※本記事は、株式会社東京鐵鋼の有価証券報告書(第98期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東京鐵鋼ってどんな会社?
鉄筋コンクリート用棒鋼や機械式継手などの鉄鋼製品を製造・販売する独立系電炉メーカーです。
■(1) 会社概要
1939年に東京都足立区に設立され、銑鉄及び鋳鉄の製造を開始しました。1969年には小山工場で棒鋼の生産を始め、1974年に東京証券取引所の市場第一部に上場しています。その後、合同製鐵や伊藤製鐵所との業務提携などを経て事業基盤を強化し、独自のネジフシ鉄筋「ネジテツコン」を中心に建設業界向けの製品群を拡大してきました。
同社グループの従業員数は連結で815名、単体で607名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位には長年にわたり業務提携関係にある事業会社の合同製鐵が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.93% |
| 合同製鐵 | 5.45% |
| 三井住友銀行 | 5.02% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役会長最高経営責任者を吉原毎文氏、代表取締役社長最高執行責任者を吉原栄孝氏が務めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 吉原 毎文 | 代表取締役会長最高経営責任者 | 1973年同社入社。営業部長、取締役営業部長、常務、副社長を経て1992年社長就任。2024年より現職。 |
| 吉原 栄孝 | 代表取締役社長最高執行責任者 | 2006年同社入社。海外開発部長、ネジ加工品事業部副事業部長等を経て2022年取締役就任。2024年より現職。 |
| 柿沼 忠司 | 取締役最高リスク管理責任者(CRO)常務執行役員 | 1991年同社入社。人事部長、総務・人事部長等を経て2020年取締役就任。2025年より現職。 |
| 田中 能成 | 取締役物流統括管理者 | 1988年同社入社。総合企画部長等を経て2017年取締役就任。常務取締役を経て2025年より現職。 |
| 武笠 達也 | 取締役上席執行役員 | 1987年同社入社。ネジ加工品事業部長、総合企画部長等を経て2018年取締役就任。2025年より現職。 |
| 進士 年治 | 取締役最高財務責任者(CFO)上席執行役員 | 2020年三井住友銀行リテール部門統括責任役員補佐。2022年同社入社。2025年取締役、2026年より現職。 |
| 中嶌 知義 | 取締役(監査等委員) | 2014年三井住友銀行グローバル・アドバイザリー部付部長。2016年同社入社。2018年より現職。 |
社外取締役は、澤田和也(弁護士)、片岡宏介(公認会計士)、増江亜佐緒(弁護士)、下田祐子(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「鉄鋼事業」および「その他」事業を展開しています。
■鉄鋼事業
JIS規格による小形棒鋼及び鉄筋の機械式継手などの製造・販売を行っています。建設業界の高度化・多様化するニーズに応えるため、独自の製造・開発・施工技術を生かし、建設工事の省力化や合理化に寄与する高付加価値な製品とエンジニアリングサービスを総合的に提供しています。
主に建設会社や商社向けに製品を販売し、その代金を収益としています。同事業の運営は、同社のほか、トーテツ産業、東京鐵鋼土木、関東メタル、トーテツ資源、JOTSなどが共同で担当し、製造から販売、原材料の調達までを一貫して推進しています。
■その他事業
鉄鋼事業に含まれない付随的な事業領域であり、主に貨物運送や設備等のメンテナンス事業などを手掛けています。同社グループの事業活動をサポートし、安定的な供給体制の維持に貢献しています。
貨物運送に伴う運送料や、設備メンテナンス業務の対価を収益として受け取っています。この事業の運営は、主に子会社であるトーテツ興運およびトーテツメンテナンスが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は原材料高騰を背景とした製品価格の改善などにより2025年3月期まで順調に拡大していましたが、直近では鉄筋の出荷数量の減少などにより減収となっています。利益面については高付加価値製品の販売推進などにより高い利益水準を維持していますが、売上減に伴い直近は減益傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 661億円 | 792億円 | 796億円 | 826億円 | 725億円 |
| 経常利益 | -6億円 | 49億円 | 114億円 | 151億円 | 120億円 |
| 利益率(%) | -1.0% | 6.2% | 14.3% | 18.2% | 16.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -50億円 | 27億円 | 86億円 | 111億円 | 87億円 |
■(2) 損益計算書
出荷数量の減少により売上高と売上総利益が減少しています。これに伴い営業利益も減少していますが、運搬費の削減など販売費及び一般管理費の圧縮に努めており、依然として安定した営業利益率を確保しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 826億円 | 725億円 |
| 売上総利益 | 234億円 | 205億円 |
| 売上総利益率(%) | 28.3% | 28.2% |
| 営業利益 | 147億円 | 120億円 |
| 営業利益率(%) | 17.8% | 16.6% |
販売費及び一般管理費のうち、運搬費が29億円(構成比34%)、給料が14億円(同16%)を占めています。売上原価は521億円で、売上高に対する原価率は72%となっています。
■(3) セグメント収益
主力である鉄鋼事業は、鉄筋および関連商品の出荷数量減少を背景に売上高・利益ともに減少しました。その他事業についても、貨物輸送量の減少により減収減益となっていますが、高い利益率を維持しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 鉄鋼事業 | 815億円 | 716億円 | 143億円 | 118億円 | 16.5% |
| その他 | 11億円 | 10億円 | 3億円 | 2億円 | 23.5% |
| 連結(合計) | 826億円 | 725億円 | 147億円 | 120億円 | 16.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は営業活動で得たキャッシュを投資や借入金の返済にバランスよく充てており、財務基盤の安定した健全型のキャッシュ・フロー状況にあります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 82億円 | 52億円 |
| 投資CF | -56億円 | -70億円 |
| 財務CF | -48億円 | -52億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.1%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は78.8%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「建設業の発展に寄与し、環境リサイクルへの貢献を目指す東京鐵鋼」というコーポレート・メッセージを経営の基本に据えています。「鉄のリサイクルを通じて社会に貢献します」「最先端の建設パーツ・システムを開発して建設業の発展に寄与します」というグループ経営理念のもと、サーキュラーエコノミー(循環型社会)の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
SDGsやサステナビリティの考え方を体現し、事業活動そのものが環境負荷低減に直結するという価値観を重視しています。また、従業員の能力向上が技術力の発展につながると認識し、性別や国籍等の区別なく採用・登用・配置・処遇を公正に行うことを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
適正な資本政策を遂行し、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るためには、十分なキャッシュ・フローの獲得が重要であると考えており、以下の目標を掲げています。
* 連結経常利益70億円以上
* 自己資本利益率10.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「ネジテツコン」と専用継手などの高付加価値製品の販売を推進し、建築現場の省力化・生産性向上に寄与するエンジニアリング力で差別化を図ります。既存分野の効率化やデジタル技術の活用を進めつつ、環境リサイクル事業による低CO2鉄筋の提供でカーボンニュートラルに貢献し、他社とのアライアンスも推進していく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「従業員の能力」が企業の強みを発展させると認識し、継続的な人材育成に努めています。階層別研修や資格取得支援を通じて能力向上を図るほか、女性に限らず全従業員が状況に応じて意欲的に能力を発揮できるよう、労働条件やキャリアパスの弾力化など、就業環境の整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 38.9歳 | 13.4年 | 7,577,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.2% |
| 男性育児休業取得率 | 33.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 81.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 84.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 80.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用計画人数の達成率(93.9%)、多様な働き方に向けた新たな制度の導入数(0)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 製品及び原材料の価格変動
主力製品であるネジテツコンなどの棒鋼製品の価格および主原料である鉄スクラップの価格は市況により変動し、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は、市況の影響を受けにくい商品の売上比率を高めることでリスクの軽減を図っています。
■(2) 建設需要の減少
経済構造の成熟化や人口減少により国内の建設需要が減少し、それに伴い棒鋼製品の需要も減少することで、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は、建設業界のニーズに応えた付加価値製品の拡販によりこれに対処する方針です。
■(3) 災害、事故に起因する生産活動の停止等
同社の各工場が大規模な地震や台風などの自然災害に見舞われた場合、または重大な設備事故や労働災害が発生した場合、工場の操業停止等により業績に影響を及ぼす可能性があります。BCP委員会を設置し、事業継続のための対策を定期的に協議しています。



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