日本伸銅 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本伸銅 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する伸銅品メーカーです。黄銅棒・線の製造販売を主力とし、親会社であるCKサンエツと連携した事業展開を行っています。直近の業績は、銅相場の高値推移等が寄与し、売上高261億円(前期比11.9%増)、経常利益14億円(同76.5%増)と増収増益を達成しました。


※本記事は、日本伸銅株式会社の有価証券報告書(第2025年3月期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025-06-23 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本伸銅ってどんな会社?


創業80年を超える老舗伸銅品メーカーであり、現在はCKサンエツグループの一員として黄銅棒などの製造販売を行っています。

(1) 会社概要


1938年に大阪黄銅として設立され、1949年に現社名へ変更するとともに大証へ上場しました。1961年には東証へ上場し、長きにわたり伸銅事業を展開しています。2015年にはCKサンエツの連結子会社となり、グループ内での最適分業体制を構築しました。2022年の市場区分見直しに伴い、東証スタンダード市場へ移行しています。

同社の単体従業員数は94名です。筆頭株主は親会社であるCKサンエツで、過半数の株式を保有しています。第2位以下は個人株主等が名を連ねています。

氏名 持株比率
CKサンエツ 55.40%
根本 竜太郎 5.50%
ヨシダ トモヒロ 2.40%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は原田孝之氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
原田 孝之 取締役社長(代表取締役) 1994年サンエツ金属(現CKサンエツ)入社。同社取締役、日本伸銅取締役製造本部長などを経て2016年より現職。
釣谷 宏行 取締役会長(代表取締役) 1982年北陸銀行入行。シーケー金属社長、CKサンエツ社長などを経て2015年より現職。
橋本 好人 取締役営業本部長 1997年シーケー金属入社。同社取締役、日本伸銅取締役大阪黄銅カンパニープレジデントなどを経て2018年より現職。
木本 道隆 取締役管理統括部長 1989年日本伸銅入社。管理部長、管理本部長代行などを経て2016年より現職。
松井 大輔 取締役 1997年北陸銀行入行。CKサンエツ取締役などを経て2015年より現職。


社外取締役は、平山博史(弁護士)、岩﨑徹也(信州大学名誉教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「伸銅品関連事業」として以下の製品区分で事業を展開しています。

(1) 伸銅品


同社の主力製品である黄銅棒・線などの伸銅品を製造・販売しています。主な顧客は金属加工業者や商社等であり、自動車部品や水栓金具などの材料として使用されます。

収益は顧客への製品販売による代金です。製造および販売の運営は主に日本伸銅が行っており、グループ会社であるサンエツ金属との間で生産品種の棲み分けや相互OEM供給を行うことで効率化を図っています。

(2) 伸銅加工品


伸銅品をさらに加工した高付加価値製品を取り扱っています。顧客の要望に応じた加工を施し、部材として提供しています。

収益は加工品の製品販売代金です。運営は日本伸銅が担っており、素材から加工までの一貫した供給体制の一翼を担っています。

(3) その他(その他の金属材料)


自社製造品以外の伸銅品原材料の転売などを主に行っています。顧客ニーズに合わせて、自社製品以外の金属材料も供給しています。

収益は商品の販売代金です。運営は日本伸銅が行っており、原材料の共同購買などを通じてグループシナジーを追求しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 156億円 261億円 272億円 233億円 261億円
経常利益 6億円 15億円 15億円 8億円 14億円
利益率(%) 3.9% 5.8% 5.5% 3.4% 5.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 11億円 10億円 6億円 10億円


2022年3月期に売上が大きく伸長し、以降は200億円台で推移しています。2024年3月期は減収減益となりましたが、直近の2025年3月期は銅相場の高騰などの影響もあり、売上高・利益ともに回復基調にあります。利益率も5%台の水準に戻しています。

(2) 損益計算書

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 233億円 261億円
売上総利益 21億円 27億円
売上総利益率(%) 8.8% 10.3%
営業利益 12億円 18億円
営業利益率(%) 5.1% 7.0%


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益が大きく伸長しています。特に売上総利益率は改善傾向にあり、営業利益率は前期の5.1%から7.0%へと上昇しました。収益性が高まっていることが確認できます。

販売費及び一般管理費のうち、報酬及び給料手当が3億円(構成比40%)、その他が2億円(同27%)、荷造運搬費が1億円(同15%)を占めています。売上原価においては、原材料費等の変動費が大きな割合を占めています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントですが、製品区分別の売上高を見ると、主力の「伸銅品」が銅相場の高値推移等により前期比で増加しています。「伸銅加工品」も増収となりましたが、原材料転売が主となる「その他」は減少しました。全体としては主力の伸銅品が牽引し増収となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
伸銅品 203億円 230億円
伸銅加工品 11億円 12億円
その他 20億円 19億円
連結(合計) 233億円 261億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。本業で稼いだ営業キャッシュ・フローにより、投資や借入金の返済を行っており、財務体質は安定的です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 8億円 3億円
投資CF -0億円 -1億円
財務CF -8億円 -2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「良いものだけを、安く、早く、たくさん生産することで社会に貢献する」「努力するに値するプロの仕事と、努力して働くほど報われる働きがいのある職場を提供する」「期待され、期待に応え、期待を超えるため、弛みない努力を重ねる」ことを経営理念として掲げています。これらを通じ、社会への貢献と企業の成長を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、『地味だけど凄い価値の創造』を目指す姿勢を大切にしています。プロフェッショナルとしての仕事と働きがいのある職場の提供を重視しており、努力が報われる環境づくりを推進しています。実直なものづくりを通じて、確かな価値を生み出し続ける文化が根付いているといえます。

(3) 経営計画・目標


同社は、経営上の目標達成状況を判断する客観的な指標として経常利益を重視しています。中期的には以下の数値目標を掲げ、その達成に向けて事業活動を推進しています。

* 2026年3月期 経常利益目標:11億7000万円

(4) 成長戦略と重点施策


国内市場が縮小均衡にある中、同社はグループ会社であるサンエツ金属とのシナジー追求を基本戦略としています。製品の相互OEM供給や原料の共同購買、人材交流等により経営効率を高めています。また、M&Aや事業提携による事業基盤の拡大、新製品開発による市場開拓にも注力する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、「人事申告制度」を通じて意欲ある社員に多様な経験の機会を提供し、適材適所の配置を行っています。また、各種研修や通信講座による教育機会の充実を図るとともに、ライフステージに応じた「働き方選択制度」を整備しています。「夜勤レス」の推進など、安心して健康的に働ける職場環境づくりにも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.0歳 19.3年 7,151,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 74.3%
男女賃金差異(正規雇用) 75.3%
男女賃金差異(非正規) -


※同社は公表義務の対象ではないため、女性管理職比率および男性育児休業取得率については有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(77.5%)、人事希望等成就率(52.6%)、通信教育受講者割合(59.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 材料価格変動のリスク


同社は銅や亜鉛などの国際相場商品を主原料としています。これらの相場が乱高下した場合、棚卸資産に含み損益が発生したり、原料不足による生産障害が起きたりする可能性があります。また、価格高騰が続くと代替材への切り替えにより需要が減少する恐れもあります。同社はデリバティブ取引によりリスクヘッジを行っています。

(2) 電力供給不安のリスク


電気炉を使用して製造を行っているため、電力供給事情が悪化した場合には生産障害が発生する可能性があります。リスクが顕在化した際には、グループ内の他工場での代替生産などで対応することを想定しています。

(3) 取引先の経営破綻による債権回収のリスク


主要取引先の信用状況を定期的に確認し、必要に応じて取引信用保険を付保するなどの対策を講じていますが、取引先が経営破綻した場合には売上債権の回収ができなくなり、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。