神鋼鋼線工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

神鋼鋼線工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場。主要事業は特殊鋼線、鋼索、エンジニアリング関連製品の製造販売。2025年3月期の連結業績は、売上高343億円(前期比4.8%増)、経常利益12億円(前期比15.8%増)と増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社神鋼鋼線工業 の有価証券報告書(第93期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

#神鋼鋼線工業転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

1. 神鋼鋼線工業ってどんな会社?

神戸製鋼所グループの中核企業として、PC鋼線やワイヤロープ等の特殊鋼線製品を展開するメーカーです。

(1) 会社概要

同社は1954年に神鋼鋼線鋼索として発足しました。1971年に朝日製綱所と合併し、現在の神鋼鋼線工業へ商号変更しています。1993年に東京証券取引所市場第二部へ上場しました。2021年には英文社名をKOBELCO WIRE COMPANY, LTD.に変更し、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しています。

連結従業員数は899名、単体では749名です。筆頭株主は親会社である株式会社神戸製鋼所(42.53%)です。第2位は取引先で構成される神鋼鋼線取引先持株会、第3位は従業員による神鋼鋼線従業員持株会となっており、親会社および関係者による安定的な持株比率が高い構成となっています。

氏名 持株比率
神戸製鋼所 42.53%
神鋼鋼線取引先持株会 4.72%
神鋼鋼線従業員持株会 3.19%

(2) 経営陣

同社の役員は男性12名、女性0名の計12名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は北山修二氏です。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
北山 修二 代表取締役社長 1982年神戸製鋼所入社。同社鉄鋼事業部門技術総括部長、常務執行役員、執行役員等を経て、2023年6月より現職。
森 啓 之 代表取締役専務執行役員 1989年神戸製鋼所入社。同社常務執行役員を経て2021年神鋼鋼線工業入社。生産本部長等を務め、2024年4月より現職。
吉田 裕彦 取締役常務執行役員 1984年神戸製鋼所入社。同社監査部等を経て2012年神鋼鋼線工業入社。総務本部長等を務め、2020年4月より現職。
渡部 英樹 取締役常務執行役員 1989年神戸製鋼所入社。同社鉄鋼アルミ事業部門線材条鋼営業部長等を経て2021年神鋼鋼線工業入社。営業本部長等を務め、2024年4月より現職。
山本 直樹 取締役執行役員 1991年神鋼鋼線工業入社。同社PC鋼線事業部営業部長、執行役員を経て、2024年6月より現職。
生治 理仁 取締役 1988年神戸製鋼所入社。同社鉄鋼事業部門企画管理部担当部長等を経て2018年6月より現職。


社外取締役は、田中 崇公(中之島中央法律事務所弁護士)、服部 泰宏(神戸大学大学院経営学研究科教授)です。

2. 事業内容

同社グループは、「特殊鋼線関連事業」「鋼索関連事業」「エンジニアリング関連事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 特殊鋼線関連事業

PC鋼線、PC鋼より線、ケーブル加工製品、ばね用鋼線、めっき鋼線、ステンレス鋼線等の特殊金属線の製造および販売を行っています。主な顧客は建設業界や自動車業界などです。

製品の製造販売は同社が行い、一部工程は神鋼鋼線ステンレス株式会社やコウセンサービス株式会社などの連結子会社に委託しています。主要原材料は親会社の株式会社神戸製鋼所から商社を通じて購入しています。

(2) 鋼索関連事業

一般ロープ、特殊ロープ、鋼より線、ステンレスロープ等のワイヤロープ製品の製造および販売を行っています。これらの製品はクレーン、エレベータ、水産、林業など幅広い産業で使用されています。

特殊鋼線関連事業と同様に、製造販売は同社が主体となり、一部工程を尾上ロープ加工株式会社などの子会社へ委託する体制をとっています。原材料も親会社グループから調達しています。

(3) エンジニアリング関連事業

架設・緊張用部材及び機器、線材三次加工製品等の製造および販売を行っています。橋梁や建築物の建設現場などで使用される専門的な機材や加工製品を提供しています。

製造販売は同社が行い、製造の一部についてはコウセンサービス株式会社等の子会社に委託しています。土木・建築分野におけるインフラ整備需要に対応しています。

(4) その他

不動産の賃貸等の資産活用事業を行っています。同社グループが保有する資産の有効活用を通じて収益を得ています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあります。利益面でも、経常利益と当期純利益は増加基調を維持しており、利益率も改善傾向が見られます。全体として安定した成長を続けています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 268億円 294億円 313億円 327億円 343億円
経常利益 1億円 9億円 10億円 11億円 12億円
利益率(%) 0.5% 3.0% 3.3% 3.3% 3.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 1億円 6億円 8億円 9億円 10億円

(2) 損益計算書

売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに増加しています。原価率や販管費率のコントロールにより、利益率も向上しており、収益性が高まっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 327億円 343億円
売上総利益 56億円 59億円
売上総利益率(%) 17.0% 17.1%
営業利益 10億円 12億円
営業利益率(%) 3.1% 3.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が16億円(構成比34%)、運搬費が10億円(同20%)を占めています。

(3) セグメント収益

特殊鋼線関連事業は販売数量減少も価格転嫁等で増収増益。鋼索関連事業は高付加価値製品の販売拡大等により増収増益となりました。エンジニアリング関連事業は増収ながら諸コスト上昇により減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
特殊鋼線関連事業 175億円 180億円 3億円 5億円 2.7%
鋼索関連事業 130億円 139億円 5億円 5億円 3.9%
エンジニアリング関連事業 21億円 23億円 1億円 1億円 3.6%
その他 0.6億円 0.6億円 0.5億円 0.5億円 82.0%
調整額 - - - - -
連結(合計) 327億円 343億円 10億円 12億円 3.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

神鋼鋼線工業のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や減価償却費があったものの、売上債権の増加により減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出が増加した一方で、投資有価証券の売却収入があったため、使用額が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いがあったものの、長期借入金の純増加により、使用額は減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 14億円 11億円
投資CF -5億円 -7億円
財務CF -3億円 -1億円

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、社会の一員として果たすべき役割を示した「神鋼鋼線ミッション」を掲げ、「なくてはならない価値」を提供し続け、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化

すべての従業員・役員で共有する価値観と行動を示した「神鋼鋼線クレド」を策定しています。一人ひとりがミッションを胸にクレドを実践し、不透明な環境下でも顧客と社会に対して誠実に向き合い、社会貢献と事業成長の両立を目指す文化があります。

(3) 経営計画・目標

中期経営計画「Next Innovation 2026」において、「環境変化に適応し、持続的に成長できる企業基盤の構築」を目指しています。サステナビリティ経営の実践による社会貢献および事業成長の両立と、安定収益基盤の確立に取り組んでいます。
* ROIC 5%以上
* 経常利益 21億円以上

(4) 成長戦略と重点施策

これまで培ってきた技術やノウハウを活かし、サステナビリティ分野等の新たな需要開拓やコスト競争力向上、販売価格改定の強化に取り組みます。特殊鋼線事業では新エネルギー分野の開拓、鋼索事業では高付加価値製品と輸出拡大、エンジニアリング事業では大型橋梁案件の供給体制確立や防災・減災製品の拡大を推進します。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

人材の確保、育成、環境整備を重視しています。新卒・中途採用の強化や離職抑制に取り組みつつ、マネジメント力と価値創造人材の育成に投資します。また、多様な人材が活躍できる職場づくりとしてDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を推進し、働きがいのある環境を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.4歳 13.5年 6,700,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.9%
男性育児休業取得率 150.0%
男女賃金差異(全労働者) 74.7%
男女賃金差異(正規雇用) 76.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 90.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、月平均残業時間(9.5時間)、有給取得(平均有休取得数16日)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定業界の市場動向が業績に及ぼすリスク

同社グループは、土木・建築、建機、自動車、電機業界を主要顧客としています。そのため、公共投資の減少や国内外の景気後退による一般消費水準の減退が発生した場合、経営成績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料・部品の調達のリスク

生産活動はサプライヤーからの原材料等の供給に依存しています。供給不足や価格高騰が発生した場合、生産活動や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、複数社からの調達や販売価格への転嫁等の対策を講じています。

(3) コンプライアンスに関するリスク

国内外の法令や社会規範を遵守する方針ですが、製造物責任や知的財産権の問題、法令違反等により訴訟や罰金を受ける可能性があります。これにより経営成績や社会的信用に影響が及ぶリスクがあります。対策として、教育研修や推進制度の充実を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。