高砂鐵工 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

高砂鐵工 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

高砂鐵工は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、みがき帯鋼や冷間圧延ステンレス鋼帯などの鉄鋼製品事業を主力とし、不動産事業も展開する企業です。2026年3月期の連結業績は、売上数量増や販売価格の改善により売上高が前期比で増収となり、営業利益も徹底したコスト低減により増益を達成しました。


※本記事は、高砂鐵工株式会社の有価証券報告書(第154期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 高砂鐵工ってどんな会社?


みがき帯鋼やステンレス鋼帯の製造・販売を主力とし、不動産事業も展開する鉄鋼メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1923年11月に設立され、1925年2月に日本で最初にみがき帯鋼の製造を開始した企業を合併し、みがき帯鋼の製造を始めました。1937年3月に現在の本社工場を新設し事業を拡大しました。1961年10月に証券取引所に上場し、1972年6月には現在の連結子会社であるタカサゴスチールを設立しました。

現在の従業員数はグループ全体で152名、単体で130名です。筆頭株主は事業上の関係がある日本製鉄で、第2位も事業会社の三井物産、第3位は海外の金融機関となっています。

氏名 持株比率
日本製鉄 30.72%
三井物産(常任代理人 日本カストディ銀行) 16.65%
THE HONGKONG AND SHANGHAI BANKING CORPORATION LTD - SINGAPORE BRANCH PRIVATE BANKING DIVISION CLIENTS A/C 8221-623793(常任代理人 香港上海銀行東京支店) 5.48%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は加藤勘二氏が務めており、社外取締役の比率は約29%です。

氏名 役職 主な経歴
加藤 勘二 代表取締役社長 1987年新日本製鐵(現日本製鉄)入社。八幡製鐵所生産業務部長等を経て、2022年4月同社参与。同年6月より現職。
松井 勝人 常務取締役総務・経理・調達担当 1990年同社入社。総務部長、調達部長等を歴任し、2021年4月取締役就任。2025年10月より現職。
里見 紀一 取締役品質保証・製造担当 1990年同社入社。製造部長等を歴任し、2023年6月取締役就任。2026年4月より現職。
山田 光哉 取締役企画・営業総括・鉄鋼営業・加工製品営業担当 1993年新日本製鐵(現日本製鉄)入社。住友商事等を経て2024年8月同社参与。2026年4月より現職。
横谷 龍裕 取締役(監査等委員・常勤) 1989年同社入社。販売部長、企画室長等を歴任し、2021年4月取締役就任。2024年6月より現職。


社外取締役は、白石勉(元新日本製鐵経営企画部関連事業第二室部長代理)、中村俊介(元住友商事メカニカル鋼管事業部事業部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「鉄鋼製品事業」および「不動産事業」を展開しています。

鉄鋼製品事業


みがき帯鋼、みがき特殊帯鋼、エンボス製品を含む冷間圧延ステンレス鋼帯、及びステンレス加工製品などの鉄鋼製品の製造および販売を行っています。主な顧客は自動車用部品メーカーなど、日本のモノづくり現場を支える企業です。

収益源は、製品を顧客に引き渡した際の販売代金です。同社が製造・販売を行うほか、冷間圧延ステンレス鋼帯の一部の作業工程についてタカサゴスチールに下請けさせており、販売の一部も同社や日鉄物産等を経由して行っています。運営は同社およびタカサゴスチールが行っています。

不動産事業


所有する土地や建物などを活用し、不動産の賃貸および管理を行っています。地域の法人や個人が主な顧客となっており、利益率の高い事業として同社グループの安定した収益基盤として機能しています。

収益源は、賃貸借契約期間に基づく契約上の賃料などの不動産賃貸収入です。これらの事業運営は、同社および子会社のタカテツライフが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は概ね120億円規模で安定して推移しています。経常利益は一時落ち込みが見られたものの、直近では拡販や販売価格の改善、徹底したコスト低減の取り組みが功を奏し、回復傾向にあります。利益率も改善傾向を示しており、収益力の向上が見受けられます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 108億円 122億円 122億円 121億円 121億円
経常利益 8億円 8億円 4億円 5億円 6億円
利益率(%) 7.5% 6.4% 3.2% 4.3% 4.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 3億円 1億円 1億円 2億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高は横ばいながらも、売上総利益および営業利益が増加しています。販売価格の改善やコスト削減により、売上総利益率と営業利益率の双方が改善しており、本業での稼ぐ力が強まっていることがわかります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 121億円 121億円
売上総利益 17億円 18億円
売上総利益率(%) 14.0% 15.0%
営業利益 5億円 6億円
営業利益率(%) 4.2% 4.7%


販売費及び一般管理費(13億円)のうち、製品発送費が3億円(構成比28%)、従業員給与が3億円(同22%)を占めています。

(3) セグメント収益


売上高の大半は主力である鉄鋼製品事業が占めており、安定した推移を見せています。不動産事業は売上規模こそ小さいものの、利益率の高い事業として同社の業績を下支えする安定した収益基盤として貢献しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
鉄鋼製品事業 119億円 119億円
不動産事業 2億円 2億円
連結(合計) 121億円 121億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業で得た資金で借入金の返済を進めつつ投資も行う「健全型」のキャッシュ・フロー構造となっています。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.5%で市場平均を下回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 0.4億円 12億円
投資CF -3億円 -1億円
財務CF -1億円 -1億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は会社経営の基本理念として、「鉄鋼事業を中核として、豊かな価値の創造・提供を通じ、顧客と社会に貢献する」ことを掲げています。モノづくりの基盤となる鉄鋼製品を安定的に供給し、顧客の多様なニーズに応えることで、社会全体の発展に寄与することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、国際社会の一員としての自覚を持ち、国内外の法令を遵守して高い企業倫理を保つことを重視しています。企業の社会的責任への取り組みを徹底するとともに、社会や経済の変化を常に把握し適応する柔軟な姿勢を持っています。また、多様な価値観を会社の持続的な成長の強みと捉え、能力に応じた評価を行っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2024年度から2026年度を対象とした中期経営計画において、収益力の向上と安定した配当実施を目指し、以下の数値を目標として掲げています。

* 売上高:200億円以上
* ROS:8.0%以上
* 配当性向:30.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は中期計画の達成に向け、各事業で独自性を発揮する戦略を進めています。みがき帯鋼では短納期や高品質で日本のモノづくり現場を支え、エンボス事業では機能性と意匠性を両立させます。プレスプレート事業ではハイエンドニーズに応え、ステンレス流通事業では地域密着営業の強化と他社連携により顧客ニーズを先取りします。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、多様な価値観の存在が会社の持続的成長の強みになると認識し、能力や成果に応じた人事評価を行うことを基本方針としています。社員の誰もが継続的に活躍できる環境を提供し、優秀な人材については性別や国籍に依ることなく採用と育成を進め、全ての社員に平等な評価と登用の機会を設けています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 46.9歳 18.4年 6,021,943円

※平均年間給与は、基準外賃金及び賞与を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.3%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用労働者) -
男女賃金差異(非正規雇用労働者) -

※同社は常時雇用する労働者が300人以下のため、男女賃金差異の公表義務の対象ではありません。また、連結子会社は従業員数が100人未満のため掲載が省略されています。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国人管理職比率(0%)、中途採用者管理職比率(4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原料価格の変動と特定メーカーへの依存


同社の鉄鋼製品事業では、原料価格が大幅に変動する可能性があり、価格転嫁やコスト削減が進まない場合、業績に影響を与える可能性があります。また、原料調達は特定メーカーへの依存度が大きく、供給遅延や品質問題が発生した場合、生産減少や納期遅延につながるリスクがあります。

(2) 自動車業界の動向への依存


同社の主力製品であるみがき帯鋼は、自動車用部品向けが中心となっています。そのため、国内外における自動車の生産台数や販売台数の急激な変動、さらには自動車業界全体の動向が、同社グループの受注状況や経営成績に直接的な影響を及ぼす可能性があります。

(3) 設備保全と人材確保の難航


同社は安定的な製品供給のため、生産設備の徹底保全や熟練技術者の確保・育成に注力しています。しかし、想定を超える重大な設備トラブルが発生した場合や、操業に必要な人員を十分に確保できない場合には、工場の稼働に支障をきたし、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。