エスイー転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、株式会社エスイー の有価証券報告書(第44期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. エスイーってどんな会社?
建設用資機材や建築用資材の製造・販売を主力とし、防災・減災やインフラ強靭化に貢献する製品を提供するメーカーです。
■(1) 会社概要
1981年にエスイー産業として設立され、1991年に現社名へ変更しました。1999年に株式を店頭登録し、2004年にジャスダック証券取引所へ上場しました。その後、2009年に仮設資材事業、2012年に補修・補強工事業へ参入するなど事業領域を拡大し、2022年の市場区分見直しによりスタンダード市場へ移行しています。
連結従業員数は570名、単体では196名です。筆頭株主は同社代表取締役会長が代表を務める資産管理会社の有限会社エヌセックで、第2位はセメント事業などを展開する株式会社麻生、第3位は個人株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有限会社エヌセック | 36.20% |
| 麻生 | 3.20% |
| 松本 美枝子 | 2.70% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は宮原一郎氏です。社外取締役比率は18.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 森元 峯夫 | 代表取締役会長執行役員会長エスイーグループCEO | 1958年ピー・エス・コンクリート入社。新構造技術社長等を経て、1981年同社社長。2015年より現職。 |
| 宮原 一郎 | 代表取締役社長執行役員社長COO | 1977年三菱商事入社。同社執行役員開発建設本部長、朝日機材副社長等を経て、2019年より現職。 |
| 串田 信行 | 取締役執行役員副社長グループ統括管掌 | 1971年三菱商事入社。三菱商事都市開発副社長、エスイーA&K社長等を経て、2023年より現職。 |
| 野島 久弘 | 取締役常務執行役員管理管掌管理本部長 | 1987年地銀生保住宅ローン入社。1996年同社入社。管理本部副本部長、執行役員等を経て、2021年より現職。 |
| 小松 真彦 | 取締役執行役員営業管掌営業本部長 | 1998年同社入社。大阪支店長、執行役員営業本部長等を経て、2023年より現職。 |
| 市川 真佐史 | 取締役執行役員生産管掌生産本部長 | 1992年オーカ装置工業入社。1994年同社入社。エスイー鉄建社長等を経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、岡俊明(元サッポロビール飲料社長)、平野尚也(元インテック専務)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建設用資機材の製造・販売事業」、「建築用資材の製造・販売事業」、「建設コンサルタント事業」および「補修・補強工事業」を展開しています。
■建設用資機材の製造・販売事業
土木建設資材である「アンカー」「落橋防止装置」「PC用ケーブル」などのケーブル製品や、「KIT受圧板」等の鉄鋼製品、コンクリート製品を製造・販売しています。主な顧客は官公庁や建設会社であり、地すべり防止や橋梁の耐震補強など、国土強靭化やインフラ整備に関わる分野で製品が使用されています。
収益は、これらの製品を顧客へ販売することで得ています。運営は、同社および株式会社アースデザインエンジニアリング、エスイー鉄建、A&Kホンシュウ、北都運輸が行っています。特に同社はケーブル製品や鉄鋼製品の製造・販売を中心に行っています。
■建築用資材の製造・販売事業
建物に用いられる「セパレーター」「吊りボルト」等の建築資材の製造・販売、ならびに鉄骨工事および建築部材・建築耐震金物等の製造・販売を行っています。基礎工事用資材や内装用資材として、建設現場や建築物の施工において使用されます。
収益は、建築資材の販売および鉄骨工事の請負代金から得ています。運営は、A&Kホンシュウ(建築金物分野)およびエスイー鉄建(鉄骨工事分野)が行っています。
■建設コンサルタント事業
国内建設コンサルタント業務および海外での道路、橋梁、建機、水、エネルギー等に係るODA市場他での建設コンサルタントサービスを提供しています。
収益は、コンサルタント業務の委託料から得ています。運営は、株式会社アンジェロセックおよび有限会社日越建設コンサルタントが行っています。
■補修・補強工事業
橋梁構造物やトンネル等を中心とした補修・補強工事の施工および点検・調査業務を行っています。インフラ老朽化対策としての工事需要に対応しています。
収益は、工事請負代金から得ています。運営は、エスイーリペアおよび株式会社ランドプランが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は220億円台から260億円台へと推移しています。第41期に利益率が大きく向上しましたが、その後は落ち着きを見せ、第44期は減収減益となりました。特に第44期は利益率が3.4%まで低下しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 228億円 | 242億円 | 255億円 | 265億円 | 259億円 |
| 経常利益 | 12億円 | 20億円 | 14億円 | 14億円 | 9億円 |
| 利益率(%) | 5.3% | 8.2% | 5.4% | 5.2% | 3.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3億円 | 10億円 | 4億円 | 6億円 | 3億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は減少しました。売上総利益率もやや低下しています。販管費の増加もあり、営業利益は前期比で大きく減少し、営業利益率も低下しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 265億円 | 259億円 |
| 売上総利益 | 72億円 | 69億円 |
| 売上総利益率(%) | 27.1% | 26.7% |
| 営業利益 | 14億円 | 8億円 |
| 営業利益率(%) | 5.2% | 3.3% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が18億円(構成比30%)、販売運賃が9億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
建設用資機材の製造・販売事業と建設コンサルタント事業で売上が減少しました。建設用資機材事業では大型案件の端境期であったことが影響しました。建築用資材の製造・販売事業と補修・補強工事業は前期とほぼ同水準の売上となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 建設用資機材の製造・販売事業 | 129億円 | 125億円 |
| 建築用資材の製造・販売事業 | 105億円 | 104億円 |
| 建設コンサルタント事業 | 7億円 | 6億円 |
| 補修・補強工事業 | 24億円 | 24億円 |
| その他 | - | - |
| 調整額 | - | - |
| 連結(合計) | 265億円 | 259億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
エスイーのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。
営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権の減少や税金等調整前当期純利益、減価償却費及びのれん償却額の計上等により収入となりましたが、仕入債務の減少や法人税等の支払等により、前期から減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、主に有形固定資産の取得による支出がありました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入があったものの、長期借入金の返済や配当金の支払い、短期借入金の減少等により、前期から支出が増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 21億円 | 17億円 |
| 投資CF | -11億円 | -9億円 |
| 財務CF | -3億円 | -10億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「変化と新しい価値の創造」「顧客に満足される新しい機能の創造」「社会、自然環境との調和」「社員の個性尊重」を経営理念として掲げています。創業以来培ってきた技術をもとに、社会資本の充実に貢献しつつ、変化を先取りしながら新しい価値を創造し提供し続けることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「Making Changes, Creation of New Values for the Next Stage」を掲げ、常に人々の新しい要求に対して社会資本を変化させる姿勢を重視しています。また、社員の個性尊重を掲げ、意欲と能力の発揮による各人の豊かさの実現を目指す文化があります。
■(3) 経営計画・目標
「中期経営計画2023-2025」において、「2030ビジョン」の実現に向けた種まき期間と位置づけ、以下の財務目標を掲げています。
* 2026年3月期 売上高:265億円
* 2026年3月期 経常利益:4億3800万円
* 2026年3月期 ROE:0.5%
* 株主資本配当率(DOE):3.5%以上目安
■(4) 成長戦略と重点施策
「中期経営計画2023-2025」では、経営資源の戦略的投入を強化し、既存事業の基盤再構築と新たな価値創造に取り組んでいます。具体的には、発電事業への先行投資、ESCON事業の収益化と分野拡大、BIM/CIM設計支援事業の拡大、海外事業の再構築などを推進しています。
* 発電事業:2028年度頃の事業開始を目指す
* ESCON事業:橋梁大規模修繕関連等での収益化
* BIM設計支援事業:海外事業の出発点として位置付け
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材定着・確保に向け、新卒採用の強化や教育訓練体系の構築、公平公正な評価制度の導入を推進しています。若手人材や女性の管理職登用を進めるとともに、ブラザー・シスター制度や1on1ミーティング制度の導入により、働きやすい職場環境作りにも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.7歳 | 13.5年 | 7,005,248円 |
※平均年間給与は、税込支払給与額の平均であり、基準外賃金及び賞与を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務の対象として選択していないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 建設投資減少に関するリスク
売上高の約6割が国内建設市場向けであるため、公共投資の削減や景気後退による民間設備投資の縮小が業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、新事業の構築や海外展開等によりリスク分散を図っています。
■(2) 原材料高騰に関するリスク
主力製品の製造原価の多くを原材料費が占めており、鉄やPC鋼線等の価格変動の影響を受けます。原材料価格の急騰は業績悪化要因となるため、販売価格への転嫁や調達ルートの多様化で対応しています。
■(3) 災害に関するリスク
製造拠点が全国に点在しており、特に主力製品のケーブル製品は山口工場のみで製造しています。地震や豪雨等の災害により工場が被災した場合、操業に支障が生じる可能性があります。BCPの更新等でリスク軽減に努めています。
■(4) 海外事業展開に関するリスク
ベトナムを中心とした海外展開において、法制度や政情、商慣習の違い等のリスクが存在します。これらに対処できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。情報収集機能の強化や管理体系の整備を進めています。



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