日本伸銅 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本伸銅 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する日本伸銅は、伸銅品の製造販売を主力事業とする企業です。直近の業績は、主要原材料である銅相場の高値推移などにより増収を達成した一方、デリバティブ損失の計上等により減益となりました。兄弟会社との分業体制を活用し、生産の最適化と持続的成長を目指しています。


※本記事は、日本伸銅株式会社 の有価証券報告書(第2026年3月期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本伸銅ってどんな会社?


伸銅品の製造販売を展開し、兄弟会社との最適分業体制を構築する金属製造企業です。

(1) 会社概要


1938年に大阪黄銅として設立され、1949年に日本伸銅へ社名を変更しました。1961年に東京証券取引所に上場し、長年にわたり事業を拡大してきました。2015年にはCKサンエツの連結子会社となり、同年に関係会社の大阪黄銅を吸収合併しています。

現在の従業員数は単体で92名です。筆頭株主は事業会社のCKサンエツで、第2位および第3位には個人株主や証券会社が名を連ねています。

氏名 持株比率
CKサンエツ 55.40%
根本 竜太郎 5.50%
インタラクティブ・ブローカーズ証券 4.40%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長の高倉英朗氏が経営を牽引しています。社外取締役比率は約28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
釣谷 宏行 代表取締役会長 1982年北陸銀行入行。シーケー金属社長、CKサンエツ社長等を経て2015年より現職。
高倉 英朗 代表取締役社長 2004年シーケー金属入社。リケンCKJV取締役等を経て2025年より現職。
橋本 好人 取締役営業本部長 1997年シーケー金属入社。同社取締役等を経て2018年より現職。
木本 道隆 取締役管理統括部長 1989年日本伸銅入社。管理部長等を経て2016年より現職。
鈴木 健男 取締役(常勤監査等委員) 1993年日本伸銅入社。管理統括部総務課長等を経て2023年より現職。


社外取締役は、平山博史氏(平山綜合法律事務所代表)、岩﨑徹也氏(元信州大学経済学部教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「伸銅品関連事業」を展開しています。

(1) 伸銅品・伸銅加工品


主力製品である黄銅合金などの伸銅品や、その加工品の製造を行っています。顧客となる需要家の多様なニーズに応じるため、環境負荷物質を制限した環境対応材の開発や拡販にも注力し、最適な製品を提供しています。

製品の販売による収益を主な収入源としています。事業運営は日本伸銅が主体となって行っており、兄弟会社であるサンエツ金属などと生産品種の棲み分けを行って最適分業体制を構築しています。

(2) その他の金属材料


伸銅品の製造プロセスにおいて必要となる銅や亜鉛などの各種原材料の取引を行っています。リサイクル原料の使用比率を高めるべく、仕入先各社との関係構築にも取り組んでいます。

伸銅品原材料の転売等による収益を収入源としています。こちらの事業運営も日本伸銅が主体となって行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は原材料価格の変動等により増減を繰り返しながら拡大傾向にあります。利益面はデリバティブ損失などの影響もあり、当期は減益となりました。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 261億円 272億円 233億円 261億円 301億円
経常利益 15億円 15億円 8億円 14億円 10億円
利益率(%) 5.8% 5.5% 3.4% 5.4% 3.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 11億円 10億円 6億円 10億円 7億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益と営業利益の双方が増加し、営業利益率も改善しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 261億円 301億円
売上総利益 27億円 35億円
売上総利益率(%) 10.3% 11.6%
営業利益 18億円 27億円
営業利益率(%) 6.9% 9.0%


販売費及び一般管理費のうち、報酬及び給料手当が3億円(構成比42%)、荷造運搬費が1億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は伸銅品関連事業の単一セグメントですが、主要原材料である銅の相場が高値で推移したこと等により、当期の売上高は大きく増加しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
伸銅品関連事業 261億円 301億円
合計 261億円 301億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


勝負型に該当します。本業からのキャッシュ・フローはマイナスですが、借入等の財務活動で資金を調達し、将来の成長に向けた投資活動を継続している状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 3億円 -10億円
投資CF -0.8億円 -0.4億円
財務CF -2億円 11億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「良いものだけを、安く、早く、たくさん生産する」「努力するに値するプロの仕事と、努力して働くほど報われる働きがいのある職場を提供する」「期待され、期待に応え、期待を超えるため、弛みない努力を重ねる」という3つの経営理念を掲げ、『地味だけど凄い価値の創造』を目指しています。

(2) 企業文化


「努力して働くほど報われる働きがいのある職場を提供する」という理念の通り、社員の努力や実直さを重んじる文化があります。年齢や性別に関わらず、一人ひとりの活力を生み出す環境づくりを推進しています。

(3) 経営計画・目標


経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標として経常利益を用いており、以下の数値を目標として掲げています。

・2027年3月期の経常利益目標:13億円

(4) 成長戦略と重点施策


「伸銅事業」の国内市場が縮小均衡に向かう中、業界再編を見据えたシナジーの追求を重点施策としています。具体的には、兄弟会社との製品の相互OEM供給、原料の共同購買、人材交流などに取り組んでいます。また、原材料価格の急騰やM&Aに必要な資金を確保するため、内部留保と資金調達のバランスを図る方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人事申告制度」を通じて社員が希望する職場への配属を支援し、適材適所の人材配置を行っています。また、各種研修会や通信講座による教育機会の提供、「働き方選択制度」の導入、「夜勤レス」の推進など、働きがいを感じて健康的に成長できる社内環境の整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.8歳 19.3年 7,445,000円


※平均年間給与は賞与および基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 77.7%
男女賃金差異(正規雇用) 79.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 78.3%


※同社は公表義務の対象ではないため、有報には女性管理職比率および男性育児休業取得率の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(79.1%)、休業災害発生件数(0件)、通信教育修了率(97.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 銅・亜鉛等の材料価格変動リスク


主原料である銅や亜鉛の国際相場が変動することで、棚卸資産に含み損益が発生するリスクがあります。投機資金による買占めで原料不足が生じたり、価格高騰により代替材への切り替えが進んで黄銅製品の需要が減少したりする可能性があります。同社はデリバティブ取引を通じてリスクヘッジを行っています。

(2) 電気炉操業に伴う電力供給不安リスク


黄銅合金の製造には電気炉を使用しているため、国内の電力供給事情が悪化して十分な電力が確保できなくなった場合、生産障害が発生するリスクがあります。こうした事態に備え、グループ内の他工場での代替生産体制を想定しています。

(3) 品質問題や製品クレームの発生リスク


各種規格や品質管理基準に従って製品を生産し、品質の維持・向上に努めていますが、予期せぬ製品の欠陥が生じた場合、製造物賠償責任等に伴う費用負担が発生し、業績や社会的信用に影響を与える可能性があります。

(4) M&A・事業提携の不確実性リスク


事業基盤の拡大・強化の手段としてM&Aや事業提携を積極的に活用する方針ですが、予期し得ない経済情勢の悪化や環境変化などにより、当初見込んでいたシナジー効果や成果が十分に得られないリスクが存在します。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。