アーレスティ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アーレスティ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のダイカストメーカー。自動車向けダイカスト製品を主力とし、グローバルに展開しています。2025年3月期は、売上高が前期比3.0%増、経常利益が同18.3%増と増収増益でした。一方で、北米拠点における固定資産の減損損失計上などが響き、最終損益は赤字となりました。


※本記事は、株式会社アーレスティ の有価証券報告書(第104期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アーレスティってどんな会社?


自動車エンジンや足回り部品等のアルミダイカスト製品を製造・販売する、独立系のグローバルサプライヤーです。

(1) 会社概要


1943年に扶桑軽合金として設立され、1961年に上場しました。1988年に現社名へ変更し、2006年には愛知県豊橋市にテクニカルセンターを開設して技術開発体制を強化しています。近年では海外展開を加速させており、米国、メキシコ、中国、インドなどに拠点を拡大してきました。2022年の東証市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しています。

連結従業員数は5,259名、単体では846名体制です。筆頭株主は、米国の証券会社であるインタラクティブ・ブローカーズです。第2位は取締役会長の高橋新氏、第3位は主要取引先で構成されるアーレスティ取引先持株会となっており、経営陣と取引関係者が安定的に株式を保有しています。

氏名 持株比率
INTERACTIVE BROKERS LLC 6.40%
高橋 新 4.50%
アーレスティ取引先持株会 3.76%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長最高経営責任者は高橋新一氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
高橋 新一 代表取締役社長最高経営責任者 2009年同社入社。ITシステム部長、管理本部長などを経て、2023年代表取締役社長、2024年より現職。
高橋 新 取締役会長会長執行役員 1979年同社入社。1997年代表取締役社長に就任。2005年最高執行責任者、2023年代表取締役会長を経て、2024年より現職。
金田 尚之 代表取締役専務執行役員品質保証本部長 1983年同社入社。営業本部長、常務執行役員などを歴任。2019年専務執行役員、2023年より現職。
成家 秀樹 取締役常務執行役員管理本部長 1986年三和銀行(現三菱UFJ銀行)入行。2015年同社入社。経営企画部長を経て、2023年より現職。
酒井 和之 取締役(監査等委員) 1984年同社入社。熊谷工場長、ヒューマンリソース部長、インド子会社社長などを経て、2021年より現職。


社外取締役は、酒巻孝光(元UDトラックス社長)、塩澤修平(東京国際大学教授)、森明吉(弁護士)、寺井公子(慶應義塾大学教授)、松葉俊博(日本軽金属HD上席執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ダイカスト事業」、「アルミニウム事業」および「完成品事業」を展開しています。

(1) ダイカスト事業(日本・北米・アジア)


主に自動車メーカー向けに、エンジンやトランスミッション、足回り部品などのダイカスト製品、金型鋳物製品、ダイカスト用金型等を製造・販売しています。製品設計から金型製作、試作、量産までを一貫して手掛け、グローバルに供給しています。

収益は、自動車メーカー等の顧客からの製品・金型販売代金等によります。運営は、日本ではアーレスティ、アーレスティ栃木などが、北米ではアーレスティウイルミントン、アーレスティメヒカーナが、アジアでは広州阿雷斯提汽車配件、アーレスティインディアなどが担っています。

(2) アルミニウム事業


ダイカスト製品の原材料となる二次合金地金や、鋳物用二次合金地金等を製造・販売しています。同社グループ内への供給だけでなく、外部顧客への販売も行っています。

収益は、顧客からの地金販売代金によります。運営は主にアーレスティが担当しており、熊谷工場などで製造を行っています。

(3) 完成品事業


半導体工場のクリーンルームやデータセンター等で使用されるフリーアクセスフロア(建築用二重床)等の製造・施工・販売を行っています。

収益は、建設会社や施主からの製品販売および施工代金によります。フロアパネル等の製造はアーレスティ栃木や合肥阿雷斯提汽車配件が行い、施工・販売はアーレスティが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は増加傾向にあり、直近では1,600億円台に達しています。利益面では、経常利益は黒字回復し増加傾向にありますが、当期純損益は減損損失等の特別損失計上により赤字となる期があり、変動が見られます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 930億円 1,163億円 1,409億円 1,583億円 1,629億円
経常利益 △21億円 △20億円 1億円 26億円 30億円
利益率(%) △2.3% △1.7% 0.1% 1.6% 1.9%
当期利益(親会社所有者帰属) △6億円 △66億円 △33億円 8億円 △56億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しましたが、売上原価も増加しており、売上総利益率は微増にとどまりました。営業利益率は改善傾向にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,583億円 1,629億円
売上総利益 139億円 154億円
売上総利益率(%) 8.8% 9.5%
営業利益 23億円 34億円
営業利益率(%) 1.4% 2.1%


販売費及び一般管理費のうち、その他の経費が51億円(構成比43%)、給料及び賞与が35億円(同29%)を占めています。

(3) セグメント収益


日本およびアジアのダイカスト事業は増収増益となりましたが、北米事業は増収ながらも赤字転落しました。アルミニウム事業は増益、完成品事業は減収減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
ダイカスト事業 日本 620億円 646億円 6億円 23億円 3.6%
ダイカスト事業 北米 480億円 497億円 12億円 △16億円 -
ダイカスト事業 アジア 351億円 365億円 △7億円 18億円 5.0%
アルミニウム事業 71億円 72億円 1億円 2億円 3.1%
完成品事業 61億円 49億円 9億円 8億円 16.3%
調整額 - - 1億円 △2億円 -
連結(合計) 1,583億円 1,629億円 23億円 34億円 2.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

アーレスティのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

同社は、営業活動により資金を創出し、投資活動で設備投資を行い、財務活動で資金調達と返済を行っています。営業活動では、減価償却費や仕入債務の増加などが資金増加に寄与しました。投資活動では、有形固定資産の取得による支出が主な減少要因となりました。財務活動では、借入による収入と返済が相殺される形で資金が減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 183億円 153億円
投資CF △139億円 △129億円
財務CF △60億円 △10億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


社名「アーレスティ(Ahresty)」は、R・S・T(Research、Service、Technology)の統合を意味しています。理論と実験、創意と工夫を尊重し、品質の優れた製品と行き届いたサービスを提供することで、広く社会の役に立つことを経営基本方針として掲げています。

(2) 企業文化


「Ahrestyで良かった!」の実現を掲げ、従業員エンゲージメントの向上やダイバーシティの推進を重視しています。また、理論と実験、創意と工夫を尊重する姿勢や、お客様からの信頼獲得、事業を通じた社会課題の解決による持続的成長を目指す文化があります。

(3) 経営計画・目標


2040年に向けた「2040年ビジョン」と、それに基づく長期経営計画「10年ビジネスプラン」を策定しています。2030年度までの目標として、以下の数値を掲げています。

* 自己資本利益率(ROE):9%
* 自己資本比率:40%以上
* 配当性向:35%以上
* 成長投資(2030年まで):1,400億円

(4) 成長戦略と重点施策


急速に進む自動車の電動化に対応するため、事業ポートフォリオを従来のパワートレイン系部品から電動車向け部品・車体系部品中心へシフトさせることを最重要戦略としています。また、製品開発のDXによるリードタイム短縮や、CO2排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルダイカストの開発にも挑戦し、競争力向上と環境貢献の両立を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「Ahrestyで良かった!」の実現を目指し、従業員エンゲージメントの向上とダイバーシティの推進に取り組んでいます。具体的には、経営幹部の多様化、女性管理職比率の向上、障がい者雇用の促進などを進めています。また、「アーレスティ学園」を通じた体系的な人材育成や、ジョブローテーションによるキャリア形成支援も行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.0歳 19.2年 5,942,155円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.8%
男性育児休業取得率 63.6%
男女賃金差異(全労働者) 72.8%
男女賃金差異(正規) 69.8%
男女賃金差異(非正規) 90.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(15.6%)、管理職登用年齢の平均(45.6歳)、障がい者雇用率(2.85%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自動車市場の構造変化に関わるリスク


各国の環境規制や技術革新により、自動車業界はCASEや電動化へと大きくシフトしています。同社の主力製品は内燃機関向け部品が多く、急速なEV化によって需要構造が変化し、現在の製品群の市場が縮小する可能性があります。同社は電動車向け部品や車体部品への進出を強化し、事業構造の転換を図っています。

(2) 為替レート及び金利変動に関わるリスク


同社は北米やアジアなど海外で生産・販売を行っており、為替レートの変動は現地通貨建ての売上やコスト、円換算後の業績に影響を与えます。また、設備投資などで多額の資金調達を行っているため、金利上昇は支払利息の増加につながり、収益を圧迫する可能性があります。デリバティブ取引等でリスク軽減を図っていますが、完全に回避できるわけではありません。

(3) 原材料市況変動に関わるリスク


主力事業であるダイカスト事業やアルミニウム事業では、アルミニウム合金地金などを原材料としています。これらの価格はLME(ロンドン金属取引所)などの国際市況に連動して変動します。製品価格への転嫁システムはあるものの、急激な価格変動やタイムラグにより、短期的には収益に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 製品の品質に関わるリスク


自動車の重要保安部品を製造しているため、製品に欠陥があった場合、大規模なリコールや損害賠償請求に発展する可能性があります。これは多額の費用発生だけでなく、社会的信用の失墜を招き、経営基盤を揺るがす事態になりかねません。同社は品質管理体制を強化していますが、万が一の事態には業績への重大な影響が懸念されます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。