東邦亜鉛 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東邦亜鉛 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場し、非鉄金属製品の製造やリサイクル事業を展開する企業です。直近の業績は、売上高1256億円(前期比約1%減)、経常利益57億円(同約54%増)と減収増益を記録しています。事業再生計画の下で不採算事業を再編し、収益力の改善と持続的な成長に向けた基盤強化を進めています。


※本記事は、東邦亜鉛株式会社の有価証券報告書(第127期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東邦亜鉛ってどんな会社?


非鉄金属製品の製造販売やリサイクル事業を幅広く手掛け、循環社会の実現に貢献する企業です。

(1) 会社概要


1937年2月に日本亜鉛製錬として設立され、同年6月に電気亜鉛の製錬を開始しました。1941年9月に東邦亜鉛へ社名を変更し、1949年5月に東京証券取引所などに上場を果たしています。近年では、2025年3月に第三者割当増資を実施し、抜本的な事業再生に向けた計画期間をスタートさせています。

現在の従業員数は連結で663名、単体で329名です。筆頭株主は投資事業有限責任組合アドバンテッジパートナーズⅦ号で、第2位および第3位にもアドバンテッジパートナーズが国内連絡先となっている投資ファンドが名を連ねており、ファンドの支援のもとで事業基盤の再構築を図っています。

氏名 持株比率
投資事業有限責任組合アドバンテッジパートナーズⅦ号 22.78%
JBO (AP) Ⅶ, L.P.(国内連絡先 アドバンテッジパートナーズ) 10.61%
APCP Ⅶ, L.P.(国内連絡先 アドバンテッジパートナーズ) 10.47%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長執行役員CRO兼CLOの佐藤義和氏をはじめ、社外取締役や監査等委員によって経営の監督機能が強化されています。

氏名 役職 主な経歴
佐藤義和 代表取締役社長執行役員CRO兼CLO 1990年東邦亜鉛入社。執行役員金属・リサイクル事業部長、取締役常務執行役員などを経て、2026年6月より現職。
飯塚茂 取締役(監査等委員) 1985年東邦亜鉛入社。執行役員契島製錬所長、常務執行役員東邦契島製錬代表取締役社長などを経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、鷲巣寛(伊藤忠商事理事)、印東徹(AP83ホールディングス代表取締役)、田中耕路(スペースバリューホールディングス取締役)、宮本洋之(エコロシティ取締役)、坪井寛行(アドバンテッジパートナーズ)、青野豪(元みずほ銀行理事)、中川有紀子(青山学院大学特任教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、主に4つの報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

(1) 製錬事業


鉛および銀製品などの非鉄金属製品の製造販売を行っています。顧客は国内外の幅広い産業分野にわたります。
鉛および銀製品の製造については子会社の東邦契島製錬が担当し、製品の販売を東邦亜鉛が担う体制で事業を運営しています。

(2) 環境・リサイクル事業


電炉ダストからのリサイクル製品である酸化亜鉛を中心に、製品の製造販売を行っています。自動車などのタイヤメーカーを主な顧客としています。
本事業の運営および製品の製造・販売は、主に東邦亜鉛が主体となって行っています。

(3) 電子部材・機能材料事業


ノイズフィルターを中心とする電子部品や電解鉄の製造販売を行っています。
電子部品は主として中国・ベトナムの加工業者に加工を委託し、東邦亜鉛で販売しています。電解鉄については東邦亜鉛が自社で製造販売を行っています。

(4) 金属リサイクル事業


事業再生計画に基づき、従来の亜鉛製錬事業を当事業に再編しました。各種メタルの製品加工および環境ダスト処理などを手掛けています。
本事業の運営は東邦亜鉛が主体となって行っており、二次原料からの有価金属回収などを進めています。

(5) その他事業


土木・建築・プラントエンジニアリング事業や、物流、環境分析などの関連サービスを展開しています。
子会社のティーディーイーが設計施工・製造を行い、安中運輸や契島運輸、東邦キャリア、中国環境分析センターなどが各サービス部門を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は1200億〜1400億円台で推移しています。経常利益は一時期大幅な赤字を計上しましたが、直近では黒字を確保しており、事業の再編と収益基盤の強化によって当期純利益も着実な改善傾向を示しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1243億円 1458億円 1308億円 1263億円 1256億円
経常利益 94億円 31億円 -107億円 37億円 57億円
利益率(%) 7.5% 2.2% -8.2% 2.9% 4.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 67億円 17億円 -453億円 -35億円 43億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で微減となったものの、売上原価の低減などにより営業利益は増加し、営業利益率も改善しています。不採算事業からの撤退や資産売却の効果が利益面での押し上げに寄与しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1263億円 1256億円
売上総利益 132億円 126億円
売上総利益率(%) 10.5% 10.1%
営業利益 56億円 67億円
営業利益率(%) 4.5% 5.3%


販売費及び一般管理費のうち、商品及び製品運賃諸掛が17億円(構成比29%)、支払手数料が13億円(同21%)、従業員給与及び賞与が11億円(同18%)を占めています。

(3) セグメント収益


製錬事業が金属相場の高騰等により大幅な増収を記録した一方で、事業再編の対象となった金属リサイクル事業は売上規模が縮小しました。また、前期まで存在した資源事業からの撤退による影響も現れています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
製錬事業 738億円 1031億円
環境・リサイクル事業 64億円 69億円
資源事業 65億円 -
電子部材・機能材料事業 46億円 35億円
金属リサイクル事業 312億円 75億円
その他事業 39億円 45億円
連結(合計) 1263億円 1256億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)のパターンを示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 29億円 19億円
投資CF -4億円 -10億円
財務CF 50億円 -108億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は40.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は13.8%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「有限な資源を、無限の価値に」をミッションに掲げ、鉱石や捨てられるモノから価値を見出し、産業に不可欠な製品を生み出すことで循環社会の実現に挑み続けています。また、事業領域を的確に表現するため、東邦メタリクスへの商号変更を予定しています。

(2) 企業文化


事業再生計画を通じて、変化に挑戦する企業文化・意識改革を推し進め、新しい企業体への成長を目指しています。社員ならびに経営陣の想いと決意を踏まえたミッション、ビジョン、バリューを全社員で共有し、行動指針として直面する課題に挑戦しています。

(3) 経営計画・目標


2025年4月からの5年間を事業再生期間と位置付け、永続的に成長する企業体へ進化することを目指しています。不採算であった資源事業から撤退し、亜鉛製錬事業の再編を実行することで、経営基盤の立て直しと収益基盤の固めを図っています。

(4) 成長戦略と重点施策


社会インフラを支えるリサイクリングのリーディングカンパニーを目指し、以下の基本方針をもとに競争力強化投資を推進しています。

* 操業安定の徹底(安全・安定操業の確立、トラブル未然防止)
* 収益力の強化(原料ベストミックスの高度化、二次原料からの回収強化)
* 全社構造改革の加速
* 事業の競争力強化投資の推進

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「会社の変革を支えるタレントマネジメントの高度化」と「個人のパフォーマンスを最大化する従業員エンゲージメントの強化」を二軸に掲げています。新人事制度の運用や教育体系の刷新、適時採用への転換を進めるとともに、健康で働きやすい就業環境の構築を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 47.5歳 21.9年 6,195,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.0%
男性育児休業取得率 33.3%
男女賃金差異(全労働者) 71.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 79.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 55.8%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 金属価格および為替相場の変動


原料鉱石価格や製品価格は国際市場価格を基準としており、価格が予想以上に急激かつ大幅に変動した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、買鉱条件や製品販売価格が米ドル建てを基礎とするため、為替相場の変動もリスクとなります。

(2) 安全・安定操業の確保


主力である製錬事業の主原料である鉱石はすべて海外から調達しており、世界的な需給状況や鉱山での不測の事態が原料確保に影響する恐れがあります。また、自然災害や事故等で計画通りの生産が行えない場合、販売機会の喪失を招くリスクがあります。

(3) 環境問題への対応


国内外の事業所や管理鉱山において環境関連法令に基づく汚染防止や鉱害防止に努めていますが、関連法令の改正による新たな費用発生や、脱炭素実現に向けた取り組みに伴うコスト増加など、気候変動対策への社会的要請が業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

東邦亜鉛の転職研究 2026年3月期3Q決算に見るキャリア機会

東邦亜鉛の2026年3月期3Q決算は、銀相場の高騰と構造改革により劇的な黒字転換を達成。不採算の亜鉛製錬を金属リサイクル事業へ再編し、DX戦略によるデジタル業務変革にも注力。「歴史的な再生フェーズにある同社で、どんなエンジニアやビジネスリーダーが求められているのか」を整理します。