東京鐵鋼 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京鐵鋼 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。棒鋼及び加工品の製造販売を行う鉄鋼メーカー。「ネジテツコン」を主力製品とし、建設業界向けに展開しています。2025年3月期は、売上高826億円(前期比3.7%増)、経常利益151億円(同32.0%増)と増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社東京鐵鋼 の有価証券報告書(第97期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東京鐵鋼ってどんな会社?


棒鋼・加工品の製造販売を主力とする鉄鋼メーカーです。「ネジテツコン」などの高付加価値製品に強みを持ちます。

(1) 会社概要


1939年に設立され、1969年に現在の主力拠点である小山工場での棒鋼生産を開始しました。1974年に東京証券取引所市場第一部に上場し、1983年には主力製品「ネジテツコン」の評定を取得しています。2018年には伊藤製鐵所と資本業務提携を行うなど、事業基盤を強化しています。

連結従業員数は810名、単体では593名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は同業で業務提携関係にある合同製鐵です。第3位にはメインバンクの三井住友銀行が名を連ねています。

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役会長最高経営責任者(CEO)は吉原毎文氏、代表取締役社長最高執行責任者(COO)は吉原栄孝氏が務めています。社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
吉原 毎文 代表取締役会長最高経営責任者(CEO) 1973年入社。営業本部長、副社長を経て1992年社長就任。2024年6月より現職。
吉原 栄孝 代表取締役社長最高執行責任者(COO) 2006年入社。海外開発部長、経営企画部長などを歴任。2024年6月より現職。
田中 能成 取締役物流管理統括者 1988年入社。総合企画部長、最高リスク管理責任者(CRO)などを経て、2024年6月より現職。
柿沼 忠司 取締役最高リスク管理責任者(CRO)常務執行役員 1991年入社。総務・人事部長などを経て、2025年6月より現職。
武笠 達也 取締役上席執行役員 1987年入社。ネジ加工品事業部長、生産本部長などを歴任。2024年6月より現職。
進士 年治 取締役上席執行役員 三井住友銀行出身。2022年入社。経理・IR担当兼IR室長を経て、2025年6月より現職。
中嶌 知義 取締役(監査等委員) 三井住友銀行出身。2016年入社。総合企画部長などを経て、2018年6月より現職。


社外取締役は、園部洋士(元須田清法律事務所入所)、藤原哲(元中央新光監査法人入所)、片岡宏介(元中央青山監査法人入所)、増江亜佐緒(元奥野総合法律事務所入所)です。

2. 事業内容


同社グループは、「鉄鋼事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 鉄鋼事業


一般構造用圧延鋼材棒鋼や鉄筋コンクリート用棒鋼などの小形棒鋼、および鉄筋の機械式継手の製造・販売を行っています。主力製品の「ネジテツコン」は建設現場での省力化に貢献しています。

収益は主に建設会社や建材商社への製品販売から得ています。運営は同社および、再生砕石の製造販売を行うトーテツ産業、製品販売を行う東京鐵鋼土木、スクラップ処理を行う関東メタルなどのグループ会社が行っています。

(2) その他


鉄鋼事業に含まれない事業として、貨物運送や設備等のメンテナンス事業を展開しています。

収益は運送サービスやメンテナンス業務の提供対価として得ています。運営は主にトーテツ興運(貨物運送)、トーテツメンテナンス(設備メンテナンス)が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、特に2023年3月期以降の伸びが顕著です。利益面でも、2022年3月期は赤字となりましたが、その後は回復し、直近では高い利益率を達成しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 624億円 661億円 792億円 796億円 826億円
経常利益 75億円 -6億円 49億円 114億円 151億円
利益率(%) 12.1% -1.0% 6.2% 14.3% 18.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 50億円 -47億円 37億円 79億円 109億円

(2) 損益計算書


売上高は増加し、売上総利益率も改善しています。営業利益率は2ケタ台後半に達しており、収益性の向上が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 796億円 826億円
売上総利益 184億円 234億円
売上総利益率(%) 23.1% 28.3%
営業利益 106億円 147億円
営業利益率(%) 13.3% 17.8%


販売費及び一般管理費のうち、運搬費が33億円(構成比38.4%)、その他が23億円(同26.5%)を占めています。売上原価についても、原材料費等の変動が影響しています。

(3) セグメント収益


主力の鉄鋼事業が増収増益となり、全社の業績を牽引しました。その他事業も大幅な増益を達成していますが、規模は限定的です。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
鉄鋼事業 788億円 815億円 104億円 143億円 17.6%
その他 8億円 11億円 1億円 3億円 29.8%
調整額 - - 0.5億円 0.3億円 -
連結(合計) 796億円 826億円 106億円 147億円 17.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

東京鐵鋼は、鉄鋼事業を中心に堅調な売上を維持しています。営業活動によるキャッシュ・フローは、利益の増加を主因に収入となりました。一方で、設備投資や配当金の支払いなどにより、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローは支出となりました。これらの活動の結果、現金及び現金同等物は減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 121億円 82億円
投資CF -46億円 -56億円
財務CF -31億円 -48億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「建設業の発展に寄与し、環境リサイクルへの貢献を目指す東京鐵鋼」をコーポレート・メッセージとして掲げ、これを経営の基本においています。建設業界のニーズに応えるエンジニアリングサービスの提供と、環境保全企業としての社会貢献を目指しています。

(2) 企業文化


製造技術力、開発技術力、施工技術力という強みを活かし、製品や鉄筋工事に関するノウハウを総合的に提供する姿勢を重視しています。また、鉄スクラップのリサイクル等を通じて環境保全に取り組むなど、社会的責任を果たすことを企業活動の根幹に据えています。

(3) 経営計画・目標


持続的な成長と中長期的な企業価値向上を図るため、十分なキャッシュ・フローの獲得を重視しています。具体的な経営目標として以下を掲げています。
* 連結経常利益:70億円以上
* 自己資本利益率(ROE):10.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「ネジテツコン」と継手をコアとして、建築現場の生産性向上に寄与するエンジニアリング力により差別化と高付加価値化を推進します。建設需要の減退を見据え、既存分野では機能向上とコスト圧縮を進めつつ、デジタル基盤の強化も図ります。
* 八戸工場の環境リサイクル事業の収益性向上(省力化・効率化)
* 本社工場を補完する生産拠点としての八戸工場の活用(ネジテツコン生産拡大)
* 他社とのアライアンス活用(伊藤製鐵所との連携など)
* カーボンニュートラル推進(低CO2鉄筋の発売など)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


製造・開発・施工の技術力やエンジニアリング力は従業員の能力によって発展すると認識し、継続的な人材育成に努めています。独自の社内プログラムや外部研修などを通じて能力向上を図るとともに、性別や国籍等の区別なく公正な採用・処遇を行っています。また、多様な働き方を可能にする就業環境の整備にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 38.8歳 13.3年 6,945,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 22.0%
男女賃金差異(全労働者) 79.0%
男女賃金差異(正規) 82.8%
男女賃金差異(非正規) 72.9%


※管理職に占める女性労働者の割合については、女性活躍推進法の公表項目として選択していないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用計画人数の達成率(129.7%)、多様な働き方に向けた新たな制度の導入数(2つ)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 製品及び原材料の価格変動


主力製品であるネジテツコン等の棒鋼製品価格や、主原料である鉄スクラップ価格は市況により変動します。これに対し、市況の影響を受けにくい高付加価値商品の売上比率を高めることで、リスク軽減を図っています。

(2) 建設需要の減少


経済の成熟化や人口構造の変化等により、国内建設需要の減少が見込まれます。これに伴う棒鋼需要の減少に対処するため、ネジテツコンなど建設業界のニーズに応えた付加価値製品の拡販を進め、業績進展に努める方針です。

(3) 災害、事故に起因する生産活動の停止等


大規模な自然災害や重大な設備事故、労働災害が発生した場合、操業停止等により業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、BCP委員会を設置し、定期的な協議を通じて事業継続のための対策を講じています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。