エスイー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エスイー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エスイーは東京証券取引所スタンダード市場に上場する企業です。主にアンカーや落橋防止装置などの建設用資機材、建築用資材の製造・販売、建設コンサルタント、補修・補強工事を展開しています。直近の業績は、案件の端境期等の影響で売上高が減少、先行投資や研究開発費の増加等により減収減益・最終赤字のトレンドです。


※本記事は、株式会社エスイーの有価証券報告書(第45期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エスイーってどんな会社?


建設用資機材の製造・販売を中心に、社会インフラの整備や防災・減災に貢献する技術力を持ったメーカーです。

(1) 会社概要


1967年に新構造技術の一部門として設立され、1981年にエスイー産業として分離・独立しました。1991年に現在のエスイーへと商号変更し、1999年に株式を店頭登録、2004年にジャスダック証券取引所へ上場しました。近年はコンクリート二次製品や補修・補強工事業へ参入するなど、事業領域を拡大しています。

同社グループの従業員数は連結で559名、単体で198名です。筆頭株主は資産管理等を行う有限会社エヌセックで、第2位は事業会社の麻生、第3位は個人の松本美枝子氏となっています。

氏名 持株比率
有限会社エヌセック 36.30%
麻生 3.20%
松本美枝子 2.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役会長執行役員会長エスイーグループCEOは森元峯夫氏、代表取締役社長執行役員社長COOは宮原一郎氏が務めています。社外取締役の比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
森元峯夫 代表取締役会長執行役員会長エスイーグループCEO 新構造技術社長等を経て、1981年よりエスイー社長。2014年アンジェロセックCEO。2015年より現職。
宮原一郎 代表取締役社長執行役員社長COO 三菱商事執行役員等を経て、2017年エスイー顧問。2019年より現職。
串田信行 取締役執行役員副社長グループ統括管掌 三菱商事都市開発副社長、エスイーA&K(現A&Kホンシュウ)社長等を経て、2023年より現職。
野島久弘 取締役常務執行役員管理管掌管理本部長 地銀生保住宅ローンを経てエスイー入社。管理本部総務部長等を経て、2021年より現職。
小松真彦 取締役常務執行役員営業管掌営業本部長 エスイー入社後、営業本部大阪支店長等を経て、2026年より現職。
市川真佐史 取締役執行役員生産管掌生産本部長 オーカ装置工業等を経てエスイー入社。エスイー鉄建社長等を経て、2025年より現職。


社外取締役は、岡俊明(元サッポロビール飲料社長)、平野尚也(元ボーダフォン常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設用資機材の製造・販売事業」「建築用資材の製造・販売事業」「建設コンサルタント事業」「補修・補強工事業」および「その他」事業を展開しています。

建設用資機材の製造・販売事業


土木建設資材である「アンカー」「落橋防止装置」「PC用ケーブル」などのケーブル製品や、土木分野での鉄鋼製品、コンクリート製品を製造・販売しています。主に公共投資やインフラ老朽化対策に向けた需要に対応しています。

製品の販売や建設用機材のレンタルにより収益を得るモデルです。運営はエスイーを中心に、アースデザインエンジニアリング、エスイー鉄建、A&Kホンシュウ、北都運輸の各社が担当しています。

建築用資材の製造・販売事業


建物に用いられる「セパレーター」「吊りボルト」等の建築用資材の製造・販売や、鉄骨工事、建築部材・建築耐震金物等の製造・販売を行っています。

建築資材の販売代金や鉄骨工事の請負代金として収益を得ています。運営は主にA&Kホンシュウとエスイー鉄建の2社が担当しています。

建設コンサルタント事業


国内の建設コンサルタント業務や、海外(主にODA市場)において道路、橋梁、建機、水、エネルギー、開発調査等に係る幅広いコンサルタントサービスを提供しています。

調査や設計業務等のコンサルタントフィーとして収益を得るモデルです。アンジェロセックおよび日越建設コンサルタント(VJEC)が運営を担当しています。

補修・補強工事業


橋梁構造物やトンネル等の社会インフラを中心とした補修・補強工事の施工、および点検・調査業務を提供しています。インフラ老朽化に伴う維持管理需要に対応しています。

土木・建築の請負工事や点検業務の受託代金により収益を得ています。エスイーリペアおよびランドプランが運営を担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2024年3月期まで売上高は増加傾向でしたが、その後は減少に転じています。利益面は先行投資や研究開発費の増加等により経常利益が減少傾向にあり、直近の2026年3月期は最終赤字を計上しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 242億円 255億円 265億円 259億円 254億円
経常利益 20億円 14億円 14億円 9億円 6億円
利益率(%) 8.2% 5.4% 5.2% 3.4% 2.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 16億円 9億円 10億円 5億円 -4億円

(2) 損益計算書


売上高の減少に伴い、売上総利益や営業利益も減少しています。利益率も低下傾向にあり、収益性の確保が課題となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 259億円 254億円
売上総利益 69億円 68億円
売上総利益率(%) 26.7% 26.8%
営業利益 8億円 6億円
営業利益率(%) 3.3% 2.4%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が19億円(構成比30%)、販売運賃が8億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


補修・補強工事業は順調に増収となりましたが、建設用資機材や建築用資材の事業では施工量の減少や工期の見直し等の影響で減収となり、全体でも減収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
建設用資機材の製造・販売事業 125億円 120億円
建築用資材の製造・販売事業 104億円 99億円
建設コンサルタント事業 6億円 7億円
補修・補強工事業 24億円 28億円
連結(合計) 259億円 254億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CF・投資CF・財務CFのパターンは「健全型」です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 17億円 11億円
投資CF -9億円 -8億円
財務CF -10億円 -4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-4.0%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も42.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「変化と新しい価値の創造」「顧客に満足される新しい機能の創造」「社会、自然環境との調和」「社員の個性尊重」を経営理念として掲げています。社会資本の形成に寄与するだけでなく、新しい価値を創造し提供し続けることを目指しています。

(2) 企業文化


これまで培った技術とエンジニアリングの力に新しい技術をクロスさせ、サステナブルな社会へつなぐという「2030ビジョン」を掲げ、事業を通じた社会課題の解決に挑戦する文化を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


「中期経営計画2030」において、新規事業への戦略的な資源投入を継続・拡大し、2030年度には複数の新規事業の収益化を図ることを目標として設定しています。

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業の収益力を強化しつつ、気候変動やインフラ老朽化といった社会課題解決に貢献するため、発電事業やBIM設計支援事業などの新規事業を育成する方針です。また、海外事業の展開にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


既存事業の収益力向上と新規事業の創出を担う人材の育成・最適配置を中核とした人的資本経営を推進しています。新卒・中途採用の強化やタレントマネジメントシステムの導入を進め、適材適所の配置と人材の定着を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.1歳 14.1年 7,065,483円


※平均年間給与は、税込支払給与額の平均であり、基準外賃金及び賞与を含んでいます。

(3) 人的資本開示


エスイーおよび連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設投資減少に関するリスク


売上の約6割が国内建設市場向けであり、長期的には公共投資が漸減傾向となることが予想されています。財政健全化等を目的として公共投資が急減する場合や、民間設備投資が縮小する場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料高騰に関するリスク


主力製品群の製造原価の約7割を原材料費が占めています。鉄やPC鋼線等の価格は市況により大きく変動するため、原材料が急騰した場合には、コスト増による利益圧迫が生じるリスクがあります。

(3) 海外事業展開に関するリスク


成長戦略として海外での事業展開を積極的に実施していますが、言語や地理的要因、法制度・税制度の違いなどのカントリーリスクが存在します。これらに適切に対処できない場合、事業遂行に支障をきたす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。