アーレスティ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アーレスティ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するアーレスティは、自動車向けのダイカスト製品やアルミニウム製品の製造・販売を主力とするメーカーです。直近の業績トレンドは、自動車生産の回復による受注増等が寄与し、前年比で増収増益を達成しており、当期純利益も7期ぶりに黒字へと転換しています。


※本記事は、株式会社アーレスティの有価証券報告書(第105期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。

1. アーレスティってどんな会社?


自動車向けダイカスト製品を主力とし、独自のアルミニウム鋳造技術で軽量化ニーズに応える製造メーカーです。

(1) 会社概要


1943年に扶桑軽合金として設立され、ダイカスト製品の製造を開始しました。1961年に株式を上場し、1988年に現在のアーレスティへ商号を変更しています。2003年に京都ダイカスト工業と合併し、米国や中国、インドなどグローバルに自動車部品の製造・販売拠点を拡大しています。

同社グループの従業員数は連結で5,190名、単体で845名です。筆頭株主は同社取締役会長の高橋新氏であり、第2位は取引先企業で構成されるアーレスティ取引先持株会、第3位はインタラクティブ・ブローカーズ証券が常任代理人を務めるファンドとなっています。

氏名 持株比率
高橋新 4.50%
アーレスティ取引先持株会 3.80%
INTERACTIVE BROKERS LLC 3.70%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長最高経営責任者は高橋新一氏が務めており、社外取締役の比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
高橋新一 代表取締役社長最高経営責任者 2009年に同社へ入社後、米国子会社取締役などを経て2019年に代表取締役に就任。2023年より代表取締役社長、2024年より最高経営責任者として現職。
高橋新 取締役会長会長執行役員 1979年に同社入社。1997年に代表取締役社長へ就任し経営を牽引。2005年に最高執行責任者、2023年に代表取締役会長等を経て2024年より現職。
金田尚之 代表取締役専務執行役員品質保証本部長 1983年に入社後、西日本ダイカスト営業部長などを歴任。2015年に取締役に就任し、2019年より専務執行役員。2023年に代表取締役として現職。
成家秀樹 取締役常務執行役員管理本部長 1986年に三和銀行(現三菱UFJ銀行)に入社後、2015年に同社へ入社。経営企画部長を経て2022年より管理本部長を務め、2023年より現職。
酒井和之 取締役(監査等委員) 1984年に入社し、熊谷工場長やインド子会社のマネージング・ディレクター等を歴任。2020年に監査等委員会事務局シニアアドバイザーを経て、2021年より現職。


社外取締役は、酒巻孝光(元UDトラックス社長)、塩澤修平(元内閣府国際経済担当参事官)、森明吉(森・菊地法律事務所弁護士)、寺井公子(慶應義塾大学経済学部教授)、松葉俊博(元日本軽金属ホールディングス上席執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ダイカスト事業(日本・北米・アジア)」「アルミニウム事業」「完成品事業」を展開しています。

ダイカスト事業 日本


自動車向けを中心にダイカスト製品、金型鋳物製品、ダイカスト用金型、周辺機器の製造および販売を行っています。製品設計から金型製作、試作、量産までを一貫して顧客に提供しています。

顧客である自動車メーカー等から製品の販売対価として収益を得ています。日本国内における運営は、アーレスティが主体となり、子会社のアーレスティ栃木やアーレスティ熊本などが製造を担っています。

ダイカスト事業 北米


北米市場において、現地の自動車メーカーや部品メーカー向けにダイカスト製品およびダイカスト用金型の製造・販売を行っています。

ダイカスト製品等の販売による対価を顧客から得ています。米国での運営はアーレスティウイルミントンCORP.が行い、メキシコではアーレスティメヒカーナS.A. de C.V.が製造等を担当しています。

ダイカスト事業 アジア


アジア地域において、自動車向けを中心としたダイカスト製品およびダイカスト用金型の設計・製造・販売を展開しています。

現地の自動車関連企業等に対する製品販売から収益を得ています。運営は、中国の広州阿雷斯提汽車配件有限公司や合肥阿雷斯提汽車配件有限公司、インドのアーレスティインディアプライベートリミテッドなどが行っています。

アルミニウム事業


ダイカスト用二次合金地金や鋳物用二次合金地金などのアルミニウム関連製品の製造および販売を行っています。

自社グループ内での利用に加えて、外部の取引先顧客に対する合金地金の販売対価として収益を得ています。本事業の運営は、アーレスティが主体となって行っています。

完成品事業


半導体関連企業の大型クリーンルーム物件や通信会社のデータセンターなどを主な顧客とし、フリーアクセスフロア(建築用二重床)等の製造・施工・販売を行っています。

フリーアクセスフロアの製品販売および施工請負による対価を顧客から得ています。製品の製造は主にアーレスティ栃木などが担い、施工・販売はアーレスティが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の売上高は一貫して増加傾向にあり、堅調な事業の成長が確認できます。一方、経常利益は黒字水準を維持しているものの直近では微減となり、当期純利益は長らく赤字が継続していましたが、当期において黒字化を達成しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,163億円 1,409億円 1,583億円 1,629億円 1,671億円
経常利益 -20億円 1億円 26億円 30億円 29億円
利益率(%) -1.7% 0.1% 1.6% 1.9% 1.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -66億円 -33億円 8億円 -56億円 -10億円

(2) 損益計算書


売上高は前年比で増収となり、売上総利益および営業利益も揃って増加しています。これに伴い各段階の利益率もわずかながら改善を見せており、原材料高などの環境下においても本業における稼ぐ力が着実に高まっていることがうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,629億円 1,671億円
売上総利益 154億円 169億円
売上総利益率(%) 9.5% 10.1%
営業利益 34億円 37億円
営業利益率(%) 2.1% 2.2%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が12億円(構成比9.0%)、運搬費が8億円(同6.2%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のダイカスト事業において、日本および北米地域は増収となりましたが、アジア地域は横ばいとなりました。利益面では日本が堅調な伸びを示した一方で、北米はコスト増により赤字が継続しており、アジアや完成品事業も減益となるなど、地域・セグメントごとに明暗が分かれています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
ダイカスト事業 日本 646億円 686億円 23億円 26億円 3.8%
ダイカスト事業 北米 497億円 522億円 -16億円 -4億円 -0.8%
ダイカスト事業 アジア 365億円 362億円 18億円 8億円 2.2%
アルミニウム事業 72億円 66億円 2億円 3億円 4.5%
完成品事業 49億円 35億円 8億円 4億円 11.4%
連結(合計) 1,629億円 1,671億円 34億円 37億円 2.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 153億円 123億円
投資CF -129億円 -115億円
財務CF -10億円 -25億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.7%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も41.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は社名「アーレスティ」の由来である「Research」「Service」「Technology」を統合し、より品質の高い研究・サービス・技術を追求することを存在意義としています。優れた製品を通じて広く社会の役に立ち、持続的な成長を実現することを経営理念として掲げています。

(2) 企業文化


同社は「経営基本方針」として、「常に生きいきと活動し、理論と実験と創意と工夫を尊重して、品質のすぐれた製品と行き届いたサービスを提供しよう」という行動規範を掲げています。従業員一人ひとりが価値観を尊重し合い、自発的かつ意欲的に挑戦する組織文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は2040年に向けた長期経営計画「10年ビジネスプラン」を策定し、中長期的な資本効率の向上と財務体質の強化を目指しています。投資価値のある企業として、以下の具体的な数値目標を掲げています。

* 自己資本利益率(ROE)9%の達成
* 自己資本比率40%以上の堅持
* 利益回復による配当性向35%以上の実施
* 2030年までの成長投資1,400億円の実施

(4) 成長戦略と重点施策


急速に進む自動車の電動化を見据え、製品ポートフォリオを従来のパワートレイン系部品から電動車向け部品や車体系部品群へとシフトさせる成長戦略を推進しています。また、製品開発におけるデジタル変革を進めてリードタイムを短縮し、製造時のCO2排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルダイカストの開発にも注力しています。

* 電動車搭載部品売上比率55%(2030年度目標)
* CO2排出量原単位50%削減(2013年度比、2030年度目標)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は会社の進化と成長の原動力が人材であると考え、「Ahresty(アーレスティ)で良かった!」と実感できる企業を目指しています。多様な人材が活躍できるダイバーシティの推進や、マネジメント力向上に向けたリーダーシップ研修、自発的なキャリア形成を促すジョブローテーションなど、計画的な人材育成とエンゲージメント向上に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.8歳 19.3年 6,542,118円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.2%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 74.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 72.4%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 80.1%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(16.8%)、管理職登用年齢の平均(44歳)、障がい者雇用率(2.73%)、自己都合退職率(2.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自動車産業の構造変化


自動車の電動化や自動運転化などの進展により、同社が現在主力としている製品群の需要が将来的には減少し、事業構造の変化が避けられないリスクがあります。内製部品のアウトソーシング需要を取り込む一方、電動車搭載部品や車体系部品への事業シフトを急いでいます。

(2) 為替レート・金利の変動


同社グループは北米やアジアなど海外での生産・販売比率が高いため、各国の通貨価値の変動が調達コストの上昇や円換算後の財務数値に影響を与えます。また、設備投資等のための借入比率が高いため、金利上昇による資金調達コストの増加も業績を圧迫する可能性があります。

(3) アルミニウム市況の変動


主原料であるアルミニウム二次合金地金の価格は、海外の非鉄金属市況や為替の動向に大きく影響を受けます。価格変動分は四半期ごとに製品価格へ転嫁する仕組みを導入しているものの、短期的・急激な価格変動が生じた場合は一時的に収益を悪化させるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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