日本金属 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本金属 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場し、冷間圧延ステンレス鋼帯やみがき特殊帯鋼などの製造・販売を主力事業としています。直近の決算では、自動車生産台数の低迷や海外需要の減速などの影響を受け、売上高は微減となりました。また、収益改善活動を進めるものの、営業赤字および経常赤字が継続し、最終利益は減益となっています。


※本記事は、株式会社日本金属 の有価証券報告書(第118期、自 2024年4月1日 至 2025年3月1日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本金属ってどんな会社?


冷間圧延技術を核とし、ステンレス鋼帯や特殊帯鋼、加工品を製造・販売する独立系圧延メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1930年11月に東京伸鐵所として創立され、国内初のみがき帯鋼製造に着手しました。1937年には特殊鋼の帯鋼製造を開始し、1949年11月に東証へ上場しました。1954年2月に現在の社名へ変更しています。2022年4月の東証市場区分見直しによりプライム市場へ移行した後、2023年10月にスタンダード市場へ移行しました。

2025年3月31日現在、連結従業員数は828名(単体559名)です。筆頭株主は事業会社であり主要な仕入先でもある日鉄ステンレス、第2位は従業員や取引先で構成される日本金属取引先持株会、第3位は証券会社のSBI証券となっており、事業パートナーや関係者が上位を占めています。

氏名 持株比率
日鉄ステンレス 12.43%
日本金属取引先持株会 10.25%
SBI証券 5.75%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は下川康志氏が務めています。社外取締役比率は約27.3%です。

氏名 役職 主な経歴
下川 康志 取締役社長代表取締役管理本部長 1980年入社。常務執行役員、常務取締役管理部門長等を経て2017年4月より現職。
原田 喜弘 専務取締役製販本部長 新日本製鐵出身。2015年入社。常務取締役生産本部長等を経て2020年4月より現職。
山﨑 修 常務取締役技術本部長 1985年入社。工学博士。執行役員、常務執行役員技術本部技術部門長等を経て2020年6月より現職。
山下 匡史 取締役監査役(常勤) 1984年入社。常務執行役員、専務取締役等を経て2025年4月より取締役。2025年6月監査役就任。
長谷川 伸一 取締役 1981年入社。常務執行役員、常務取締役管理本部長等を経て2025年4月より現職。


社外取締役は、小川和洋(公認会計士・税理士)、永塚良知(弁護士)、假屋ゆう子(元鳥居薬品取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「みがき帯鋼事業」および「加工品事業」を展開しています。

(1) みがき帯鋼事業


冷間圧延ステンレス鋼帯およびみがき特殊帯鋼の製造・販売を行っています。これらの製品は、自動車部品、電子機器、精密機器などの素材として幅広く利用されています。特に自動車関連用途や、スマートフォン等の電子部品関連での需要があります。

収益は、顧客への製品販売による対価を得ることで構成されています。運営は主に日本金属が製造を行い、連結子会社の日金スチール株式会社が販売を担うほか、海外子会社や日金精整テクニックス株式会社(加工担当)などが関与しています。

(2) 加工品事業


型鋼製品、電磁製品、ステンレス精密管などの製造・販売を行っています。自動車部品向けの異形鋼や、建築・土木向けの型鋼製品、電子機器向けの電磁製品などを提供しています。

収益は、製品の販売代金や施工代金からなります。運営は日本金属に加え、連結子会社の株式会社セフ(型鋼製品等の販売・施工)、日金電磁工業株式会社(電磁製品の製造・販売)などが事業を展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は500億円前後で推移していますが、直近では微減傾向にあります。利益面では、原材料価格やエネルギーコストの高騰等の影響を受け、経常損益および営業損益の段階で赤字が続いています。当期純利益については、固定資産売却益などの特別利益計上により黒字を確保していますが、前期比では減益となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 401億円 491億円 526億円 514億円 513億円
経常利益 -25億円 13億円 13億円 -13億円 -5億円
利益率(%) -6.1% 2.7% 2.4% -2.5% -0.9%
当期利益(親会社所有者帰属) -6億円 18億円 3億円 12億円 3億円

(2) 損益計算書


売上高はほぼ横ばいで推移する中、売上総利益率は改善傾向にあります。これは価格是正やコスト削減活動等の成果と見られます。一方で、販売費及び一般管理費の負担により営業損益は赤字が続いていますが、赤字幅は大幅に縮小しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 514億円 513億円
売上総利益 43億円 51億円
売上総利益率(%) 8.3% 10.0%
営業利益 -11億円 -2億円
営業利益率(%) -2.1% -0.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賃金が12億円(構成比22%)、運賃及び荷造費が11億円(同20%)を占めています。売上原価においては、材料費等の変動費が高い比率を占めていると推測されます。

(3) セグメント収益


みがき帯鋼事業は、自動車関連や中国市場での販売が低迷したものの、電子部品関連の回復や価格是正効果により増収となり、営業損益も黒字転換しました。一方、加工品事業は、自動車関連部品の需要減などにより減収減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
みがき帯鋼事業 410億円 411億円 -4億円 6億円 1.5%
加工品事業 104億円 102億円 6億円 3億円 3.1%
連結(合計) 514億円 513億円 -11億円 -2億円 -0.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -2億円 12億円
投資CF 42億円 17億円
財務CF -5億円 -32億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は39.9%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「社会との共生、地球環境の保護」に努め、「象の歩む道」には踏み込まず、付加価値の高い製品で社会に貢献することを経営方針としています。また、技術の向上と革新を継続し、品質とサービスで顧客のマインド・シェアNo.1を目指しています。

(2) 企業文化


「社員の個性を尊重し、自由闊達な風土のもと、活力ある会社を目指します」という方針を掲げています。いかなる環境の変化にも耐え得る個性的な企業体質の構築を目指し、社員一人ひとりが活力を発揮できる職場づくりを重視しています。

(3) 経営計画・目標


第11次経営計画「NIPPON KINZOKU 2030」(10カ年計画)を推進しています。第3フェーズ(2025年度~2029年度)では、「ターゲットアイテム拡大・事業化」と「高収益体質の実現」をコンセプトとしています。

- 2025年度通期目標:売上高534億円、営業利益9億円、経常利益6億円、親会社株主に帰属する当期純利益5億円

(4) 成長戦略と重点施策


「マルチ&ハイブリッドマテリアル」「ニアネットシェイプ」「ニアネットパフォーマンス」をキーワードに、独自の圧延技術と加工技術を深化させ、新技術・新製品を主力とする事業構造への変革を目指しています。また、環境配慮製品であるエコプロダクトの販売強化により差別化を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「活力ある職場づくりと人材強化」を基本方針とし、中長期的な人材育成や問題解決に取り組む人材の育成、自己啓発・OJTを主軸とした教育風土の醸成を進めています。また、社員の健康維持・向上を重視し、「健康経営」を推進することで、個人と組織のパフォーマンス最大化を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.0歳 16.7年 5,733,805円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 11.1%
男女賃金差異(全労働者) 72.3%
男女賃金差異(正規) 69.0%
男女賃金差異(非正規) 90.6%


※女性管理職比率については、女性総合職の新卒採用開始から管理職昇格に至っていないこと等が背景にあります。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、Off-JT受講回数(4.3回)、ストレスチェック受検率(96.2%)、月平均所定外労働時間(10.7時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 海外販売に潜在するリスク

中国やアジア諸国、欧米諸国への販売を行っており、これらの地域における予期せぬ法律・税制の変更、政治的・経済的不安、テロや戦争などの社会的混乱が発生した場合、事業遂行に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 災害等のリスク

地震や洪水などの自然災害に対し防災対策を行っていますが、想定を超える大規模災害が発生した場合、操業の中断や生産・出荷の遅延、設備の修復費用などが発生し、業績や財務状況に悪影響を与える可能性があります。

(3) 原材料価格・調達リスク

主原料であるステンレス鋼の価格は、需給動向や資源政策、為替変動等の影響を受けやすく、これらが高騰した場合に業績を圧迫する恐れがあります。また、サプライヤーからの供給が滞った場合、生産活動に支障をきたす可能性があります。

(4) 自動車業界の動向変化

主力製品の多くが自動車業界向けであるため、世界的なEV化やCASEの進展による需要構造の変化、自動車メーカーの生産調整などの影響を強く受ける可能性があります。市場ニーズの変化に対応できない場合、業績に影響する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。