※本記事は、日本金属株式会社の有価証券報告書(第119期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本金属ってどんな会社?
冷間圧延ステンレス鋼帯やみがき特殊帯鋼、独自の加工品の製造販売を主力事業とする企業です。
■(1) 会社概要
同社は1930年に東京伸鐵所として創立し、日本で初めてみがき帯鋼の製造に着手しました。1939年に株式会社へ改組し、1949年に証券取引所へ上場しています。1954年に日本金属へ社名を変更し、冷間圧延ステンレス鋼帯の量産を開始しました。現在も圧延技術と加工技術を極めた製品開発を進めています。
現在の従業員数は連結で787名、単体で524名です。筆頭株主は取引先で構成される日本金属取引先持株会で、第2位は事業会社で原材料の仕入先でもある日本製鉄、第3位は同じく事業会社の伊藤忠丸紅鉄鋼です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本金属取引先持株会 | 11.30% |
| 日本製鉄 | 6.68% |
| 伊藤忠丸紅鉄鋼 | 5.87% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。取締役社長は下川康志氏が務めており、取締役9名のうち3名(33.3%)が社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 下川 康志 | 取締役社長代表取締役管理本部長 | 1980年同社入社。鋼帯事業本部鋼帯営業部門長、管理部門長などを経て、2017年4月より現職。 |
| 原田 喜弘 | 専務取締役製販本部長 | 新日本製鐵入社後、2015年同社入社。技術本部長、生産本部長などを経て、2025年4月より現職。 |
| 山﨑 修 | 常務取締役技術本部長 | 1985年同社入社。技術部門技術研究所長、技術本部技術部門長などを経て、2020年4月より現職。 |
社外取締役は、小川和洋(小川和洋会計事務所代表)、永塚良知(永塚パートナーズ法律事務所所長)、假屋ゆう子(元鳥居薬品取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「みがき帯鋼事業」および「加工品事業」を展開しています。
■(1) みがき帯鋼事業
自動車関連や電子部品関連、医療関連(注射針等)向けに、冷間圧延ステンレス鋼帯やみがき特殊帯鋼の製造を行っています。高い表面品質や特殊な加工技術により、顧客ニーズに応じた高付加価値な金属素材を提供しています。
顧客への製品販売により収益を得ています。製造は主に日本金属が行い、販売は子会社の日金スチールが担うほか、海外ではタイやマレーシア、中国の現地子会社を通じてグローバルな販売網を構築し、事業を運営しています。
■(2) 加工品事業
独自の冷間圧延技術を活用し、建築用の異形鋼製品、自動車や分析機器向けのステンレス精密管、型鋼製品などの加工品を製造・販売しています。多種多様な金属素材に対応した複雑な成形加工を実現しています。
製品の販売から収益を得ています。型鋼製品等の販売は子会社のセフを経由し、電磁製品は日金電磁工業が製造・販売を担うなど、日本金属を中心としたグループ各社が密接に連携して事業を推進しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の売上高は500億円前後で推移していますが、原材料価格やエネルギーコストの高騰などにより、利益面では一時的に赤字を計上しました。しかし、徹底したコスト削減や販売価格の適正化が進み、直近では収益性が回復し黒字に転換しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 491億円 | 526億円 | 514億円 | 513億円 | 496億円 |
| 経常利益 | 13億円 | 13億円 | -13億円 | -5億円 | 5億円 |
| 利益率(%) | 2.7% | 2.4% | -2.5% | -0.9% | 1.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 18億円 | 3億円 | 12億円 | 3億円 | 4億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は減少したものの、売上総利益と営業利益は大きく改善しています。高収益製品へのシフトや製造コスト上昇分の適切な価格転嫁が奏功し、企業の基本的な稼ぐ力が向上しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 513億円 | 496億円 |
| 売上総利益 | 51億円 | 63億円 |
| 売上総利益率(%) | 10.0% | 12.6% |
| 営業利益 | -2億円 | 13億円 |
| 営業利益率(%) | -0.4% | 2.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び賃金が11億円(構成比22%)、運賃及び荷造費が10億円(同21%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のみがき帯鋼事業は、自動車関連需要の低迷等で売上は横ばいでしたが、付加価値に見合った適正価格への改善により大幅な増益となりました。加工品事業は建材関連の低迷等で減収となったものの、収益性の改善により増益を確保しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| みがき帯鋼事業 | 411億円 | 411億円 | 6億円 | 17億円 | 4.1% |
| 加工品事業 | 102億円 | 85億円 | 3億円 | 5億円 | 5.8% |
| 連結(合計) | 513億円 | 496億円 | -2億円 | 13億円 | 2.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業で十分な現金を生み出し、その資金で投資や借入金の返済を賄っている健全な財務状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 12億円 | 26億円 |
| 投資CF | 17億円 | -14億円 |
| 財務CF | -32億円 | -44億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.7%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は44.4%であり、いずれも市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「圧延事業とその加工品事業を中核に、新しい価値の創造を推進し、広く社会に貢献する。」を企業理念に掲げています。社会との共生や地球環境の保護に努めるとともに、付加価値の高い製品を通じて社会へ貢献し、品質とサービスでお客様から選ばれる企業を目指しています。
■(2) 企業文化
経営方針において、「社員の個性を尊重し、自由闊達な風土のもと、活力ある会社を目指します。」と定めています。また、「象の歩む道には踏み込まず」という独自の方針を掲げ、規模を追うのではなく、独自の技術を活かした差別化と付加価値の追求を重んじる文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は10カ年計画である第11次経営計画「NIPPON KINZOKU 2030」を推進しており、現在は「ターゲットアイテム拡大・事業化」と「高収益体質の実現」をコンセプトとした第3フェーズに入っています。具体的な数値目標として、次期の通期連結業績の見通しを以下のように掲げています。
* 売上高:496億円
* 営業利益:13億円
* 経常利益:8億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:5億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「人と地球にやさしい新たな価値を共創するMulti & Hybrid Material企業」をビジョンに掲げています。多様な素材を活用する「マルチ&ハイブリッドマテリアル」や、最終製品形状に近い成形を実現する「ニアネットシェイプ」などをキーワードに、独自の環境配慮製品であるエコプロダクトの販売を強化し、事業構造の変革を図る戦略です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
第11次経営計画において「活力ある職場づくりと人材強化」を基本方針に掲げています。中長期的視点に立った人材の育成や、自己啓発・OJTを主軸とした教育風土の醸成を目指しています。また、社員が心身ともに良好な状態で働けるよう健康経営を推進しており、メンタルヘルスケアや健康維持増進活動に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.4歳 | 16.8年 | 5,693,568円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 83.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 67.5% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 89.1% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、スタッフ人材のOff-JT受講回数(一人当たり)(4.1回)、月平均所定外労働時間(11.6時間)、ストレスチェック受検率(95.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 主原料の仕入価格の変動
同社が扱う製品の主原料であるステンレス鋼などは、国内外の需給動向や原燃料国の資源政策、国際的紛争、為替変動等により価格が変動するリスクがあります。仕入価格の急激な上昇分を販売価格へ適切かつタイムリーに転嫁できない場合、同社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 海外販売に潜在するリスク
同社グループは中国やアジア、欧米諸国などへ製品を輸出しています。これらの海外市場においては、予期せぬ法律や税制の変更、政治的・経済的な情勢悪化、不測の社会的混乱等のカントリーリスクが常に内在しています。これらが顕在化した場合、海外での販売活動や事業展開に支障をきたす恐れがあります。
■(3) 人材の確保
新技術や新製品の開発、および独自の高品質な製造プロセスを維持・向上させるためには、有能な技術者や熟練技能者の確保が不可欠です。同社グループは人材の確保と育成に注力していますが、計画通りに必要な人材を継続的に確保・定着させることができなかった場合、将来の事業成長や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。