虹技 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

虹技 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の鋳物・ロール、環境装置メーカーです。鋳物関連事業を主力とし、環境エンジニアリングや機能材料事業も展開しています。当期は鋳物事業での販売価格是正やコスト改善が進み、売上高は前期比微増ながら、営業利益は約4割増、経常利益は約6割増と大幅な増益を達成しました。


※本記事は、虹技株式会社 の有価証券報告書(第120期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 虹技ってどんな会社?


1916年創業の老舗鋳物メーカーです。鋳物技術を核に、環境装置や機能材料など多角的な事業を展開しています。

(1) 会社概要


同社は1916年に神戸鋳鉄所として創業し、1940年に株式会社へ改組しました。1952年には神戸・大阪証券取引所に上場し、1993年に現在の「虹技」へ商号変更を行っています。2004年には中国・天津に現地法人を設立して海外展開を加速させました。近年では2024年に株式会社小口合金鋳造所を子会社化するなど、事業基盤の強化を進めています。

現在の従業員数は連結752名、単体470名です。筆頭株主は取引先企業で構成される持株会で、第2位は大手生命保険会社が名を連ねています。安定した株主構成のもと、創業100年を超える歴史を持つ企業として堅実な経営を続けています。

氏名 持株比率
虹技取引先持株会 6.50%
住友生命保険相互会社 5.81%
三井住友銀行 4.55%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は山本幹雄氏が務めています。なお、社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
山本 幹雄 代表取締役取締役社長 1982年入社。大型鋳物事業部長、執行役員東京支社長などを歴任。2017年より代表取締役、2024年4月より現職。
谷岡 宗 専務取締役 1984年入社。経理部長、総務部長、経営企画部長などを歴任。2024年6月より現職。
片桐 康晴 取締役 1988年入社。デンスバー事業部長などを経て、現在はデンスバー事業部、人事部、安全環境管理部を担当。2019年より現職。
萩野 豊明 取締役 1990年入社。小型鋳物事業部長として営業・資材部門を統括。2021年より現職。
梶野 正則 取締役 1981年入社。環境装置事業部長などを経て、現在は環境エンジニアリング事業部長等を担当。2022年より現職。
稲毛 宏二 取締役 1990年入社。大型鋳物事業部長などを経て、現在は素形材事業部長等を担当。2024年より現職。


社外取締役は、大塚良朗(元日鉄物流大分社長)、松山康二(公認会計士)、大山英人(元神戸製鋼所素形材事業部門チタンユニット研究首席)です。

2. 事業内容


同社グループは、「Casting Field」、「Environment Field・環境エンジニアリング」、「Environment Field・機能材料」および「その他」事業を展開しています。

(1) Casting Field


鉄鋼圧延用ロール、鋼塊用鋳物、自動車用金型鋳物、デンスバー(連続鋳造鋳鉄棒)、一般鋳物、アルミニウム合金鋳造製品等の製造・販売を行っています。自動車産業や鉄鋼業界、産業機械メーカーなど幅広い顧客基盤を持ちます。

製品の販売代金等を主な収益源としています。運営は主に同社が行っていますが、子会社の株式会社小口合金鋳造所がアルミニウム合金鋳造製品を、海外子会社の天津虹岡鋳鋼有限公司および南通虹岡鋳鋼有限公司が自動車用プレス金型鋳物の製造・販売を担当しています。

(2) Environment Field・環境エンジニアリング


環境関連装置や機械製品(送風機等)の製造・販売、および土木・建設工事の請負、ソーラー売電事業を行っています。官公庁や自治体向けのごみ焼却プラント建設なども手掛けています。

製品販売や工事請負代金、売電収入が主な収益源です。運営は同社が行っています。環境保全へのニーズに対応し、脱炭素社会に向けた製品開発やプラント建設を通じて収益を上げています。

(3) Environment Field・機能材料


自動車、鉄道、産業機械向けの摩擦材(メタルファイバー等)の製造・販売を行っています。特に自動車業界向けの需要に対応しています。

製品の販売代金が収益源となります。運営は同社が行っており、素材開発から製造・販売までを一貫して手掛けています。

(4) その他


同社姫路東・西工場の保安業務およびその他の付帯業務を行っています。

グループ内の工場保安業務等による対価が収益源です。運営は子会社の虹技サービス株式会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は180億円台から260億円台へと拡大傾向にあります。特に2023年3月期以降は260億円規模で安定しています。経常利益は2022年3月期に一時落ち込みましたが、その後回復し、当期は11億円を超え、利益率も4%台に改善しました。当期純利益も増益基調を維持しており、収益性が向上しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 181億円 231億円 267億円 260億円 263億円
経常利益 4億円 1億円 7億円 7億円 11億円
利益率(%) 2.1% 0.4% 2.7% 2.8% 4.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 0億円 5億円 5億円 8億円

(2) 損益計算書


前期と比較して売上高は微増ですが、売上総利益が大きく増加し、利益率が改善しています。営業利益も11億円台に乗せ、収益力が強化されています。コストコントロールや販売価格の適正化が進んだことがうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 260億円 263億円
売上総利益 36億円 43億円
売上総利益率(%) 14.0% 16.4%
営業利益 8億円 11億円
営業利益率(%) 3.0% 4.2%


販売費及び一般管理費のうち、発送費が8億円(構成比25%)、給料賃金が7億円(同22%)を占めています。売上原価に関しては、その内訳の詳細は記載されていませんが、製造業であるため材料費や労務費等が主な構成要素と考えられます。

(3) セグメント収益


主力のCasting Fieldは、販売価格是正やコスト改善が奏功し、売上・利益ともに増加しました。一方、環境エンジニアリングは大型案件の端境期などで減収となり、若干の損失を計上しています。機能材料は増収増益と堅調です。全体として、鋳物事業の好調が全社の増益を牽引しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
Casting Field 210億円 236億円 6億円 13億円 5.6%
Environment Field・環境エンジニアリング 43億円 19億円 3億円 -0億円 -2.3%
Environment Field・機能材料 7億円 8億円 0億円 0億円 4.4%
その他 1億円 2億円 -0億円 -0億円 -1.3%
調整額 0億円 0億円 -2億円 -2億円 -
連結(合計) 260億円 263億円 7億円 11億円 4.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

虹技は、営業活動により大幅な資金増加を達成しました。これは、主に事業活動による利益の増加や、売上債権及び契約資産の減少が要因です。一方、投資活動では、有形固定資産の取得により資金が減少しました。財務活動では、短期借入金の純減少や長期借入金の返済、配当金の支払いにより、資金が大きく減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -1億円 48億円
投資CF -16億円 -10億円
財務CF 22億円 -33億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「社会における『信頼』を創造する」を筆頭に、「社内における『相互信頼』を大切にする」「自分自身で考え行動できる『自立人』をめざす」「『挑戦する姿勢』を尊重する」の4つを経営理念として掲げています。高品質な製品づくりと環境保全への取り組みを通じて、ステークホルダーの信頼に応え、社会の発展に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、経営理念に基づき、「信頼」「自立」「挑戦」を重視する企業風土を持っています。法令順守や公正な企業活動を基本としつつ、社員一人ひとりが自ら考え行動し、新しいことに挑戦する姿勢を尊重しています。また、社内における相互信頼を大切にし、働きがいのある職場づくりを推進しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、継続的な利益計上と安定配当を重視し、売上高経常利益率、総資産経常利益率、自己資本比率を重要な経営指標と位置付けています。2025年度よりスタートする「第8次3カ年計画」では、「“Kai”を見出す」をキーワードに、安定的な事業基盤の構築と成長戦略の実現を目指しています。また、環境目標として、2030年度のCO2排出量を2013年度比で46%削減することを掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


「第8次3カ年計画」において、同社は「省人化」「脱炭素社会に向けて」「人材育成」を重点課題としています。デジタル技術やAI・ロボットの活用による業務変革、CO2削減と新ビジネス創出、技術継承を中心とした人材育成に注力します。既存事業の利益増大による安定基盤の構築とともに、グループ全体での成長戦略を推進し、持続的発展を図る方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、企業の中長期的な成長には人材の多様化と育成が不可欠であるとの認識のもと、女性や外国人の採用強化、中途採用者の管理職登用を推進しています。能力と適性を重視した配置と育成を行い、多様な人材が活躍できる職場環境の整備に努めています。また、次世代への技術継承を重要課題と捉え、人材育成に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.2歳 17.5年 6,280,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 7.1%
男女賃金差異(全労働者) 70.9%
男女賃金差異(正規) 71.4%
男女賃金差異(非正規) 85.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性総合職員数(6名)、年間所定労働時間縮減(1,912時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境と市場動向


同社の主力である素形材事業は、国内の民間設備投資や公共事業の動向に大きく依存しています。市場の成熟化が進む中、景気変動や主要顧客の生産活動の影響を受けやすく、需要が低迷した場合には経営成績に影響を与える可能性があります。これに対し、同社は高付加価値製品の開発や環境エンジニアリング事業とのシナジー追求により、事業基盤の強化を図っています。

(2) 原材料価格および電気料金の高騰


鋳物事業は、主要原材料である銑鉄やスクラップ、合金鉄の価格変動の影響を直接受けます。また、製造プロセスで大量の電力を消費するため、電気料金の上昇もコスト増要因となります。市況高騰分を製品価格へ転嫁することには時間を要するため、利益率低下のリスクがあります。同社は適切な在庫管理や省エネ生産の推進により影響の最小化に努めています。

(3) 海外事業のカントリーリスク


中国に製造・販売拠点を持つ同社グループは、現地の政治・経済情勢の変化や法規制、米中貿易摩擦などの影響を受ける可能性があります。予期せぬ社会的混乱が発生した場合、事業遂行に支障をきたす恐れがあります。同社は執行役員を現地に派遣し、経営状況をモニタリングするとともに、支援機能を強化してリスク管理を行っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。