パウダーテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

パウダーテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場し、電子写真用キャリアや脱酸素剤等の製造販売を主力としています。当連結会計年度の業績は、機能性材料製品の販売増により売上高は91億円と前期比6.9%の増収となりましたが、原材料価格や人件費の上昇等の影響で経常利益は3.8億円と21.3%の減益となりました。


※本記事は、パウダーテック株式会社 の有価証券報告書(第59期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. パウダーテックってどんな会社?


複合機・プリンター用キャリアや脱酸素剤を製造し、独自の粉体技術でニッチトップを目指す企業です。

(1) 会社概要


同社は1966年、三井金属鉱業と南悠商社の折半出資により日本鉄粉として設立されました。1970年に電子写真用キャリアを開発し、1989年に現社名へ変更しています。2004年にジャスダック証券取引所へ株式を上場し、2017年には売上高100億円を突破しました。2022年に鉄粉販売事業から撤退し、現在の事業構成となっています。

連結従業員数は265名、単体従業員数は223名です。筆頭株主は同社のその他の関係会社である南悠商社で、第2位は同じくその他の関係会社である三井金属鉱業です。両社は同社の設立母体であり、現在も原材料の仕入や業務委託等を通じて密接な関係を維持しています。

氏名 持株比率
南悠商社 37.71%
三井金属鉱業 35.35%
パウダーテック従業員持株会 3.54%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長兼社長執行役員は丸山憲行氏です。社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
丸山 憲行 代表取締役社長兼社長執行役員 1986年三井金属鉱業入社。同社執行役員機能材料事業本部副本部長などを経て2023年6月より現職。
菊池 節 代表取締役会長 1997年高萩炭礦取締役副社長。南悠商社代表取締役社長、京葉瓦斯代表取締役会長などを歴任し、2016年6月より現職。
板越 剛 取締役兼常務執行役員 1989年日本鉄粉(現パウダーテック)入社。キャリア事業部長、生産本部長などを経て2024年4月より現職。
小林 弘道 取締役兼執行役員 1993年同社入社。市場開発部長、開発本部長などを経て2024年4月より現職。


社外取締役は、樋口真道(南悠商社取締役管理本部長)、納武士(三井金属鉱業代表取締役社長)、森隆男(公認会計士森隆男事務所所長)、村尾治亮(東啓綜合法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「機能性材料事業」および「品質保持剤事業」を展開しています。

(1) 機能性材料事業


主に複合機・プリンター業界向けに、電子写真用キャリア(トナーを感光体まで運ぶ磁性粉体)を生産・販売しています。また、独自の粉体技術を応用展開した、新規用途向けの各種機能性微粒子の開発・提供も行っています。

収益は、国内外の複合機・プリンターメーカー等への製品販売代金等から得ています。運営は、同社および米国の連結子会社であるパウダーテックインターナショナルコープが行っています。

(2) 品質保持剤事業


主に食品業界向けに、食品の鮮度や風味を保つための品質保持用として、脱酸素剤(ワンダーキープ)や酸素検知剤を生産・販売しています。

収益は、食品メーカーや包装資材商社等への製品販売代金から得ています。運営は、同社および製造子会社である株式会社ワンダーキープ高萩が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は77億円から91億円のレンジで推移しています。経常利益は2022年3月期に11億円を超えましたが、その後は原材料価格の高騰や需要動向の影響を受け、直近では3.8億円まで減少しています。当期純利益も同様の傾向を示しつつ、黒字を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 77億円 88億円 88億円 85億円 91億円
経常利益 2.8億円 11.4億円 7.4億円 4.8億円 3.8億円
利益率(%) 3.6% 12.8% 8.4% 5.6% 4.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.7億円 8.2億円 5.4億円 2.8億円 3.2億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しましたが、売上原価率の上昇により売上総利益率は若干低下しました。営業利益率は前期の4.8%から3.6%へ低下しています。コスト増が利益を圧迫している傾向が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 85億円 91億円
売上総利益 20億円 21億円
売上総利益率(%) 23.6% 23.2%
営業利益 4.1億円 3.3億円
営業利益率(%) 4.8% 3.6%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が4.6億円(構成比25.6%)、役員報酬及び給料・手当が5.3億円(同29.8%)を占めています。売上原価に関しては詳細な内訳データはありません。

(3) セグメント収益


機能性材料事業は販売数量増や価格適正化により増収となりましたが、原材料価格や人件費等の上昇により利益は横ばいでした。品質保持剤事業は前期の火災影響等で減収となりましたが、販売価格適正化や一過性費用の解消により大幅な増益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
機能性材料事業 74億円 81億円 8.7億円 8.7億円 10.8%
品質保持剤事業 11億円 11億円 0.0億円 0.1億円 1.3%
調整額 - - -4.7億円 -5.6億円 -
連結(合計) 85億円 91億円 4.1億円 3.3億円 3.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

パウダーテックは、流動性確保のため、複数の金融機関との間でコミットメントライン契約を締結し、10億円の融資枠を維持しています。

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権の増減額が増加したことにより、前連結会計年度に比べ大幅に増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出が増加したため、前連結会計年度に比べ支出が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度並みの支出となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 1.8億円 8.6億円
投資CF -3.8億円 -5.0億円
財務CF -2.4億円 -2.8億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「情報と市場を広く世界に求め、絶え間なく技術の前進を続ける企業」であることを基本方針としています。また、経営理念として「技術を以て社会の繁栄に貢献する」「誠実を以て貫く」「チャレンジ精神、開拓精神に徹する」「社会のニーズに迅速に対応する」の4つを掲げています。

(2) 企業文化


同社はパーパスとして『 ”技術の一粒”小さな粒から、未来につなぐ 』を掲げています。独自の技術力と誠実な姿勢を重視し、社会課題の解決や社会のニーズへの迅速な対応を通じて、社会に必要とされる「エッセンシャル企業」を目指す文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は2040年のありたい姿からバックキャストした「25中計」(2025-2027年度)を策定しています。最終年度の数値目標として以下を掲げています。

* 売上高:102億円
* 経常利益:8億円
* ROE:4.4%

(4) 成長戦略と重点施策


「25中計」では、成長戦略と財務・資本戦略の実行により、持続的な成長と中長期的な企業価値向上の礎を築くことを基本戦略としています。成長戦略として、製品ポートフォリオの再構築、新規機能性材料製品への投資拡充、コア人材の育成強化、柏工場のインフラ整備や再エネ活用を含むグランドデザインの実施を掲げています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


技術開発を主体とする企業として、技術者を中心に計画的な採用を行っています。多様性確保のため、性別・国籍・年齢を問わず公正な採用を実施し、入社後は階層別・分野別教育を通じて人材育成に取り組んでいます。また、福利厚生施設の充実やテレワーク、育児休業の推進など、多様な人材が働き続けられる環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.6歳 17.4年 6,669,079円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.3%
男性育児休業取得率 83.3%
男女賃金差異(全労働者) 74.8%
男女賃金差異(正規雇用) 77.7%
男女賃金差異(非正規) 165.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、二酸化炭素排出量2024年度実績(2013年度比△29%)、2024年度採用者の女性比率(53%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 大規模自然災害、感染症の大規模流行


地震や台風等の自然災害、または感染症のパンデミックが発生した場合、従業員や生産設備、サプライチェーンに被害が及び、経営成績に重要な影響を与える可能性があります。これに対し、BCPの策定や定期的な見直し、感染症防止策の徹底などによりリスク低減を図っています。

(2) 情報セキュリティ


サイバー攻撃や過失等により機密情報の漏洩や消失が発生した場合、損害賠償や社会的信用の低下を招く恐れがあります。ICTを活用した統一的な管理、情報システム管理規則の遵守、秘密保持契約の締結などを通じてセキュリティ対策を実施しています。

(3) 環境事故


設備の故障や操作ミス等により環境事故が発生した場合、損害賠償責任が生じる可能性があります。重要設備の予防保全、定期メンテナンス、予備部品の確保、担当者教育の実施、環境対策投資の継続により、事故発生の防止とリスク低減に努めています。

(4) プラント、設備の事故


設備故障等による操業停止は、販売機会の損失や損害賠償につながる可能性があります。予防保全に加え、緊急事態対応体制や初動対応計画(IMP)、事業継続計画(BCP)を構築し、予備部品の確保や担当者教育を通じて安定操業の維持を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。