5億円

(2) 損益計算書


売上高は減少しましたが、売上総利益および営業利益は増加しており、収益性が改善しています。売上総利益率は前年の11.5%から13.4%へ上昇し、営業利益率も1.7%から2.3%へと改善しました。コストコントロールと採算重視の販売姿勢が利益率の向上に寄与していることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 318億円 287億円
売上総利益 37億円 38億円
売上総利益率(%) 11.5% 13.4%
営業利益 5億円 7億円
営業利益率(%) 1.7% 2.3%


販売費及び一般管理費のうち、運賃が19億円(構成比59%)、給料が4億円(同12%)を占めています。物流コストが販管費の過半を占める構造となっています。

(3) セグメント収益


同社グループは「鉄鋼事業」の単一セグメントであるため、セグメントごとの詳細な増減分析はありませんが、全体の傾向として、建設業界の人手不足や資材高騰による需要低迷を受け、販売数量が減少し減収となりました。一方で、主原料価格の下落や製品価格の維持により採算は改善しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
鉄鋼 318億円 287億円
連結(合計) 318億円 287億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

北越メタルは、建設業界の厳しい環境下でもメタルスプレッドの拡大や製造改善に努め、増収増益を達成しました。

営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権の減少が主な収入となった一方、仕入債務の減少が支出となりました。投資活動では、主に有形固定資産の取得により資金を使用しました。財務活動では、長期借入金の返済や短期借入金の減少、社債の償還により資金を使用しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 20億円 16億円
投資CF -11億円 -10億円
財務CF -4億円 -11億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「事業の存続と発展を通じて、広く社会の公器としての責務を果たし、持続可能な循環社会の実現に貢献する」ことを経営理念として掲げています。地域の発展とともに企業の発展があるという考えのもと、地域循環型で低炭素な社会の実現を目指しています。

(2) 企業文化


同社は長期ビジョン「Metal Vision 2030<絆>」において、「ものづくりのその先へ。エコとソリューションを提供し、持続可能な社会の実現に貢献します。」という基本方針を定めています。電気炉メーカーとしての力を結集し、持続可能な社会の実現に向けて挑戦し続ける姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は2030年の長期ビジョン達成に向け、2025年度から2027年度までの3年間を対象とした新中期経営計画「中期経営計画 2027」を策定しています。この計画に基づき、ESGを重要な戦略の一つとして位置づけ、具体的な取り組みを推進していく方針です。

(4) 成長戦略と重点施策


国内鉄筋市場の縮小に対応するため、加工品事業を成長の中核とし、省人化・国土強靭化に資する製品開発に注力しています。また、デジタル技術の活用による生産性向上やコスト構造の改革、電気炉更新を含む省エネ投資によるカーボンニュートラルへの対応を推進し、収益力と企業価値の向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、社員との絆を成長の源泉と捉え、メンバーシップ型をベースにジョブ型要素を取り入れた人事制度を導入しています。自律型人材の育成に向けた自己啓発支援や1on1ミーティング、メンター制度を整備し、挑戦を恐れない社風の醸成を目指しています。また、健康経営やエンゲージメント向上にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.5歳 15.5年 5,758,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.1%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 84.5%
男女賃金差異(正規) 86.5%
男女賃金差異(非正規) 54.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.5%)、健康診断の有所見者再受診率(65.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境等の変化によるリスク


同社グループは鉄スクラップを原料とする電炉業界に属しており、業績は景気変動の影響を受けやすい特性があります。特に公共投資や民間設備投資、住宅着工などの鋼材需要の変動や、製品市況の変動が業績に大きく影響します。また、主原料価格の変動を製品価格に転嫁できない場合、収益が悪化する可能性があります。

(2) 電力供給及び電力料金の変動によるリスク


鉄リサイクル事業は大量の電力を消費するため、電力需給の逼迫時には供給制約を受けるリスクがあります。また、燃料価格や為替の変動に伴う電力料金の大幅な上昇は、製造コストを押し上げ、同社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 人材育成・確保難によるリスク


同社グループは人材を最大の財産と位置づけていますが、国内の少子化や労働人口の減少が進む中、計画通りの人材確保が困難になるリスクがあります。人材の確保や育成が滞った場合、事業運営や技術継承に支障をきたし、将来的な成長や業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。