※本記事は、パウダーテック株式会社の有価証券報告書(第60期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. パウダーテックってどんな会社?
同社は事務機器向けフェライトキャリアや食品向け脱酸素剤の製造販売を主力とする機能性材料メーカーです。
■(1) 会社概要
1966年に三井金属鉱業と南悠商社の折半出資により設立され、1989年にパウダーテックへ社名変更しました。1990年に店頭登録し、2004年にジャスダック上場を果たしています。現在は「機能性材料事業」と「品質保持剤事業」の2つの報告セグメントを展開しています。
同社グループの従業員数は連結で262名、単体で227名です。筆頭株主は事業会社の南悠商社で、第2位は同じく事業会社の三井金属です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 南悠商社 | 37.62% |
| 三井金属 | 35.27% |
| パウダーテック従業員持株会 | 3.77% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長は丸山憲行氏が務めています。社外取締役の比率は36.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 丸山憲行 | 代表取締役社長兼社長執行役員 | 1986年三井金属鉱業入社。同社機能粉事業部長等を歴任後、2018年同社監査役。2021年取締役兼執行役員企画室長を経て、2024年4月より現職。 |
| 菊池節 | 代表取締役会長 | 1997年高萩炭礦取締役副社長。1998年同社監査役、1999年取締役。南悠商社代表取締役社長等を歴任し、2016年6月より現職。 |
| 板越剛 | 取締役兼専務執行役員 | 1989年同社入社。キャリア事業部長等を経て、2019年取締役キャリア事業部長。2022年取締役兼執行役員生産本部長等を歴任し、2026年4月より現職。 |
| 小林弘道 | 取締役兼常務執行役員 | 1993年同社入社。市場開発部長等を経て、2021年執行役員市場開発部長。2023年取締役兼執行役員開発本部長等を歴任し、2026年4月より現職。 |
社外取締役は、樋口真道(南悠商社取締役)、森隆男(公認会計士森隆男事務所所長)、村尾治亮(東啓綜合法律事務所パートナー)、岡田和之(三井金属執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「機能性材料事業」および「品質保持剤事業」の事業を展開しています。
■機能性材料事業
主に複合機・プリンター業界向けに電子写真用キャリアと、粉体技術を応用展開した新規用途向け各種機能性微粒子を生産・販売しています。
顧客から製品販売の対価を受け取る収益モデルです。運営は同社と同社子会社のパウダーテックインターナショナルコープが担当しています。
■品質保持剤事業
主に食品業界向けに品質保持用として脱酸素剤、酸素検知剤を生産・販売しています。
食品業界の顧客から製品販売の対価を受け取る収益モデルです。運営は主に同社子会社のワンダーキープ高萩が担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績は、売上高が85億円から91億円のレンジで概ね安定して推移しています。経常利益は一時的に減少傾向にありましたが、直近では回復に転じて増益基調となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 88億円 | 88億円 | 85億円 | 91億円 | 91億円 |
| 経常利益 | 11億円 | 7億円 | 5億円 | 4億円 | 6億円 |
| 利益率(%) | 12.8% | 8.4% | 5.6% | 4.1% | 6.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 5億円 | 4億円 | 3億円 | 4億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期の損益構成は、売上高が横ばいで推移するなか、販売価格の適正化や原価低減の強化が寄与し、売上総利益と営業利益がともに増加して利益率が改善しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 91億円 | 91億円 |
| 売上総利益 | 23億円 | 25億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.8% | 27.5% |
| 営業利益 | 3億円 | 5億円 |
| 営業利益率(%) | 3.6% | 5.8% |
販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び給料・手当が6億円(構成比29%)、研究開発費が5億円(同24%)を占めています。
■(3) セグメント収益
機能性材料事業は、高付加価値製品の増加等により増収となり、利益も拡大しました。品質保持剤事業は、販売競争の激化により減収となりましたが、原価低減や販売価格適正化により増益を確保しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 機能性材料事業 | 81億円 | 82億円 | 12億円 | 15億円 | 18.6% |
| 品質保持剤事業 | 11億円 | 10億円 | 0.1億円 | 0.5億円 | 5.0% |
| 調整額 | - | - | -9億円 | -10億円 | - |
| 連結(合計) | 91億円 | 91億円 | 3億円 | 5億円 | 5.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CF・財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 9億円 | 18億円 |
| 投資CF | -5億円 | -7億円 |
| 財務CF | -3億円 | -5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は81.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「技術を以て社会の繁栄に貢献する」「誠実を以て貫く」「チャレンジ精神、開拓精神に徹する」「社会のニーズに迅速に対応する」という4つの経営理念を掲げています。情報と市場を広く世界に求め、絶え間なく技術の前進を続ける企業として、社会のニーズに応える事業運営を行っています。
■(2) 企業文化
『”技術の一粒”小さな粒から、未来につなぐ』というパーパスを定めています。従業員一人ひとりが主体的に課題を発見し、「こうしたい」と自ら提案・実行できる組織風土を醸成し、失敗を恐れず前例にとらわれない挑戦を促す企業文化を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、3ヵ年ごとに中期経営計画を策定しています。「2025-2027年度中期経営計画」において、持続的な成長と中長期的な企業価値向上の礎を築くことを目指しています。
* 2027年度 売上高:102億円
* 2027年度 経常利益:8.0億円
* 2027年度 ROE:4.4%
■(4) 成長戦略と重点施策
利益率の回復と資本の再配分を通じた製品ポートフォリオの組替えを進めるほか、「注力製品」「育成製品」への投資拡充による新規機能性材料製品の開発強化に取り組んでいます。また、柏工場の再エネ活用や耐震性向上などを織り込んだ「工場環境整備(グランドデザイン)」を実施し、全社のコア人材育成も推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人材こそ成長の原動力」との考えのもと、多様な専門性を持つ人材が挑戦し続ける組織づくりを推進しています。開発型企業として培った技術を継承しながら、重要プロジェクト等を通じた実践的な経験機会を提供し、グローバルな視点と高度な専門性を備えたコア人材の育成を強化しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 45.9歳 | 17.7年 | 6,792,042円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.3% |
| 男性育児休業取得率 | 125.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 77.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 77.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 196.3% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇全社平均取得率(83.4%)、再生可能エネルギー導入比率(9.6%)、障がい者雇用率(2.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 大規模自然災害や感染症の流行
地震等の自然災害や感染症の流行により、生産設備の損壊や物流の停滞、従業員の就業制限が生じた場合、生産停止等を通じて業績に影響を及ぼすリスクがあります。同社は事業継続計画を策定し、拠点復旧や調達先の分散化等を進めています。
■(2) 情報セキュリティリスク
事業活動に伴う重要な情報資産に対し、サイバー攻撃や不正アクセス、内部不正等により漏えいや改ざんが発生した場合、社会的信用の低下や損害賠償を通じて業績に影響するリスクがあります。アクセス制御の強化や従業員教育によりリスク低減に努めています。
■(3) 原材料等の安定調達リスク
原材料・副資材を国内外から調達しており、地政学的要因や自然災害等で安定調達が困難となり、価格高騰や供給不足が発生した場合、生産活動や収益性に影響するリスクがあります。複数の調達先確保や適正在庫の維持等でサプライチェーンの安定化を図っています。
■(4) 業界再編および需要変動リスク
機能性材料事業において、テレワーク等の普及に伴う印刷機会の減少や、半導体産業の景況による需要変動リスクがあります。また、事務機器メーカー等の業界再編や技術革新による価格競争が業績に影響する可能性があるため、次世代キャリアの開発等を進めています。



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